アマミノクロウサギは、鹿児島県奄美大島及び徳之島の2島にのみ分布する日本の固有種です(図1)。本種は、生息地の減少や分断化、交通事故、ノネコやノイヌによる捕食のため個体数が減少しており、環境省保護増殖事業に指定され、積極的な保護増殖が進められています。
我々の研究グループは、アマミノクロウサギの死亡個体から取得した細胞に、ヒト由来の遺伝子を導入することで、無限に増殖可能なアマミノクロウサギ由来の細胞の樹立に成功しました(図2)。アマミノクロウサギのような希少動物は、個体を用いた実験を進めることは極めて困難であるため、細胞を用いた研究の必要性が強く認識されています。一方で、通常の体細胞は、細胞培養を続けると、細胞増殖が停止してしまうため、細胞を用いた研究を進めることは簡単ではありません。我々が樹立したアマミノクロウサギの細胞は、無限に増殖できるため、アマミノクロウサギの細胞レベルの研究を比較的簡単に進めることができます。したがって、本研究の細胞を用いれば、今後、地球温暖化によって発生が危惧されている新興感染症のリスクや汚染物質のリスクを比較的簡単に評価することができます。
左写真:アマミノクロウサギ/右写真:樹立したアマミノクロウサギの細胞
半永久的に細胞増殖可能なヤンバルクイナ由来細胞の樹立-鳥類細胞の細胞増殖制御機構の一部を解明!-
本研究では"世界で初めて"絶滅危惧鳥類の無限分裂細胞の樹立に成功しました。