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マングローブ植物ヤエヤマヒルギの根が窒素固定菌を集めている?
―根・樹木・森林スケールでの検証―


論文情報
タイトル
マングローブ植物ヤエヤマヒルギの根が窒素固定菌を集めている?―根・樹木・森林スケールでの検証―
Mangrove-diazotroph relation on root, tree and forest scales-Mangrove plants create high soil nitrogenase activity with unique diazotrophic communities.
著者       
Inoue, T., Shimono, A., Akaji, Y., Baba, S., Takenaka, A., Chan, H.T.
掲載雑誌       
Annals of Botany, 125(1), 131-144
DOI: 10.1093/aob/mcz164       
受理日など       
2019年8月14日 受理、2019年11月3日 公開 オンライン公開への外部リンク
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概要

マングローブ植物が生育する干潟域は、陸域から供給された窒素が潮汐変動によって海域へ流出するため、窒素不足に陥りやすい。窒素は植物の生育に不可欠な元素である。このような場所で旺盛な生育を見せるマングローブ植物はどのように窒素を獲得しているのだろうか?

本研究では、アジア太平洋域のマングローブ林の主要な構成樹種ヤエヤマヒルギ(Rhizophora stylosa Griff.)について、土壌窒素固定活性(*)の空間分布パターンを根・樹木・森林スケールで計測した。ヤエヤマヒルギの孤立木周辺の土壌窒素固定活性は、樹木に近づくにつれて増加しており、この様子は樹高が高くなるほど顕著であった(図1)。また、樹木が密生している森林内では非常に高い土壌窒素固定活性が観測された(図2)。さらに、マングローブ植物の根の近辺における窒素固定バクテリアの群集構造は、干潟土壌と異なるものであることも明らかとなった。低窒素になりがちな干潟で生育するヤエヤマヒルギにとって、窒素固定は重要な窒素供給源となっているのかもしれない。

*土壌窒素固定活性は、窒素固定を担う酵素ニトロゲナーゼの活性をアセチレン還元法によって計測した。

ヤエヤマヒルギの孤立木周辺の土壌窒素固定活性のグラフ

図1:ヤエヤマヒルギの孤立木周辺の土壌窒素固定活性
(a) 樹木の幹から3方向30㎝ごとに土壌窒素固定活性を計測した。樹高が高くなるにつれて、樹木近傍の土壌窒素固定活性が高くなっていた。
(b) 樹高の異なるヤエヤマヒルギの孤立木。

マングローブ林内と干潟の土壌窒素固定活性のグラフと写真
図2:マングローブ林内と干潟の土壌窒素固定活性
(a) マングローブ林の中では土壌窒素固定活性が高く、干潟に出ると一気に低くなっていた。
(b) ヤエヤマヒルギの根が密集した林内。
(c)マングローブ林の外の干潟。