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作物栽培の歴史の長さが外来雑草の数を規定する


論文情報
タイトル
作物栽培の歴史の長さが外来雑草の数を規定する
Length of cultivation determines the richness of native and non-native weeds in crop fields worldwide.
著者
Ikegami, M., Wandrag, E., Duncan, R.P., Hulme, P.E.
掲載雑誌
Biological Invasion. DOI: 10.1007/s10530-018-1828-7
受理・掲載日
2018/8/24 受理、2018/8/27 オンライン公開 オンライン公開への外部リンク
概要

外来種の比率は国や地域あるいは植生などによって大きく異なる事が知られていますが、その背景にある要因は必ずしも明らかになっていません。そこで本研究ではコムギ雑草に注目し、世界各国のコムギ雑草の種類を文献から調査し、外来コムギ雑草の比率を比較することで、外来コムギ雑草の分布拡大を規定する要因を明らかにしました。

解析の結果、外来コムギ雑草の比率は地域によって大きく異なり、地中海沿岸から中近東にかけては自生種の占める割合が高い一方、ニュージーランドやチリでは外来種のみが占め、インドや中国そして日本では外来種と自生種の割合が半々程度でした。
このような違いを生み出す要因を分析した結果、「各地域における小麦栽培の歴史の長さ」が外来種・自生種の数と強い相関がありました。これは、自生種がコムギ畑という異質な環境に定着・生存できるよう進化するよりも、そのような環境に既に適応進化している雑草種の侵入の方が早く起きるためです。つまり、雑草の管理においては、外来雑草の侵入定着防止が重要である事を示唆しています。

従来、外来種の数は経済的に豊かな国で多いと言われていましたが、この研究では欧州地域での自生種の比率が高いことから、経済的な要因以外にも、外来種が生育する生息環境(=ハビタット。本研究ではコムギ畑を指す。)が成立してからの長さが影響していることを示しています。

世界各地のコムギ雑草のうち外来種が占める率と各地域のコムギ栽培の歴史の長さ

図 世界各地のコムギ雑草のうち外来種が占める率(濃い色ほど外来種が多い)と各地域のコムギ栽培の歴史の長さ(単位:年)。
地中海地域は自生種の比率が高いが、アメリカ大陸やオーストラリアなど新世界では外来種の比率が高い。