サンゴが過剰な水温ストレスに晒されると体内に共生する藻類が減少し、色素が抜けた状態(白化)になる。白化が継続するとサンゴの成長や生存が脅かされるため、各地域のサンゴ礁を保全していくためには、どこでどれくらい白化が起きたかを定量的に把握することが重要である。
本研究は、Web参加型市民調査の「日本全国みんなでつくるサンゴマップ」(外部リンク) に投稿された地域毎のサンゴ白化の有無の情報を収集し、衛星観測の水温や紫外線、濁りなどの環境要因との対応関係を精査することによって、高い正答率(最大
90%)と高い空間解像度(1 km)のサンゴ白化推定モデルを構築した。
図1(左): サンゴ礁生態系/図2(右): 日本全国みんなでつくるサンゴマップ
さらに、このモデルによって作成した沖縄県のサンゴ礁域における白化リスク地図を紹介し、また現場で実証試験の進んでいる漁網を用いた紫外線軽減を想定したシナリオのもとでは白化率が大きく減少しうるという温暖化適応策の提言を行なった。
なお本論文では、既存のあらゆるサンゴ白化の水温指標の比較・向上の検討や用語・手法の整理、R言語のサンプルコードも収録しているので、今後の地域・広域のサンゴ白化対策を行う上での情報源・手法の参考として活用してほしい。
図3: 本研究のモデルによって推定した沖縄県の平均白化確率
(5年分の平均;本論文のFig. 6を改変)