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DNAバーコーディングが支持する日本産ユスリカ属の再分類
DNA barcoding supports reclassification of Japanese Chironomus species (Diptera: Chironomidae).

著者       
Kondo N. I., Ueno R., Ohbayashi K., Golygina V. V., Takamura K.
雑誌名       
Entomological Science, 19, 337-350. DOI:10.1111/ens.12212       
受理・掲載日
2015年12月14日 受理、2016年7月7日 掲載(オンライン)
概要

ユスリカ科昆虫は、水質を表す有用な指標だが、形態による同定が難しいことからその利用が限られてきた。DNAバーコーディングを併用することで、ユスリカの同定が容易になると考えられる。 本研究では、世界中に分布し、ユスリカ科の中でも特に種数の多い日本産ユスリカ属8種について、COI遺伝子の塩基配列を調べた。 さらに、世界のユスリカ属も合わせた計72種のデータについて、塩基配列の違い(遺伝的距離)を計算したところ、種が違うと塩基配列も3%以上異なることがわかった。 しかし、ヤマトユスリカやウスイロユスリカなど日本産の6種の塩基配列についてこの3%基準に照らし合わせると、大きすぎる種内の違い、または小さすぎる種間の違いが見られた。 このことから、ユスリカ属について、形態の同定結果も合わせた分類の再整理が必要であると考えられた。

用語説明

同定:生物の分類上の位置を確定すること。やさしく言い換えると、生物の名前(種やそれよりも上位のグループ名である属や科など)を判別し、特定すること。

DNAバーコーディング:種を判別するのに適したDNAの塩基配列を調べて、カタログを作ること。また、そのカタログを参照して、ある生物の塩基配列から、その生物の種名を知ること。

COI遺伝子:ミトコンドリアもつ遺伝子の一つで、チトクロームcオキシダーゼという酵素の一部を作るのに必要な遺伝子。動物のDNAバーコーディング用に一般的に用いられる。


日本産ユスリカ属8種におけるCOI遺伝子の塩基配列の一部。
4つの塩基が色分けされており、横1列がユスリカ1個体の塩基配列で、8種30個体分ある。
種ごとの塩基配列の違いは、このように目で見てもおおよそ分かるが、
客観的な比較のためには、遺伝学において定義されている遺伝的距離を計算して用いる。


生物・生態系環境研究センターでは、ユスリカ標本DNAデータベースを公開している。
日本産を中心に、ユスリカの標本ごとに、写真や採集地、DNAバーコーディングの
情報などが載っており、データは順次、追加されている。
ユスリカ標本DNAデータベースはこちら