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背景

遺伝子組換え(GM) 農作物は1996年に米国ではじめて販売され、15年間でその栽培面積は60倍以上に拡大していて、今後も拡大しつづけていくと予想されています。2009年において、世界で生産されているダイズの77%、トウモロコシの26%、セイヨウアブラナ(ナタネ)の21%、ワタの49%が除草剤抵抗性や害虫抵抗性を持つように遺伝子を組み替えられた個体となっています。

日本ではGM農作物の商業栽培はおこなわれていませんが、日本は食料の多くを輸入に頼っているため、加工用などとして輸入したGM植物の種子が国内の輸送途中にこぼれ落ちて発芽し、一般の環境中で生育しています。さらに、海外でのGM農作物栽培面積の拡大にともない、輸入量に占めるGM作物の割合が増えると、国内でのGM植物の分布も拡大することが推測されます。しかし、その長期的な生育の状況はよくわかっていません。さらに、GM植物と在来種との雑種形成が起こると、GM遺伝子の分布が急拡大するなどして、在来種に悪影響を与えることが懸念されます。

日本は、国境を越える遺伝子組換え生物(GMO)の移動による生物多様性への悪影響を防止するための国際的な取り決めであるカルタヘナ議定書を締結しています。カルタヘナ議定書締約国は2年おきに開催されるカルタヘナ議定書締約国会議(MOP)でGMOの監視体制および逸出状況について報告義務があります。現在、こぼれ落ちによる自生が確認されているGMナタネの生育実態については、農水省、環境省、国立環境研究所が協力して調査を実施しています。

また、2010年に名古屋で開催されたMOP5において、「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択されました。補足議定書では、GMOにより損害(生物の多様性の保全及び持続可能な利用に対する悪影響)が発生した場合、権限のある当局(国)が管理者(当該GMOの管理に関わる者)が実施すべき対応措置を決定することとされています。
また、管理者が対応措置を実施できない場合も含め、国が代わりに実施できるとされ、その費用は国が管理者から回収する権利を有するとされています。

現在、日本においても、補足議定書の締結に向けた検討が行われています。


モニタリングの概要

GMセイヨウアブラナを対象として、国道51号線は2005年から、国道23号線は2009年からそれぞれ継続的にモニタリングを行っています。調査地区におけるナタネの全個体数とGMの割合、そしてそれらの長期的な変動と場所による生育状況の違いを調べています。







  
経過報告

国道51号線(茨城・千葉)沿いにおけるGMセイヨウアブラナ個体数の経年変化>

2005年度〜2012年度に確認された遺伝子組換え(GM)セイヨウアブラナの個体数を示したグラフ。ラウンドアップおよびバスタはそれぞれ除草剤の名前で、赤と緑はそれぞれラウンドアップとバスタに耐性を持つよう遺伝子組換えがされたセイヨウナタネを示します。

2011年度、2012年度は二年続けてGM発見数がゼロでした。GMでないセイヨウアブラナも含めた個体数も、2005年の2,162個体から2012年の28個体へ減少傾向にあります。



国道23号線(三重)沿いにおけるGMセイヨウアブラナ個体数の経年変化

2010年度〜2012年度に確認されたセイヨウアブラナの個体数およびGMの内訳を示したグラフ。3年連続、GMの割合にはあまり変化がみられません。
詳細な調査・分析方法については下記をご覧ください。




モニタリング・分析の方法

調査地点

・国道51号線(千葉県香取市〜成田市にかけての約20km区間)東側道路沿い
・国道23号線(三重県四日市市〜津市にかけて5区間の約10km)上下車線


調査期間

<国道51号線>
 2005年4月(平成16年度)〜継続中
 各年の4月中旬〜5月下旬にかけて

<国道23号線>
 2010年4月(平成22年度)〜継続中

調査方法

調査区間の道路沿いを歩き、目視にてセイヨウアブラナを探索した。セイヨウアブラナが確認できた際は場所を記録し、1個体につき葉を1〜2枚採取し、実験室に持ち帰った。

分析方法

  • 採取した葉を乾燥
  • 葉を2等分して保管
  • 半分から約10mgの葉を切り取り、マイクロチューブに入れ、0.5mLの水を加えすりつぶした
  • 上清にReveal試験紙(NEOGEN)またはTrait LL試験紙(Strategic diagnostics Inc.)を浸し10分後に除草剤耐性タンパク質による陽性反応の有無を確認
  • 除草剤耐性タンパク質の存在を確認できた個体からFTA MicroCard (Whatman社)にてDNAを抽出
  • DDBJ(日本データバンク)に登録されているグリホサート耐性遺伝子(CP4-EPSPS)、グルホシネート耐性遺伝子(PAT)の塩基配列から共通性の高い部分を選びPCRプライマーを設計した。これらのプライマーと抽出したDNAをテンプレートにしてPCRをおこなった。増幅されたDNAを精製し、その塩基配列を調べ除草剤耐性遺伝子の存在を確認


担当者

中嶋信美、玉置雅紀、佐治 光、久保明弘、青野光子

Last updated Oct. 30, 2013