国立研究開発法人 国立環境研究所
環境リスク・健康領域 Health and Environmental Risk Division
 

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リスクセンター四季報(2003-2006)より

Vol.4 No.1 (6)
多媒体モデルの残留性有機汚染物質の同定への応用に関するつくばワークショップ

曝露評価研究室長(当時) 鈴木 規之

 残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約(いわゆるPOPs条約)に従い、国際的な対応が進められていますが、その中で、化学物質の有する長距離移動性(LRTP: Long-range transport potential)および残留性を多媒体間の動態の中で評価することが必要と考えられています。このために、2002年からOECDの専門家会合において、多媒体モデルの残留性有機汚染物質の同定への応用に関する検討が継続的に行われ、その中でガイダンス文書の公表、また、モデルの比較研究や新たなモデル開発などが行われてきました。
 環境リスク研究センターでは、鈴木が専門家会合のメンバーとして当初から携わってきたこともあり、今回、この分野の第一人者であるスイス連邦工科大学Martin Scheringer教授およびトロント大学Frank Wania教授などを招いて、つくば国際会議場においてOECDの成果の紹介と東アジア域での関連する最新の研究状況を議論するため、「多媒体モデルの残留性有機汚染物質の同定への応用に関するつくばワークショップ」(Tsukuba Workshop on Application of Multimedia Models for Identification of Persistent Organic Pollutants in East Asian Countries)を以下のとおり開催しました。

   会期:平成18年6月27日(火)~6月28日(水)
   会場:つくば国際会議場
     (〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3)
   主催:環境省、(独)国立環境研究所
   後援:OECD(経済協力開発機構)、
       UNEP(国連環境計画)

「生物多様性と生態系機能の視点に基づく環境影響評価手法の開発」を示す概要図

 会議の主な内容は以下の通りです。

POPsおよびPBT等に係わる国際的動向(環境省環境保健部 戸田英作)Assessment of long-range transport potential and persistence by multimedia models and OECD expert group studies(スイス連邦工科大学 Martin ScheringerGlobal POPs monitoring programs(国立環境研究所 柴田康行)Global fate of POPs and arctic contamination potential(トロント大学 Frank WaniaEmission and transport of air pollutants in East Asia(国立環境研究所 大原利眞)Multimedia fate modeling of PAHs and HCHs in Tianjin, and Estimation of PAH emission in China(北京大学 陶教授)Multimedia fate modeling project of agrochemicals in NIAES, MAFF(農業環境技術研究所 小原裕三)Exposure Assessment for DEHP in Japan: A Multimedia Approach(産業技術総合研究所 内藤航)

 ワークショップには計40人ほどの参加を得て、政策的バックグラウンドの紹介や東アジア域でのモニタリングの成果、モデル専門家による講演とディスカッションを頂きました。これら講演と議論のほか、OECD専門家会合において検討・開発された長距離移動性・残留性評価多媒体モデルの実演、実習をあわせて行いました。これは、参加者に配布したベータ版のモデルを実際に参加者のPC上で実行してもらい、Scheringer教授他の指導の下でいくつかの物質の計算やデータ処理を行ってもらうもので、通常のワークショップ等ではあまり経験できない体験として好評であったように思います。なお、このベータ版に対する今回のワークショップでのコメントも踏まえ、近い将来にOECDから公式版として評価モデルがリリースされる予定になっています。
 会議では、これらのモデルの今後の活用の可能性や、今後の東アジア域における研究の可能性などについて討議して終了しました。参加者各位にはご多忙中のご参加を感謝申し上げるとともに、今後のために何かのご経験となっていれば幸いと思っております。

リスクセンター四季報 Vol.4 No.1 2006-07発行


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