国立研究開発法人 国立環境研究所
環境リスク・健康領域 Health and Environmental Risk Division
 

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リスクセンター四季報(2003-2006)より

Vol.2 No.2 (1)
政策対応型の環境リスク研究への期待

(財)産業廃棄物処理事業振興財団 専務理事〔前国立環境研究所理事〕(当時)
浜田 康敬

「(財)産業廃棄物処理事業振興財団 専務理事(当時) 浜田 康敬」の写真

 国立環境研究所の独立行政法人化に伴う新しい研究組織として,政策対応型調査研究を行う「化学物質環境リスク研究センター」が設けられることになり,私も理事の立場でその立上げを手伝うことになった。
 私自身かつて水道行政や環境行政における水質関係の基準制定作業に携わったことがあった。その時の,例えば,有害物質に関する飲料水基準制定の考え方は,毒性学的な理論に沿って,動物実験による最大無作用量に安全率などの係数を乗じて基準値を算定するというものが多かった。また,発癌性物質といわれるトリハロメタンについては,飲料水基準に初めて確率論の考え方を導入することにしたことも覚えている。
 このような基準設定に当たって常々知見不足だと感じていたのが,飲料水以外の経路からの摂取量を含めた総合的な評価,あるいは種々の物質の複合的な評価はどう考えるべきかという点であった。更に,水質に関する環境基準や排出基準については,水系からの様々な経路で人体や動植物に影響をもたらすことを考慮した総合的かつ系統的な評価を基準設定に反映する必要性を感じたものである。

 こうした課題に科学的知見を提供する研究こそが,環境リスク研究の中心となるのではないか。また,行政が適切に対策レベルを決定し,その論拠を明解に説明できるように,科学的情報を集積・体系化する――それが「政策対応型」の意図するところではないか。というのが,理事時代に自分のつたない経験から思い至ったところであった。
 変異原性やホルモン作用のある様々な化学物質による新たな環境影響も懸念されており,今まで以上に環境リスク研究の必要性は高まっている。国際的にも高い研究水準にあり,自然科学系はもとより社会科学系を含む多分野の環境研究者を擁する国立環境研究所が,化学物質の環境リスク研究に関する我が国における中核機関となるべきことは論をまたない。しかし,センターの人員だけで高い水準の研究と政策支援の業務とを両立させるには困難が多いと思う。それを実現するためにも,外に開かれた研究機関として所内外の研究者の力を結集する体制作りを目指して欲しい。
 化学物質環境リスク研究センターの皆様のご奮闘を期待したい。

リスクセンター四季報 Vol.2 No.2 2004-09発行


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