底層溶存酸素量の連続観測

掲載日:2020.8.26

新しい生活環境項目環境基準「底層溶存酸素量」

水環境の状態を表す基準としてCOD、全窒素や全リンといった生活環境項目環境基準が使用されてきました。しかし、それらの基準は主に利水目的に対応しており、生物の生息環境の優劣を必ずしも十分に表しきれていないとの懸念がありました。そこで、水生生物の生息・生育場の保全・再生といった水環境の実態をより適切に表し、かつ直感的に理解しやすい指標として、底層溶存酸素量(底層DO)が平成28年より新たな生活環境項目環境基準(表1)となりました。現在、各水域に適切な基準値を設定するための取り組みが進んでいます。

表1 底層溶存酸素量の類型及び基準値(湖底または海底から1m以内の値)

出典:環境省ホームページ
類型 水生生物が生息・再生産する場の適応性 基準値
生物1 生息段階において貧酸素耐性の低い水生生物が生息できる場を保全・再生する水域又は再生産段階において貧酸素耐性の低い水生生物が再生産できる場を保全・再生する水域 4.0mg/L以上
生物2 生息段階において貧酸素耐性の低い水生生物を除き、水生生物が生息できる場を保全・再生する水域又は再生産段階において貧酸素耐性の低い水生生物を除き、水生生物が再生産できる場を保全・再生する水域 3.0mg/L以上
生物3 生息段階において貧酸素耐性の高い水生生物が生息できる場を保全・再生する水域、再生産段階において貧酸素耐性の高い水生生物が再生産できる場を保全・再生する水域又は無生物域を解消する水域 2.0mg/L以上

底層溶存酸素量が低下する要因

琵琶湖北湖のような水深が深く(平均水深約43m)水温成層が冬季の循環期まで続く湖では、底層DOは秋から冬にかけて最も低くなります。琵琶湖北湖の湖底は年間を通じて水温が7~9℃とほぼ一定で、水温成層形成期間中は水の上下混合もほとんど起きません。そのため、底層DOは秋に向けて徐々に低下し、10~12月に最も低くなる傾向にあります。

一方、水深の浅い琵琶湖南湖(平均水深約4m)のような湖においては、底層DO低下の多くは夏季に観測されます。夏季には時に風の弱い期間、水温成層によって、湖水の上下混合が妨げられ、底層に酸素が供給されづらくなります。溶存酸素は微生物が有機物を消費する際に使用されるほか、底泥から溶出する還元性の鉄やマンガン、硫化水素の酸化に使われることによっても減少します。これらの現象は、水温上昇によって活発化するため、夏季は底層DOの低下が起こりやすくなります。しかし、琵琶湖北湖のような水深の深い湖とは異なり、風による湖水の鉛直混合、植物プランクトンや水草の光合成によって底層DOの回復も起こります。

底層溶存酸素量が低下したときの水環境への影響

底層DOが低下すると、底層を利用する水生生物は呼吸ができず生息困難になり、最悪の場合、底生生物の大量死につながる可能性もあります。加えて、底質から栄養塩が溶出し、それが表層に供給されると植物プランクトンの異常発生(アオコ)による、水質の悪化や水道水のかび臭などの環境問題を引き起こす懸念もあります。2019年、琵琶湖北湖では気候変動の影響と考えられる全層循環の未完了が初めて確認されており、2020年にも2年続けて未完了となりました。全層循環の未完了が要因のひとつとなって底層DOがより低下することによる底生生物や水質への影響が懸念されています。

琵琶湖南湖における底層DOの連続観測

琵琶湖分室では、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターと共同で、琵琶湖南湖の水生生物保全環境基準点2地点(図1)で底層DOの連続観測を行っています。水深が浅い琵琶湖南湖の底層DOは風、気温、微生物活動、湖流や水位などの変化による影響を受けやすく、大きな日変動を示します。そのため、月1回といった従来の環境調査では底層DOの状況を正確にとらえられない可能性がありました。そこで、琵琶湖分室ではロガー(連続でDOを観測する機器:図2)を調査地点に設置して、24時間、15分間隔で底層DOを測定し、琵琶湖南湖の底層DOの状況をモニタリングしています(図3)。

図1 ロガー設置地点
図1 ロガー設置地点
図1 湖底に設置されたロガーの様子
図2 湖底に設置されたロガーの様子
図3 唐崎沖中央の底層DO(R2年度). ※グラフの表示範囲は右上のメニューより操作可能

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