在来コイ科魚類の産着卵調査

掲載日:2020.4.1

減少する琵琶湖固有の魚

 琵琶湖には,ホンモロコ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、在来コイなど、琵琶湖固有の、あるいは琵琶湖にしか残存していない淡水魚が生息しています。これらの魚類は、鮒ずしなど滋賀県の伝統的な食文化を支える食材としても重要ですが、1980-90年代以降、漁獲量が激減しており、現在では環境省のレッドリストや滋賀県版レッドデータブックに掲載されるまで減少しています(図1)。

琵琶湖の主要なコイ科魚類の漁獲量の変遷
図1 琵琶湖の主要なコイ科魚類の漁獲量の変遷

 減少の原因としては、オオクチバスなど魚食性外来魚の蔓延とともに、産卵回遊を阻害する土地改変人為的な水位調節が大きな要因と考えられています。これらの魚種はいずれも琵琶湖沖合の深場で越冬しますが、春になると産卵のために沿岸や内湖に移動し、これらの場所にある植物に卵を産み付けます。以前はさらに、河川・水路を通じて水田にまで遡上し産卵していましたが、1970年代から始まった湖岸堤の建設や圃場整備以降は、湖岸の産卵適地は大幅に減少し、また、水田や内湖へ侵入することが非常に難しくなっています。現在の産卵可能な場所は、湖岸堤の本湖側に残された植生帯や、新たに造成されたヨシ帯、琵琶湖に流入する河川や排水路、および一部の内湖に限られています(図2)。

湖岸堤建設と圃場整備による主要なコイ科魚類の産卵場の変化
図2 湖岸堤建設と圃場整備による主要なコイ科魚類の産卵場の変化

琵琶湖分室での取り組み

 このような状況の中で各魚種の産卵場所を効率的に保全・再生していくためには、現在利用されている湖岸の植生帯や河川・排水路が、各魚種によってどのように利用されているかを知ることがまず必要です。そこで琵琶湖分室では、調査地に定めた湖岸植生帯と河川・排水路において、春から夏の産卵シーズンを通して植物に産みつけられた卵(図3)を採集し、これらをDNA種同定することによって、魚種ごとの産卵傾向の違い(産卵時期や選好環境の違い)を調べています

植物に産み付けられたコイ・フナ類の卵
図3 植物に産み付けられたコイ・フナ類の卵

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