研究概要
掲載日:2020.6.5
これまでの湖沼環境研究への取り組み
国立環境研究所では、1977年から継続している霞ヶ浦長期モニタリングを共通のプラットフォームとして、有害藻類の発生機構の解明、富栄養化防止に関する研究、難分解性溶存有機物の研究、底泥からの栄養塩溶出機構の解明、生物多様性評価に関する研究、生態系の保全、再生、管理に関する研究を実施してきました。 また、摩周湖、十和田湖、琵琶湖、釧路湿原東部湖沼など日本全国の湖沼をフィールドとして、湖沼環境研究を進めてきました。
琵琶湖分室で取り組む湖沼環境研究
国立環境研究所琵琶湖分室は、地域環境保全領域と生物多様性領域が共同管理する研究室で、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター内に設置されています。 琵琶湖分室では、国民的資産である琵琶湖の保全及び再生のために、水質・底質・生態系を見渡した総合的な研究を行います。国立環境研究所のネットワークを活用し、霞ヶ浦との比較研究を皮切りに、全国の湖沼を対象とした研究に発展させるとともに、地元大学・企業等との連携によって、研究成果の活用・実用化を図る地方創生プロジェクトに参加し、湖沼のもたらす恩恵を将来的に享受できる社会の実現を目指します。
1. 健全な水環境保全のための水質・湖底環境に関する研究
1-1 有機物収支に関する研究
湖内の有機物質収支を把握して生態系に配慮した栄養塩や有機物の管理を行うため、その基盤となる琵琶湖における一次生産や細菌生産、動物プランクトンの生産等を測定して、将来の生態系モデルの高度化のための各生物間の関係性を把握します。
溶存有機物の分子サイズの測定
基礎生産速度をリアルタイムで知る
1-2 底泥環境の評価と底泥溶出に関する研究
水質や生態系に多大な影響を及ぼす湖底泥について、新たな底泥解析手法を導入し、湖底泥・間隙水の成分分析、底泥酸素要求量や底泥溶出の評価手法を検討します。
底層溶存酸素量の連続観測
2. 湖沼生態系の評価と管理・再生に関する研究
2-1 生物多様性・生態系の保全・管理・再生手法に関する研究
在来魚の資源回復を目標とし、好適な産卵・生育場所が備える生物・物理的な環境条件を解明します。卵から成魚の分布データと、地形を含む環境因子との関連を、過去のデータも活用しながら検討し、保全策の立案につなげます。
在来コイ科魚類の産着卵調査
琵琶湖のコイの生態調査
2-2 生態系評価・予測のためのモニタリング手法の検討
採集された魚卵や稚魚、プランクトンやベントス等の種同定を正確に行うため、各生物群のDNAバーコードデータを充実させるとともに、採集地点をマッピングする際の精密な植生・地形図を、ドローン等を利用して効率的に作成する方法を開発しています。環境DNAの有効性を検証するため、観察・採集に基づく実際の分布データとの比較も行っています。
沈水植物群落の監視手法に関する研究
研究成果の活用と実用化
3者連携による琵琶湖の保全
平成29年2月17日、環境省、滋賀県、国立環境研究所の3者が、「湖沼環境研究分野の研究連携拠点における連携協力に関する実施協定」を締結しました。3者は、拠点における取り組みから得られた成果の発信などを行い、成果の活用・実用化を促進させるため、次の項目について連携・協力します。
しが水環境ビジネス推進フォーラム研究・技術分科会
平成29年1月31日、「しが水環境ビジネス推進フォーラム」と連携して、企業、大学、滋賀県関係行政部局や研究機関、関連市町、国立環境研究所琵琶湖分室等が参画する、しが水環境ビジネス推進フォーラムの「研究・技術分科会」を立ち上げました。産・学・官連携により、研究成果の活用・実用化を推進します。