琵琶湖と接続する湖岸ビオトープにおけるギンブナの産卵回帰行動の初記録
テレメトリと産卵調査による確認事例

論文情報

タイトル:The first record of spawning-season homing of gin-buna crucian carp Carassius sp. to a lakeside biotope connected to Lake Biwa confirmed via acoustic telemetry and egg surveys.

著者:Yoshida M.A., Nishida K., Mabuchi K. (太字で示した著者は国立環境研究所所属)

雑誌:Ichthyological Research. 70(1), 1-20

掲載日:2022年9月6日受理, 2022年9月29日オンライン掲載

概要

ギンブナは日本全国の湖沼や河川に広く分布するコイ科魚類です。しかし、琵琶湖では個体数の減少が懸念されており、滋賀県のレッドリストでは「要注目種」に指定されています。本研究では、本種の産卵生態に関する情報不足を補うため、琵琶湖と直接つながるビオトープ池(図1)において産卵調査および音響テレメトリ調査を行いました。ビオトープ内で採集した産着卵のDNA解析により、2019年および2020年の3–4月にビオトープ内での本種の産卵が確認されました。また、2019年10月にビオトープ内で採捕したギンブナ3個体に超音波発信機を装着して湖内に放流したところ、そのうち1個体(図2)が翌2020年3月に同ビオトープに回帰・遡上していました。以上の結果から、ギンブナの少なくとも一部の個体が、複数年にわたって同ビオトープを産卵場として利用していると考えられます。

図の説明
図1. 滋賀県草津市の湖岸に整備された新浜ビオトープ(管理者:水資源機構琵琶湖開発総合管理所)。
ビオトープの池は細い水路(写真右下)で琵琶湖とつながっており、春から夏にかけてさまざまな魚類が産卵のために遡上する。

図の説明
図2.新浜ビオトープに産卵のため遡上したギンブナ。
写真の個体(個体番号:F023)は2020年10月にビオトープの池内で採捕され、超音波発信機の装着後に琵琶湖に戻されたが、翌2021年3月(次の産卵期)にビオトープに再び遡上した。