s-8 logo温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究

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研究内容

S-8-1(3) 気候変動による水資源への影響評価と
適応策に関する研究

 国立大学法人東京大学

 水資源分野におけるボトムアップ型モデルとトップダウン型モデルを開発し、比較・評価並びに統合化することで、温暖化とそれに対する適応策の評価を高精度化することを目的とする。そのため、水源2、水利用2の合計4つのサブグループが、ボトムアップ型モデルの高精度化を進めるとともに、専らトップダウン型モデルを開発するサブグループを1つ設けることとする。

① 水循環評価に関する研究
衛星観測データ及び現地観測データを用いたわが国の全国的な水文・気候学的変動把握を通じて、異なる流域スケールでの降雨の時空間分布、洪水や渇水の外力となる水文・水質・土砂生産量の変化といった水利用・水災害に直結する項目について、特に、日本の異なる地域を対象として定量的に、その精度も含めて明らかにする。
既存の地域スケールを対象とした水循環・水環境・土砂解析モデルの日本域への拡張及び統合化を行う(ボトムアップ型モデルのバージョンアップ)。
高精度・高解像度の最新の気候モデルや影響評価・予測モデルを利用して、複数の気候予測結果に基づく全国レベルでの流況や陸水の水質の年々変動、土砂生産量の確率的影響予測手法を開発する。以上の信頼度・脆弱度等について分析し、被害想定班への情報提供を行うとともに、わが国の持続可能な水政策・適応策の立案までを行う。

② 水源における水質影響評価
水源(ダム湖)の水質に関わるデータを収集、整理する。また個別のダム湖における現地調査を実施する。
ダム湖の水質の影響評価のための数値解析モデルを構築する。将来の気候シナリオに基づいて、水文条件等の変化による水質変化を検討し,全国的な水源水質の影響評価を実施する。

③ 小規模水供給システムへの影響評価
小規模水道の水源となっている河川、地下水などのデータを収集し、近年の気温上昇と水質変動との関連性について解析を行う。貯水槽水道の実態把握のため、厚生労働省や各都道府県のデータなどの入手・解析とともに、水道事業体等にヒアリングを行う。また、島嶼部の水供給についての情報を収集する。
小規模水道を対象とした現地調査を行い、水源、浄水、配水などの過程で温暖化等の影響を受けやすい部分を抽出し、温暖化対応の可否及び対応方法、その費用について調査する。貯水槽水道については、特に温暖化の影響を受けやすい形態について、実態調査する。
小規模水道及び貯水槽水道における気候変動(温暖化)による被害を全国レベルでまとめ、予測の精度を高めるとともに、総括班からの情報をもとに複数の安定化シナリオに基づいて、被害予測を行う。トップダウンモデルによる予測結果との比較を行い、予測の精度を高めるとともに、水資源に関する総合的な予測を行う。

④ 大都市における水道への影響評価に関する研究
大都市における水利用の長期的動向を明らかにするとともに、気温と水需要量、原水水質と薬品・エネルギー使用量との関係を明らかにする。水需要や薬品・エネルギー使用量と気温以外の気象条件との関連性について検証を行う。様々なシナリオによる都市用水需要変化や、水道事業における薬品・エネルギー使用量変化を評価できるモデルを開発する。全国の都市を対象として評価を行い、地域性、サイズファクター等の影響など明らかにする。
大規模水道事業体における主要な基幹設備や管路幹線の情報を収集・整理し、未整備地域でも容易に整備できる手法を検討する。気候変動シナリオに基づいた水道システムへの影響シナリオを提示する。洪水氾濫被害の予測から洪水リスクに脆弱な地区を抽出する手法を開発する。大都市の水道施設への被害を予測するモデルを開発する。洪水被害予測から水道関連施設への被害を予測し、断水日数や復旧費用などを推定する。総括班提示のシナリオに基づいた被害予測を行い、トップダウン型モデルとの整合をはかる。代替水源や連絡管の有無など被害軽減策を組み込んで評価できる水道施設被害予測モデルの拡張を行う。
開発したモデルの信頼性や適用範囲を明らかにする。温暖化による大都市の水道への影響を総合的に評価する手法を確立し、被害軽減するための判断手順や、結果に基づく適応策の提案を行う。トップダウン型モデルによる影響評価との比較・整合を図り、他班と連携した総合的影響評価を行う。

⑤ 影響評価のためのトップダウン型モデルの開発
総括研究班と連携しながら、地方自治体の人口、土地利用、気候、水資源、水利用に関する各種情報を集めてデータベースを構築するとともに、自治体の類型化の作業を行う。地域類型ごとに水利用への影響を評価するうえで重要となる因子を明らかにし、それらの因子を用いた影響評価手法の構築を行い、地域類型ごとの気候変動による被害の変動量や効果的な適応策について検討を行う。総括研究班から提供される複数の気候変動の予測シナリオや適応策シナリオの解析を行い、全国における被害や適応による被害回避量を予測するとともに、他のサブテーマによる成果との比較を通して、トップダウン型モデルの改良・精緻化を行う。

 

グループメンバー(*:課題リーダー)

水循環評価に関する研究
氏名
所属機関・部署
沖 大幹 東京大学 生産技術研究所
守利 悟朗 東京大学 生産技術研究所
水源における水質影響評価
氏名
所属機関・部署
梅田 信 東北大学 大学院工学研究科
小規模水供給システムへの影響評価
氏名
所属機関・部署
*滝沢 智 東京大学大学院 工学系研究科
小熊 久美子 東京大学大学院 工学系研究科
酒井 宏治 東京大学大学院 工学系研究科
渡辺 直子 東京大学大学院 工学系研究科
大都市における水道への影響評価に関する研究
氏名
所属機関・部署
秋葉 道宏 国立保健医療科学院 水道工学部
小坂 浩司 国立保健医療科学院 水道工学部
山田 俊郎 岐阜大学 工学部 社会基盤工学科
影響評価のためのトップダウン型モデルの開発
氏名
所属機関・部署
荒巻 俊也 東洋大学 国際地域学部