国立環境研究所(国環研)は、最新の研究成果を広く一般の皆さまにお伝えするため、1998年6月から毎年「公開シンポジウム」を開催しています。毎回異なるテーマを設定し、テーマに沿った講演やポスター発表などを実施しています。
2026年7月20日に開催した公開シンポジウム2026では、「聴いてわかる環境研究の今、知ってかわる私たちの未来」と題し、第1部では4題の講演とパネルディスカッションを、第2部では13題の研究課題のポスター発表を行いました。
当日は約300名の皆さまに、大変暑い中ご参加いただきました。スタッフ一同、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
開会では、大島義人理事長より、近年深刻化する酷暑や気候変動などの環境問題について触れながら、シンポジウム開催にあたっての挨拶を行いました。国環研のこれまでの歩みや、地球環境、資源循環、生物多様性など幅広い環境課題に取り組む研究活動について紹介しました。さらに、本シンポジウムでは環境問題を「じぶんごと」として捉えてもらうことを目的に、講演やパネルディスカッションを通じて分かりやすく情報発信を行うとの説明をしました。
講演では、「気候変動が部活動に与える影響」「首都圏のCO2排出量推定」「PFASのごみ」「水の安全性」など、社会的関心の高い課題について、最前線で活躍する国環研の研究者たちが、その研究活動をわかりやすく紹介しました。
総合司会は、俳優かつサイエンスコミュニケーターとしても活躍する佐伯恵太さんに務めていただきました。会場との双方向のコミュニケーションを意識したやり取りを交えながら、会を進行することができました。
「講演資料」および講演の様子を収めた「アーカイブ動画」(※一部を除く)は、公開シンポジウム2026特設サイトに掲載しております。当日ご参加いただけなかった皆さまにも、ぜひご覧いただければ幸いです。
【将来の暑さが学校活動やスポーツに与える影響とその備え】(気候変動適応センター 大山 剛弘)
気候変動の影響により、日本の暑さは今後さらに厳しくなると考えられています。自身も熱中症を経験したことがあるという大山剛弘研究員は、学校での部活動やスポーツ活動にどのような影響が及ぶのかについて、その予測結果を紹介しました。スポーツの種類や全国の地域ごとの違いに着目しながら影響の違いを示すとともに、暑さへの適応方法について、活動スケジュールの見直しなどの観点から具体的な提案を交えて解説しました。そして今後、これまでの「当たり前」にとらわれることなく、柔軟に対応していく必要性を伝えました。
【首都圏における CO2濃度観測による CO2 排出量の逆推定】(地球システム領域 大山 博史)
温暖化の原因と考えられている温室効果ガス。そのうち、人間活動に伴う二酸化炭素やメタンの排出量の多くを都市部が占めていることから、都市部の排出量を正確に把握することが重要になっています。大山博史主幹研究員は、首都圏で取得した大気中の温室効果ガス濃度の観測データから、二酸化炭素の排出量を推定する方法と、その結果について紹介しました。
また、自身もデータ解析に携わっている、愛称「いぶきGW」として知られる温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)についても紹介しました。GOSATシリーズの3号機となるGOSAT-GWでは、従来の「点」での観測から、「面」での観測が可能となり、より詳細なデータが取得できるようになったことから、最新の衛星データを活用した今後の解析の展望についても解説しました。
【PFAS(ピーファス)の“ごみ”に立ち向かう】(資源循環領域 松神 秀徳)
私たちの暮らしに役立つものとして利用されてきた、有機フッ素化合物(PFAS)と呼ばれる化学物質。しかし現在では、その一部に環境中で分解されにくく、健康への影響が懸念されるものがあることが分かってきました。そのため、これらを含む廃棄物については、適切に回収・処理することが求められています。松神主幹研究員は、特定のPFASを含む廃棄物に関する課題を例に挙げながら、それらをどのように管理していくべきかについて紹介しました。PFASは製品の利便性向上に貢献する一方で、安全性との両立が課題となっています。講演では、PFASが必須ではないものから代替技術の開発が進められていることにも触れ、脱PFASに向けた現在の状況について解説しました。
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【水の安全をまもる—水源の環境と水をきれいにする技術!】(環境リスク・健康領域 浅見 真理)
普段、何気なく利用している水道水。浅見上級主席研究員は、つくば市の水道水が霞ヶ浦を水源としていることや、浄水場でどのような処理が行われているのかについて講演しました。講演では、においの原因となるアオコへの対応や、関西で発生した河川の水が青く変色した水質事故の原因究明などについて、具体的な事例を交えながら解説しました。
自身も防災士の資格を持つ浅見さんは、講演の最後に、水に関する災害時の対応についても紹介しました。私たちの生活を支える水の大切さを改めて実感する機会となりました。質疑応答では、小学生から浄水場での処理に関して、するどい質問が寄せられ研究者が驚く場面もありました。
4題の講演の後は、「環境問題を自分の未来と結びつけて理解すること『じぶんごと化』するための工夫や取組について」と題したパネルディスカッションを行いました。この内容は、後編でじっくりとご紹介します。
第1部は、三枝理事の閉会挨拶で幕を閉じました。挨拶では、前半の講演や、後半のパネルディスカッションを振り返り、環境問題をじぶんごととして捉えることの重要性について活発な議論が行われたことが紹介されました。また、研究所の取り組みとして、循環経済(サーキュラーエコノミー)の加速、生物多様性の保全、脱炭素社会に向けたシステムチェンジといった研究プログラムを推進していることが紹介されました。最後に、環境研究の最前線で議論されている課題について、このシンポジウムでの講演やパネルディスカッションを通して参加者と共有し、深く議論できたことについての感謝の言葉が述べられました。
第2部は会場ロビーにてポスター発表や展示ブースを開催しました。「ナノプラスチックによる影響」「コンクリートの脱炭素化」「若者の地球温暖化への関心や危機感」など、13題の研究テーマによるポスターを掲示しました。展示ブースでは、GOSAT-GWの模型展示や温室効果ガス観測を担うGOSATシリーズの紹介、「カーボンニュートラル」に関するシールアンケートなどを行いました。立ち寄ってくださった参加者と対話し、活発な交流が行われました。
※公開シンポジウム2026開催報告【後編】はこちら