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公開シンポジウム2026開催報告【後編】

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2026/10/056分で読めます

#シンポジウム #レポート

第1部では、前半に4題の講演を行い、後半にはパネルディスカッションを開催しました。パネルディスカッションでは、「環境問題を自分の未来と結びつけて理解すること『じぶんごと化』するための工夫や取組について」と題し、近隣の中学校や高等学校の先生方をお招きして、研究者とともに、次世代を担う生徒たちが環境問題を自分の未来と結びつけて理解すること(じぶんごと化)の重要性や、そのための工夫や取り組みについて語り合いました。
開催報告【後編】では、開催準備から携わった筆者のコミュニケーター・渡邉の印象も交えながら、パネルディスカッションの発言内容を一部取り上げる形で紹介します。

※公開シンポジウム2026開催報告【前編】はこちら

パネルディスカッションの様子の写真
パネルディスカッションの様子

<パネリスト>※写真左から順に記載。敬称略、所属などは2026年7月当時
・俳優・サイエンスコミュニケーター 佐伯 恵太(モデレータを担当)
・翠輝学園つくば市立みどりの南中学校 玉中 加奈子(音楽の教員)
・茗渓学園中学校高等学校 松本 遼斗(理科の教員)
・茨城県立並木中等教育学校  吉村 大介(化学の教員、SSH、課題研究を担当)
・気候変動適応センター 大山 剛弘
・環境リスク・健康領域 浅見 真理

質問1:学校では生徒は環境問題を学ぶどのような機会がありますか?
その際、生徒はどのような点から環境問題へ関心を持ちますか?

みどりの南中・玉中:本校では昨年度、総合的な学習の時間で、環境をテーマにした探究活動を行いました。中学校1年生から3年生を縦割りに混ぜたような5人ぐらいの班を作り、活動を行いました。学校の近くの川にいる生き物の生態について調べるなど、生徒それぞれで、さまざまな角度から環境問題について疑問を見つけて活動に取り組んでいました。

質問に答える玉中加奈子先生の写真
質問に答える玉中加奈子先生

茗溪学園・松本:中1から高3までの6年間で、体系的に環境に何か取り組めるような、学べるようなものがあるか、と言われると少し弱いかな、という印象です。一方で、高校2年生のときに個人課題研究といいまして、全生徒が一人ひとり自分のテーマに沿って、一つのまとめを書き上げるというような環境活動を毎年長々と行っています。一定数、必ず環境問題をテーマにして取り組む生徒がおります。

並木中等・吉村:子どもたちが、まず知ること、インプットの部分はとても大切だと思うんです。5-6年前あたりで、総合的な学習時間と社会科の時間などで、環境問題、特に地球温暖化を扱っていたと思います。ですが、ここ数年で地球温暖化について学校で語られる機会が減ったのではないかと私は実感しております。これは問題が複雑化しているんじゃないかと考えています。何が正解かが分からない時代になってきた、経済や政治の面から多面的に考えて地球温暖化を話さないといけない、というところから、教員が地球温暖化について語ることが簡単でなくなった時代になってきたのかなと思います。

司会・佐伯:重要な論点ありがとうございます。最後にお話しいただいた点ですが、理想を語るフェーズから社会実装のフェーズに進んでいく中で、正しい知見を学んでいくということも重要になってきているのかなと感じました。こちらは2つ目の質問で話を深めたいと思います。
松本さんの学校では、かなり主体的に環境問題を取り組んでいる生徒さんがいらっしゃるようですが、一方で全員が全員そうでもないかなと思っております。そのあたりの主体性の違いですとか、どういった生徒さんがより興味を持ちやすいとか、傾向はいかがでしょうか。

松本:全員が全員ではないんですけれども、例えば、もともと生物が好きです、という生徒がいた場合、生物でいろんなことを調べて、いろんな場所に生物採集に行って、という経験をしています。その中で、「最近、採っちゃいけない生物がいるらしいよ」となったときに、「えっなんで?」「あっこんな問題起きているのか。じゃあ、それ、なんとかしなきゃ」という気付きにつながる。つまり、1段階前にそれに関連する分野について、もともと興味を持っているというきっかけがあると、より主体的に目的意識を持って取り組みやすい傾向はあるのかな、と感じています。

佐伯:なるほど。その第一歩が必ずしも環境問題のど真ん中ということじゃなくても、何かしらでつながって興味が連鎖していくということだと思いました。では、ここからは研究者チームのお二方にも加わっていただき、一緒にお話ししたいと思います。

質問2:生徒が自分を中心に環境問題を考え(じぶんごと化)、環境と自分の未来とのつながりに関心を持ってもらうには、教育者と研究者は何をすべきですか?

研究者・大山:まず、「じぶんごと化」に関する自分の経験として、なんで私が熱中症に興味を持つようになったのかなっていうことを考えると、高校のときに私は陸上部だったんですけれども、すごく暑い中を毎日走っていて、熱中症に何回かなってしまいまして、すごく辛かったんです。1週間、2週間くらい体の倦けん怠感が抜けないし、頭が働かないし。一旦、大学院を出た後に、環境とは離れた仕事をしていたんですが、あるときスイッチが入ってですね、9年目くらいで、やっぱり環境とか熱中症の研究をしたいなと思い、現在に至ります。

※大山剛弘さんの講演についてはこちら
 公開シンポジウム2026「将来の暑さが学校活動やスポーツに与える影響とその備え」

研究者・浅見:研究者の役割という質問についてですが、自分たちが研究活動で分かったことをなるべくお話しするというのもありますし、現象を可視化するというところが非常にポイントかなと思っています。研究で分かった知見を皆さんに見ていただいて、考えていただく材料を提供する、また将来予測ができる場合にはそれを示すというのが役割かなと思っています。

※浅見真理さんの講演についてはこちら
 公開シンポジウム2026「水の安全をまもる—水源の環境と水をきれいにする技術!」

佐伯:それでは、教育者としてはこんなことできるんじゃないか、というまず所感のところ、玉中さんからお伺いできますでしょうか。

玉中:「じぶんごと化」というところですが、生成AI情報の取り扱いについてです。学校でも、それらを使って活動した班がありました。その際に課題に感じたのは、生成AIの情報の信憑ぴょう性の判断です。本当に正しいのか、教える側が正しいかどうかの下調べが必要かなと感じました。

佐伯:せっかくなので会場の皆様にお伺いします。生成AIにはいろいろありますが、普段から割と使うよ、という方はどれくらいいますか?挙手でお願いいたします。(半数が挙手)結構いますね。ありがとうございます。科学リテラシー、真偽の判断、使うツールを考えていくという点も大事ですね。

会場で挙手をする参加者
会場で挙手をする参加者

松本:教員が生徒にできることとして、きっかけを作ってあげることなのかなと考えています。皆さん、中高時代に学校の先生が言っていたことをどれぐらい思い出せるでしょうか。普段の授業で伝えたものが、数年後もその生徒の中に残っているかというと、なかなか難しいのが現実だと思います。一方で、実物を実際に見る機会をどれだけ作れるかというところは非常に重要かなと考えております。例えば学校という特性を生かして社会科見学のときなどに、そういう現場を見せる時間を30分でいいから作ることで、座学をはるかに超えるインパクトを生徒に残せるんじゃないかな、と思います。

吉村:質問2で思うことは、学校教育で地球温暖化をはじめとする環境問題を扱っていくためには、科学の側面に加えて経済とか政治の面に実装していく段階にあるため、もう一回大人が考え、議論し、再定義し、整理する必要があるのかな、と考えております。

佐伯:私も、サイエンスコミュニケーターを名乗っていて、科学と社会をつなぐという役割を担っている人間ですが、社会実装のときには、科学だけでは解決できないいろいろな複雑な問題が関わってくる。そこでの当事者は、専門家、研究者、教育者だけではないと思います。研究者や学校の先生、大人が考えて解決してくれるわけでもないものですよね。この会場にもいろいろな立場の方がいると思いますし、いろいろな専門性を持ち寄ることは大事ですね。若い世代の皆さんは、自分の未来に関わるので「自分の世代まで良い環境を保ちたい」と思うことで、より「じぶんごと化」して考えていきたいですね。研究者の立場で、先生方に伝えたいことはありますか?浅見さん。

浅見:絶対にこれは正しくて、これは間違いということを言えない問題もありますよね。どこでバランスを取るのか。我々は「トレードオフ」って呼んでいるんですが、良いことと悪いことをある程度のバランスを取って選択していく。第1部の前半で、PFAS(ピーファス)の講演がありましたけれども、すごく役に立つ物質で、火事の際、火を消す物質として命を守るために必要だということで使われてきた。しかし、もっと濃度を下げて管理しなきゃいけないということになり、使用にはある程度のバランスが必要というような議論が発生しました。このトレードオフというのは研究者も考えていかないといけないですし、それを分かりやすく伝えるというのは非常に重要なことだなと思います。

議論が深まってきた後半の様子の写真
議論が深まってきた後半の様子

大山:今日の講演の中でも、いろいろな実測のデータは、何十年も蓄積してきたデータを使って研究してきています。その中で、これは(リスクが)ゼロです、これは1です、これはフェイクですとか、といった判断は簡単には言えない。例えば体育館の授業で、WGBT(暑さ指数)31だったら全部の活動をやめればいいのかというと、多分そうではない。全てやめてしまうまでに、いろんな良い妥協点があるはずだと思います。そういう対策を論文に書くだけじゃなく、いろいろな機会で研究者の側も積極的に発信していく、それを世の中の人と議論していくということが重要だと思いました。

佐伯:まだまだ論点はありそうですが、自分ごとの重要性、少し伝わりましたでしょうか。というわけで、今日を出発点に皆さまと一緒に考えていければ、と思います。ありがとうございました。

パネルディスカッションの企画コーディネートに携わって(コミュニケーター・渡邉):

今年のパネルディスカッションの企画は、公開シンポジウム2026事務局から、「環境問題のじぶんごと化」をキーワードに、「学校教員を招いて実施したい」という提案があったことから始まりました。
この企画には、現在の大人たちが環境問題に関するさまざまな社会課題に対して、日々選択を行っている一方で、気候変動問題などについては、その選択が将来世代を担う現在の中高生の未来に大きな影響を及ぼすこと、数年後には取り返しのつかない状況を招く可能性もあることに気づいてほしい、という思いが込められていました(参考1)。
今回のパネルディスカッションが実現して、近年の学校活動の実態を知ることができました。また、先生方のお話から、一人1台のPCや生成AIが活用される時代においても、実体験が果たす役割の重要性を改めて感じる機会となりました。
学校現場では、中学校や高等学校における総合的な学習や探究の時間を通じて、生徒が自ら課題を設定し、探究のプロセスを通して主体的に学んでいると伺いました。そのような活動において、先生方は生徒に寄り添いながら、学びを支える伴走者としての役割を担っているのだと感じました(参考2)。
こうした取り組みは、教員や研究者だけが担うものではないとも感じました。研究所や地域社会、そして私たち一人ひとりにも、じぶんごと化を促し、考えることを支援できる役割があるのではないでしょうか。研究者は、科学知見を社会に発信し、人々が判断するための材料を提供しています。その情報をもとに、さまざまな社会変革の提案がなされ、一人ひとりがどのような社会を望むのかを考えながら選択を重ねることで、現在の暮らしや社会が形づくられています。
そもそも、「じぶんごと化」とは、私たち一人ひとりが社会の一員として、目の前の課題をどのように捉え、どのような選択をしていくのかを考えることなのだと思います。最後に、吉村先生がおっしゃった「自分自身がじぶんごと化して答えられるように、もっと勉強していかないといけない」という言葉が、とても印象に残りました。
ご参加いただいた皆さま、そしてこの記事をご覧いただいた皆さまにとって、本記事が少しでも環境問題について考えるきっかけとなれば幸いです。

関連リンク:
(参考1)公開シンポジウム2026ポスター10「若者の地球温暖化問題への関心や危機感は高い?低い?」
https://symposium.nies.go.jp/2026/poster.html
(参考2)文部科学省「総合的な学習(探究)の時間」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/main14_a2.html

   
公開シンポジウム2026 セミナー分科会事務局
講演ワーキンググループ/社会対話・協働推進係 コミュニケーター 渡邉陽子 渡邉陽子の写真
※執筆当時

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