ゲノム・遺伝子解析研究について

エコチル調査ゲノム・遺伝子解析計画改定のお知らせ

平素より、エコチル調査にご協力いただきありがとうございます。このたび、皆さまにご協力いただいているエコチル調査ゲノム・遺伝子解析計画を改定することとなりましたので、お知らせいたします。今回の改定は、これまでにエコチル調査でゲノム・遺伝子解析にご同意いただいている範囲に基づき、研究計画の内容をより詳しくお伝えするためのものであり、あらためて同意書をご提出いただく必要はありません。

なお、本解析は研究を目的としたものであり、病気を診断するための検査ではありません。 対象となる検体は、エコチル調査でこれまでに採取・保管されている、お母さんの血液、お父さんの血液、お子さんの臍帯血、または出産後に採取されたお子さんの血液です。これらはすでに採取された検体を用いるため、今回の改定によって新たな採血など身体的なご負担が生じることはありません。

エコチル調査では、環境中の化学物質などの環境要因が、子どもの健康・成長・発達にどのように関係するかを明らかにすることを目指しています。同じ環境にいても、体質などによって影響の受け方が違うことがあり、これには遺伝要因が関係していると考えられています。このため、環境中の化学物質の健康への影響を正確に検討するには、遺伝要因を調べる必要があります。全ゲノム配列解析を加えることで、これまで十分に調べることができなかった遺伝的な違いも含めて解析できるようになり、子どもの病気の予防、健康支援、将来の環境保健施策に役立つ知見につながることが期待されます。

本説明文書をお読み頂いた上で、ゲノム・遺伝子解析からの辞退をご希望される場合は、末尾お問い合わせにある「 協力辞退申請書」を ご所属のユニットセンターまでご提出ください。
2026年11月2日

具体的な改定点

具体的な改定点は以下の5点です。詳しい内容については、各項目の本文または末尾の「よくある質問とその回答」をご参照ください。

1)遺伝子解析を行う血液検体の追加

これまでは、ゲノム・遺伝子解析にご同意いただいた妊娠中のお母さんの血液、お父さんの血液、お子さんの臍帯血からDNAを抽出して解析を行ってきました。今回新たに出産後にいただいているお子さんの血液も対象に加えさせていただきます。 追加する理由は、おもに次の2点です。

・ゲノム・遺伝子解析にご同意いただいていたものの、臍帯血を採取できなかった、あるいは十分な量を保管できなかったお子さんについても解析できるようにするため

・生まれてから成長するにつれて変化するエピゲノムを、繰り返し測定できるようにするため

なお、これらはすでに採取・保管されている検体を用いて行うものであり、新たな採血など身体的なご負担が生じることはありません。

全てを見る
閉じる

2)新たな遺伝子解析方法(全ゲノム配列解析)の追加

これまでのゲノム・遺伝子解析計画では、DNAマイクロアレイ解析と網羅的エピゲノム解析を実施することをお伝えしてきました。今回これらに加えて、全ゲノム配列解析の実施を新たに計画しています。

全ゲノム配列解析は、DNAの情報をこれまでよりも詳しく調べる方法です。これまでのDNAマイクロアレイ解析では、あらかじめ決められた多数の遺伝的な違いを中心に調べてきましたが、全ゲノム配列解析では、DNAの塩基配列をより広く読み取ることができます。そのため、DNAマイクロアレイ解析では調べることが難しかった、まれな遺伝的な違いや、より細かな遺伝的特徴についても解析が可能となります。これにより、子どもの健康・成長・発達と環境要因との関係について、これまで以上に詳しい研究を進められると考えています。 (全ゲノム配列解析の仕組みについては「よくある質問とその回答」 もご参照ください)

なお、本解析は研究を目的としたものであり、病気を診断するための検査ではありません。 対象となる検体は、エコチル調査でこれまでに採取・保管されている、お母さんの血液、お父さんの血液、お子さんの臍帯血、または出産後に採取されたお子さんの血液です。これらはすでに採取された検体を用いるため、今回の改定によって新たな採血など身体的なご負担が生じることはありません。

エコチル調査では、環境要因と遺伝的な特徴が、子どもの健康・成長・発達にどのように関係するかを明らかにすることを目指しています。全ゲノム配列解析を加えることで、これまで十分に調べることができなかった遺伝的な違いも含めて解析できるようになり、子どもの病気の予防、健康支援、将来の環境保健施策に役立つ知見につながることが期待されます。

全てを見る
閉じる

3)全ゲノム配列解析の結果説明の体制について

結果説明の基本的な考え方は、これまでと変更ありません。 全ゲノム配列解析を実施した場合も、専門家を含む会議体を設け、適切なガイドラインや推奨を踏まえて客観的な判断を保ちながら、以下の3点を検討したうえで、結果説明の対象とする項目を決定します。

1)その遺伝情報が、健康状態などを評価するうえで十分な精度や確実性を有しているか

2)その遺伝情報が、ご本人の健康にとって重要な事実を示すものであるか

3)その遺伝情報の説明が、研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがないか

全ゲノム配列解析では多くの遺伝情報が得られますが、そのすべてをお返しするものではありません。研究で得られる情報には、現在の医学では意味を十分に判断できないものや、健康との関係が明確でないものも含まれます。そのため、結果説明にあたっては、医学的な重要性・結果の確実性・予防や治療など医学的に対応可能であるかを慎重に検討します。

結果説明の対象となる項目が決まった場合には、まず対象となる方に対して、結果を知ることを希望されるかどうかをあらためてご確認し、「結果を知りたくない」というお気持ちも尊重いたします。説明をご希望された場合には、適切なご説明を行い、医療上の対応が必要と考えられる場合には、遺伝診療を実施している医療機関にご紹介します。

全てを見る
閉じる

4)ゲノムデータの管理体制について

エコチル調査で取り扱うゲノムデータは、個人情報保護法に基づき、厳重な管理体制のもとで保管・解析されています。 近年、ゲノムデータのような重要な研究データを安全に解析するために、研究者が手元にデータをダウンロードせず、安全なサーバー上でのみ解析を行う仕組みが国際的に整備されてきています。これを「Trusted Research Environment(TRE:信頼できる研究環境)」と呼びます(詳しくは「よくある質問とその回答」 をご参照ください)。エコチル調査でも、このTREの活用を含め、ゲノムデータをより適切に管理することを検討しています。 データセキュリティは継続的な見直しが必要となるため、エコチル調査内で定めている「エコチル調査における個人情報管理に関する基本ルール」に基づき、運用体制を定期的に見直し・更新する予定です。

作成されたゲノムデータは、原則としてエコチル調査の研究目的の範囲内で利用します。研究に用いる際には、エコチル調査の定める手続きに従って研究内容や利用目的を確認したうえで、適切に管理された環境で解析を行います。現在の同意状況に基づき、企業に対して、個人のゲノムデータや個人を特定できる情報を提供することはありません。

ゲノムデータは、お一人おひとりに由来する重要な情報であり、個人の識別につながりうる情報として慎重に取り扱う必要があります。そのため、氏名などの直接個人を識別できる情報とは分けたうえで、研究用のIDを用いて管理します。また、データにアクセスできる研究者を限定し、アクセス権限の管理、利用記録の確認、データの持ち出し制限などを行い、厳重な管理体制のもとで利用します。

全てを見る
閉じる

5)今後のゲノム・遺伝子解析計画の改定のお知らせについて

エコチル調査では、これまで郵送などを通じて、研究計画や調査内容に関するお知らせをお届けしてきました。 今後、科学技術やデータ管理手法の発展にともない、新たな遺伝子解析方法や情報管理手法が開発されることが見込まれます。そのような変更が生じた際には、主にホームページを通じてみなさまにお知らせするかたちといたします。 ホームページには、現在実施しているゲノム・遺伝子解析の計画も掲載しておりますので、必要に応じてご確認いただけます。

全てを見る
閉じる

よくある質問とその回答

全ゲノム配列解析(Whole Genome Sequencing, WGS)とは

人のDNAは「A・T・C・G」という4文字でできた、約30億文字の「設計図」です。全ゲノム配列解析は、その30億文字を最初から最後まで読み取る技術で、シーケンサと呼ばれる装置を用いて行います。本にたとえると、一部のページだけを抜き読みするのではなく、全ページを通して読むイメージです。 解析のイメージは、下記サイトがわかりやすくまとまっておりますので、ご参考としてご紹介します。 
日本ゲノム医療推進機構ホームページ
https://genomicmedicinejapan.jp/

 なお、エコチル調査における解析は研究を目的としたものであり、病気を診断するための検査ではありませんので、その点はご留意ください。

エピゲノムとは

DNAの文字列そのものは生まれたときから大きく変わりませんが、その上には「ふせん」や「目印」がついており、どの遺伝子を「使う/使わない」を切り替えています。この目印の総体をエピゲノムといいます。生活習慣・環境・ストレスなどによって変化することが知られており、子どもの発達に環境要因がどのように影響するかを調べるエコチル調査では、特に重要なテーマとなります。

DNAマイクロアレイ解析とは

全ゲノム配列解析が「30億文字すべてを読む」方法であるのに対して、DNAマイクロアレイ解析は「あらかじめ決めておいた数十万〜百万か所だけ」を効率よく確認する方法です。比較的安価で短時間に多くの検体を処理できるため集団規模の研究に適していますが、調べる場所が事前に決まっているため、想定外の遺伝的な違いは見つけにくいという特徴があります。

全ゲノム配列解析の結果は、必ず教えてもらえますか?

得られた結果を、すべての方にすべてお知らせするものではありません。医学的に重要で、結果の確実性が高く、予防や治療などにつながる可能性がある情報について、専門家を含む会議体で慎重に検討いたします。そのうえで、結果説明の対象となる場合には、まずご本人が結果を知ることを希望されるかどうかを、あらためて確認させていただきます。

なぜ結果をすべての方に返さないのですか?

おもに次の4つの理由があります

(i)研究用の解析は、診療で用いる検査とは異なり、臨床検査としての精度管理を経ていません。そのため、結果をそのまま医療判断に用いることはできません。 (ii)見つかった遺伝子の変化の多くは、現時点では「意味を十分に判断できないもの(VUS)」であり、お知らせしてもご本人の役に立つ情報にならない場合があります。 (iii)知ることが、かえって不安や不利益につながる可能性もあります。遺伝情報はほかの機微な情報と同じく、保険・雇用・結婚・教育など医療以外の場面で社会的な不利益や差別につながりうるためです。 (iv)結果を返す場合には遺伝カウンセリングなどの体制が必要で、対象を「医学的に対応可能(actionable)」なものに絞る必要があります。

このように、当初の研究目的とは別に得られた、健康にとって意味を持ちうる解析結果は、偶発的所見(IF:incidental findings)または二次的所見(SF:secondary findings)と呼ばれ、その取扱いは慎重に判断されます。

なぜ「結果説明を希望するか」をわざわざ確認するのですか?

「知る権利」とならんで、「知らないでいる権利(right not to know)」があるためです。たとえば、将来発症するかもしれない病気のリスクについて「知りたくない」「家族の進路や結婚に影響させたくない」と感じる方もいらっしゃいます。返却対象となりうる所見が得られた場合に、ご本人の希望に反してお伝えしてしまうことを防ぐため、事前に意思を確認させていただきます。これは、後述の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」でも強調されている考え方です。

結果を知りたくない場合はどうなりますか?

「結果を知りたくない」というお気持ちも尊重いたします。結果説明の対象となる項目がある場合でも、説明を受けることを希望されるかどうかを事前に確認いたしますので、ご安心ください。

結果説明の判断に使われる専門家のガイドラインについて教えてください。

結果を返すかどうかを決めるにあたっては、研究者だけで判断するのではなく、専門家がつくった国内外のガイドラインを参考にしています。主なものは次のとおりです。

■日本のガイドライン

・日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2022年3月改定) 日本でもっとも基本となる文書です。遺伝情報は、保険・雇用・結婚・教育など医療以外の場面で社会的な不利益や差別につながる可能性があるため、特に注意して取り扱う必要があるとされており、本人の同意・「知る権利」「知らないでいる権利」・遺伝カウンセリングのあり方などが定められています。

・「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(旧:ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針) 研究で得た遺伝情報をどのように扱うかについての、国としての枠組みです。「提供者個人の人権の保障が、科学的または社会的な利益に優先されなければならない」ことを基本原則としています。
・AMED「ゲノム医療時代における研究のあり方に関する提言」(2020年) 研究で得られる偶発的所見・二次的所見をどのように返すかについて、倫理的・社会的な論点を整理した、日本発の提言です。

■アメリカのガイドライン(国際的にもっとも参照されるもの)

・米国医学遺伝・ゲノム学会(ACMG)「Secondary Findings リスト」最新版=SF v3.2(2023年) 世界中の研究機関で参考にされている、もっとも有名なリストです。ACMGでは、「すべての遺伝子変異を返すのではなく、返すべき遺伝子をあらかじめ絞っておく」という考え方が採用されています。選定の基準は2点あり、①病気になるリスクが高いことが科学的によく確かめられていること、②早く知ることで治療・予防につながりうること(=「医学的に対応可能 medically actionable」)です。

エコチル調査では遺伝診療は行わないのですか?

行いません。エコチル調査は「環境要因が子どもの成長・発達に与える影響を明らかにする疫学研究」であり、診療行為ではありません。遺伝学的な医療が必要と考えられる場合には、各地域の臨床遺伝専門医や遺伝診療を実施している医療機関の受診が別途必要となり、その際は適切にご紹介いたします。

Trusted Research Environment(TRE)とは

直訳すると「信頼できる研究環境」のことです。複数の研究者が、機微なデータ(遺伝情報や医療記録など)を手元にダウンロードすることなく、安全なサーバー上の専用画面でのみ解析できる仕組みを指します。データそのものは外に持ち出されず、研究者は集計後の解析結果のみを、承認を経て取り出すかたちとなります。図書館にたとえると、「閲覧はできるが、本(データ)そのものは持ち出せない」というイメージです。英国では、機微な情報を安全かつ確実に研究利用するための環境としてTREの整備が進められており、Genomics EnglandやOpenSAFELYなどが代表的な例として運用されています。

この説明を受けて、私がすることはありますか?

特別な手続きは必要ありません。「ゲノム・遺伝子解析研究」は、エコチル調査にご参加いただいた際にすでにご同意をいただいている研究であり、今回の改定もそのご同意の範囲内で、内容をより詳しくお伝えするものです。 ただし、保管試料をゲノム解析に使ってほしくない場合は、下記「協力辞退申請書」をご記入のうえ、ご所属のユニットセンターまでご提出ください。

解析の対象となるのは、だれの血液ですか?

これまでにエコチル調査で採取・保管されている、お母さんの血液、お父さんの血液、お子さんの臍帯血、または出産後に採取されたお子さんの血液です。あらためての採血など、新たな身体的なご負担は生じません。

子どもが成長した後に、自分で確認や変更をすることはできますか?

お子さんが成長された後、ご自身のゲノムデータの利用について確認したい場合は、開示請求の手続きに基づき解析した元データを取得することができます。その際は、手続き費用がかかる点と、元データのみで解釈や医学的対応はできない点をご了承ください。

ゲノムデータは企業に提供されますか?

現在いただいている同意の範囲では、企業に対して、個人のゲノムデータや個人を特定できる情報を提供することはありません。

ゲノムデータはどのように管理されますか?

ゲノムデータは、氏名などの直接個人を識別できる情報とは分けて、研究用のIDを用いて管理いたします。さらに、アクセスできる研究者を限定し、利用記録の確認やデータの持ち出し制限などを行い、厳重な管理体制のもとで保管・解析を行います。

全てを見る
閉じる

お問い合わせ

本件に関するご質問等につきましては、下記コールセンターまたは各ユニットセンター窓口までご連絡ください。

◆エコチル調査コールセンター:0120-53-5252(フリーダイヤル・受付時間9:00-22:00) 
◆ユニットセンター窓口一覧 https://www.nies.go.jp/jecs/link.html