社会・生態系システムの統合化による自然資本・生態系サービスの予測評価

戦略的研究開発領域(Ⅰ)S-15 (2016-2020年度)

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研究成果の紹介

Research Achievement

PANCESプロジェクトで得られた研究成果の一部を紹介します。このほかにも多くの成果が得られています。ポリシーブリーフ論文等発表一覧を参照してください。また、地図でみる研究成果ではいくつかの研究成果を地図の上でご覧いただけます。

将来シナリオ、シナリオ別の将来予測等

PANCESプロジェクトでは、シナリオ分析に基づき、わが国の社会についてあり得る複数の未来を描き、将来シナリオとして構築しました。また将来シナリオ別の人口や土地利用の変化の予測、自然資本や生態系サービスの予測を行っています。以下ではその一部を紹介します。

社会の4つの将来シナリオのイメージ図

・国レベルの将来シナリオに関しては、Delphi法にもとづき約100名のプロジェクト関係者を対象とした2度のWebアンケートを実施(回収率91%)し、2050年頃までのわが国を取り巻く様ざまな要因について確度と影響度を質問することで、シナリオの構成軸と基調条件を抽出した。

・将来シナリオの構成軸として第一軸(横軸)は人口、第二軸(縦軸)は社会で今後重視する資本を切り口とするもので設定し、これら2軸で構成される4つのシナリオを、「自然資本・コンパクト型社会」「自然資本・分散型社会」「人工資本・コンパクト型社会」「人工資本・分散型社会」と名づけ、その全体的なイメージ図を作成した。

シナリオ別の土地利用変化の予測

・4つの将来シナリオ(NC:自然資本コンパクト型シナリオ、ND:自然資本・分散型シナリオ、PC:人工資本・コンパクト型シナリオ、PD:人工資本・分散型シナリオ)に応じた土地利用シナリオと予測モデルを作成した。植生データから作成した土地利用データをもとにこのモデルでシナリオごとに2050年の将来予測を実施した。

・予測は500m解像度で行い、各土地利用の全国の増加a)及び消失b)を地図化した。シナリオにより土地利用の変化が異なることが予測された。

作成者:サブテーマ1-2 庄山

備考:Shoyama et al. 2019を基に高解像度化

将来シナリオに基づく生態系サービスの変化の分析(佐渡市の事例)

・住民参加型のワークショップを開催し、佐渡市民と協働で6つのシナリオを作成した。各シナリオは人口減少の速度と重視する産業の2つの面から特徴づけた。これらのシナリオに基づき、土地利用と生態系サービス(食料生産・炭素固定・水質浄化・生息地提供)についてシナリオ分析を実施した。

・佐渡全体では、生態系サービスは農業重視のシナリオにおいて高くなり、人口減少が進むと低下する傾向が見られた。本分析により、環境配慮型農業や森林管理が農業生産額や森林成長を促す効果が確認できた。

作成者:サブテーマ1-1 蒲谷

備考:Shoyama et al. 2019を基に高解像度化

シナリオ分析による農作物供給サービスの将来予測

・1993年から2015年の水稲とホウレンソウの生産量と気候条件・1998年の土地利用・2010年の人口分布のデータを用い、気候・土地利用・人口分布から水稲・ホウレンソウ供給サービスを予測するモデルを作成した。このモデルに2010年の条件および将来シナリオ(Business as usual (BAU)、自然資本・コンパクト、自然資本・分散、人工資本・コンパクト、人工資本・分散)を当てはめ、2010年から2050年の間の各シナリオの農作物供給量の変化とその要因を予測した。

・どのシナリオでも日本全国ではコメ供給サービスが減少し、その主な要因は水田の消失であると予測された。特に人工資本活用シナリオで減少が大きく、耕作放棄地への対策が必要と考えられた。一方、BAUと人工資本・分散以外のシナリオではホウレンソウ供給サービスは全国的には増加することが予測され、その主な要因は農地の増減ではなく、生産性の変化だった。

作成者: サブテーマ2-2 小黒

備考: 小黒、未発表。本研究に用いた気候データは【アメダスデータのメッシュ化プログラム Ver.5.2】(農研機構)を用いて作成しました。

地図でみる研究成果

研究成果のいくつかを地図上でみることできます。なお、各成果の詳細や二次利用等については詳細をクリックしてださい。