研究内容
S-8-1(5) 地球温暖化が日本を含む東アジアの
自然植生に及ぼす影響の定量的評価
日本および東アジアの自然植生への温暖化影響を定量的に高精度で評価することを目標とする。予測結果に基づき、温暖化に対する自然生態系の適応策(保全策)について提言を行う。対象地域に対応し、次の2つの地域に分ける。
「地域1、温暖化が日本の主要な自然植生に及ぼす影響評価」
a) 地域1では、日本を対象とし、植物分布データと環境データベースを用いて優占種など生態系の要となるキーストーン種の空間統計モデル(分布予測モデル)を構築し、潜在生育域を予測する。亜高山帯では、エゾマツ、トウヒ、ダケカンバなど、冷温帯ではミズナラ、ハルニレ、カエデ類など、中間温帯ではイヌブナ、ケヤキ、アカシデなど、暖温帯では、カシ類、シイ、タブなどを対象にする。予測精度を高めるために、(ⅰ)モデルに組み込む説明変数の種類、(ⅱ)応答変数と検証に使用する分布データ(点数、空間配置、解像度、標高)、(ⅲ)予測モデルの種類の3点について検討するとともに、分布移動を組み込んだモデルの構築を行う。キーストーン種の温暖化影響の伴う生態系の変化についても評価する。
「地域2、温暖化が東アジアの自然植生に及ぼす影響の評価」b) 地域2では、東アジアを対象とし、東アジアにおける温暖化影響予測研究ネットワークを構築し、森林生態系の優占樹種について温暖化影響予測を行う。日本以外のアジアでは、温暖化の自然生態系への影響予測研究がこれまで少なかったが、本プロジェクトを通して研究成果の発信を進めたい。植生データの蓄積のある台湾では、モミ属やツガ属など高山・亜高山帯性種を手始めに影響予測を行い、脆弱性を評価する。また、その結果は、対応する森林帯を有する日本の結果と比較する。日本と台湾にまたがって分布する樹種についても影響予測を行い、国境を越えた森林生態系の影響評価を行う。さらに、中国、韓国などとも共同研究を開始し、温暖化影響予測研究のネットワークの構築を進める。
グループメンバー(*:課題リーダー)
地球温暖化が日本を含む東アジアの自然植生に及ぼす影響の 定量的評価に関する研究 |
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氏名 |
所属機関・部署 |
*田中 信行 | 森林総合研究所 植物生態研究領域 |
松井 哲哉 | 森林総合研究所 北海道支所 |
小南 裕志 | 森林総合研究所 関西支所 |
大丸 裕武 | 森林総合研究所 水土保全研究領域 |
津山 幾太郎 | 森林総合研究所 植物生態研究領域 |
中尾 勝洋 | 森林総合研究所 植物生態研究領域 |
- 【テーマ1】
我が国全体への温暖化影響の信頼性の高い定量的評価に関する研究 - S-8-1(1) 統合評価モデルによる温暖化影響評価・適応政策に関する研究
- S-8-1(2) 温暖化ダウンスケーラの開発とその実用化
- S-8-1(3) 気候変動による水資源への影響評価と適応策に関する研究
- S-8-1(4) 沿岸・防災リスクの推定と全国リスクマップ開発
- S-8-1(5) 地球温暖化が日本を含む東アジアの自然植生に及ぼす影響の定量的評価
- S-8-1(6) 農業・食料生産における温暖化影響と適応策の広域評価
- S-8-1(7) 温暖化の健康影響-評価法の精緻化と対応策の構築-
- S-8-1(8) 媒介生物を介した感染症に及ぼす温暖化影響評価と適応政策に関する研究
- S-8-1(9) 温暖化適応政策による地域別・部門別の受益と負担の構造に関する研究
- 【テーマ2】
自治体レベルでの影響評価と総合的適応政策に関する研究 - S-8-2(1) 地域社会における温暖化影響の総合的評価と適応政策に関する研究
- S-8-2(2) 亜熱帯化先進地九州における水・土砂災害適応策の研究
- 【テーマ3】
アジア太平洋地域における脆弱性及び適応効果指標に関する研究 - S-8-3 アジア太平洋地域における脆弱性及び適応効果指標に関する研究