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わたしたちの生活・地域とSDGs(持続可能な開発目標)[福島県立須賀川創英館高校 講師派遣レポート]

須賀川創英館高校での講義

2023年5月11日、福島県立須賀川創英館高校1年生の「総合的探求の時間」において、辻岳史主任研究員(国立環境研究所 福島地域協働研究拠点 地域環境創生研究室)が『わたしたちの生活・地域とSDGs(持続可能な開発目標)』というタイトルで特別講義を行いました。

辻主任研究員の専門は社会学で、原発事故被災地域のコミュニティに関する研究、自治体の気候変動対策の研究などを中心に、SDGsに関わる研究にも取り組んでいます。
本講義は、2021年から毎年、福島地域協働研究拠点 地域環境創生研究室の研究者が講師として登壇しています。

講義を行う辻主任研究員

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新・高校1年生に授業、SDGs(持続可能な開発目標)を活かした地域づくり[福島県立須賀川創英館高校 講師派遣レポート]
SDGs(持続可能な開発目標)を活かした地域づくり[福島県立須賀川高校 講師派遣レポート]

講義では、SDGsによくある誤解として、「SDGsは環境問題なのか?」「アイコンに書いてあるメッセージがSDGsなのか?」「17個の目標が同じくらい重要なのか?」というトピックを取り上げ、解説しました。

はじめに、辻さんから「湖の環境はどの目標でしょうか?」という質問がありました。
各目標を具体化した細かい「ターゲット」まで掘り下げることで、湖の環境は目標14「海の豊かさを守ろう」ではなく、目標15「陸の豊かさも守ろう」に含まれることがわかります。
各目標は長い文章やターゲットで表現されており、アイコンだけでは目標の詳細がわからないことを強調しました。

SDGsのよくある誤解「17個やればよい?」を解説する様子

また、SDGsにおける、二律背反(トレードオフ)や相乗効果(シナジー)の重要性を説明しました。
具体的には、宮城県仙台市の小学校が女性の意見を取り入れ、災害備蓄品におむつや生理用品を入れたり、運営や相談員に女性メンバーを配置することで、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と目標11「住み続けられるまちづくりを」を同時に達成する相乗効果を生み出す例などを紹介しました。

SDGsにおける相乗効果とトレードオフの解説
SDGsの目標どうしの関係性~相乗効果とトレードオフ

最後に、生徒の皆さんに対して「須賀川市でSDGsの達成に向けて取り組むならどのような活動が考えられるか」という質問を投げかけました。
重要なポイントとして、複数の目標を同時に達成し相乗効果を生む活動や、須賀川市で実施可能な取り組みに焦点を当てるよう促しました。

講義の最後では、「地域で行われる小さなアイデアや取り組みもSDGsの目標達成に繋がること」と、「自分たちの暮らしをより良くするために、市民一人一人の取り組みが重要であること」を強調し、講義を締めくくりました。

講義を行う辻主任研究員

講義を受けて

後日頂いた感想には、
「169個のターゲットがあるから、17個の目標をやればいいのではない」
「どういったことをやればいいかわからなかったが、自分がやるべきことが数え切れないほどあることがわかった」
「連携や協力をしていくため、「地域」がとても重要である」
「SDGsのなかでも、すべての土台になる環境の課題に取り組みたい」
といったものがありました。

辻さんが伝えたかった、SDGsに関する“一般的に理解されにくい点”、“一人ひとりの取り組みが重要であること”を今回しっかりとつかんでくれたことが分かります。

体育館で講義をきく生徒たち

辻さんの授業を聞いて、どんなテーマを選び、どのような探究活動が行われるのでしょうか。 今後の探求の時間の授業で、生徒の皆さんが考えを深めることを期待しています。

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講演概要

タイトル
総合的な探究の時間 課題探究講演会〔SDGs〕
わたしたちの生活・地域とSDGs(持続可能な開発目標)
開催日
2023年5月11日(木)
対象
福島県立須賀川創英館高校 1学年

講師

辻 岳史

福島地域協働研究拠点 地域環境創生研究室 主任研究員

名古屋大学大学院環境学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て、国立環境研究所福島支部(現:福島地域協働研究拠点)に着任。専門は社会学。東日本大震災の津波被災地域(東松島市、名取市、女川町)でフィールドワークを実施して、被災地域における集団・組織間の利害調整過程を分析してきた。現在は原発事故被災地域のコミュニティに関する研究、自治体の気候変動対策の研究などに取り組んでいる。