JICA研修員11名が国立環境研究所を訪れ、各国のNDC推進に向けたトレーニングの一環として、統合評価モデルAIMを学びました

2023.7.10

 国立環境研究所社会システム領域は7月7日、国際協力機構(JICA)が実施する「国が決定する貢献(NDC)推進のための能力開発」に参加する研修員11名(出身国は、インド、バングラデシュ、ドミニカ共和国、マダガスカル、モザンビーク、フィリピン、セネガル、ソマリア、タジキスタン、ベトナム、ザンビア)を研究所にお迎えし、アジア太平洋統合評価モデル(AIM:Asia-Pacific Integrated Model)をNDCの更新や気候変動対策に役立ててもらうための研修を実施しました。

(写真1) 11カ国からのJICA研修員を歓迎する増井利彦領域長(右上)

 AIMは、温室効果ガス排出量の予測、対策や影響を評価するための統合評価モデルで、社会システム領域では、京都大学やみずほリサーチ&テクノロジーズと共同で開発に取り組み、アジアの国々の研究者とともに発展させてきました。

 今回お迎えしたのは、前述の世界11カ国で気候変動の緩和策に携わる実務担当者11名。2018年度に開始したJICAの「パリ協定下の『国が決定する貢献』前進に向けた能力強化研修」の一環としての訪問で、4年ぶりのオンサイトでの開催となりました。

 福島地域協働研究拠点(社会システム領域兼務)の五味馨室長が、産業連関表やエネルギーバランス表をもとに、将来の社会経済活動に関するシナリオや導入される対策技術を踏まえて、対象年における温室効果ガス排出量を推計するExSS(拡張型スナップショットツール:Extended SnapShot tool)について説明したほか、増井利彦領域長がAIMの概要やアジア各国との研究協力、政策貢献について紹介しました。

 その後、研修員は3班に分かれ、AIM開発に関わる社会システム領域の特別研究員も参加して、実際にExSSを用いて、架空の国家を対象に、将来の経済の発展、人口の変化、移動手段の変化、脱炭素に向けた取り組みなどのパラメータを設定してシミュレーションを行い、結果を発表しました。五味室長からは「設定した数値の背景で何が起きているのかを考えることが重要だ」などの指摘があり、意見交換を通じて、研修員の理解が深まっていく様子が見られました。

(写真2) どのような国家を想定してシミュレーションを行うか、真剣な表情で議論する研修員ら
(写真3)JICA研修員との集合写真。研修には社会システム領域の特別研究員もアドバイザーとして参加した

 社会システム領域では、アジア各国が自国の将来シナリオの作成や気候変動対策の実施を可能にするための人材育成にも力を入れています。本研修が、各国の気候変動対策の前進に貢献することを願っています。

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