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おしえて!研究者さん

対話で社会が変わるかもしれない?

対話ってなあに?

普段、何気なくさまざまな人と話をしているかと思います。

実は、「対話」は、会話とは話し合いの質として異なります。

対話(dialogue)の語源は、ギリシャ語のdailogosであり、dia(間)とlogos(言葉、論理)を表す言葉です。
また、哲学などでlogosは、理性や秩序と表現され、交わされる言葉に意味を表現されることを意味します。

このとき、対話の定義において、相手とコミュニケーションを行うだけではなく、自分自身の内省を行う自己との対話も含まれます。

対話に関する哲学者であるマルティン・ブーバー1は、人間の関係の中から生まれる対話は、単なるコミュニケーションではなく、相互に人間が向かい合う態度であると述べています。

自分を深め、他者と共に在ることについて

対話を行う際に必要なのは、問題を解決するための議論ではなく、気取らない本音を話す誠実な態度。
そこに参加する人たちが一人一人話す機会があり、自分の声が聞いてもらえるという実感があることが大切です。

そのために、一人一人が安心して自分の本音の話をすることができ、お互いの言葉に真剣に耳を傾け、参加している一人一人が自分の本音の話を誠実に話すことが必要です。

そして、全員でその場での本音の話を受け止める。
人は自分の話を聞いてもらえると、自分の話を聞いてもらえた安心感が得られ、他者から承認されたと感じます。

しかし時折、語り手が話している内容と、聞き手の解釈が異なる場合があります。
事実は変わりませんが、感情や思考、経験によって、その人それぞれの解釈が異なることも往々にしてあるのです。
だからこそ、人によって解釈が異なることも受け止めていくことが、その人それぞれの存在を肯定することになり、話し合いの場やコミュニティでの心理的安心感につながるのです。

さらに、他の人の話を聞いていたら「これおかしい!」「変だ」と違和感を感じる場合もあるでしょう。
その「変だ!」「おかしい」と思う場合には、自分との対話で、「なぜおかしいと感じるのか」と深掘りすることで、話された内容に対してもフラットに聞いて受け止めることに繋がります。

これは冒頭述べたように、単なるコミュニケーションではなく、人と人との関わり方から自分をトレーニングすることでもあるのです。
ワークショップデザインの第一人者である中野民夫2さんは、他者や社会との関係の中で自分を深めていくことを「楽しい修行」と呼んでおり、その中でファシリテーションは日常的な実践だと述べています。

他者と自分との対話は、自分を見つめ、目の前にいる人、そしてその人が置かれている状況や社会まで思いを馳せることで、相手とどのように協働・共創していくか探るための実践でもあるのです。

対話から社会が変わるために

現在、国立環境研究所では、福島第一原発事故で被災した大熊町と包括的な連携協定を結び、復興研究の支援を行なっています。

そこでは、都市開発や技術支援での復興が進んでいますが、住民の皆さんがどう思っているのか、自分たちの町をどうしたいのかなど、住民の声を聞くことが問われています。

行政主導のトップダウンで物事を決めていくのではなく、対話型ワークショップや話し合いを通じて、住民の皆さんの意見を町の政策や取り組みなどに反映することは、施設や建物、そして町の政策が自分ごとになり、住民の皆さんが主体的に協働し、共創していくことに繋がります。

福島県大熊町で開催されたワークショップ

しかし、住民の声を聞く機会が少ない自治体などでは、フラットに住民の声を聞く対話の場は、開催自体に不安が生じます。

住民の皆さんのニーズ、行政のニーズ、さまざまなニーズを掛け合わせながら、対話の場を企画して、そこに参加する人々が誠実に話せるように場の仕掛けを行なっていく必要があるのです。

一つの対話の場ですが、それは住民の皆さんと町を作っていくための仕掛けです。対話によって住民の皆さんのあり方が深められ、町の未来を一緒に作っていくことができるのです。

(記事内イラスト:有廣悠乃)

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参考文献

  • マルティン・ブーバー(1979)『我と汝・対話』 岩波文庫
  • 中野民夫(2014)『みんなの楽しい修行—より納得できる人生と社会のためにー』春秋社