語り合う場から、つながりを取り戻す パネルトークで見えた『紡ぐ』の可能性[大熊リーフレットパネルトーク開催レポート]サムネイル
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語り合う場から、つながりを取り戻す パネルトークで見えた『紡ぐ』の可能性[大熊リーフレットパネルトーク開催レポート]

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パネルトーク~未来に紡いでいく大熊のつながり~

2025年10月6日、大熊町役場1階の多目的スペースにて、リーフレット『紡ぐ-大熊町をつなぐ地域の力-』をテーマにしたパネルトークイベントが開催されました。

リーフレットの制作を手がけたのは、国立環境研究所 福島地域協働研究拠点。
大熊町の「今」と「これから」を見つめ直すために、地域の魅力や資源をまとめた一冊です。

当日は町民11名が参加し、「未来に紡いでいく大熊のつながり」をテーマに、登壇者と参加者が町の今を語り合いました。

会場全体の様子

リーフレット『紡ぐ』制作の背景

東日本大震災からの歩みの中で、大熊町では復興拠点として災害公営住宅や商業施設などの整備が進み、復興は着実に進展しています。
一方で、住民の帰還や地域経済の再生、避難先とのつながりなど、多くの課題も残されています。

こうした状況を踏まえ、震災以前を振り返りながら、町の再生が進む中で未来を語るきっかけとなることを目的に制作されたのが、リーフレット『紡ぐ —大熊町をつなぐ地域の力—』です。

パネルトークでは、リーフレットを手に、参加者が感じたことや町の今、そしてこれからについて思いや考えを共有しました。

対話する3名の登壇者
右から、南郷市兵さん、佐藤亜紀さん、大西悟さん

パネルトーク登壇者の紹介

パネルトークには、町と関わりの深い3名が登壇しました。

  • ・南郷市兵さん(大熊町立学び舎ゆめの森 GM[校長・園長])
  • ・佐藤亜紀さん(HITOkumalab代表)
  • ・大西悟さん(国立環境研究所 福島地域協働研究拠点 主任研究員)

進行を務めたのは、福島地域協働研究拠点の有廣悠乃研究員。
徳島大学高等教育研究センター玉有朋子講師が、会場でグラフィックレコーディングを描きながら、話の流れをリアルタイムで可視化しました。

グラフィックレコーディングを描く玉有さん

地域の営みをまとめた一冊として

佐藤亜紀さん

佐藤さんが最初に注目したのは、リーフレットに使われた写真でした。
「人の顔がもっと見たいと思ったんです。人に会えないと町ではない。表情から伝わるものに意味がある」と語ります。

リーフレットを通して「人の気配」をもっと感じたいという思いが伝わってきます。
一方で、「大熊町の人よりも、町外の人にとっての“入門資料”としてとても良い内容だと思う」と評価。
「外の人が大熊を理解するきっかけになる資料」としての価値にも言及しました。

発言する佐藤亜紀さん
佐藤亜紀さん

南郷市兵さん(大熊町立 学び舎ゆめの森学園 校長)

「環境や放射線の冊子かと思っていたが、開いてみると“人の営み”が中心に描かれていた」と、南郷さんは意外だったと話します。
リーフレットの構成を支える「8つの資本」という考え方については、「横断的に整理されていて、過去・現在・未来をつなぐ構成がわかりやすい」と評価しました。

教育現場での活用にも意欲的で、「高校生や大学生にもぜひ読ませたい。移住してきた人や新任教員にとっても町を知る手がかりになる」と話します。
学校ではすでに「大熊町」という郷土学習資料集を教材にしていますが、「それは情報が充実している反面、過去の内容が中心。
今回のリーフレットは“未来を考える視点”が加わっているのがいい」と語りました。

「読んでいてワクワクする。4つのバランスをどうしていくか、考えるきっかけになる」とも。
中学生や保護者にも配布しており、「町の一部しか知らない人にとっても、新しい発見があると思う」と話しました。

リーフレットについて語る南郷さん
南郷市兵さん

大西悟さん(国立環境研究所 福島地域協働研究拠点 主任研究員)

リーフレットの制作を担当した大西さんは、研究者としての立場から制作背景を語りました。
「支援すると言っても、研究者の多くは大熊町のことをよく知らない。町を多角的に整理して、語り合うきっかけになる資料をつくりたかった」と話します。

制作過程では、「町の声をどう反映させるか」を重視。
企業経営で使われる“資本”の考え方を地域に応用し、町の持つ力を8つの視点で整理しました。
会場からは「8つの資本はどういう考え方で分類されたのか」という質問もあり、大西さんは「町の資源を研究で整理する中で生まれた枠組み。地域の力を見える形にしたもの」と説明しました。

最後に、「研究者や行政が“正しい答え”を持っているわけではない。町の“こうなったらいいな”という思いを、研究者として翻訳し、行政に伝えることが大切」と語り、このリーフレットを“対話の出発点”と位置づけました。

思いを語る大西さん
大西悟さん

対話から広がる“町のつながり”

登壇者の感想共有のあと、有廣研究員が「まずは隣の人とリーフレットの内容について話してみましょう」と声をかけました。
参加者は隣同士で言葉を交わし、その後、有廣研究員の促しで3〜4人の小グループに分かれて意見交換が行われました。

グループトークの様子

グループでの話し合いでは、リーフレットをもとにさまざまな意見が交わされました。

昆虫の写真に興味を持った参加者は「知っている人から話を聞くと、新しいアイデアにつながる」と話し、
別のグループでは「6〜7ページの“8つの資本”の整理がよくまとまっていて、自然や歴史を生かす発想につながる」といった意見も。

町づくりや地域活動に関わる参加者からは、「コミュニティ支援を通じて、こうした視点を残していきたい」といった前向きな声もあがりました。

参加者の方と笑顔で対話する大西さん

話が弾むにつれて、グループ同士の距離が近づき、やがては誰の指示もなく、一つの大きな円に!
進行側が促したわけではなく、自然な流れで「丸くなって話す」 というかたちになっていました。

一つの大きな円になって対話する参加者の皆さん

輪になっての共有では、「丸くなれてうれしい」「顔を見て話すと、みんな家族のように感じる」といった感想がありました。

「移住して一年、まだ知らないことばかり。こうして話すことで町を知ることができる」
「お茶とお菓子を囲みながら、また語りたい」

住民の方と研究者が立場を超えて語り合い、会場は終始穏やかな雰囲気に包まれていました。

発言する参加者

印象的だったのは、「人の魅力こそが大熊の魅力」「知らない人ばかりだったけれど、来てよかった」という言葉です。
町の人々がつながりを求めていると感じ、つながりを育む場づくりの大切さを改めて感じました。

言葉が形になり、これからの「紡ぐ」へ

閉会にあたり、徳島大学の玉有朋子さんによるグラフィックレコーディングが披露されました。

中央には「大熊町の魅力・価値」「人の“つながり”一番大切」といった言葉が描かれ、当日の発言や気づきが一枚の絵として整理されました。
自分たちの言葉が形になり、対話の記録が共有の実感へとつながっていました。

グラフィックレコーディングについて解説する玉有さん

今回のパネルトークは、参加者が「大熊の今」を受け止め、共有し合う対話の場となりました。
人と人とが向き合い、思いを共有する場の中に、町のこれからをつくる力があると感じています。

今後も、こうした対話の場を重ねながら、“つながりを形にする”取り組みを続けていきたいと思います。

参加者全員の集合写真 中央にグラフィックレコーディング
グラフィックレコーディング 登壇者の発言の記録
グラフィックレコーディング : 玉有朋子(徳島大学)
グラフィックレコーディング リーフレットの感想や活用 どう大熊町の魅力を広げていく?
グラフィックレコーディング : 玉有朋子(徳島大学)
グラフィックレコーディング 大熊町の魅力や価値 人のつながりが一番大切
グラフィックレコーディング : 玉有朋子(徳島大学)

リーフレットはこちらからご覧いただけます。
PDFはこちら紹介ページはこちら

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イベント概要

イベント名
大熊町リーフレット 紡ぐ—大熊町をつなぐ地域の力—パネルトーク ~未来に紡いでいく大熊のつながり~
開催日時
2025年10月6日(月)10時~11時30分
会場
大熊町役場1階多目的スペース
当日のプログラム
・パネルトーク「リーフレットを実際に手に取った感想や活用について」—大熊町ならではの自然や文化など
・ワークショップ「リーフレットで紹介されていない大熊町の魅力やコンテンツ」
主催
国立研究開発法人国立環境研究所福島地域協働研究拠点
協力
大熊町ゼロカーボン推進課