東日本大震災後の状況について
私たちの生活では電気、ガス、石油といったエネルギーの利用は欠かせないものとなっています。
そして、エネルギーの利用により温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)が排出され、これが地球温暖化の原因となっていることも最近ではよく知られています。
2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけとしてエネルギーを取り巻く状況は大きく変化しました。
例えば、非常用エネルギー源として地域の再生可能エネルギーの価値が再認識されたことや、福島第一原子力発電所の事故が市民の意識改革に繋がったことなどが挙げられます。
(詳細は「なぜ今、再生可能エネルギーが注目されているのですか?」をご覧ください)
こうした状況から、多くの被災地では復興まちづくりの過程でエネルギー利用の効率化やCO2排出削減の取り組みが行われてきました。
国立環境研究所では、このような取り組みを行う地方自治体を学術的な観点から支援してきました。
国立環境研究所による連携・協力の事例
甚大な津波の被害を受けた福島県新地町では、2011年12月に被災地として内閣府の「環境未来都市」に選定され、2013年に国立環境研究所との連携・協力に関する基本協定を締結しました。
そこで国立環境研究所では、様々な専門分野のメンバーが連携して復興まちづくりの支援を行なってきました。
例えば、社会コミュニケーションを効率化するための地域ICTシステム「新地くらしアシストシステム」を開発し、約100世帯に住宅に導入しました。
このシステムは各住宅の電力消費量を記録して可視化する機能も備えており、これを用いて省エネキャンペーンを実施したり、省エネのアドバイスレポートを発行するなど、住民の省エネルギー行動を促進する取り組みを行いました。
また、JR新地駅周辺の復興計画ではエネルギー供給事業に関する学術的な知見を提供しました。
この事業ではエネルギー供給拠点「新地エネルギーセンター」が設立され、発電の排熱を空調・給湯に利用するコージェネレーションシステムと太陽光発電パネル、蓄電池を組み合わせた環境配慮型のエネルギー供給事業を行なっています。
新地町だけでなく、例えば福島県葛尾村の「葛尾スマートコミュニティ」では地域電力会社が設立され、大規模な太陽光発電パネルと蓄電池を導入した電力供給を実施しています。
国立環境研究所は電力の供給実績データを入手し、地域電力会社と協議しながら電力供給システムの運用効率化によるCO2削減効果や経済性の評価の研究を行なっています。
福島県浪江町では太陽光発電パネルを大規模に導入した際に発生する余剰電力を用いて水素を製造し、これをCO2を排出しない燃料として活用するための数々の取り組みが行われています。
国立環境研究所は、今後この水素を地域のエネルギーシステムの中で効率的に利用する方策について研究を展開することを計画し、すでに浪江町の自治体担当者と協議を進めています。
他の地域へ展開するための評価システムの開発
これまでの研究で得られた地域エネルギーの利活用に関する知見を他の地域へ展開するための「地域エネルギー計画・評価システム」を開発しました。
このシステムでは、国内の様々な気候条件の地域で、再生可能エネルギーとコージェネレーションを活用したエネルギー供給システムを対象として、最適な運用を行った場合の省エネ・環境性や経済的な効果を算定します。
とくに、太陽光発電や風力発電といった変動性の再生可能エネルギーは発電量をコントロールできないので、導入量が増えると余剰電力が増えてしまいます。
そこで、消費者側が電力の需給バランスに応じて省エネルギーやピークシフトを実施するデマンドレスポンスや、電気自動車を含めた蓄電池の充放電、余剰電力による水素製造など、様々なエネルギー需給制御の方策を評価に組み込んだシミュレーションを行います。
今後はこのシステムを被災地だけでなく様々な地域の脱炭素地域づくりに活用していく予定です。
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参考文献
- おしえて!研究者さん「なぜ今、再生可能エネルギーが注目されているのですか?」