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恵みの秋。山の学校。[第5回山の学校開催レポート]

秋の訪れ。森の恵みを体感し、学ぶ。

2022年11月12日、郡山市逢瀬にあるNPO法人しんせいの山の農園にて「山の学校」が開催されました。
第4回と第5回の「環境学習プログラム」は、林誠二研究グループ長(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)が担当しました。

秋の里山の写真

過去の開催レポートはこちら
山の学校、開校。
里山の夏。山の学校。

「山の学校」は、NPO法人しんせいが進める山の農園を活用した体験学習の場です。
NPO法人しんせいは、東日本大震災・原発事故後、その影響を受けた障がい者を支援する活動を行ってきた団体です。
2021年度から、国立環境研究所福島地域協働研究拠点は、NPO法人しんせいが進める山の農園プロジェクトの支援を行ってきました。
山の学校は、山の農園を活用した体験学習の場で、そのうちの『環境学習プログラム』を福島拠点が担当します。

澄んだ空気の朝、あさか開成高校、NTT労働組合、しんせい、福島拠点のメンバーが山の農園に集合し、4つのチームに分かれます。

チームにわかれた参加者たち

各チームに道具が渡され、森の中に入っていきます。
今回は、樹木の測量をします。

講師に指定された通り、樹木の太さを測る役、近くの樹木までの距離を測る役、それぞれの測量をサポートする役などチームごとに役割分担を決めて、急斜面を踏ん張りながら樹木を測定します。

樹木の太さを測る参加者
急斜面で作業を進める参加者たち

朝晩すっかり冷え込む日が続くようになり、市街地よりも冷える里山がフィールドのため、筆者は防寒対策万全で臨みました。
しかしながら、その装備が不要になるほどの秋晴れで、傾斜のきつい斜面で集中して作業していると汗ばむほどでした。
楽しみなランチタイムがより一層美味しい時間になったのは言うまでもありません。

急斜面で作業を進める参加者たち
樹木の太さを測る参加者

午後は、室内に入って講義の時間です。
林研究グループ長から森林の生態系の役割や日本の森林の歴史について説明がありました。

講義を始める林研究グループ長

「里山っていつできたでしょう?」「江戸時代?そのもっと前?戦後?」と何人かに聞いて回りますが、「答えは講義の中で」と進んでしまいます。

次のスライドには絵が2枚示されます。
浮世絵のようです。
片方は、東海道五十三次、片方は恐山あたりの絵。

ここでもクイズ。
「どちらも共通して見えているのは何でしょうか?」「富士山?」「山が黒い」などなど。

正解は、「森が茂っていない」でした。
そういわれて絵を見直してみると、木がパラパラとしか描かれていません。

この時代、木をエネルギーとして使用し、そこまで密集した森というのはみられなかったようです。
樹木がエネルギー資源として使用されていたころは、絶えず森林荒廃の危機にさらされており、木が足りない状態が続いていたという説明に、参加者からは「えー!?」という驚きの声があがっていました。

解説する林研究グループ長

明治以降、欧米からの技術者の知識を得て、国内で治山事業が始められ、昭和の戦前まで森林が守られる時代が続きました。

ところが、戦争がはじまり、また森林が多く利用される時代となるのです。
戦後、荒れた山地に人工林として成長の早いスギなどの木材となる木々が植林されました。

しかし、木材の輸入自由化が進んだことやエネルギー源が薪炭から化石燃料に転換したことによって森の材が使用されず、人工林等の管理が行き届かないことで森林荒廃が進んでしまうという大転換期が訪れるのです。

切って木材として出荷すべき木を切れないまま森に置いてしまう。
すると人工林はどんどん高齢化し、木と木の間が混みすぎている、という状態に陥ってしまいます。

そして、ここで午前中に行った計測実習の結果発表。

結果発表を行う様子

里山を含め国内の多くの山地の森林では、現在、木々が非常に混み合った状況にあり、森林が本来持っている様々な機能を十分に発揮させるためにも、間伐等適切な森林管理を積極的に行っていくことが求められているのです。

午前中、実際森の中に入って、樹木を測定した後の参加者にとっては、講義が身近に感じられたようです。
この講義の目的であった「里山の保全の意味を知る」がしっかりと伝わった回となりました。

外で休憩する参加者たち

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概要

イベント名
第5回山の学校
開催日時
2022年11月12日(土)
会場
NPOしんせい 山の農園
参加者
あさか開成高校、NTT労働組合、しんせい、福島拠点
主催
NPOしんせい
共催
国立環境研究所福島地域協働研究拠点

講師

林 誠二

福島地域協働研究拠点 研究グループ長/地域協働推進室長