福島拠点が進めてきた地域協働の取り組みを振り返り、ステークホルダーの皆様と考える場
2025年1月28日、福島県環境創造センター本館・2階会議室にて、「令和6年度国立環境研究所福島地域協働研究拠点ステークホルダーとの対話のための会合」が開催されました。
国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、「福島拠点」)は2021年4月に「地域協働推進室」を立ち上げ、地域で活動する皆様との協働を進めて、環境研究の成果をもとに地域に貢献することを目指す地域協働研究に取り組んできました。
福島拠点では広報活動、地域との対話活動、地域協働型の研究活動を一体的に推進するなかで、特定非営利活動法人しんせい・あさか開成高校との協働による「山の学校」、安積黎明高校との協働による「環境カフェふくしま」など、地域協働の取り組みの輪を拡げてきました。
これらの取り組みについて、詳しくはこちらからご覧いただけます
「山の学校」(特定非営利活動法人しんせい・あさか開成高校との協働)
「環境カフェふくしま」(安積黎明高校との協働)
今回の会合は、福島県内の環境・復興にかんする政策・活動に取り組まれている幅広い分野のステークホルダーの皆様をお招きして、被災地の環境回復と環境創生、災害に備えた地域づくりに対する課題や期待など、様々なご意見をいただくことを通じて、福島拠点における地域協働研究の今後の展開を検討するために開催しました。

今回の会合では、日頃から福島拠点の研究者と連携・協働していただいている以下6名のステークホルダーの皆様にお集まりいただきました。※敬称略
岩渕 良太(特定非営利活動法人会津みしま自然エネルギー研究会 理事長)
川越 清樹(福島大学 共生システム理工学類 教授)
菅波 香織(未来会議 事務局長)
富永 美保(特定非営利活動法人しんせい 理事長)
南郷 市兵(大熊町立学び舎ゆめの森 GM[校長・園長])
山口 松之進(郡山観光交通株式会社、孫の手トラベル 代表取締役)
ステークホルダーの皆様からいただいた様々なご意見
今回の会合ではステークホルダーの皆様から、福島に拠点を置く国の環境研究機関として、わたしたち国環研・福島拠点に期待される役割や、福島の復興や環境を良くするために様々な立場や意見をもつステークホルダーが連携し協働するための工夫や仕掛けなどについて、たくさんのご意見を伺うことができました。
お忙しいなか会合に参加してくださったステークホルダーの皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

以下、ステークホルダーの皆様のご意見のうち、特に私(辻)が印象に残ったものを紹介します。
とくに多かったのは、子どもたち(次世代)の学びに対する貢献を期待するご意見でした。
たとえば、現在の学習指導要領にもとで全国的に推進されている中学校・高校における総合的な探求の時間(探究学習)は、今後も一層推進される見込みであり、生徒一人ひとりの関心に則した「探求の個人化・個性化」(個別探究)がますます進むことが予想されます。
こうした状況のなか、福島拠点の研究者には、個人化・個性化する生徒の探究学習のニーズに対応する役割が期待されるというご意見がありました。

また、学校における教科の枠にとらわれず、子どもたちにとって身近な暮らしの課題(ごみ問題など)を題材にして、それが日本全国あるいはグローバルな環境問題(気候変動など)とどのようにつながっているのかを示す役割も指摘されました。
さらに、子どもたちの環境や社会の問題に対する興味を引き出し、わくわくする、楽しくなるような学びのきっかけをつくるため、「変なおじさん」「変なおばさん」として、私たち研究者自身が楽しく研究している姿を子どもたちに見せることも大事というご意見もあり、はっとさせられました。
福島という地域で活動する私たち福島拠点の立ち位置についてのご意見も数多くいただきました。
科学の立場から長期的な視点で社会のあり方を構想しつつ、地域の政策や対話に参画してほしいというご意見や、浜通り・中通り・会津に散在している地域をつないで、ネットワークをつくる役割を果たしてほしいというご意見もありました。

今回の会合のキーワードは、「楽しさ・面白さ」でした。
私自身、子どもたちをはじめとする地域・市民のみなさまに、福島の復興や環境問題に関心をもっていただくためには、楽しいこと・面白いことを入り口にするのがよいということに気付かされました。
また、創造的な学びや新しい研究のアイデアは、対話がきっかけで生まれてくるということも、今回の会合で改めて実感することができました。
わたしたち国立環境研究所は、現在の中長期計画期間(2021-2025年度)の終了を控えて、いま、次期中長期計画(2026年度以降実施)を検討しています。
次期中長期計画で展開する福島拠点における地域協働の取り組みを検討するために、今回の会合でいただいたステークホルダーの皆様のご意見をよく吟味したいと考えています。
本ステークホルダー会合の報告書はこちらからご覧いただけます
令和6年度国立環境研究所福島地域協働研究拠点 ステークホルダーとの対話のための会合 報告書



写真撮影:志賀薫(国立環境研究所企画部広報室 高度技能専門員)
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概要
- イベント名
- 令和6年度国立環境研究所福島地域協働研究拠点ステークホルダーとの対話のための会合
- 開催日時
- 2025年1月28日(火)13:00~15:30
- 会場
- 福島県環境創造センター本館・2階会議室(〒963-7700 福島県田村郡三春町深作10-2)
- 参加者
- 約50名(ステークホルダー・国環研スタッフ・オンライン参加者を含む)
- 主催
- 国立環境研究所福島地域協働研究拠点