令和5年度「環境カフェふくしま」①脱炭素社会について考える~オリエンテーション、第1回から第3回~サムネイル
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令和5年度「環境カフェふくしま」①脱炭素社会について考える~オリエンテーション、第1回から第3回~

令和5年度の環境カフェふくしまがスタート

昨年度から引き続き令和5年(2023年)度も、安積黎明高校化学部を中心とした生徒と顧問の益子先生、福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)の研究者と広報スタッフで、環境カフェふくしまを開催しました。
2021年から始まった環境カフェふくしまの取り組みも3年目です。

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環境カフェふくしま 記事一覧

今年も参加者のほとんどが初めての生徒に入れ替わり、新しいテーマについて対話を通して考えを深めていきます。

この記事では、令和5年度の取り組みの前半部として、2023年6月~9月にかけて開催された環境カフェふくしまの取り組みをご紹介します。

「環境カフェふくしま」は、環境課題をテーマに対話を通じて、問いを立てる力、質問力、探求力、観察力、理解力などの科学技術リテラシーを身につけることを目的とした、国立環境研究所福島地域協働研究拠点(以下、福島拠点)が行うプログラムです。
令和3年度から「環境カフェふくしま」は、安積黎明高校化学部に協力いただいて実施しています。
※国立環境研究所シニア研究員の多田満氏が発案した「環境カフェ」をベースにしています。

オリエンテーション(2023年6月24日)

2023年6月24日、令和5年度環境カフェふくしまのオリエンテーションを開催し、8名の高校生が参加しました。
初めての環境カフェに、高校生たちからは緊張した雰囲気が伝わってきます。

アイスブレイクのあと、参加する高校生たちが、「環境」という言葉から何を連想するのか、9マスシートに書き出し、グループごとに共有し合いました。
地球温暖化に関連したワードや、マイクロプラスチックなどのごみに関連したものなど、彼らがどんな環境課題に興味があるのか、関心が伺えます。

グループごとに書き出したワードを共有する高校生たち

今年度、通年かけて考えを深めていくテーマは「脱炭素社会」です。

第1回~第3回で構成される前半は「脱炭素社会とはどんな世界?」がテーマとなります。
1回目に講義、2回目にグループワーク、3回目にグループワークと発表の形式で進行していきます。

令和5年度前期「環境カフェふくしま」開催記録一覧表
表1.令和5年度前期「環境カフェふくしま」開催記録一覧

第1回 講義(2023年7月20日)

オリエンテーションから1か月後の2023年7月20日、第1回を開催しました。
第1回は「脱炭素社会とはどんな世界?」というタイトルで、五味馨室長が講義を行います。

講義では、気候変動・脱炭素に関する最近の動きを解説しました。

講義を行う五味室長

参加した高校生からは、
「脱炭素は世界規模の話であまり実感がなかったが、家庭での対策も重要であると気づいた」
「脱炭素社会の実現に向けては課題が多く残っていることがわかった」
「地球温暖化対策は、地域が抱える課題と関係していることに驚いた」
という感想があり、新たな気づきを得られたようです。

最後に、次回に向けた宿題が発表されました。
自分たちの家庭で使用している家電のCO2排出量を調べるという課題です。

次回は調べてきた結果をそれぞれ発表し、対話を重ねていきます。

講義を行う五味室長と高校生たち

第2回 対話(2023年8月26日)

温暖化を実感するような厳しい暑さが続くなか、第2回が2023年8月26日に開催されました。

第1回のさいごに「現在使用している家電のCO2排出量を調べる」という宿題が出されていました。
第2回は、各自が宿題で調べてきたことをグループに分かれて発表するところから始まります。

発表のあとは、一つの家庭をモデルケースに、家庭のCO2排出量50%削減実現の可能性と方法について考え、付箋に書き出しました。

机に広げた模造紙に、意見を書いた付箋を貼り付けていく高校生たち

家庭のCO2排出量削減を考えたあとは、視野を広げて家庭以外のCO2排出量にも注目します。

まずは、中村主任研究員が、郡山市が公開している、分野別のCO2排出量の推移や脱炭素社会実現のためのロードマップを紹介しました。
脱炭素社会の実現に向けては、家庭以外の取り組みも重要であることが示されます。

その後、「郡山市で2050年までに脱炭素社会実現に近づけるために必要なことは?」をテーマに、対話を行いました。
地域での対策例や、ゼロカーボンアクション30※1、デコ活※2、省エネカタログなどを参考に、家庭だけでなく社会全体で重要だと考える対策や行動を書き出していきます。

※1 ゼロカーボンアクション30
ゼロカーボンアクション30とは、環境省が推進している、脱炭素化に向けた取り組みのことです。
詳しくはこちら  ゼロカーボンアクション30|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。

※2 デコ活
環境省が勧める、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動の愛称。
二酸化炭素(CO2)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉です。
詳しくはこちら デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)

終了後、参加した高校生たちからは、
「家庭での取り組みも必要だが、運輸などの企業の取り組みも重要であることがわかった」
「家庭でできることもあるが、今の技術では難しいこともあると実感した」
「視野を広くして考え、いろいろな観点で話し合うことができた」
などの感想が寄せられました。

次回は、対話の結果をまとめて、グループごとに発表を行います。

対話する先生と高校生

第3回 発表(2023年9月30日)

2023年9月30日に開催された第3回では、前回の対話の内容をまとめて、郡山市が脱炭素社会実現に近づくために必要なことを発表しました。

第1回で講義を担当した五味馨室長や、昨年度環境カフェふくしまの取り組みを担った浅野希梨氏も現地参加しました。
それぞれの発表をきいて、コメントをもらいます。

初めての発表の機会に、高校生たちは緊張している様子です。

A班は、ごみの量を減らすこと、交通手段としてディーゼル車や電気自動車、水素自動車を利用すること、社会全体が再生可能エネルギーに切り替えていくことについて、

B班は、公共交通機関の利用促進を目的とした、利用者にポイント還元されるアプリの開発や、節電や節水に取り組みやすくするための使用量の可視化の仕組み、再配達を少なくすること、ウォームビズについて、
それぞれ発表しました。

黒板の前で発表を行う高校生と、発表を聞く高校生と研究者

発表を受けて、中村主任研究員からは、「脱炭素対策は分野が多岐にわたるので、冒頭に分野をあきらかにすることで、発表の位置づけが明確化になる」というアドバイスがありました。

また、浅野氏からは、根拠資料を明確にすることで、納得感の醸成や具体的な議論につながるという総評がありました。

最後に、五味室長が挙げられた各トピックについて、研究者の視点からコメントします。
特に、LEDについては、どのくらい節電になるか、普通の電球と比べた場合のコストパフォーマンスの観点も含め、その場で実際に計算しながら解説しました。

黒板に計算式を書き解説する五味室長

参加した高校生の皆さんも、自分たちで調べたあとだからこそ、他のグループの発表や、研究者からのフィードバックが刺激になったようです。
開催後には、視野が広がったという感想が多くみられました。

ほぼ毎月開催してきた環境カフェふくしまもいったんお休みをはさみ、次回は12月に合宿として集中講義を行います。

対話をする高校生と研究者 各テーブルの様子

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