研究成果

農薬による生物多様性への影響の評価

水田内食物連鎖の図 害虫防除に用いる農薬は、害虫にとどまらず、農地や周辺環境に生息する様々な生物にも影響します。しかも、農薬が直接生物の生死に影響する急性毒性だけでなく、食物連鎖による生物濃縮や土壌への農薬の残留蓄積性、他の農薬を兼用することによる毒性の増強、さらに農薬の影響を受けて増減した餌生物や天敵との相互作用などを、総合的に考慮しなければなりません。このように、農薬の使用が農地内外の生物多様性に与える影響を適切に評価し、その影響を軽減する手法の開発が求められています。
水田で一般に用いられる浸透移行性農薬は、苗に吸収されて効果を発揮します。一方、土壌や水に漏出した農薬は、害虫以外の生物にも取り込まれます。食物連鎖により、農薬が濃縮されることもあります。



水田メソコズム試験の写真

水田メソコズム試験とは

現在、農薬の野生生物に対する影響評価は、特定の試験生物(藻類の1種、オオミジンコ、メダカの3種が推奨種)を用いた室内毒性試験に基づいて行われています。これでは、固有で多様な生物から成り立っているそれぞれの地域の生態系に対する農薬の影響を正しく評価することは困難です。その問題を解決する方法のひとつが、「水田メソコズム試験」です。水田メソコズム試験とは、地域に固有な生物多様性を反映しつつ環境をそろえた水田で、農薬が水田の生物多様性に及ぼす影響を評価する試験です。
水田メソコズム試験は、物理調査、化学調査、および生物調査からなります。これらの結果を総合的に解析することで、農薬が水田中でどのように拡散するのか、あるいは分解するのか、そしてどのような生物がどの時期にどんな影響を受けるのか、その結果、生態系がどのように変化するのかを評価します。

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