太陽光発電と風力発電のエネルギーポテンシャルと都市部との距離の評価

執筆:SILVA HERRAN Diego (社会システム領域 主任研究員)
2023.9.19

論文情報

Characterization of the proximity to urban areas of the global energy potential of solar and wind energies 
(太陽光発電と風力発電のエネルギーポテンシャルと都市部との距離の評価)

著者: Diego Silva Herran、芦名秀一
発行年: 2023
掲載誌: Environmental Research Communications, 5 (7)
DOI:https://doi.org/10.1088/2515-7620/ace2b6

キーワード

太陽光発電、風力発電、エネルギーポテンシャル、距離

論文の紹介

 太陽光や風力は世界各地で利用できますが、分散して存在しています。そのため、太陽光や風力発電に適した場所は、エネルギー需要が高い都市部から遠く離れている場合が多くあります。この研究では、太陽光や風力発電によるエネルギーだけで現在のエネルギー需要をまかなうには、都市部からどの程度離れる必要があるのかを調べました。

 私たちは、自然保護地域を避けながら、各発電地域から最も近い都市部までの距離を決定する方法を開発し、さらに地理情報データに基づくモデルを用いて 、世界の太陽光と陸上風力発電のエネルギーポテンシャル(特定の制限下で供給可能なエネルギー量)を推定しました。なお、 エネルギーポテンシャルは、①エネルギー資源の品質と②最も近い都市部までの距離という二つの要素によって推定され、エネルギー資源の品質は、最大発電量に対する実際の発電量の比率である「年間設備利用率」で決まります。

 結果、現在の電力需要は、都市部から30km以内であれば、設備利用率24%以上の太陽光発電でまかなえることが示されました。陸上風力発電の場合は、都市部から20km以内であれば、設備利用率20%以上の発電施設でエネルギーをまかなえることが分かりました(図1)。

図1 太陽光発電(左)と陸上風力発電(右)のエネルギーポテンシャルと都市部との距離の評価。破線は2018年の世界の一次エネルギー供給量(TPES)、点線は2018年の世界の電力消費量を示している
出典:Silva Herran and Ashina (2023) Environ Res Commun 5 071001. (reproduced under CC-BY license)

 本研究は、再生可能エネルギー資源を地球規模で評価する新しい手法を提供するものです。この成果は、将来の脱炭素社会の実現可能性を分析するモデルの入力データとして、重要な情報となることが期待されます。