How Will Deforestation and Vegetation Degradation Affect Global Fire Activity?(森林伐採・植生劣化が全球の野外火災発生に及ぼす影響)

Chae Yeon Park, Kiyoshi Takahashi, Junya Takakura, Fang Li, Shinichiro Fujimori, Tomoko Hasegawa, Akihiko Ito, Dong Kun Lee
2021.7.7

論文情報

How Will Deforestation and Vegetation Degradation Affect Global Fire Activity?
(森林伐採・植生劣化が全球の野外火災発生に及ぼす影響)

著者: Chae Yeon Park, Kiyoshi Takahashi, Junya Takakura, Fang Li, Shinichiro Fujimori, Tomoko Hasegawa, Akihiko Ito, Dong Kun Lee
年:2021
掲載誌:Earth’s Future, 9, e2020EF001786

キーワード

野外火災、土地利用、気候変化、社会経済変化

概要

世界的にみると、多くの森林火災が森林伐採に関連して発生している。しかし、森林伐採・植生劣化による火災(DDF)の現状及び将来の発生の現況評価・将来予測の研究は少ない。本研究では、まずDDFの複数因子を考慮した評価を実現するために、既存の陸面モデルCommunity Land Model (CLM)の火災モデルの拡張を行った。これにより、因子(気候変化、木材伐採、農地・牧草地・都市の土地利用変化)別および季節別のDDFを区別して扱うことが可能となった。さらに、同モデルを用いて、2つの排出シナリオ(RCP2.6とRCP6.0)下での2050年代・2090年代での野外火災について予測を実施した。

世界全体で見た場合、野外火災は現状の452Mha/年から、2090年代には、RCP6.0の場合で211~378Mha/年に、RCP2.6の場合で184~333Mha/年に、いずれも主として人口変化・経済成長の影響を受けて減少することが予測された。また、森林伐採・植生劣化による火災(DDF)は、現状の73Mha/年から、RCP6.0の場合で54~66Mha/年に、RCP2.6の場合で45~55Mha/年に、減少すると予測された。また、DDFの減少の主因は、気候変化、特に降水量の増加であることが示された。DDFへの土地利用変化の寄与については、現状と同等か若干小さめとなる。将来的に、南米、インドネシア、豪州がDDFの高リスク地帯になるが、これは主として木材伐採と牧草地拡大によるものである。これらの地域では、適切な土地・火災管理政策を通じて火災被害の軽減に取り組む必要がある。

図1. 観測された年平均燃焼面積割合(左:GEFD4.1sデータ)と本研究で用いた野外火災モデルにより推計された年平均燃焼面積割合(右).
図2. 2050年代・2090年代について予測された野外火災による燃焼面積(百万ha/年).
図中の点線は現在(2006~2015年)について推計された燃焼面積。ピンクは気候・土地利用・社会経済の全因子の変化を考慮した予測結果。緑、橙、青の棒グラフは、それぞれ気候変化、土地利用変化、社会経済条件変化のいずれかのみを考慮した予測結果。マーカーは4つの異なる気候シナリオ(H: HadGEM2-ES, (i) IPSL-CM5A-LR, M: MIROC5, (g) GFDL_ESM2M)での予測結果を示している。