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Acropora aculeus (Dana, 1846)
ハリエダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深14m)
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第2分枝の直径は3〜5mm。
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成長形:樹枝卓状、芝草コリンボース状、芝草状群体。
軟体部の色彩と特徴:青色、紫色、褐色、黄緑色やクリーム色など様々。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は細い円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、基部近くの直径は3〜5mmになる。長さは3cm未満のものが多いが、10cm近くまで伸びるものもある。隣接する第2分枝の中軸個体間の距離は1cm程度で、群体表面にほぼ等間隔に並ぶ。ただし、第2分枝の分岐が顕著な部分では、その距離は短くなる。中軸個体はきれいな円筒状で、外径が1.5〜2mmと小さく、1.5〜3mm程度突出する。その外壁部分は薄く多孔質に見えるが、堅固。1次隔壁の長さは1/3〜1/2R。放射個体は外壁が薄い密着管状か鼻形で、外径1.1〜1.3mmほど、開口部は円形か卵形を呈する。1次隔壁の長さは1/3〜2/3R。共骨は肋〜網目状で、表面には単一尖端棘が発達する。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m 以深で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はAcropora nana スゲミドリイシと混同されており、種子島以北での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora austera (Dana, 1846)
コイボミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深13m)
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第2分枝の直径は1.5cm前後。
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成長形:枝が様々な方向を向いた樹枝状、芝草状や洗瓶ブラシ状群体が多い。水深の深いところでは、第1分枝が水平方向に伸び、卓状群体のように見えることもある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色が多いが、青色や枝の先端の色彩が異なった群体も見られる。
骨格の特徴:第3分枝まで発達。第1分枝は直径1cm未満〜数cm、長さ数cm〜20cm程度と様々。長いものは緩やかに湾曲する傾向がある。第2分枝は円錐形〜円柱形で、基部が直径1.5cm前後、長さ2〜5cmのものが多い。第1分枝と第2分枝のなす角は30〜90°と変化に富む。第3分枝の多くは円錐形で、基部での直径・長さともに1cm前後。第3分枝は第1・第2分枝上で不規則に発達し、両枝とのなす角は60〜90°くらい。中軸個体は莢外壁が厚く緻密で、外径3〜3.5mm、1.5〜2mm程度突出する。1次隔壁は長さ2/3〜3/4Rでよく発達する。放射個体は肥厚した管状で、外径1.5〜3mm、開口部は円形〜やや角ばった円形。同じ枝の表面でも放射個体の大きさや突出度合は様々で、小さくて埋在したものから、中軸個体のように大きく、よく突出したものまである。共骨は堅固な網目状で、表面にやや太めの細分尖端棘(一部は単一尖端棘)が密集する。
生息環境:開放的な礁斜面の水深5〜15m付近で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
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Acropora cytherea (Dana, 1846)
ハナバチミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深5m)
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第2分枝の直径は5〜7mm。
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成長形:薄い卓状群体。卓状部の厚みは3cm未満。
軟体部の色彩と特徴:主に淡緑色や淡褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は細い円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、基部での直径5〜7mm、長さ1.5〜2.5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm程度。中軸個体は多孔質でもろく、外径2〜3mm、1〜2.5mmほど突出する。一つの第2分枝の先端に複数の中軸個体が発達したり、群体下面にも第2分枝が発達したりすることがある。放射個体は卵形の細長い開口部をもつ欠刻状〜唇弁状で、外径は2mm未満で小さい。1次隔壁は長さ2/3Rまで発達。共骨は、放射個体の外側で肋状、それ以外では網目状で非常にもろい。その表面には、側偏棘(一部は単一尖端棘)が発達する。
生息環境:第2分枝まで発達。第2分枝は細い円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、基部での直径5〜7mm、長さ1.5〜2.5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm程度。中軸個体は多孔質でもろく、外径2〜3mm、1〜2.5mmほど突出する。一つの第2分枝の先端に複数の中軸個体が発達したり、群体下面にも第2分枝が発達したりすることがある。放射個体は卵形の細長い開口部をもつ欠刻状〜唇弁状で、外径は2mm未満で小さい。1次隔壁は長さ2/3Rまで発達。共骨は、放射個体の外側で肋状、それ以外では網目状で非常にもろい。その表面には、側偏棘(一部は単一尖端棘)が発達する。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はAcropora hyacinthus ナンヨウミドリイシ、A. microclados マツバミドリイシやA. spicifera クシハダミドリイシと混同されているため、種子島以北での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora digitifera (Dana, 1846)
コユビミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は1cm前後。
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成長形:指状、コリンボース状〜芝草コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色や褐色、クリーム色。枝の先端や放射個体の莢壁外側が白くなることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形〜円錐形で大きさがよく揃う。中軸個体が1つだけの第2分枝は、直径1cm前後、長さ2cmほど。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.5cm前後。中軸個体は緻密で外径2.5〜3mm、1〜1.5mmほど突出。1次隔壁は長さ1/2〜2/3Rほど。放射個体はよく肥厚し、外径は1.3〜2mmで、群体ごとに外径や突出度合がよく揃う。放射個体は主に欠刻状、管状〜密着管状だが、外側がよく肥厚するので唇弁状にも見える。開口部は円形か卵形。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。共骨表面は、放射個体の外側で網目状〜肋状、放射個体間では網目状で、表面には細分尖端棘(一部は単一尖端棘)が密集する。
生息環境:波当たりの強い礁縁から礁斜面の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:高知県竜串以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
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Acropora efflorescens (Dana, 1846) sensu Veron, 2000
タイハイミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深不明)
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第2分枝の直径は5〜8mm。
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成長形:薄い卓状〜板状群体。卓状部の厚さ2.5cm未満。群体が小さい時はきれいな大杯型だが、成長とともにその形は崩れ、群体周縁が下方に張り出してくる。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝の形状は様々で、中軸個体のみが発達したものもある。放射個体が発達した第2分枝は円錐〜円柱形で、大きいもので直径5〜8mm、長さ1cm程度と短い。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm未満。これらの枝は、群体の成長とともに不明瞭または埋在して分からなくなることが多い。中軸個体は多孔質だが堅固で、外径2〜2.5mm、3〜5mmほど突出。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。放射個体は管状〜密着管状で、埋在するものもある。外径1〜2mmほどで円形の開口部をもつ。中軸個体周辺では、3〜4mmほど不規則に突出することがある。1次隔壁は長さ1/2R。共骨は、放射個体の外側で肋状、放射個体間では網目状で、それらの表面には側偏棘(一部は単一尖端棘)が並ぶ。
生息環境:外洋に面した、またはやや遮蔽された岩礁域の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深〜種子島。種子島では稀。
補足:Veron (2000)は本種をAcropora efflorescens と同定している。Wallace (1999)やWallace et al. (2012)は、A. efflorescens をA. cytherea ハナバチミドリイシのシノニムとしているが、両種は第2分枝の配列や中軸個体の形態が異なるため、更なる分類学的検討が必要と思われる。本種の和名は串本海中公園センター(1977)に基づく。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora florida (Dana, 1846)
サボテンミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市大原、水深8m)
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第3分枝の直径は5mm〜1cm。
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成長形:芝草状〜洗瓶ブラシ状、洗瓶ブラシ卓状、卓状と群体形の変化が大きい。卓状群体では、第1・第2分枝間が融合してほぼ板状になったものも多く見られる。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第3分枝まで発達。第1分枝は直径1〜3cmのものが多いが、それ以上の太さになることも珍しくない。長さは10cm以上になることが普通。第2分枝は群体周縁で明瞭で、基部での直径1cm前後、長さ3〜4cmまで。第1分枝とのなす角は40〜80°。第3分枝は太さや長さがよく揃い、直径5mm〜1cm、長さ1.2〜1.5cm程度。第1・第2分枝とのなす角は60°ほど。隣接した第3分枝の中軸個体間の距離は1〜1.5cm。中軸個体は緻密なものから多孔質に見えるものまであり、外径はほとんどが3mm前後で突出しない。1次隔壁はよく発達し、長さ2/3Rほど。放射個体は密着管状で開口部は円形、外径1.5〜2.5mm、1次隔壁の長さ1/2〜2/3R。共骨は、放射個体の外側で顕著な肋状、それ以外では網目状になる部分がある。表面には単一尖端棘(一部は側偏棘)が発達する。
生息環境:開放的な礁斜面の水深5〜15m付近で見られ、礁縁や浅礁湖でも見かけることがある。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種の卓状群体はAcropora japonica ニホンミドリイシやA. aff.gemmifera と混同されている可能性がある。種子島以北での生息状況は再検討が必要。
* 種子島初記録種
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Acropora aff. gemmifera (Brook, 1892)
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は6mm〜1.2cmとばらつく。
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成長形:指状〜コリンボース状群体で、岩盤を広く覆うように成長する。群体周縁は岩盤に固着せずに張り出し、芝草コリンボース状になることもある。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色や赤褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は主に円錐形で、群体周縁で側方に長く伸びたものは円柱形に見える。同じ群体内でも枝の太さや長さが不揃いで、基部は直径6mm〜1.2cm、長さ1〜2.5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離はよく揃い、1.2〜1.8cmほど。中軸個体は緻密で、外径2.5〜3mm、1mmほどしか突出しない。1次隔壁は長さ2/3〜3/4Rで、莢心近くまでよく発達する。放射個体は円形開口で管状〜密着管状、外径1.3〜2mmのものと、1mm未満のものとの2タイプが存在する。1次隔壁はあまり発達せず、長さ1/2R未満。共骨表面は、放射個体の外側で網目状〜肋状、放射個体間では網目状。共骨表面の棘の形状は、単一尖端棘、側偏棘や細分尖端棘など様々。
生息環境:波浪の影響をよく受ける礁縁、礁斜面や岩礁域の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:群体形から、本種はAcropora japonica ニホンミドリイシと混同されている可能性があり、国内での生息状況については再検討が必要。本種は、第2分枝の形状や放射個体の形態がA. gemmifera オヤユビミドリイシ(本ガイド未掲載種)と明らかに異なっている。
* 種子島初記録種
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Acropora glauca (Brook, 1893)
ナカユビミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、水深1m)
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第2分枝の直径は5mm〜1cm。
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成長形:指状〜コリンボース状群体。基部がよく発達し堅固で、岩盤にしっかりと固着する群体が多い。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜黄緑色や褐色。種子島では普通種。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形〜円錐形で、同一群体内での太さや長さは不揃いになりやすい。中軸個体が1つだけの第2分枝は、基部での直径5mm〜1cm、長さ2〜4cmほど。第2分枝の長さや太さがほぼ等しい群体では、隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cmとよく揃う。中軸個体は緻密、やや円錐形で外壁が厚く、外径2.5〜4mm、1〜3mmほど突出する。1次隔壁は長さ1/3〜3/4R。放射個体は主に肥厚した丸い密着管状〜鼻形で、外径1.5〜2.5mm、開口部は円形〜卵形。枝の下方では埋在したものも見られる。1次隔壁は長さ2/3Rほど。共骨は緻密で、放射個体の外側では肋状になりやすく、その他の部分では網目状になる。共骨の表面には単一尖端棘〜側偏棘がよく発達する。
生息環境:外洋に面した、またはやや遮蔽された岩礁域の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島〜種子島。種子島では普通種。
補足:本種は、群体形以外の特徴が類似するAcroproa cf.glauca エンタクミドリイシとの更なる分類学的検討が必要。本種の和名は串本海中公園センター (1977) に基づく。
* 種子島初記録種
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Acropora cf. glauca (Brook, 1893)
エンタクミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、水深5m)
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第2分枝の直径は8mm〜1.2cm。
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成長形:樹枝卓状群体。卓状部の厚さは2.5cmほど。第1分枝は水平方向に伸長し、それらの間が顕著に融合した群体は板状に見える。第2分枝は短く、その間隔もよく揃うので、群体はきれいな円卓型に見える。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。種子島では普通種。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形〜円錐形で、中軸個体が1つだけの場合、基部での直径8mm〜1.2cm、長さ2.5cm未満。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜2cmでよく揃う。中軸個体は緻密、やや円錐形で外壁が厚く、外径2.5〜4mm、1〜2mmほど突出する。1次隔壁はよく発達し、長さ2/3Rほど。放射個体は肥厚した丸い密着管状〜鼻形で、外径1.5〜2.5mm、開口部は円形〜卵形。枝の先端近くでは、不規則に突出した管状個体も見られる。1次隔壁の長さ1/3〜1/2R前後。共骨は緻密で、放射個体の外側では肋状になりやすい。その他の部分では網目状になり、表面には単一尖端棘が密集する。
生息環境:外洋に面した、またはやや遮蔽された岩礁域の水深3〜15mで見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬〜種子島。種子島では普通種。
補足:本種は、群体形を除く特徴が類似するAcropora glauca ナカユビミドリイシとの更なる分類学的検討が必要。本種の和名は串本海中公園センター (1977) に基づく。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora horrida (Dana, 1846)
ヤセミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深14m)
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第2分枝の直径は7〜9mm。
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成長形:樹枝状、芝草状または洗瓶ブラシ状になる。水深の深いところでは第1分枝が水平方向に伸びて、洗瓶ブラシ卓状群体になることもある。
軟体部の色彩と特徴:灰色がかった緑色〜褐色で、群体によって色彩の濃さが異なる。昼間も触手を伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:第3分枝が発達。群体周縁での第1分枝と第2分枝の直径はそれぞれ1〜1.2cmと7〜9mm。第2分枝の長さは不揃いで、その多くは5cm未満。第1分枝と第2分枝のなす角は大きく、60〜80°になる。第3分枝は第1・第2分枝の両方に見られ、第1分枝上での配置は不規則で、長さも不揃いだが、5mm〜1.2cmくらいのものが多い。第1・第2分枝と第3分枝のなす角はともに40〜90°。第2・第3分枝は緩やかに湾曲しているものが多い。中軸個体は多孔質で、1次隔壁は2/3Rまで発達。第2分枝での中軸個体の外径は2〜2.5mm、突出しないものから4mm近く突出するものまで様々。放射個体は外径2.5mm程度で、突出度合や向き、間隔は不揃い。第3分枝では放射個体の数が少なく、あまり突出しない。放射個体は管状で円形開口のものが多いが、枝の先端近くでは鼻形で卵形の開口部をもつものもある。1次隔壁は長さ1/2R前後。共骨は網目状で緻密、表面には単一尖端棘が発達する。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。深場では大群落を形成することが多い。
国内での分布:種子島以南。種子島では極めて稀。
* 種子島初記録種
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Acropora humilis (Dana, 1846)
ツツユビミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、10m)
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第2分枝の直径は1.5〜2cm。
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成長形:指状〜コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は太い円柱形か円錐形、基部は三角〜四角形になっていることが多い。中軸個体が1つだけの第2分枝は直径1.5〜2cm、長さ2〜2.5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は2cm未満。中軸個体は緻密で、外径は4〜5mmと大きく、突出しない。1次隔壁がよく発達し、長さ3/4Rほど。放射個体は大きく、外径1.7〜2mm。主に管状で、欠刻状のものもあるが、突出の程度や方向はよく揃う。開口部は卵形から円形。1次隔壁の長さは様々で、1/2R未満〜3/4R。共骨表面には側偏棘または細分尖端棘が密集し、放射個体の外側ではそれらが配列して肋を形成することもある。
生息環境:波当たりの強い礁縁から礁斜面の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
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Acropora hyacinthus (Dana, 1846)
ナンヨウミドリイシ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は5〜7mm。
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成長形:卓状群体。卓状部の高さは3cmほど。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円錐形で大きさがよく揃い、中軸個体が1つだけの場合、基部で直径5〜7mm、長さ1.5cm未満のものがほとんど。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm未満、先端に中軸個体が複数ある枝が多いと、間隔はより狭く見える。中軸個体は多孔質、外径は小さく1.5mmほどで、突出しない。1次隔壁の長さは1/2〜2/3R。放射個体は外径1〜1.5mmの欠刻状〜唇弁状で、開口部はほぼ水平で円形に見える。1次隔壁の発達が悪く、長さ1/2Rまで。共骨は放射個体の外側では肋状、放射個体間では網目状。表面には単一尖端棘〜側偏棘が発達する。
生息環境:波当たりの強い礁縁から礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はAcropora cytherea ハナバチミドリイシやA. spicifera クシハダミドリイシと混同されているため、種子島以北での生息状況については再検討が必要である。本種の新称和名は、本種が種子島以南のサンゴ礁域を代表するミドリイシ属の一種であることに由来する。
* 種子島初記録種
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Acropora intermedia (Brook, 1891)
トゲスギミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深4m)
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第2分枝の直径は1.5〜2cm。
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成長形:樹枝状群体
軟体部の色彩と特徴:褐色、クリーム色や青色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第1分枝は20cm以上伸び、枝の下方で円柱形、先端10cmほどは先端に向かって円錐形になる。先端から10cm付近の直径は約1.5〜2cm。第1分枝が20 cm以上に伸びたものの直径は、それ以上の太さになることがある。第2分枝は円錐形で、第1分枝の先端から10cmほどの間でよく発達する。長さは10cm未満、基部での直径は8mm〜1.5cmほど。第1分枝と第2分枝のなす角は50〜80°。中軸個体は多孔質で、外径3〜4mm、2〜3mmほど突出する。1次隔壁の長さは1/3〜2/3R。放射個体には次の2タイプがある。(1)外径1〜2.5mmで斜め上方向に1.5〜5mmほど突出した管状、欠刻状または鼻形になったもの。(2) 外径1〜1.5mmで埋在または密着管状になったもの。主に後者は前者の基部付近に発達する。前者は円形か卵形、後者は円形の開口部をもつ。放射個体の1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。共骨は、放射個体の外側で肋状、放射個体間では網目状で、ともに表面には単一尖端棘が発達する。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では極めて稀。
補足:本種はAcropora muricata スギノキミドリイシなど他の樹枝状ミドリイシ類と混同されているため、種子島以南での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Acropora japonica Veron, 2000
ニホンミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深3m)
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第2分枝の直径は5mm〜1.5cmで不揃い。
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成長形:指状〜コリンボース状群体で、岩盤を覆うように成長する。内湾や水深10m以深の波浪の弱い環境下では、芝草コリンボース状群体になることもある。
軟体部の色彩と特徴:黄緑色や緑色のものが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円錐形で、群体周縁で側方に長く伸びたものは円柱形に見える。太さや長さは不揃いで、枝基部は直径5mm〜1.5cm、長さ5mm〜2.5cm。隣接する第2分枝の中軸個体間の距離も不揃いで、1cm未満のところや3cm近く離れているところが混在。中軸個体は緻密で、通常はあまり突出しないが、ごく稀に1.5mmほど突出することもある。外径は2〜3mmのものが多いが、小さくて放射個体と区別がつかないものもある。1次隔壁はよく発達し、長さ2/3〜3/4R。放射個体は肥厚した密着管状で、開口部は円形で小さく、外径が1.5〜2mmのものと、1.2mm未満のものの2タイプが見られる。これら2タイプの配列は不規則なため、枝表面はでこぼこして見える。1次隔壁の長さは1/2Rほど。共骨は粗い網目状で、表面には単一尖端棘や側偏棘が並ぶ。
生息環境:波浪の影響をよく受ける岩礁域の水深5m以浅でよく見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県対馬〜種子島。種子島では普通種。
補足:本種のタイプ産地は宮崎県延岡市島浦。和名は野村・目崎(2005)に基づく。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:A. striataとして記録した可能性あり
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Acropora cf. latistella (Brook, 1892)
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市西浦、水深15m)
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第2分枝の直径は4〜5mm。
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成長形:樹枝卓状〜芝草コリンボース状群体で高さは5cmに満たない。第1分枝間が融合して板状群体になることもある。群体周縁では第2分枝の発達が悪く、第1分枝が側方に張り出したように見える。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。群体によって色彩の濃さが異なる。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、大きいものは直径4〜5mm、長さ2.5〜4cmになる。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm未満。中軸個体は多孔質だが堅固で、外径が約2.2mm、上方に2mm程度突出する。1次隔壁は、莢心近く(3/4R)まで発達することが多い。放射個体は、外径2mm未満で小さく、円形開口をもち、1次隔壁は2/3Rまで発達する。外形は主に密着管状で、枝の上方では唇弁状に近い。共骨の形状は、放射個体の外側も、隣接する放射個体間も肋状で、単一尖端棘で覆われる。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られ、開放的な湾ではより浅所でも見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:本種はAcropora latistella キクハナガサミドリイシ(本ガイド未掲載種)に似るが、第2分枝の直径や共骨の形状が異なるため、更なる分類学的検討が必要。また、A. cytherea ハナバチミドリイシやA. microclados マツバミドリイシと混同されているため、種子島以北での生息状況の再検討も必要である。
* 種子島初記録種
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Acropora microclados (Ehrenberg, 1834)
マツバミドリイシ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(西之表市上古田、水深5m)
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第2分枝の直径は5〜7mm。
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成長形:樹枝卓状〜芝草コリンボース状群体。卓状部の高さは5cm程度。
軟体部の色彩と特徴:主に明るい緑色や褐色。昼間も触手を長く伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は主に細い円柱形で、下方の放射個体がよく張り出した枝はやや円錐形にみえる。中軸個体が1つだけの第2分枝の直径は、基部で5〜7mm、先端近くで3〜5mm、長さは1.5〜2cmになる。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cm。一つの第2分枝の先端に、複数のよく突出した中軸個体と放射個体が発達することが多く、その場合は枝の直径はより太く、枝の間隔は狭くなる。第2分枝は群体の下面にもよく発達することがある。中軸個体は多孔質、外径2〜3mmで、あまり突出しないものから5mm以上突出するものまで様々。1次隔壁は2/3Rまで発達する。放射個体は円形〜卵形開口の薄い唇弁状や鼻形で、斜め上に向かってよく張り出す。外径2mm未満、1次隔壁の発達は悪い。共骨は、放射個体の外側で肋状、放射個体間で網目状、その表面には側偏棘が並ぶ。
生息環境:開放的な礁斜面の水深5〜15m付近で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。
補足:本種はAcropora cytherea ハナバチミドリイシやA. latistella キクハナガサミドリイシ(本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。本種の新称和名は、先端が細く枝分かれした第2分枝が松葉に似ていることに由来する。
* 種子島初記録種
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Acropora muricata (Linnaeus, 1758)
スギノキミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、1m)
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第2分枝の直径は1.2cm程度。
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成長形:樹枝状〜芝草状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。枝全体または枝の先端部のみが青色がかったものもある。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第1分枝は20cm以上伸び、下方では円柱形、先端10cmほどは円錐形になる。先端から10cm付近での直径は1.2cm程度。第2分枝は円錐形で、第1分枝の先端から10cmほどの間でよく発達し、長さは5cm未満、基部での直径は1cm未満のものが多い。第1分枝と第2分枝のなす角は通常50〜80°くらいで、たまに90°を超えるものもある。中軸個体は多孔質ではないが、もろくてつぶれやすい。外径2.5〜3.5mmであまり突出せず(2mm未満)、1次隔壁は1/2〜3/4Rまで発達。放射個体には2タイプあり、一つは円形開口の管状〜密着管状、外径1〜2.5mm。もう一つは円形開口の埋在〜密着管状、外径0.5〜1.5mm。後者は前者の基部近くでよく発達する。1次隔壁の長さは両タイプとも1/2〜2/3Rほど。共骨は、放射個体の外側で肋状、それ以外のところでは網目状になり、表面には単一尖端棘や側偏棘が見られる。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁域の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南。種子島では普通種。
補足:本種はAcropora intermedia トゲスギミドリイシなど他の樹枝状ミドリイシ類と混同されているため、種子島以南での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Acropora nana (Studer, 1878)
スゲミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深5m)
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第2分枝の直径は4〜6mm。
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成長形:繊細な外観の樹枝卓状、芝草コリンボース状、芝草状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色、褐色、クリーム色、青色や紫色など様々。枝の先端はピンク色などの淡色になることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は細い円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、直径4〜6mm、長さ3cmほどのものが多いが10cm近くまで伸びるものもある。隣接する第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cm程度で、ほぼ等間隔に並ぶ。ただし、第2分枝の分岐が顕著な部分では、その距離はより短い。中軸個体は緻密で外壁は厚く、先端がやや丸まった円筒形。外径1.5〜2mm、1.5〜2.5mmほど突出。1次隔壁は長さ2/3〜4/3R。放射個体は、円形開口の密着管状で、丸く肥厚するものもある。外径1.5〜2mm。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。共骨は堅固な網目状で、表面には細分尖端棘(一部は単一尖端棘)が密集する。
生息環境:潮通しのよい礁縁から礁斜面の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。
補足:本種は、同様の群体形になるAcropora aculeus ハリエダミドリイシやA. valida ホソエダミドリイシと混同されている。国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Acropora nasuta (Dana, 1846)
ハナガサミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、2m)
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第2分枝の直径は8mm〜1cm。
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成長形:高さが5cmほどのコリンボース状〜芝草コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は先端のほうがやや太い円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、基部で直径8mm〜1cm、長さ3cmほど。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cm。中軸個体は緻密で、外径2〜2.5mm、1mmほどしか突出しない。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。放射個体は外径1.5〜2mm。枝の上方では卵形開口の鼻形でよく張り出した個体が多く、下方では円形開口で密着管状の個体が多い。そのため、第2分枝を真上から見ると、中軸個体直下の放射個体がよく目立つ。共骨は緻密で、放射個体の外側が肋状に見えるが、全体的には網目状で、表面を多数の単一尖端棘が覆っている。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
*** これまで種子島で確認されていない種
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Acropora palmerae Wells, 1954
マツカサミドリイシ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町大塩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は1〜3cmとばらつく。
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成長形:被覆状〜指状群体。長さの不揃いな第2分枝が不規則に発達することがある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達するが、欠く場合もある。また、第2分枝先端に中軸個体が形成されていないものも見られる。よく発達した第2分枝は円柱形〜円錐形で、直径1〜3cm、長さ10cm未満。中軸個体は緻密で外径3mm前後、突出しない。1次隔壁は長さ1/2〜3/4Rで、同群体内でも個体によって様々。放射個体には、外径2mm前後で欠刻開口の管状〜よく開いた唇弁状のものと、1mm前後の密着管状〜埋在したものの2タイプが見られ、それらが群体表面に密集して分布する。両タイプとも1次隔壁の発達が悪く、長くても1/2Rまで。共骨は、放射個体の側面が肋状になることがあるが、大部分は網目状で、棘の発達が悪く表面は平滑に見える。
生息環境:波当たりの非常に強い礁縁から礁斜面の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:種子島以南。
補足:本種はAcropora aborotanoides トゲマツミドリイシやA. robusta ヤスリミドリイシ(両種とも本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要。本種の新称和名は、ささくれて見える放射個体によって、群体表面が松ぼっくりの表面に似ることに由来する。
* 種子島初記録種
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Acropora papillare Latypov, 1992
タケノコミドリイシ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:下池和幸(中種子町馬立の岩屋、水深1m)
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第2分枝の直径は2cm前後。
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成長形:主に指状群体。群体周縁の枝が側方に伸長したコリンボース状群体も見られる。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜淡褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円錐形〜円柱形。まれに枝の太さ、長さや間隔がよく揃う群体もあるが、通常はそれらが不揃いな群体のほうが多い。枝基部で直径2cm前後、長さ2.5〜3.5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は、枝が密集しているところで2〜3cmほど。中軸個体は緻密、外径3mm前後で突出しない。1次隔壁は長さ1/3〜3/4R。放射個体は外径1.5〜1.8mmで大きさがよく揃い、第2分枝の側面では密集して分布する。その形状は主に唇弁状で、下唇は枝の上部では薄く、下部ではやや肥厚して丸みを帯びて見える。1次隔壁の発達は悪く、長さ1/4〜1/3R。共骨は、放射個体の外側で肋状、その他の部分では網目状で、表面に単一尖端棘(一部は側偏棘)が密集する。
生息環境:波当たりの非常に強い礁縁〜礁斜面の浅所(特に水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:種子島以南。
補足:本種はAcropora aspera ヒメマツミドリイシ、A. monticulosa サンカクミドリイシやA. robusta ヤスリミドリイシ(これらの3種は全て本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。本種の新称和名は、枝の外観がタケノコに似ることに由来する。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Acropora sp. Japan 2として記録した可能性あり
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Acropora pruinosa (Brook, 1892)
ヒメエダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:横地洋之(静岡県西伊豆町田子、水深5m)
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第2分枝の直径は6〜8mm。
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成長形:芝草状〜樹枝状群体で、群体の高さが20cmを超えることもある。開放的な湾の岩盤上では、高さが10cmに満たない芝草コリンボース状群体になることもある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。黄緑色などの明るい色彩の群体も見られる。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は長さが5cm未満で、枝の下方では円柱形、先端1cm付近からは細くなって円錐形になる。また樹枝状群体の場合、多くの第2分枝は基部から1cmくらいのところで湾曲していることが多い。中軸個体が1つだけの第2分枝では、基部で直径6〜8mm。樹枝状群体の場合、第1分枝は10cm以上伸び、先端から8〜10cm付近で直径8mm〜1cmになる。先端から5cmほどの形状は第2分枝とほぼ同じ。第1分枝と第2分枝とのなす角は50〜70°。中軸個体は多孔質で、外径2〜3mm、突出程度は2mm未満。1次隔壁がよく発達し、長さ2/3〜1R。放射個体は着生管状で、外径2mm前後。開口部はきれいな円形で、1次隔壁は長さ2/3〜1R。共骨は網目状で、その表面に単一尖端棘や側偏棘が密集する。放射個体の側面では、これらの棘が一列に並んで肋状になることも多い。
生息環境:水深10m以浅の遮蔽的な湾の砂礫底や、開放的な湾の水深5〜10mの岩盤上などで大群落を形成しやすい。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南、ただし正確な分布南限は不明。種子島では記録されていない。
補足:本種はこれまでAcropora tumida エダミドリイシと混同されていた。本種のタイプ産地は長崎県対馬。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora secale (Studer, 1878)
トゲホソエダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市大原、水深9m)
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第2分枝の直径は8mm〜1cm。
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成長形:コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色で、枝の先端が紫色になることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は先端がやや太い円柱形。中軸個体が1つだけの第2分枝では、基部で直径8mm〜1cm、長さ2.5cmほど。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cm。中軸個体は緻密で外壁が厚く、先端がやや丸まった円筒形、外径3mm程度、1〜2.5mmほど突出。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。放射個体には2タイプあり、一つは外径1.8〜2.5mmの肥厚した鼻状〜管状で、卵形〜円形開口。もう一つは外径1〜1.2mmの埋在〜密着管状で円形開口。両タイプとも1次隔壁は長さ1/3〜2/3R。共骨は堅固な網目状で、表面には細分尖端棘が密生する。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
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Acropora cf. selago (Studer, 1878)
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、水深1m)
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第2分枝は直径が7〜9mm。
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成長形:高さ5cm未満のコリンボース状〜芝草コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形で大きさがよく揃い、中軸個体が1つだけの第2分枝では、直径7〜9mm、長さ2〜3cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.5cm前後。中軸個体は緻密で外径2〜2.5mm、あまり突出しない。1次隔壁は長さ1/2〜2/3Rほど。放射個体は欠刻状〜唇弁状、開口部は円形〜卵形で、外径1〜2mm、よく張り出す個体とほとんど張り出さない個体の2タイプがある。1次隔壁は長さ1/3〜1/2R。共骨表面は、放射個体の外側では肋状、放射個体間では網目状で、その表面には単一尖端棘が整列する。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、礁縁から礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種は西平・Veron (1995) でAcropora sp. Japan 2 として掲載されている種だと思われる。本種は、Acropora selago タチハナガサミドリイシ(本ガイド未掲載種)のほか、A. digitifera コユビミドリイシやA. millepora ハイマツミドリイシ(本ガイド未掲載種)と混同されている可能性があり、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora solitaryensis Veron and Wallace, 1984
ミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、水深3m)
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第2分枝の直径は1cmまで。
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成長形:高さ5cmを超える樹枝卓状〜芝草コリンボース状群体。水平に伸びた第1分枝間が部分的に融合して板状群体に見えることがある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は、群体によって円錐形になるものと円柱形になるものがあり、先端がさらに分岐することがある。枝先端が分岐していない第2分枝の長さは4cm程度。中軸個体が1つだけの第2分枝では、基部での直径は、円錐形のもので7〜9mm、円柱形のものだと8mm〜1cmでやや太め。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は、先端の分岐が少なく、長さもよく揃っている群体で1.5〜2cm程度。中軸個体は緻密で、外径2〜2.5mm、1〜1.5mm程度突出。一次隔壁は長さ1/3〜1/2R。放射個体は外径1.5〜2.5mmと大きめで、円形開口の鼻形または密着管状、第1隔壁は長さ1/2Rほど。共骨は、放射個体の外側で肋状、その他の部分では網目状で、表面に側偏棘(一部は単一尖端棘)がよく発達する。
生息環境:外洋に面した、またはやや遮蔽された礁斜面や岩礁域の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬〜沖縄本島北部。種子島では普通種。
補足:本種には、第2分枝の細いものと太いものの2タイプが含まれることから、更なる分類学的検討が必要と思われる。また本種は、種子島以北ではAcropora japonica ニホンミドリイシやA. cf.glauca エンタクミドリイシと、種子島以南ではA. cerealis ムギノホミドリイシ(本ガイド未掲載種)などと混同されている可能性がある。本種の和名は八木(1970)に基づく。
* 種子島初記録種
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Acropora spicifera (Dana, 1846)
クシハダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町大塩屋、水深4m)
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第2分枝の直径は4〜5mm。
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成長形:薄い卓状〜樹枝卓状群体で、卓状部の厚みは2cm未満。隣接する第1分枝同士が融合することがあるが、完全な板状にはならない。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。昼間も触手を長く伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は細く短い円柱形〜円錐形で、中軸個体が1つだけの場合、大きいもので直径4〜5mm、長さ7mm〜1.2cmほどになる。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm未満。中軸個体は多孔質で、外径約1.5〜2mm。群体周縁のものを除けば上方に突出することはない。1次隔壁は長さ1/2〜2/3Rほど。放射個体は外径2mm未満で、1次隔壁の発達が悪い。形状は主に欠刻状〜唇弁状、開口部の縁はほぼ水平だが、下唇がよく肥厚した放射個体はより斜め上に張り出したように見える。共骨は、放射個体の外側で肋状、放射個体間では網目状で、表面には側偏棘が並ぶ。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、礁縁〜礁斜面、岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島以南。
補足:本種はAcropora hyacinthus ナンヨウミドリイシと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
*** これまで種子島で確認されていない種
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Acropora tanegashimensis Veron, 1990
タネガシマミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は6〜8mm。
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成長形:>高さが1.5cm程度の薄い卓状群体で、第1分枝間が部分的に融合して板状に見えるところがある。
軟体部の色彩と特徴:暗い緑色〜褐色で、昼間も触手を伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形で、中軸個体が1つだけの第2分枝の場合、大きいもので直径6〜8mm、長さ5〜8mm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2cm未満。中軸個体は多孔質で、外径1.5mm前後と小さく突出しないため、放射個体と区別がつきにくい。中軸個体の1次隔壁は長さ2/3R程度。放射個体は、外径が中軸個体とほぼ同じかやや大きめで1.5〜2mm。外形は欠刻状〜唇弁状で、下唇が側方によく張り出す。放射個体は、方向隔壁が莢心近く(3/4R)まで発達するが、それ以外の1次隔壁の発達はよくない(1/4R〜1/3R)。共骨は、放射個体の外側で肋状、放射個体間では網目状で、表面には単一尖端棘や側偏棘が並ぶ。
生息環境:開放的、またはやや遮蔽された岩礁域の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本〜種子島。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は種子島西之表市住吉。本種はAcropora hyacinthus ナンヨウミドリイシやA. spicifera クシハダミドリイシと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora tenuis (Dana, 1846)
ウスエダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(西之表市浦田湾、水深5m)
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第2分枝の直径は8mm前後。
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成長形:樹枝卓状〜コリンボース芝草状群体で、卓状部の高さは5cmほどになる。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色で、放射個体の下唇が淡色で縁取られることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形で、中軸個体が1つだけの第2分枝の場合、基部で直径8mm前後、長さ3〜4cmのものが多い。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.2〜1.5cmほどでよく揃う。中軸個体は多孔質で、外径2.5〜3mm、1〜3mmほど突出する。1次隔壁は長さ1/3Rほど。放射個体は耳形〜唇弁状で下縁がよく張り出し、開口部は円形に見える。そのため第2分枝を真上から見るときれいなロゼッタ状に見える。外径1.5〜2.5mm、1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。共骨は、放射個体の外側できれいな肋状、放射個体間では網目状になる。表面には単一尖端棘が発達する。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では極めて稀。
** 今回の調査では確認できなかったが西平・Veron(1995)では種子島で確認されている種
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acropora tumida (Verrill, 1866)
エダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:杉原 薫(高知県大月町西泊、水深3m)
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第2分枝の直径は8mm〜1cm。
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成長形:指状またはコリンボース状群体。第1分枝が上方に伸びて芝草コリンボース状〜芝草状群体になるものもある。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色〜黄緑色で、褐色や緑色のものも見られる。中軸個体はクリーム色になることが多い。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第1・第2分枝は基本的に円柱形で、先端1cm付近から細くなって円錐形になる。中軸個体が1つだけの第2分枝の場合、基部の直径8mm〜1cm、長さは指状〜コリンボース群体で1.5〜3cm、芝草コリンボース状〜芝草状群体で7.5cmほどまで伸びる。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は、前者で1〜2cmほどだが後者ではそれ以上になる。第1分枝と第2分枝のなす角は、前者では50°を超えるが、後者では40°未満。中軸個体は多孔質で、外径は3〜5mm、先端が平坦でほとんど突出しない。1次隔壁はよく発達し、長さ1Rに達する。放射個体は外径2〜3mmのものが多く、主に鼻状〜下唇が肥厚した唇弁状で、開口部は円形〜卵形。1次隔壁は長さ2/3〜1R。共骨は、放射個体の側面では肋状、それ以外では網目状で、表面には単一尖端棘や側偏棘が発達する。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁域の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本〜高知県大月。種子島では記録されていない。
補足:本種はAcropora glauca ナカユビミドリイシやA. pruinosa ヒメエダミドリイシと混同されており、国内での生息状況は再検討する必要がある。野村・目崎(2005)のAcropora aff.samoensis は本種。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:A. excelsaとして記録した可能性あり
*生時写真の群体とは別群体(ただし同地点の同水深で採集されたもの)
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Acropora valida (Dana, 1846)
ホソエダミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Acropora Oken, 1815 ミドリイシ属 |
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撮影:鈴木 豪(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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第2分枝の直径は7〜9mm。
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成長形:コリンボース状、芝草コリンボース状、芝草状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡緑色〜淡褐色。枝の先端が紫色になることもある。
骨格の特徴:第2分枝まで発達。第2分枝は円柱形で、中軸個体が1つだけの場合、基部で直径7〜9mm、長さ3〜5cm。隣接した第2分枝の中軸個体間の距離は1.5〜2cmほどでよく揃う。中軸個体は緻密で、外径2.5mm前後、1〜2mmほど突出する。1次隔壁は長さ1/2〜2/3R。放射個体は管状〜鼻状で、開口部は円形〜卵形。外径1〜2mmで、よく突出するものとしないものの2タイプが混在する。1次隔壁の発達が悪く、長さ1/3R未満。共骨は主に網目状で、放射個体では側面が肋状になることがある。共骨表面には単一尖端棘や側偏棘が発達する。
生息環境:潮通しのよい礁池・礁湖や、波浪の影響の少ない礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はAcropora glauca ナカユビミドリイシと混同されているため、種子島以北での生息状況は再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Alveopora japonica Eguchi, 1975
ニホンアワサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Alveopora de Blainville, 1830 アワサンゴ属 |
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撮影:北野裕子(長崎県対馬市瀬ノ浦、水深3m)
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莢径は3〜4mmのものが多い。
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成長形:塊状群体で、きれいな球状になることが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜暗褐色で、口と触手先端は白いことがほとんど。触手の先端は丸く、それらの大きさはどれもほぼ同じ。
骨格の特徴:個体は多角形〜やや角ばった円形。同群体内での個体の大きさはやや不揃いで、多くの莢は長径3〜4mm、深さ3mmほど。群体によっては、それらがともに5mmを超える大きな個体を含むものもある。隔壁は細い針状で2次まで発達し、放射状に配列する。1次隔壁は長く、莢心近くまで達する。軸柱は通常未発達だが、莢下方での1次隔壁内縁の融合や、部分的なシナプティキュラ輪の形成が稀に見られる。2次隔壁は長さが1次隔壁の半分以下で、太さは1次隔壁と同程度だが、一部が未発達の場合もある。莢壁は薄く、多孔質でもろい。莢壁に開いた孔は縦長の楕円形〜円形で、比較的規則正しく上下左右に並んで見える。莢壁上縁には、先端が扁平な鋸歯がよく発達する。
生息環境:岩礁域の水深15m以浅から内湾の濁った浅瀬まで見られ、内湾環境では大群落を形成することがある。
国内での分布:千葉県勝浦・島根県隠岐〜南限不明。西平・Veron (1995) では種子島で記録されているが、これまでの我々の調査では確認できていない。
補足:本種の原記載は江口(1968)ではなく江口(1965)。タイプ産地が日本であることは間違いないが、残念なことにタイプ標本が指定されていないため、正確なタイプ産地は未定のままになっている。本種は、種子島以北ではAlveopora spongiosa アワユキサンゴと混同されている可能性があるため、そこでの生息状況については再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Alveopora spongiosa Dana, 1846
アワユキサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Alveopora de Blainville, 1830 アワサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(中種子町馬立の岩屋、水深14m)
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莢径は小さく2mm前後。
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成長形:主に被覆状〜塊状群体で、群体が小さいときは球状になりやすい。大きくなると、群体表面に複数の円柱状突起が形成されることもある。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、口の周辺と触手の先端が白くなる。ポリプ全体が白っぽい群体もある。触手が伸びていないポリプは朝顔の花弁状に見える。
骨格の特徴:個体は多角形〜円形で、莢径と深さは2mm前後。隔壁は針状で2次まで発達する。1次隔壁は莢下方のものほど長く、莢心またはその手前まで伸びる。2次隔壁は非常に短くて細く、肉眼では確認しづらい。軸柱は通常未発達だが、莢下方での1次隔壁の内縁の融合や、部分的なシナプティキュラ輪の形成が稀に見られる。莢壁は薄く多孔質だが堅固。孔は縦長の楕円形〜円形で、大きさや並び方は不規則。莢壁上縁には先端がやや尖った棒状の鋸歯が発達する。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深15m以深で見られる。開放的な湾では、それよりも浅いところで見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南。種子島では稀。
補足:本種は、莢径が同程度のAlveopora excelsa 、A. tizardi やA. fenestrata (これら3種は全て本ガイド未掲載種)と混同されている。また、小さな球状で触手が白っぽい群体は、A. japonica ニホンアワサンゴとも間違われやすい。今後、これらの種の国内での詳細な分布調査が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Acropora cuneataとして記録した可能性あり
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Astreopora macrostoma Veron and Wallace, 1984
オオクチアナサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Astreopora de Blainville, 1830 アナサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深5m)
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莢径は3mm前後。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。周縁が張り出して厚い板状になり、遊離した裏面に支根状の垂れ下がり部が不規則に形成されることがある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜淡褐色や緑色。
骨格の特徴:個体は、共骨表面から乳頭状に3mmほど突出するものから、ほぼ埋在しているものまで様々。群体中心付近の個体は向きが不規則だが、群体周縁では横を向くことが多い。隣接する個体の間隔は不揃い。莢は円形〜やや楕円形で、長径3mm前後。隔壁は通常2次まで発達し、莢壁上縁でわずかに突出する。1次隔壁は板状で、莢壁上縁は非常に短いが、莢下方は長く、莢心近くまで伸びる。1次隔壁の中には、内縁が湾曲して隣接する1次隔壁に融合したものも見られる。2次隔壁は板状、稀に針状で、非常に短く、莢壁上縁から莢下方までほぼ同じ長さ。共骨は多孔質で、表面には太くて長い細分尖端棘が密集する。突出した個体の莢壁外側では、棘が隔壁の延長部に放射状に並び、その一部は板状に融合して1次・2次肋を形成することがある。
生息環境:遮蔽的な湾、波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁域で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では普通種。
補足:本種はAstreopora gracilis センベイアナサンゴ(本ガイド未掲載種)やA. incrustans などと混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Astreopora incrustans Bernard, 1896
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Astreopora de Blainville, 1830 アナサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市中古田、水深10m)
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莢径は2mm未満で小さい。
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成長形:被覆状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜淡褐色や緑色。
骨格の特徴:個体は、群体表面から1〜1.5mmほど突出し、個体の間隔や向きは不規則。莢は円形、莢径2mm未満で小さい。隔壁は2次まで発達。1次隔壁は板状で、莢壁上縁では非常に短いが、莢心近くでは長くなる。莢心近くまで達した1次隔壁の中には、内縁がやや湾曲して隣接する1次隔壁に融合するものもある。2次隔壁は非常に短く、莢壁上縁から莢内の下方までほぼ同じ長さ。板状にならずに針状になる隔壁もある。共骨は多孔質で、その表面には細く短い単一尖端棘や細分尖端棘が発達する。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。波浪の影響が少ないところでは、より浅所で見られることがある。
国内での分布:高知県竜串以南。
補足:本種は莢径の小さいAstreopora myriophthalma アナサンゴ、A. expansa イタアナサンゴやA. listeri ヒラアナサンゴ(これら3種は全て本ガイド未掲載種)などと混同されている。よって、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Isopora aff. cuneata (Dana, 1846)
ヒラニオウミドリイシ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Isopora Studer, 1878 ニオウミドリイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市大原、7m)
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中軸個体は判別しにくい。
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成長形:被覆状群体。群体表面がコブ状に不規則に盛り上がる。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、クリーム色になるものもある。
骨格の特徴:真上または斜め上を向いた多数の中軸個体と放射個体が、群体表面に密集して分布する。中軸個体は管状で、外壁が厚く緻密、外径2〜3mm、1〜3mmほど突出する。1次隔壁の長さ1/2〜2/3R。放射個体には、外径2mm前後の管状〜密着管状のものと、外径1mmほどでほぼ埋在した管状のものの2タイプが存在する。前者の管状個体は1〜2mm程度突出する。1次隔壁の長さはどれも1/2Rまで。共骨は粗く堅固な網目状で、表面には細分尖端棘が発達する。また突出した放射個体の側面では、細分尖端棘の一部が融合して蛇行細分尖端棘になることがある。
生息環境:波当たりの非常に強い礁縁〜礁斜面、岩礁斜面の岩盤上や巨礫上で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:本種はIsopora palifera ニオウミドリイシ(本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。本種は、群体形や放射個体の形状がI. cuneata (本ガイド未掲載種)とは全く異なっている。
* 種子島初記録種
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Montipora aequituberculata Bernard, 1897
チヂミウスコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深5m)
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莢径は0.5〜0.6mm。
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成長形:扇状の薄い板状。群体の長径は約40cm。
軟体部の色彩と特徴:ポリプ・共肉は褐色、群体周縁は明色。
骨格の特徴:個体は板状群体の上下両面に分布し、下面の個体は上面のものよりも疎らに分布し小さい(莢径0.3〜0.4mm)。上面では個体は疎らで不均一に分布し、個体間隔は個体1〜5個分である。個体は共骨に埋没するものと、わずかに突出するものとがある。莢径は0.5〜0.6mm。隔壁は棘状の列よりなり、概して不完全・不規則である。方向隔壁は個体によって片側1本のみが認められ、長さは約0.8R。1次隔壁は長さ0.7R以下、2次隔壁は長さ0.4R以下で、両者の長さは概して明瞭に異なるが、個体によっては亜等長に揃う場合がある。莢壁輪は明瞭でリング状をなす。共骨上には微小突起がやや密に分布し、大きさや形はバラツキが大きい。微小突起は特に個体の周囲で発達し、突起が接合して個体を取り巻く場合がある。群体周縁の個体は周縁方向に向かって傾く傾向があり、そのような個体では個体後方の微小突起群が個体を被うように前方(周縁方向)に向かって伸長する。
生息環境:礁外縁の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:薄い板状群体を形成するMontipora foliosa ウスコモンサンゴ(本ガイド未掲載種)に似るが、この種は長い畝状突起を持つことで区別される。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Montipora aff. conferta Nemenzo, 1967
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深7m)
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莢径は約0.6mm。
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成長形:被覆状または準塊状。群体の長径は約30cm。
軟体部の色彩と特徴:ポリプ・共肉は褐色、粒状突起の表面の共肉は明色。
骨格の特徴:共骨上には、形が不規則な長径1〜2mmの粒状突起がやや密に分布し、微小突起を欠く。個体は密に分布し、個体間隔は個体1個分以内である。個体は共骨中に埋没し、突出しない。莢径は約0.6mm。隔壁はやや短く、最上方はやや上方に湾曲する。方向隔壁は1対または片側1枚が認められ、長さは約0.7R。1次隔壁は完全・不規則で長さ0.5R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さ0.4R以下で、部分的に1次・2次隔壁が亜等長に揃う場合がある。莢壁輪は明瞭で、莢壁輪の外周には裸地帯が認められる。共骨は粗い。個体の周囲を粒状突起が不完全な共骨壁様に取り囲む場合がある。
生息環境:水深10m前後の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:Montipora conferta (本ガイド未掲載種)に似るが、この種の隔壁は本種よりも短く、また、莢壁輪が不明瞭で裸地帯を欠くことで区別される。
* 種子島初記録種
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Montipora confusa Nemenzo, 1967
ミダレアミメコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市西浦、水深10m)
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莢径は0.8〜0.9mm。
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成長形:被覆状の基盤から指状または柱状の不規則で短い大型突起を上方に伸ばす。基盤周縁の一部は板状に張り出す。群体の長径は約60cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は淡褐色、ポリプは褐色。
骨格の特徴:群体表面は葉脈様の網目状隆起に被われるが、隆起の太さや形は不規則である。個体は隆起間に並び、共骨中に埋没していて突出しない。莢径は0.8〜0.9mm。隔壁は棘状の列よりなり、概して不完全・不規則。方向隔壁は個体によって片側1本のみ認められ、長さは0.7〜0.8R。1次隔壁は長さ0.7R以下、2次隔壁が長さ0.4R以下で、両者の長さは明瞭に異なる。莢壁輪は明瞭で、たいてい薄いリング状をなすが、ドーナツ状に盛り上がる場合もある。共骨は微小突起を欠く。
生息環境:水深10m付近の浅所。
国内での分布:種子島のみから知られる。種子島では稀。
補足:Montipora sp. AMIME. アミメコモンサンゴに似るが、この種の網目状隆起は細く比較的均一に分布することと柱状突起を持たないことで本種と区別される。新称和名は網目状隆起が不規則なことに因む。
* 種子島初記録種
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Montipora danae Milne Edwards and Haime, 1851
デーナイボコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市西浦、水深7m)
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莢径は約0.8mm。
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成長形:被覆状。群体の長径は約50cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉・ポリプ共に淡褐色。
骨格の特徴:群体表面には形や大きさ(直径2mm前後)がほぼ均一な疣状突起が密生するが、群体周縁では互いに接合して短い畝状突起を形成する。個体は疣状突起間のみに分布し、個体間隔は個体1個分以内で、共骨中に埋没し突出しない。莢径は約0.8mm。隔壁は棘状の列よりなり、方向隔壁は不明瞭、1次隔壁は完全・やや不規則で長さは0.6R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さは0.4R以下である。上方の隔壁はやや短いが、莢がすぼまるため莢底では1次隔壁が中心まで伸びて莢底部を塞ぐ。莢壁輪は明瞭で、細いリング状をなす。共骨は微小突起を欠き、棘は細く短い。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島ではやや稀。
補足:Montipora verrucosa イボコモンサンゴに酷似するが、この種の莢径は約1mmと大きいこと、隔壁が短くて莢壁がすぼまらずに垂直に落ち込むため莢内はポツンと穴がはっきり空いて見えること、群体周縁で畝状突起を形成しないことなどの特徴で本種と区別される。
* 種子島初記録種
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Montipora aff. digitata (Dana, 1846) sp. 3
ナガエダコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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莢径は約0.4mm。
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成長形:樹枝状。群体の高さ約10cm、基部の枝の太さ約1cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は淡褐色、ポリプは明色。
骨格の特徴:個体は均一に密に分布し、個体間隔は個体約1個分である。個体は共骨中に埋没し突出しない。莢径は約0.4mm。方向隔壁を含む1次隔壁はやや上方に突出し、1次隔壁と2次隔壁は長さが明瞭に異なる。方向隔壁は基本的に1本が認められ、長さは0.8〜1.0R。1次隔壁は完全・やや不規則で長さは0.7R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さは0.3R以下である。個体によっては、莢壁輪が明瞭でドーナツ状に盛り上がる。共骨は微小突起を欠き、棘は繊細で短く、共骨壁の発達も弱いため、共骨表面は滑らかに見える。
生息環境:礁池内の浅所。
国内での分布:種子島以南。
補足:共骨壁や微小突起を欠き共骨表面が滑らかなことと、方向隔壁と1次隔壁が長いことで他の樹枝状になるコモンサンゴ類と区別される。新称和名は近縁のMontipora digitata エダコモンサンゴ(本ガイド未掲載種)よりも隔壁が長いことに因む。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:M. informisとして記録した可能性あり
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Montipora grisea Bernard, 1897
グリセアコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深6m)
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莢径は約0.7mm。
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成長形:被覆状。群体の長径は約30cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は淡褐色。
骨格の特徴:個体は不規則に分布し、個体間隔は個体1〜3個分である。ほとんどの個体は共骨から1mm程度突出する。莢径は約0.7mm。隔壁は棘状の列よりなるが、方向隔壁は個体により歯状板を形成する場合がある。また、方向隔壁は概して不明瞭であるが、個体によっては片側1本枚のみが認められ、長さは約0.7Rである。1次隔壁は完全・やや不規則で長さは0.6R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さは0.4R以下。莢壁輪はやや明瞭で、薄いリング状。共骨上にはコンパクトな微小突起が密に分布し、個体の周囲のものは莢壁輪と接合して不完全な筒状の莢骨壁を形成する。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:個体のほとんどがわずかに突出するのが本種の特徴で、微小突起を持つ他の種と区別される。
* 種子島初記録種
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Montipora aff. hispida (Dana, 1846)
ホンドトゲコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市西浦、水深5m)
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莢径は0.6〜0.7mm。
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成長形:主要部分は被覆状で、周縁は部分的に板状に張り出す。また、上方に向かって不規則な柱状突起を伸ばす場合がある。群体の長径は約40cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は褐色・単褐色・単緑褐色・単紫褐色と変異があり、ポリプは共肉と同系色となる場合が多い。
骨格の特徴:個体の分布は不均一で、大型突起上では疎ら、突起間では密集する傾向がある。個体は埋没型と突出型の2型がある。莢径は0.6〜0.7mm。方向隔壁はやや不明瞭で、長さ0.5〜0.6R、概して1本のみが識別されるが、1対が莢奥で接合する場合もある。1次・2次隔壁はほぼ完全・規則的で、亜等長、長さ0.5R以下。莢壁輪は明瞭で、リング状または管状で、後者の場合は個体が明瞭に突出する。共骨上には微小突起が不均一に分布し、大きさや形のバラツキが大きいが、形がやや単純で平たく、表面の棘の毛足が細長い傾向がある。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:和歌山県串本〜種子島。種子島ではやや稀。
補足:Montipora hispida (本ガイド未掲載種)のタイプ標本とは隔壁や微小突起の形に相違が認められ、別種と判断される。本種は種子島以北の高緯度海域に分布する固有種と思われ、新称和名もこれに因む。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Montipora cf. informis Bernard, 1897
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深5m)
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莢径は0.6〜0.7mm。
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成長形:被覆状。群体表面は平滑か不明瞭な大小の瘤状突起が散在。群体の長径は約40cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は褐色。
骨格の特徴:個体は疎らに、かつ不均一に分布し、個体間隔は個体1〜4個分である。個体の多くは共骨に埋没するが、一部はわずかに突出する。莢径は0.6〜0.7mm。隔壁は基本的に棘状の列よりなるが、方向隔壁や1次隔壁の一部は歯状板を形成する場合がある。1次隔壁と2次隔壁は明瞭に長さが異なる。方向隔壁は1対が認められ、長さは約0.6〜0.8Rである。1次隔壁は完全・規則的で長さは0.7R以下、2次隔壁は不規則・不完全で長さは0.4R以下で、概して発達が悪い。莢壁輪は明瞭でリング状。微小突起は背が低く、概してコンパクトで、均一に密生する。また、大きさや形もほぼ均一であるが、個体によっては莢壁輪と接合した不完全な管状の共骨壁を形成する場合がある。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:Montipora informis (本ガイド未掲載種)のタイプ標本によく似るが、群体型や隔壁の構造に相違が認められる。微小突起を持つ他の種とは、本種の微小突起は短くてほぼ一様に密生すること、1次隔壁が長くかつ2次隔壁が未発達なこと、個体が疎らに分布することの特徴で区別される。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Montipora millepora Crossland, 1952
ミレポラコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深10m)
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莢径は0.4〜0.5mm。
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成長形:被覆状。群体表面は平滑か大小不規則な瘤状突起が散在する。群体の長径は約30cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は淡紫褐色・淡緑褐色・淡黄褐色等、ポリプは褐色、緑色等変異が多い。
骨格の特徴:個体は疎らに不均一に分布し、個体間隔は個体1〜5個分である。個体は共骨中に埋没するものと、やや突出するものとがある。莢径は0.4〜0.5mm。隔壁は棘状の列よりなるが、方向隔壁は歯状板を形成する場合がある。隔壁は幾分ねじれ、また、上方にやや突出する傾向がある。方向隔壁は1枚または1対が認められ、長さ約0.8R。1次隔壁・2次隔壁共に不完全・不規則で、1次隔壁の長さは0.7R以下、2次隔壁の長さ0.5R以下で、個体によっては両者の長さが亜等長に揃う場合がある。突出型の個体では莢壁輪は明瞭で、莢壁輪上やその周囲の棘と共に低く盛り上がる。共骨は微小突起を欠き、棘は繊細で短く、共骨表面は滑らかに見える。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではやや稀。
補足:Montipora mollis モリスコモンサンゴやM. aff.spongodes ミダレイボコモンサンゴに似る。前者は個体が密に分布し共骨から突出しないことで、後者は疣状突起を持つことで、本種と区別される。
* 種子島初記録種
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Montipora mollis Bernard, 1897
モリスコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深10m)
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莢径は0.6〜0.7mm。
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成長形:被覆状〜準塊状。群体の長径は約50cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉・ポリプ共に、褐色系と緑色系の2型がある。
骨格の特徴:群体表面には大きさや形が不均一な瘤状突起が散在する。個体は密に分布し、個体間隔は個体1個分以内。個体は共骨中に埋没し突出しない。莢径は0.6〜0.7mm。隔壁は棘状の列よりなるが、方向隔壁は歯状板を形成する場合がある。方向隔壁は通常1対が認められ、長さ0.9〜1.0R、上方にやや突出する。1次隔壁は完全・規則的で長さ0.7R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さ0.3R以下である。莢壁輪は明瞭で、裸地帯を欠く。共骨は微小突起を欠き、共骨壁は概して不明瞭である。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではやや普通。
補足:外見はMontipora millepora ミレポラコモンサンゴ、M. aff. spongodes ミダレイボコモンサンゴ、M. aff.turgescens アバタコモンサンゴに似る。前者は個体が疎らに分布し低く突出することで、中者は疣状突起を持つことで、後者は隔壁が短く裸地帯があることで、本種と区別される。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:M. spongodesとして記録した可能性あり
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Montipora monasteriata (Forskål, 1775)
トゲクボミコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町大塩屋、水深2m)
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莢径は約0.7〜0.8mm。
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成長形:被覆状〜準塊状。群体の長径は約50cm。
軟体部の色彩と特徴:ポリプ・共肉ともに褐色か、共肉は淡紫褐色でポリプは明色。
骨格の特徴:群体表面には直径1cm前後の瘤状突起が密に分布する。個体は密に分布し、特に瘤状突起間では顕著である。個体は共骨中に埋没し、突出しない。莢径は約0.7〜0.8mmである。隔壁は長く、方向隔壁と1次隔壁は上方に突出し、歯状板を形成する。方向隔壁は1枚または1対、長さは0.9R以下で、他の1次隔壁より肥厚する。1次隔壁は完全・規則的で長さ0.8R以下、2次隔壁は不完全・不規則、長さ0.3R以下で、両者の長さは明瞭に異なる。瘤状突起上では共骨壁はやや発達する傾向があり、そのような場所では莢壁輪と裸地帯が明瞭に認められる。共骨上には微小突起が疎らに分布し、接合した微小突起が個体を取り囲む場合がある。
生息環境:水深10m前後の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では普通。
補足:Montipora aff.turgescens アバタコモンサンゴに酷似するが、この種は隔壁が短く、また、微小突起を欠くことで本種と区別される。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:M. turgescensとして記録した可能性あり
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Montipora peltiformis Bernard, 1897
ムラサキコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市西浦、水深7m)
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莢径は0.7〜0.8mm。
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成長形:被覆状、表面には不規則な瘤状突起が散在。群体の長径は最大で約60cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は褐色、ポリプは紫色または褐色。
骨格の特徴:群体周縁を除いて個体は密集して分布し、個体間隔は個体1個分以内である。個体は共骨に埋没するが、わずかに突出する場合もある。莢径は0.7〜0.8mm。隔壁は棘状の列よりなるが、個体により方向隔壁が歯状板を形成する場合がある。方向隔壁は概して不明瞭であるが、片側1枚のみが認められる場合があり、長さは約0.8Rである。1次隔壁は完全・不規則で長さは0.5R以下、2次隔壁は不完全・不規則、長さは0.4R以下で、個体により1次・2次隔壁が亜等長に揃う場合がある。莢壁輪は明瞭なリング状。共骨上にはややコンパクトな微小突起が不均一に分布し、個体の周囲でわずかに発達する傾向がある。また、個体周囲の微小突起同士が接合して個体を不完全に取り囲む場合がある。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではやや普通。
補足:本種は個体が密集して均一に分布すること、微小突起はややコンパクトで不均一に分布すること、微小突起が接合して細長いシワ状の畝状突起を形成しないこと等の特徴で、微小突起を持つ他の種と区別される。本種はシワ状の畝状突起を持つとしてイタイボコモンサンゴの和名が与えられたが(白井・佐野, 1985)、この和名は誤同定に基づく。新称和名は本種が紫色のポリプを持つものが多いことに因む。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:M. undataとして記録した可能性あり
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Montipora aff. spongodes Bernard, 1897
ミダレイボコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市西浦、水深10m)
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莢径は約0.6〜0.7mm。
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成長形:被覆状。群体の長径は約30cm。
軟体部の色彩と特徴:群体周縁と粒状突起の共肉は淡桃褐色、その他の共肉とポリプは淡褐色。
骨格の特徴:群体表面には大きさや形が極めて不均一な疣状突起が疎らに分布する。個体は不均一に分布し、個体間隔は個体1〜5個分である。個体は共骨中に埋没し突出しない。莢径は約0.6〜0.7mm。隔壁は棘状の列よりなり、不完全・不規則である。方向隔壁は1枚または1対が認められ、長さ1.0R以下、1次隔壁は0.7R以下、2次隔壁は0.4R以下で1次隔壁と2次隔壁は個体によっては亜等長に揃う場合がある。莢壁輪はやや明瞭で、ドーナツ状に盛り上がる場合がある。共骨は非常に繊細な骨組みよりなり、棘も繊細で短いため、共骨表面は滑らかに見える。微小突起を欠く。
生息環境:水深10m前後の浅所。
国内での分布:和歌山県串本〜種子島。種子島では稀。
補足:疣状突起を持つ類似種に似るが、本種の疣状突起は不規則でかつ疎らに分布することで区別される。Montipora spongodes (本ガイド未掲載種)のタイプ標本に骨格形態が酷似するが、この種は疣状突起を持たない。なお、本種は種子島以北の高緯度海域に分布する固有種と思われる。新称和名は不規則な疣状突起を持つことに因む。
* 種子島初記録種
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Montipora aff. turgescens Bernard, 1897
アバタコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深6m)
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莢径は0.6〜0.8mm。
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成長形:被覆状〜塊状。群体の長径は最大約1m。
軟体部の色彩と特徴:ポリプ・共肉には変異が多く、淡褐色、褐色、緑色、緑褐色、暗桃色等がある。
骨格の特徴:群体表面には大小の不規則な瘤状突起が散在する。個体は通常密に分布し、共骨中に埋没する。莢径は0.6〜0.8mm。隔壁の長さは個体や群体によって変異が大きいが、概して短い。通常、方向隔壁が認められ長さは約0.7R、1次隔壁は不完全・不規則で長さ0.6R以下、2次隔壁は不完全・不規則、長さ0.3R以下で、部分的に1次・2次隔壁が亜等長に揃う場合がある。莢壁輪は明瞭で、莢壁輪の外周には裸地帯が認められる。通常、瘤状突起上では共骨壁がやや発達する。共骨は微小突起を欠く。
生息環境:水深10m以内の浅所。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では普通。
補足:Montipora mollis モリスコモンサンゴやM. monasteriata トゲクボミコモンサンゴに似る。前者は裸地帯を欠くことで、後者は共骨上に微小突起を持つことで、それぞれ本種と区別される。また、本種はM. turgescens ホンアバタコモンサンゴ(本ガイド未掲載種)に酷似するが、この種は莢径がより大きく、隔壁はより短く、共骨壁はより発達する等の相違が認められる。
* 種子島初記録種
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Montipora cf. undata Bernard, 1897
和名なし |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深7m)
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莢径は0.9〜1.3mm。
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成長形:被覆状〜準塊状。群体表面には瘤状〜柱状の短くて不規則な大型突起が不均一に分布。群体の最大長径は約60cm。
軟体部の色彩と特徴:ポリプ、共肉ともに淡褐色。
骨格の特徴:群体表面には大きさや形の不規則な畝状突起と疣状突起が不均一に分布する。畝状突起は短く、規則的な網目状構造は形成されない。個体はこれらの突起間または突起側面に分布し、突起上面には分布しない。個体は共骨中に埋没するか、わずかに突出する。莢径は0.9〜1.3mmで、群体によってバラツキが大きい。方向隔壁はやや不明瞭で、1次隔壁よりもわずかに長い程度。1次隔壁は完全・不規則で長さ0.6R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さ0.4R以下で、個体によっては両者が亜等長に揃う場合がある。莢壁輪は明瞭でリング状、裸地帯は不明瞭である。共骨は微小突起を欠く。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以南。
補足:Montipora undata (本ガイド未掲載種)のタイプ標本は莢径約0.6mmとやや小さく、畝状突起が細長く連なる等、本種との相違点が認められる。また、畝状突起を持つM. sp. AMIME. アミメコモンサンゴやM. confusa ミダレアミメコモンサンゴにも似るが、本種の畝状突起は基本的に網目状にならないことで区別される。
* 種子島初記録種
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Montipora aff. venosa (Ehrenberg, 1834)
コモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深6m)
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莢径は0.7〜0.9mm。
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成長形:被覆状〜準塊状で、群体表面には不規則な瘤状突起が散在。群体の最大長径は約50cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉は淡褐色、ポリプは淡褐色または褐色。
骨格の特徴:個体はほぼ均一に密に分布し、個体間隔は個体約1個分である。個体は共骨中に埋没し、突出しない。莢径は0.7〜0.9mm。隔壁は棘状の列よりなるが、個体によって方向隔壁ならびに1次隔壁の一部が歯状板を形成する場合がある。隔壁最上方は不完全・不規則で短いが、莢がすぼむため、方向隔壁と1次隔壁の全てまたは一部が底部で接合し、また、多くの個体で軸柱栓が認められる。なお、隔壁最上方での1次隔壁は長さ0.5R以下、2次隔壁は長さ0.3R以下で、方向隔壁はやや不明瞭。莢壁輪は明瞭で細いリング状で、裸地帯を欠く。概して共骨壁の発達は悪いが、瘤状突起上では部分的に発達する。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:三重県熊野・熊本県天草牛深〜種子島。
補足:Montipora venosa (本ガイド未掲載種)のタイプ標本に骨格形態が似るが、この種の莢壁はほぼ垂直に落ち込むこと、共骨壁がよく発達すること等の相違が認められる。なお、本種は種子島以北の高緯度海域に分布する固有種と思われる。
* 種子島初記録種
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Montipora verrucosa (Lamarck, 1816)
イボコモンサンゴ |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深7m)
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莢径は約1.0mm。
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成長形:被覆状。群体の長径は約15cm。
軟体部の色彩と特徴:色彩:共肉・ポリプ共に淡緑褐色。
骨格の特徴:群体表面には直径3〜4mmの疣状突起が密生。個体は粒状突起間のみで、個体1個分程度離れて分布する。個体は共骨中に埋没し突出しない。莢径は約1.0mm。隔壁は棘状の列よりなり、方向隔壁は不明瞭、1次隔壁は完全・やや不規則で長さ0.3R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さ0.2R以下である。莢壁は垂直に落ち込み、かつ隔壁が短いため、穴がはっきり空いて見える。莢底部では隔壁が互いに接合し軸柱栓を形成する。莢壁輪は不明瞭。共骨は微小突起を欠く。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:Montipora danae デーナイボコモンサンゴに酷似するが、この種の莢径(約0.8mm)は本種より小さいこと、莢底部が隔壁に隠れて識別し難いこと、群体周縁では部分的に疣状突起が接合して畝状突起を形成することで本種と区別される。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:L. explanataとして記録した可能性あり
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Montipora sp. AMIME.
アミメコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深7m)
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莢径は0.6〜0.7mm。
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成長形:被覆状、群体表面に不規則な瘤状突起が散在。群体の最大長径は約40cm。
軟体部の色彩と特徴:共肉・ポリプ共に淡褐色で、触手の先が明色になる場合がある。
骨格の特徴:群体表面は葉脈様の細かな網目状隆起に被われ、この隆起内に個体が1個または数個が並ぶ。個体は共骨中に埋没し、突出しない。群体周縁付近の個体は、周縁に向かって横向きに倒れる傾向がある。莢径は0.6〜0.7mm。隔壁は棘状の列よりなるが、方向隔壁は歯状板を形成する。方向隔壁は部分的に1枚または1対が認められ、長さは0.7〜0.9R。1次隔壁は完全・不規則で長さ0.5R以下、2次隔壁は不完全・不規則で長さ0.4R以下で、概して1次・2次隔壁は亜等長である。莢壁輪は明瞭、裸地帯を欠く。棘は短く繊細で、単純な針状か細長い薄片状をなす。共骨は微小突起を欠く。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島の他には宮崎県南郷町のみから採集されている。種子島ではやや稀。
補足:Montipora confusa ミダレアミメコモンサンゴに似るが、この種の網目状隆起は不規則で、上方に短い柱状突起を伸ばすことで本種と区別される。なお、本種は種子島以北の高緯度海域に分布する固有種と思われる。新称和名は網目状隆起を持つ特徴に因む。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Montipora sp. TANEGA.
タネガシマコモンサンゴ(新称) |
Acroporidae Verrill, 1902 ミドリイシ科
Montipora de Blainville, 1830 コモンサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市大原、水深10m)
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莢径は0.8〜0.9mm。
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成長形:基盤は被覆状または準塊状で、基盤からは指状ならびに瘤状の大型突起が不均一に突出する。基盤の周縁は板状に張り出す。群体によっては柱状突起も備える。
軟体部の色彩と特徴:共肉・ポリプ共に緑褐色で、触手の先端は明色に色分けされる。
骨格の特徴:個体の分布には疎密があり、大型突起上ではほぼ個体1個分間隔で均一に分布するが、大型突起間では個体はさらに密集する。また、大型突起上では共骨壁が発達するが、規則的なセリオイド構造は持たず、しばしば壁の中に個体が数個並ぶ。個体は大きく、莢径は0.8〜0.9mm。莢壁輪は明瞭なリング状、その周囲には裸地帯が認められる。隔壁は変異が大きく、大型突起間に分布する個体では隔壁はほとんど発達せず、莢内が円柱状に深く空いて見える。大型突起上の個体では、最上部の隔壁は短く、莢底に向かうにつれて長くなり、莢底部では方向隔壁と1次隔壁は互いに接合して小さな軸柱栓を形成する傾向がある。共骨は繊細でスポンジ状、棘も概して短く繊細で、単純な針状か細長い薄片状をなす。
生息環境:水深10m以浅の浅所。
国内での分布:種子島以外では記録されていない。種子島ではやや稀。
補足:共骨壁を持つ他の種に似るが、隔壁の構造、莢壁輪やその周囲の構造、共骨や棘の構造等に相違が認められる。なお、本種は未記載種である可能性がある。新称和名は種子島が初産地であることに因む。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptoseris glabra Dinesen, 1980
センベイサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Leptoseris Milne Edwards and Haime, 1849 センベイサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(中種子町馬立岩屋、水深10m)
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低次・高次隔壁の厚さの違いが明瞭。
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成長形:葉状〜板状群体。群体が小さな時は、漏斗状になっていることが多い。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。群体周縁は白っぽくなる。小さな群体では、中心個体を認識できることが多い。
骨格の特徴:個体は群体上面のみに分布し、サムナステロイド型に配列。中心のものを除く個体は楕円形で、長径3〜8mm、群体周縁を除く部分での個体の大きさは不揃いになりやすい。群体周縁の個体は、周縁に向かって横向きに傾斜しながら突出する。周縁以外では、個体が周縁に対してほぼ平行(群体の固着部を中心としてほぼ同心円状)に配列し、群体の基部から周縁付近まで満遍なく、近接しながら分布する。個体の隔壁・肋は4次まで発達。1次・2次隔壁・肋は3次・4次隔壁よりも厚く、上方によく突出する。1次・2次隔壁は円柱状〜扁平な板状の軸柱まで達するが、3次・4次隔壁は達しない。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:西平・Veron (1995) やVeron (2000) でLeptoseris explanata と掲載されているのは本種で、センベンサンゴの和名を担う種も本種である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptoseris hawaiiensis Vaughan, 1907
ハワイセンベイサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Leptoseris Milne Edwards and Haime, 1849 センベイサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深17m)
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低次・高次隔壁の厚さの違いが不明瞭。
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成長形:葉状〜板状群体。群体がまだ小さな時は、漏斗状になっていることが多い。
軟体部の色彩と特徴:褐色で、群体の周縁は白っぽくなる。小さな群体では、中心個体を認識できることが多い。
骨格の特徴:個体は群体上面のみに分布し、サムナステロイド型に配列。中心のものを除く個体は楕円形で、長径2〜5mm。群体上での個体の分布は不規則で、ほとんど個体が見られない部分もあれば、複数の個体が群体周縁と平行に並ぶ部分もある。個体は共骨に埋在するもの、丘状に突出するものから群体周縁に向かって横向きに傾斜しながら突出するものなど様々。隔壁・肋は4次まで発達し、その厚さや突出度合は次数によらずほぼ同じ。3次・4次隔壁は1次・2次隔壁に比べてわずかに短い。個体のすぐ外側では、肋が分岐したり蛇行したりすることがある。軸柱は発達が悪く、欠くものも少なくない。そのため肉眼では、莢心に小さな穴が開いたように見える。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深15m以深で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptoseris mycetoseroides Wells, 1954
アバタセンベイサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Leptoseris Milne Edwards and Haime, 1849 センベイサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町大塩屋、水深2m)
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コリンは同心円状に発達しやすい。
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成長形:被覆状群体。群体表面は起伏が激しい。群体周縁では、固着基盤から遊離して葉状になっていることもある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。群体周縁や隔壁・肋の上縁が白っぽくなることがある。小さな群体でも中心個体は見られない。
骨格の特徴:個体は楕円形で、長径2〜3mmの小さいものがほとんど。個体は群体上面のみに分布し、通常、群体の基部から同心円状・サムナステロイド型に配列する。しかしその配列は断続的で、個体の境界部でコリンが網目状に発達するため、その配列が認識しづらいこともある。隔壁・肋は4次まで発達し、その厚さや突出度合は次数によらずほぼ同じ。1次・2次隔壁に比べて3次・4次隔壁はわずかに短く、軸柱に達しない。軸柱は円柱状〜楕円柱状。1次隔壁の内縁部と軸柱との間に複数のパリが形成されることもある。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。ごく稀に礁池や浅礁湖の岩陰でも見られることがある。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptoseris yabei (Pillai and Scheer, 1976)
チヂミセンベイサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Leptoseris Milne Edwards and Haime, 1849 センベイサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(中種子町馬立の岩屋、水深13m)
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放射状に発達したコリンがよく目立つ。
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成長形:葉状〜板状群体。群体がほぼ平坦なもの、同心円状に波打つもの、葉状部が幾重にも重なったものも見られる。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。群体周縁とコリン上縁は白っぽくなる。小さな群体でも中心個体は見られない。
骨格の特徴:群体表面のコリンには、放射状に連なるものと同心円状に連なるものが見られ、コリンが格子状になったところの内側に1個〜複数個の個体がサムナステロイド型に配列する。同心円状よりも放射状のコリンのほうがよく目立つ。扁平な群体ほどその連続性がよく、同心円状に波打った群体では連続性が悪い。個体は楕円形〜多角形、長径2〜5mm、群体上面のみに分布する。隔壁・肋は4次まで発達する。1次・2次隔壁は3次・4次隔壁よりも上方に突出し、莢心近くまでよく伸びる。3次・4次隔壁は1次・2次に比べてやや薄く、莢心まで達することはない。軸柱は細い円柱状か、欠ける。群体の裏面は幅2.5mm〜1cmの畝状になっており、幅が狭いところでは畝の間が深い切れ込みになる。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pachyseris speciosa (Dana, 1846)
リュウモンサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pachyseris Milne Edwards and Haime, 1849 リュウモンサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市大原、水深10m)
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並行するコリンの間隔は2mm前後。
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成長形:葉状〜被覆状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。
骨格の特徴:個体は群体上面だけに分布。群体表面には、群体の中心から同心円状にコリンがよく発達し、平行に並ぶコリンの間に個体が配列するが、個々の個体は不明瞭。コリンは厚さ1〜1.5mm、高さ1〜2mmほど。並行するコリンの間隔すなわち個体直径は2mm前後。コリンの一部が途切れたところでは、モンティクルが発達することがある。個体の隔壁はコリン頂部から軸柱まで発達し、ほぼ同じ厚さ・長さで次数の違いは不明瞭、コリンの面に対して垂直に等間隔で整然と配列する。莢心に明瞭な軸柱を観察することはできないが、棒状または短い板状の軸柱がたまに見られることがある。群体裏面の周縁では、上縁に微小な鋸歯を持つ肋がよく発達する。これらの次数は不明だが、厚くてやや突出した肋と薄くてあまり突出しない肋が交互に並ぶ。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。礁池や浅礁湖の岩陰でも見られることがある。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではたまに見られる。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(P. minutaとして記録)
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Pavona cactus (Forskål, 1775)
サオトメシコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町大塩屋、水深5m)
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個体の長径は1mmほどで小さい。
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成長形:葉状群体。大きな葉状部の先端が分岐し、さらに小さな2〜3枚の葉状部を形成する。また、向きの揃った大小の葉状部が一部融合し、先端が蛇行した大きな葉状部を形成することもある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜緑色。葉状部の先端付近は他の部分よりも白っぽくなりやすい。
骨格の特徴:大きな葉状部の基部で厚さ3〜3.5mm、幅や高さは5cmほどまで成長する。その先端付近で、垂直または同方向に付属する小さな葉状部は、基部で厚さ2〜3mm、幅や高さは2cmほどまで成長する。個体は葉状部の両面に存在し、サムナステロイド型に配列する。大きな葉状部では、複数の個体が葉状部上縁とほぼ平行に連なって配列する。個体は円形〜楕円形で、長径が1〜1.5mmほどで小さいものが多いが、それらの中には1.5mmを超える大きめの個体が混在することもある。個体には、短い円柱状〜楕円柱状の軸柱と、1次と2次の隔壁・肋がよく発達する。1次隔壁は軸柱まで達する。2次隔壁は1次隔壁に比べて薄くて短く、軸柱に達しない。ただし、長径が1mmを超える大きめの個体では、薄く短い3次隔壁・肋が発達し、2次隔壁が1次隔壁とほぼ同じ厚さになって軸柱に達することもある。
生息環境:礁池・浅礁湖や、波浪の影響をあまり受けない礁斜面の深みや岩礁斜面で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pavona decussata (Dana, 1846)
シコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市大久保港、水深3m)
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個体の長径は3〜5mmと大きい。
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成長形:厚めの葉状〜板状群体。垂直方向に伸びた扇形の葉状〜板状部が、放射状または格子状に配列しながら成長し、きれいな半球状の塊状群体を形成することが多い。サンゴ礁の礁池や浅礁湖では、葉状部を欠いた被覆状群体になることもある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色。淡褐色〜黄褐色の群体も見られる。温帯域では、昼間でも触手を伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:大きな葉状部または板状部の基部で厚さ6mm〜1cmほど、幅や高さ5〜10cmほど。それらの先端近くで垂直または同方向に付属する小さな葉状部は、基部で厚さ3〜5mm、幅や高さ3〜5cmほどに成長する。個体は葉状部または板状部の両面に存在する。複数の個体が群体周縁とほぼ平行に連なりながらサムナステロイド型に配列する。ただし、大きさの異なる個体が混在する群体では、この配列が崩れることが多い。個体は長径3〜5mmほどの楕円形だが、出芽途中で複数の口を持った個体が多い場合は、より大きく見える。個体には1〜3次の隔壁・肋がよく発達する。軸柱は概して発達が悪く、まれに針状または薄板状のものが形成される程度。1次・2次隔壁はほぼ同じ厚さで、莢心または軸柱まで達する。3次隔壁は薄くて短く、莢心まで達しない。
生息環境:礁池・浅礁湖、水深15m以浅の潮通しのよい内湾や波浪の影響の少ない岩礁斜面で見られる。沖縄本島以北では、礁池や岩礁斜面の水深5m付近で大群落を形成することがある。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県五島福江島以南。種子島では普通種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pavona duerdeni Vaughan, 1907
ハマシコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:立川浩之(西之表市上古田、水深15m)
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個体の長径は2〜3mmと小さい。
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成長形:棍棒状〜板状群体で、群体周縁が葉状になることは極めて稀。大小複数の棍棒状〜板状部が一列に並び、さらに隣接する同様部とほぼ等間隔で同方向に並ぶ。そのため、全体としては半球状または不規則に盛り上がった塊状群体を形成することが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に灰褐色。淡褐色の群体も見られる。
骨格の特徴:板状部は厚さ3〜5cm、幅や高さ10cm以上になる。同属の葉状〜板状種のように、垂直方向に伸びる付属の板状部はあまり形成されない。個体は円形〜楕円形で、長径2〜3mm、サムナステロイド型に配列し、隣接する個体間隔は狭い。小さな個体では2次隔壁・肋まで、大きな個体では3次隔壁・肋まで発達する。ただし個体間隔が狭いため、同属他種に比べて肋が短い。前者は棍棒状〜板状部の先端で多く、後者はそれらの側方で多く見られる。特に前者は、隣接する個体同士で莢壁の一部を共有してセリオイド型に配列することが多い。個体は、先端の尖った円錐状〜やや扁平な楕円柱状の軸柱を持つ。1次隔壁は厚く、軸柱まで達する。3次隔壁・肋が発達した個体では、2次隔壁は1次隔壁と同程度の厚さになり、ほぼ全てが軸柱に達する。その場合、3次隔壁は2次隔壁とほぼ同じ厚さだが、軸柱に達することはない。2次隔壁・肋までしか発達していない個体では、2次隔壁は1次隔壁よりも短く、軸柱には達しない。
生息環境:波当たりの強い礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られ、特に礁斜面では、水深5m付近の縁脚上で見られる。
国内での分布:高知県竜串以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pavona explanulata (Lamarck, 1816)
ヒラシコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深11m)
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個体の莢壁は不明瞭。
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成長形:主に被覆状群体で、群体周縁は葉状になることが多い。また、群体中心部に棍棒状の突出部が不規則に形成されることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜赤褐色。昼間でも触手を伸ばしていることが多い。
骨格の特徴:個体は長径3〜5mmの円形〜楕円形で、群体周縁のものほど楕円形になりやすい。出芽途中の個体はより大きく見える。個体配列はサムナステロイド型。ただし、群体中心部や突出部の頂部では、個体間隔が密になってプロコイド型〜セリオイド型配列になることがある。群体周縁や葉状部では、群体の中心に近いほうの莢壁がわずかに突出し、個体が周縁を向くことが多い。隣接する個体間隔は広く、1cmほど開くことも珍しくない。個体の隔壁・肋は3次まで発達する。1次・2次隔壁は厚く、よく突出し、軸柱まで達する。3次隔壁は薄くあまり突出せず、1次・2次隔壁と規則正しく交互に配列し、そのほとんどは軸柱まで達しない。群体表面では、1次・2次隔壁・肋の上縁は薄くなっており、肉眼ではそれらが上方に突出したように見える。葉状部の裏面に個体は形成されないが、薄くて長い1次・2次肋と3次肋がよく発達し、それらが交互に配列する。軸柱は大きく、円形〜楕円形で上方によく突出する。出芽途中の個体では、軸柱が板状に長く伸びていることも多い。
生息環境:礁池・浅礁湖、潮通しのよい内湾の深みや波浪の影響の少ない岩礁斜面でたまに見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はPavona sp. コブシコロサンゴと混同されている可能性があり、国内での生息状況については再検討が必要。
* 種子島初記録種
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Pavona maldivensis (Gardiner, 1905)
モルジブシコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町馬立岩屋、水深12m)
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個体が丘状に突出しやすい。
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成長形:主に被覆状群体で、群体周縁は葉状になることが多い。また、群体中央に小さな楔状や棍棒状の突出部を持つものもよく見られる。
軟体部の色彩と特徴:灰色がかった褐色や緑色。葉状部の周縁や楔状〜棍棒状部の頂部の色は淡くなる。口盤が黄色などの違う色になった群体も多い。
骨格の特徴:個体は主に直径2〜3mmの円形だが、群体周縁では楕円形になることもある。楔状〜棍棒状部の頂部を除けば、隣接する個体間は離れており、サムナステロイド型に配列する。ただし、個体が丘状に突出しやすいため、プロコイド型配列のように見える。群体の裏面に個体が形成されることはない。群体上での個体の大きさや個体間隔は不規則。隔壁・肋は3次まで発達する。1次・2次隔壁は厚さも長さもほぼ同じで、軸柱まで達する。3次隔壁はそれらよりもやや薄くて短く、軸柱には達しない。軸柱は円柱状〜楕円柱状で、楔状〜棍棒状部の頂部の個体では未発達のものもある。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面の水深20m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pavona varians (Verrill, 1864)
シワシコロサンゴ |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立岩屋、水深6m)
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部分的にモンティクルが形成される。
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成長形:主に被覆状群体で、群体周縁が葉状になることはない。岩盤に固着せず、海底のサンゴ礫などを覆いながら成長した塊状群体も見られる。
軟体部の色彩と特徴:黄褐色〜褐色や緑色。
骨格の特徴:個体は角ばった円形〜多角形で、サムナステロイド型に配列する。個体は長径2〜5mm、大小様々な個体が群体上で不規則に分布する。隣接する個体間には、大きさの異なるモンティクルやコリンが不規則かつ断続的に形成される。複数のコリンが平行に長く連なったところでは、個体がメアンドロイド型配列のように見える。隔壁・肋は、莢径の小さな個体では2次まで、大きな個体では4次まで発達。莢径の小さな個体では、厚い1次隔壁のみが軸柱まで達し、薄い2次隔壁は達しない。莢径の大きな個体では、2次隔壁が1次隔壁と同程度の厚さになり、ともに軸柱まで達する。3次・4次隔壁はそれぞれ2次・3次隔壁よりも薄くて短い。軸柱は円柱状〜やや扁平な楕円柱状。
生息環境:礁池・浅礁湖の浅瀬や、礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:串本以南。種子島では稀。
補足:本種はPavona venosa シコロキクメイシ(本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pavona sp.
コブシコロサンゴ(新称) |
Agariciidae Lamarck, 1801 ヒラフキサンゴ科
Pavona Lamarck, 1801 シコロサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深5m)
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個体の莢壁は明瞭。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面に直径と高さが数cmほどのコブ状部が不規則に形成される。また、群体周縁がわずかに葉状になることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色で、灰色に近い色彩のものもある。昼間でも群体表面にびっしりと触手が伸びている。
骨格の特徴:個体は長径3〜5mmの円形〜楕円形で、群体周縁のものほど楕円形になりやすい。個体配列は基本的にセリオイド型だが、群体周縁では隣接する個体との間隔が広くなり、サムナステロイド型になることがある。隔壁・肋は3次まで発達。1次・2次隔壁は莢壁上縁でよく突出し、軸柱まで達する。3次隔壁は、1次・2次隔壁と比べると薄く、長さ1/3〜1/2ほどで、軸柱に達することはない。群体葉状部の裏面に個体は形成されないが、長く薄い肋が発達する。これらは次数による違いが不明瞭で、ほとんど突出しないため、肉眼では分かりにくい。軸柱は大きく、円形〜楕円形の棒状で、出芽途中の個体では、扁平な板状になっていることが多い。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南。種子島では稀。
補足:本種はPavona explanulata ヒラシコロサンゴやP. duerdeni ハマシコロサンゴと混同されている可能性があり、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Stylocoeniella guentheri (Bassett-Smith, 1890)
ムカシサンゴ |
Astrocoeniidae Koby, 1890 ムカシサンゴ科
Stylocoeniella Yabe and Sugiyama, 1935 ムカシサンゴ属 |
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撮影:出羽尚子(西之表市大久保港、水深9m)
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莢径は0.7〜1mm。
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成長形:主に被覆状群体で、群体表面に短い枝を持つ大きな半球状群体を形成することがある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色で、ポリプの口盤と触手の先端が白色などの薄い色になる。白っぽく見える個体が群体表面に密に満遍なく分布するので、群体表面が白っぽくぼやけて見える。
骨格の特徴:個体は多角形〜円形で、莢径は0.7〜1mm。個体間隔はやや不規則で、1mm以上空くところもあれば、密接して莢壁の一部を共有するところもある。隔壁は2次まで発達し、莢壁上縁でよく突出する。隔壁上縁には3〜4個の鋸歯が、隔壁と鋸歯の側面には多数の顆粒状の装飾が形成される。1次隔壁は莢壁側では厚いが、莢心側に向かって薄くなり、太くて緻密な円錐〜尖筆状の軸柱まで達する。1次隔壁内縁には、軸柱を取り囲むように3〜6個のパリが形成される。2次隔壁は1次隔壁に比べてやや薄く、半分以下の長さで軸柱に達することはない。共骨は緻密で堅く、その表面には短めの単一尖端棘が発達。また個体の莢壁外側に、直径または高さが最大で1mmほどの微小突起が不規則に形成されることがある。枝状部を持つ群体の場合、第1分枝の長さはcm未満で直径は1cm前後、第2分枝の長さは1.5cm未満で直径8〜9mmになる。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁域、内湾や礁池・浅礁湖で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Coscinaraea columna (Dana, 1846)
ヤスリサンゴ |
Coscinaraeidae Benzoni, Arrigoni, Stefani and Stolarski, 2012 ヤスリサンゴ科
Coscinaraea Milne Edwards and Haime, 1848 ヤスリサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は2〜4mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体の周縁が基盤から遊離して、やや板状に張り出すことがある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜赤褐色。よく発達したコリンの頂上部の両側に、昼間でもわずかに伸びた触手の先端が、白い点線状に並んで見える。
骨格の特徴:個体は多角形で、莢の長径は2〜4mm、サムナステロイド型に配列する。隣接する個体間には厚さが2mmほどのコリンがよく発達する。そのため莢内が深く、個体がセリオイド型またはメアンドロイド型配列に見える。隔壁・肋は3次まで、それらの上縁には先端が他方向に分岐した鋸歯がよく発達する。そのため隣接する隔壁・肋間が狭く、群体表面はザラザラして見える。1〜3次隔壁・肋の厚さと高さはほぼ同じ。1次・2次隔壁は長さがほぼ同じで、薄くなりながら莢心近くまで達する。3次隔壁の長さは1次・2次隔壁の半分以下。莢心近くでは、1次隔壁の先端から伸びたトラベキュラが絡み合い、その上部に鈍端な短い棒状の軸柱と複数の短いパリが形成される。軸柱部は周囲の隔壁内縁よりも低いため、莢心には明瞭な円形の中央窩が形成される。群体周縁の裏面にはエピテカが形成される。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Coscinaraea monile (Forskål, 1775)
ノマヤスリサンゴ |
Coscinaraeidae Benzoni, Arrigoni, Stefani and Stolarski, 2012 ヤスリサンゴ科
Coscinaraea Milne Edwards and Haime, 1848 ヤスリサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市浦田湾、水深6m)
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莢の長径は4〜6mm
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成長形:被覆状〜塊状群体。群体の周縁が基盤から遊離して、やや葉状〜板状に張り出すことがある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜暗褐色。低次隔壁・肋の上縁やコリン頂上部が白っぽく、ザラザラして見える群体が多い。昼間でも、先端が白く、太くて短い先細りの触手を出すことがある。
骨格の特徴:個体は多角形で、莢の長径は4〜6mmほどのものが多い。隣接する個体間には、厚さが3〜4mm、高さが最大で3mmほどのコリンまたはモンティクルが発達する。そのため個体配列はサムナステロイド型だが、実際はセリオイド型またはメアンドロイド型配列に見える。隔壁・肋は3次まで発達し、厚さはどれもほぼ同じ。隔壁・肋の上縁には、先端がねじれ、多方向に分岐した大きな鋸歯がよく発達する。よって群体表面はザラザラして見える。隣接する隔壁・肋はよく離れ、莢内は深く見える。1次・2次隔壁は、ともに薄くなりながら莢心近くまで達する。莢心近くでは、1次隔壁の先端から伸びたトラベキュラが絡み合い、軸柱を形成する。しかし、これらのトラベキュラ上部に棒状の軸柱やパリが発達することは稀。軸柱は周囲の隔壁内縁よりも低いため、莢心には明瞭な円形の中央窩が形成される。3次隔壁は発達するが、短くて莢心近くまでは達しない。群体周縁の裏面にエピテカは見られず、放射状に発達した細い肋が見られる。
生息環境:濁った環境を好み、礁斜面では水深20m以深で見られる。岩礁斜面では水深10m以深、岩礁域の内湾では水深10m以浅でも見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。
補足:本種はCoscinaraea crassa (本ガイド未掲載種)やCycloseris explanulata アミメマンジュウイシと混同されている。よって国内での生息状況について再検討が必要である。本種の和名とその由来は野村・目ア(2005)を参照。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Turbinaria frondens (Dana, 1846)
ウネリスリバチサンゴ |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:北野裕子(西之表市大久保港、水深9m)
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隔壁数は13〜18枚ほど。
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成長形:被覆状〜板状群体。群体の長径が50cm以上で、中心付近の厚さが2cmを超える群体は、群体周縁が大きく波打って、皿型またはすり鉢型になることが多い。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。緑がかった群体も見られる。
骨格の特徴:個体は円形〜やや楕円形で、莢の長径は1〜1.5mm。莢壁はよく突出する。被覆状に近い群体では、個体が1.5〜5mmほど不規則に突出し、円筒形や先細りの煙突型に見えることもある。個体の分布は均一。きれいな皿状〜すり鉢状群体では個体が同心円状に配列しやすい。隣接する個体間の距離は狭い。隔壁は13〜18枚ほどで等間隔に配列し、莢心に向かって急傾斜で落ち込む。軸柱は、複数のパリが集まった板状または小さな楕円丘形。共骨は多孔質だが、孔の形状や間隔は不揃い。共骨表面には単一尖端棘や細分尖端棘が発達するが、それらの大きさや間隔は不規則で、それらが畝状に配列することはない。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面で見られる。たまに浅礁湖内で見られることもある。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。
補足:本種はTurbinaria mesenterina スリバチサンゴと混同されており、特に種子島以北での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Turbinaria mesenterina (Lamarck, 1816)
スリバチサンゴ |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町大塩屋、水深2m)
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隔壁数は通常18〜20枚ほど。
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成長形:被覆状または葉状群体。直立した群体周縁が不規則に小さく波打つことが多く、群体中心部に円筒状の突起部が形成されることもある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形、莢の長径は通常1〜1.5mmほどだが、より大型の個体が混ざっていることもある。莢壁がほとんど突出しないため、個体は共骨に埋在するかわずかに盛り上がる程度。群体上での個体の分布は、被覆状部では密で不規則、葉状部では個体1つ分程度離れてほぼ均一に見える。軸柱は、複数のパリが一列に並んで融合した板状または楕円丘〜円丘形。隔壁は通常18〜20枚ほどだが、大型個体では26〜28枚ほどになることがある。隔壁は莢心に向かって急傾斜で落ち込むが、軸柱がよく発達して盛り上がるので、莢内はさほど深く見えない。莢壁は多孔質だが、孔が小さく目立たないので緻密な印象を受ける。莢骨表面には細分尖端棘や側偏棘が発達し、畝状に配列する。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面や、浅礁湖内や礁池内で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。
補足:本種はTurbinaria frondens ウネリスリバチサンゴ、T. stellulata ヒメスリバチサンゴやT. sp. イボスリバチサンゴなどと混同されており、特に種子島以北での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Turbinaria peltata (Esper, 1794)
オオスリバチサンゴ |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市浦田湾、水深6m)
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莢の長径は5〜6mmと大きい。
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成長形:主に板状群体で、長径50cm、中心付近の厚さ2cmを超える群体は、皿型またはすり鉢型になることが多い。また、群体中心部に直径が3cm前後の柱状部が発達することがある。さらに大きく成長すると、群体がバラの花弁のように幾重にも重なり、巨大な半球状群体に成長することもある。
軟体部の色彩と特徴:灰褐色〜褐色。昼間でも触手をよく伸ばしている。
骨格の特徴:個体は円形〜やや楕円形で、莢の長径は5〜6mmと大きい。莢壁は厚く、多くは上方に2〜5mmほど突出するため、個体は円筒状に突出して見える。隔壁は通常24枚だが、さらに24枚の非常に短い隔壁がそれらの間に発達することがある。隔壁の上縁と側面には、小さな鋸歯と顆粒状突起がそれぞれ発達する。軸柱は大きな楕円丘形で、複数の隔壁内縁部に形成されたパリ状葉部が絡み合うことで形成される。共骨は多孔質で、孔の形状や間隔は不揃い。共骨表面には単一尖端棘や細分尖端棘がよく発達する。また、隣接するそれらの棘の下部が部分的に融合して、共骨表面の一部が畝状に見えることがある。
生息環境:礁斜面の深場や、やや濁った岩礁域や遮蔽的な内湾部で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。
* 種子島初記録種
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Turbinaria reniformis Bernard, 1896
ヨコミゾスリバチサンゴ |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:北野裕子(西之表市大久保港、水深4m)
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隔壁数は16〜20枚で短い。
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成長形:被覆状、葉状〜板状群体。水平〜やや斜め上方向に伸びた複数の葉状部または板状部が重なり合った群体もある。
軟体部の色彩と特徴:主に黄褐色だが、莢内と群体周縁のみが黄色くなった褐色の群体もある。
骨格の特徴:個体はほぼ円形で、莢の直径は1.5〜1.8mm、莢壁も個体もあまり突出しない。個体は群体表面にほぼ均等に分布し、隣接する個体の間隔は個体1つ分かそれ以上離れていることが多い。隔壁は16〜20枚で短く、莢心に向かってほぼ垂直に落ち込む。そのため莢内は深く、軸柱部が広く見える。軸柱は複数のパリから形成され、その表面は平坦か、やや円丘状に盛り上がる。共骨は多孔質で、円形の孔がほぼ等間隔で開いている。共骨表面の棘は主に細分尖端棘で、部分的に単一尖端棘が混在することがある。また、棘が部分的に融合して畝状に見えることがある。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁域の浅所や浅礁湖で主に見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。
補足:本種はTurbinaria frondens ウネリスリバチサンゴ、Turbinaria sp.、T. mesenterina スリバチサンゴやT. stellulata ヒメスリバチサンゴなどと混同されており、特に種子島以北での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Euphyllia ancoraとして記録した可能性あり
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Turbinaria stellulata (Lamarck, 1816)
ヒメスリバチサンゴ |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深10m)
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隔壁数は通常24枚前後。
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成長形:被覆状または準塊状群体。群体の一部がコブ状に盛り上がったり、周縁が板状に張り出したりすることがある。群体の中心近くでの厚さは2cm以上になることもある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜暗褐色。莢内または群体全体が黄褐色になった群体も見られる。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、莢の長径は1.5〜1.8mmほど。莢壁は2mm程度まで突出するが、莢壁外側がよく肥厚するため、個体全体は円筒形というよりドーム型に盛り上がって見える。群体表面がコブ状に盛り上がった部分では、個体は大きく、よく突出し、隣接する個体間隔が広くなる。一方、群体周縁では、個体は小さく、あまり突出せず、隣接する個体間隔が狭くなる。隔壁は18〜30枚ほどで、通常は24枚前後が多い。高次隔壁の中には、短くて、隣接する低次隔壁側に湾曲しながら融合するものが見られる。そのため隔壁の長さと配列がやや不揃いな印象を受ける。莢壁がよく突出しており、隔壁は莢心に向かって急傾斜で落ち込むので、莢内は深く見える。軸柱は複数のパリから形成されるが、発達の度合は様々。よく発達した軸柱は楕円丘形〜円丘形になる。共骨は多孔質だが、孔は小さく緻密に見える。共骨表面には細分尖端棘が密集し、部分的に単一尖端棘が混在する。また、棘が部分的に融合し、畝状に見えることがある。
生息環境:主に岩礁域や浅礁湖の浅所で見られる。
国内での分布:種子島以南。
補足:褐色の群体はTurbinaria frondens ウネリスリバチサンゴと、黄褐色の群体はTurbinaria reniformis ヨコミゾスリバチサンゴと混同されており、特に種子島以北での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Turbinaria sp.
イボスリバチサンゴ(新称) |
Dendrophylliidae Gray, 1847 キサンゴ科
Turbinaria Oken, 1815 スリバチサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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隔壁数は13枚前後と少ない。
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成長形:被覆状または葉状群体。群体表面は不規則に波打つことが多い。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。
骨格の特徴:個体は円形で、莢の直径は1〜1.3mm。莢壁が通常1〜1.5mmほど突出し、個体は押しつぶされたような円筒形に見える。まれに5mm近く突出した個体が見られる。群体表面での個体の分布は不規則で、個体同士が密接しながら同心円状に配列することもあれば、5mm前後離れていることもある。隔壁は13枚前後と少なく、等間隔に配列する。これらは莢壁側でやや厚く、莢心側に向かって薄くなりながら急傾斜で落ち込む。軸柱は複数のパリが集まってできた円丘形で、小さいものの肉眼でもよく認識できる。ただし、パリの発達が悪く、棒状にしか見えない個体も見られる。共骨は多孔質で、小さな円形の孔が等間隔で規則正しく開いており、スポンジ状に見える。共骨表面には単一尖端棘や細分尖端棘がよく発達する。棘の大きさや間隔はよく揃う。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁域の浅所や浅礁湖で主に見られる。
国内での分布:現時点では種子島のみから知られている。ただし本種はTurbinaria frondensウネリスリバチサンゴ、T. mesenterinaスリバチサンゴやT. reniformisヨコミゾスリバチサンゴと混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Euphyllia fimbriata (Spengler, 1799)
ナガレハナサンゴ |
Euphylliidae Alloiteau, 1952 ハナサンゴ科
Euphyllia Dana, 1846 ナガレハナサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深12m)
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フラベロメアンドロイド型の群体。
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成長形:花束状群体。遠くから見ると半球形の塊状に見える。直径1mを超えることも珍しくない。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色で、灰色または黄色がかった明るい色になる。触手は昼間でもよく伸長する。触手先端は腎臓型(または錨型)で、弧状になった縁は白っぽくなることが多い。樹枝状部の側面は、下方まで乳白色の共肉で覆われることが多い。
骨格の特徴:個体配列は、ファセロイド〜フラベロメアンドロイド型。樹枝状部先端の個体は、外縁がやや外側に開いた円形〜楕円形で、一つの莢の長径は2〜3cm。莢心に軸柱を欠くが、軸柱相当部が同じ莢内に4個以上存在して莢がいびつになり、長径が5cmを超えることがよくある。5次隔壁・肋まで発達し、次数ごとに高さと長さが異なる。それらの上縁と側面には鋸歯や顆粒状の装飾はほとんど発達しない。1次隔壁の上縁は莢壁上縁で上方によく突出し、そこから莢心に向かって急傾斜で落ち込む。また、莢心近くでは1次隔壁の内縁がやや湾曲する。2次隔壁の形状も同様だが、1次隔壁ほどは突出せず、莢心まで達しないものや内縁が湾曲しないものが見られる。肋も同様に5次まで発達するが、5次肋が未発達の個体もある。1次・2次隔壁は長さ1cmを超え、断続的に群体の基部まで伸びることがあるが、それ以外の肋は長さ1cmに満たないものがほとんど。
生息環境:水の濁った砂礫底を好む。波当たりが弱い礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られ、内湾や礁池・浅礁湖にも稀に生息することがある。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通以南。種子島では稀。
補足:本種はEuphyllia ancora と混同されており、国内での生息状況の再検討が必要である。E. ancora は個体配列がフラベロメアンドロイド型のみで、E. fimbriata に比べ莢の短径が小さく(群体上に形成された長い谷状部の幅が狭く)、隔壁数も少ない。ナガレハナサンゴの和名を担うのは本来E. fimbriata であることから、E. ancora の新称和名を、細く長い谷状部をもつことに因んでホソナガレハナサンゴとする。
* 種子島初記録種
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Euphyllia paraglabrescens Veron, 1990
ハナサンゴモドキ |
Euphylliidae Alloiteau, 1952 ハナサンゴ科
Euphyllia Dana, 1846 ナガレハナサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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個体配列は基本的にファセロイド型。
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成長形:花束状群体。遠くから見ると半球形の塊状群体に見える。直径15cmほどまで成長する。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色で、灰色または黄色がかった明るい色になる。また同じ群体内でも部分的に色が異なることもある。触手は昼間でもよく伸長する。触手の先端は球形で、その輪郭は白っぽい。樹枝状部の側面は、下方まで乳白色の共肉で覆われることが多い。
骨格の特徴:個体はファセロイド型に配列。樹枝状部先端の個体は、外縁が朝顔のようによく開いた円形〜楕円形で、一つの莢の長径は2〜4cm、軸柱を欠く。出芽途中の場合は、軸柱相当部が同じ莢内に2〜3個存在することがある。5次隔壁・肋まで発達し、次数ごとに高さと長さが異なる。それらの上縁と側面には鋸歯や顆粒状の装飾はほとんど発達しない。1次隔壁の上縁は莢壁上端でよく突出し、莢心近くまでは緩やかに傾斜した後、莢心に向かって急傾斜で落ち込む。また、莢心近くでは1次隔壁の内縁がやや湾曲する。2次隔壁も同様の形状をしているが、1次隔壁ほどは突出せず、莢心まで達しないものや内縁が湾曲しないものが多く見られる。肋も同様に5次まで発達する。莢壁の外側での肋の高さは1mmほどで、1次・2次隔壁の長さは1cmを超え、断続的に群体の基部まで伸びることがあるが、それ以外の肋は長さ5mmに満たないものがほとんど。
生息環境:水の濁った砂礫底を好む。波当たりが弱い礁斜面・岩礁斜面や、内湾の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島のみ。種子島では局所的に普通種。
補足:本種のタイプ産地は種子島大塩屋。
*** これまで種子島で確認されていない種
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Galaxea fascicularis (Linnaeus, 1767)
アザミサンゴ |
Euphylliidae Alloiteau, 1952 ハナサンゴ科
Galaxea Oken, 1815 アザミサンゴ属 |
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撮影:立川浩之(中種子町馬立の岩屋、水深20m)
隔壁は莢壁上縁で鋭く突出する。 |
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成長形:被覆状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜黄緑色、褐色〜赤褐色など。莢の上方によく伸びた隔壁によって、個々の個体がアザミの花弁状に見える。触手は昼間でもよく伸び、その先端は白く見える。
骨格の特徴:個体の配列はプロコイド型。個体は円形〜角ばった楕円形で、群体の中心付近の個体ほど大きく、周縁のものほど小さい。群体中心部での個体は、長径が5〜7mm、泡状の共骨表面から8mm〜1cmほど円柱〜楕円柱状によく突出する。隣接する個体の間隔は2〜3mm。このように群体上での個体の大きさ、突出度合や間隔がよく揃うので、個体は整然と配列しているように見える。隔壁は3次まで発達し、隔壁はどれも莢壁上縁で厚く、上方に鋭く突出する。それらは莢壁上縁から莢心に向けて薄くなりながら急傾斜で落ち込む。1次・2次隔壁は莢心まで達するが、3次隔壁はそれらの半分ほどの長さで莢心には達しない。通常、軸柱は未発達だが、個体によっては1次・2次隔壁の内縁部が湾曲しながら肥厚し、隣接するものと密着して軸柱状の構造を形成するものもある。肋はわずかに発達するが目立たない。群体の裏面では、同心円状に発達したエピテカが見られる。
生息環境:サンゴ礁の礁池・浅礁湖〜礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はGalaxea astreata (本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況の再検討が必要。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Diaseris distortaとして記録した可能性あり
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Cycloseris costulata (Ortmann, 1889)
スジマンジュウイシ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Cycloseris Milne Edwards and Haime, 1849 マンジュウイシ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深16m)
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裏面には肋がよく発達する。
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成長形:成熟個体は非固着性の単体で、個体は円盤型〜やや楕円盤型になる。中央部が盛り上がったり、周縁がわずかに波打ったりすることもある。個体の長径は通常5cm前後のものが多いが、10cm近くまで成長することもある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。表面に暗褐色または白っぽい斑紋が付くことが多い。
骨格の特徴:個体の表面は、周縁から中心にかけてドーム状またはやや円錐状に盛り上がり、中心部は1〜1.5cmほどの高さになる。口盤を含む中央窩の長径は、個体の長径の1/6ほどまで。隔壁は通常6次まで発達するが、大型の個体では部分的に7次隔壁まで形成されることもある。隔壁の長さは次数ごとに明瞭に異なり、高次のものほど短い。ただし、5次隔壁は1次・2次隔壁とほぼ同じ長さになり、中央窩まで達する。1〜4次隔壁は厚さと高さがあまり変わらず、中央窩側では肥厚してローブ状に突出したり、左右に波打ったりすることがある。一方、5次・6次隔壁は薄く、突出しない。個体の裏面には肋がよく発達する。それらは次数に関わらずほぼ同じ厚さで、ほぼまっすぐに伸びており、左右に大きく波打つことはない。肋の上縁には、先端の尖った小さな鋸歯が整然と並ぶ。個体壁は緻密で孔は開かず、表面は平滑に見える。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の砂礫底で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでCycloseris tenuis マンジュウイシモドキやC. vaughani (本ガイド未掲載種)と混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:C. vaughaniとして記録した可能性あり
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Cycloseris explanulata (van der Horst, 1922)
アミメマンジュウイシ(新称) |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Cycloseris Milne Edwards and Haime, 1849 マンジュウイシ属 |
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撮影:杉原 薫(長崎県上五島中通島青木、水深15m)
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個体の長径は2.5〜4mmで不揃い。
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成長形:固着性の被覆状群体。群体周縁は基盤から離れるが、葉状になって上方にめくれることはない。
軟体部の色彩と特徴:黄緑色〜緑色。生時でもよく密集・突出した1次隔壁を認識できる。昼間でも先端の白い触手をわずかに伸ばしていることがある。
骨格の特徴:個体は長径2.5〜4mmの角ばった円形〜楕円形で、それらの配列はサムナステロイド型になる。群体上での個体の大きさや間隔は不揃い。隔壁・肋は3次まで発達し、低次のものほど厚く、莢壁上縁付近でよく突出する。またこれらの上縁には複数の尖端をもつ鋸歯が、側面には先端の尖った微小突起がよく発達する。そのため、肉眼では群体表面がザラついて見える。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。3次隔壁は軸柱まで達せず、その手前で2次隔壁に融合する。1次隔壁の中には、隣接する個体と1次肋でつながらずに、隔壁上縁で厚く肥厚して花弁状になることがある。軸柱は、隔壁内縁から伸びた複数のパリと棒状突起で形成されるが、パリが未発達の個体も多い。個体間隔が広いところでは、隣接する肋間を格子状につなぐシナプティキュラがよく発達する。そのため共骨表面がきれいな網目状に見える。肋は、群体の裏面でも確認できるが、次数は不明瞭でどれも目立たない。
生息環境:岩礁斜面の水深15m以深、または内湾の水深5m以深の岩盤上や巨礫上で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通島以南。種子島では記録されていない。
補足:本種の新称和名は、個体配列がサムナステロイド型で、隣接する隔壁間が多数のシナプティキュラで格子状に連なって網目状に見えることに由来する。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Cycloseris sinensis Milne Edwards and Haime, 1851
シナマンジュウイシ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Cycloseris Milne Edwards and Haime, 1849 マンジュウイシ属 |
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撮影:梶原健次(撮影地点とその水深、標本の所在は不明)
*生時写真の群体とは別群体(鹿児島県喜界島志戸桶、水深30mで採集)。 |
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成長形:成熟個体は非固着性の単体で、個体は円盤型のものもあるが、どちらかというと放射状の切れ込みが入った花弁形や、それらが割れて扇形や腎臓形になったものが多い。個体の長径は大きなもので3cm前後。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。高次隔壁上に暗褐色または白っぽい小さな斑紋が付く。
骨格の特徴:個体は扁平か、中心がやや盛り上がり、中心部の高さ1cm未満のものがほとんど。中央窩の長径は、個体の長径の1/5ほどまで。隔壁は通常7次まで発達する。それらの上縁と側面には、顆粒状の装飾が付いた鋸歯と微小突起がよく発達し、整然と密に配列する。隔壁の長さは次数ごとに明瞭に異なるが、厚さや高さは7次隔壁を除けばほとんど変わらない。1〜6次隔壁は厚く、特に内縁に向かうほどよく肥厚する。またそれらは、緩やかに波打っていることが多い。7次隔壁は薄く、隣接する1〜6次隔壁の間を充填するように発達する。この隔壁は、3〜6次隔壁とそれらの内縁で融合している。7次隔壁の鋸歯は他の隔壁のそれらに比べて大きいため、7次隔壁の上縁は点線状にみえる。個体の裏面では表面の隔壁に対応した肋がよく発達する。ただしこれらは突出したり波打ったりすることはなく、中心にいくほど配列が不明瞭になる。肋の上縁には先端の尖った小さな鋸歯が規則正しく配列する。個体壁は緻密で孔は開かない。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の深みの砂礫底で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでCycloseris distorta (本ガイド未掲載種)と混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Fungia scutariaとして記録)
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Cycloseris tenuis Dana, 1846
マンジュウイシモドキ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Cycloseris Milne Edwards and Haime, 1849 マンジュウイシ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深17m)
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裏面では低次隔壁のほうが目立つ。
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成長形:成熟個体は非固着性の単体で、個体は円盤型〜やや楕円盤型になる。中央部が盛り上がったり、周縁がわずかに波打ったりすることもある。個体の長径は通常5cm前後のものが多いが、10cm近くまで成長することもある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。個体表面に暗褐色または白っぽい斑紋が付くことが多い。
骨格の特徴:個体の表面は、周縁から中心にかけてドーム状またはやや円錐状に盛り上がり、中心部は1〜2cmほどの高さになる。中央窩の長径は、個体の長径の1/5ほどまで。隔壁は通常6次まで発達するが、大型個体では7次隔壁まで形成される。隔壁の長さは次数ごとに明瞭に異なり、高次のものほど短い。ただし6次隔壁は、まず5次隔壁の内縁で融合し、次に4次隔壁の内縁で融合し、さらに3次隔壁の内縁で融合しながら1次・2次隔壁とほぼ同じ長さになり、中央窩まで達する。1〜5次隔壁は厚さと高さがあまり変わらず、中央窩側で肥厚したりローブ状に突出したり、わずかに左右に波打ったりすることがある。一方、6次隔壁は薄く突出しない。個体の裏面には、まっすぐ、またはやや波打った肋がよく発達する。肋は中心に向かうにつれて不明瞭になる。肋上縁には、先端が尖り側面に顆粒状の装飾が付いた小さな鋸歯がやや不規則に並ぶ。鋸歯は1〜4次肋で顕著に発達するため、1〜4次肋は5次・6次肋に比べるとよく目立つ。個体壁は緻密で孔は開かず、表面は平滑に見える。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の砂礫底で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:マンジュウイシモドキの和名を担うのは本種。本種はこれまでCycloseris costulata スジマンジュウイシやC. vaughani (本ガイド未掲載種)と混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Lithophyllon undulatum Rehberg, 1892
カワラサンゴ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Lithophyllon Rehberg, 1892 カワラサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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周縁個体の莢の長径は4mm〜1cm。
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成長形:サンゴ礁域ではいびつな楕円形の被覆状群体に、温帯域では数十cmを超える大きな葉状または板状群体になる。葉状・板状群体は幾重にも重なりながら成長する。これらの群体は、深場では水平方向に、浅場では群体周縁が波打ち、斜め上方向に成長することが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色。黄緑色の明るい群体も見られる。昼間でも円錐状の太い触手を5mm程度伸ばしていることがある。
骨格の特徴:個体は楕円形で、群体上面のみに分布する。幼群体では中心個体を認識できるが、群体の成長とともに周縁個体しか認識できなくなる。周縁個体の莢は長径が4mm〜1cm、個体の数や大きさ、間隔は群体によって異なる。周縁個体はサムナステロイド型に配列し、部分的に同心円状に配列する。周縁個体の隔壁・肋は4次まで発達し、上縁には棘状の装飾を持つ細長い鋸歯がよく発達する。1次隔壁・肋では、それらの鋸歯間が部分的に融合する。1次と2次の隔壁・肋は厚く、よく突出するが、3次と4次の隔壁・肋は薄くてあまり突出しない。1次・2次隔壁の内縁は、上方と軸柱側に向かってローブ状に張り出しながら軸柱に達する。3次隔壁は軸柱まで、4次隔壁は軸柱手前まで発達する。また4次隔壁は、軸柱手前で3次隔壁側に湾曲しながら融合する。軸柱は大きくて明瞭。共骨は、垂直方向に伸びた板状の肋とそれらを水平に連結する棒状のシナプティキュラからなる。このシナプティキュラは、肋の下方で等間隔に規則正しく配列する。群体裏面には肋が発達するが、それらの上縁に鋸歯はあまり発達しない。個体壁は緻密で表面は平滑に見える。個体壁に孔が開くことはない。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面の水深10m以深、同様の岩礁斜面では水深5m以深で見られる。内湾の濁った環境では、水深5m以浅でも見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
* 種子島初記録種
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Lobactis scutaria (Lamarck, 1801)
クサビライシ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Lobactis Verrill, 1864 クサビライシ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市西浦、水深10m)
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中央窩は大きい。
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成長形:成熟個体は非固着性の単体で、個体は中央部がドーム状に盛り上がったいびつな楕円盤型〜大判型になる。通常は長径が15cm未満の個体が多いが、それ以上に成長するものもある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜淡褐色。触手が伸長する部分は周りよりも白っぽくなっており、生時でもよく目立つ。昼間でも、先細りの触手がそこからわずかに伸びていることがある。
骨格の特徴:個体表面は、周縁から中心にかけてドーム状に盛り上がり、中心部は3〜5cmほどの高さになる。個体の周縁はやや裏面側に巻き込まれる。長軸側の周縁には複数の切れ込みが不規則に入るため、その輪郭は波打って見える。中央窩の長径は個体の長径の1/3〜2/5ほど。軸柱は様々な方向を向いた多数のトラベキュラからなる。隔壁は次数に関わらずほぼ同じ厚さで、中央窩に向かって波打ちながら放射状に配列する。隔壁内縁は、低次隔壁ほど中央窩側に突出するが、隔壁外縁では次数による隔壁の突出度合の違いが不明瞭になる。中央窩に達していない高次隔壁では、その内側がローブ状を呈し、隣接する低次隔壁よりもわずかに盛り上がる。ローブ状部の内側からは、これらの隔壁は著しく薄くまた低くなりながら中央窩側に1cm前後伸長する。個体の裏面では、周縁から1cmほどまでは先端が分岐した鋸歯を持つ板状の肋がよく発達し、その部分がやや盛り上がる。その内側から中心まではやや凹んでおり、肋があまり発達せず、鋸歯のみが波打ちながら放射状に配列する。肋間に見られる個体壁は緻密で表面が滑らか、長さ1〜5mm・深さ1mmほどの細長い孔が不規則に見られる。
生息環境:浅礁湖や波当たりの弱い礁斜面・岩礁斜面の岩盤上や砂礫底で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:Gittenberger et al. (2011) によって、本種のみを含む属となったLobactis とFungia fungites シタザラクサビライシ(本ガイド未掲載種)のみを含む属となったFungia の和名は、それぞれのタイプ種の和名をとって、クサビライシ属とシタザラクサビライシ属に改称する。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Podabacia crustacea (Pallas, 1766)
ヤエヤマカワラサンゴ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Podabacia Milne Edwards and Haime, 1849 ヤエヤマカワラサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深17m)
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莢の長径は3〜5mmほど。
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成長形:葉状〜板状群体。葉状・板状部が斜め上方向に伸びてすり鉢状になったり、内側に巻き込まれて円筒状になったり、幾重にも重なったりすることもある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色で、赤みを帯びたものや緑色に近いものが見られる。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、莢の長径は3〜5mmほど。個体は群体上面のみに万遍なく分布し、個体間隔もほぼ等しい。幼群体でも中心個体は確認できない。個体配列はサムナステロイド型で、部分的に同心円状に配列する。隔壁・肋は3次まで発達。1次隔壁・肋は厚く、よく突出する。1次隔壁・肋の上縁には大きさの揃ったローブ状の鋸歯が、その鋸歯の上縁には小さな棘状の装飾がそれぞれよく発達する。よって群体表面はザラザラして見える。ただし、よく石灰化した群体では、ローブ状の鋸歯があまり目立たない。2次と3次の隔壁・肋は、1次隔壁に比べて薄く突出せず、ローブ状の鋸歯や鋸歯上の装飾の発達は悪い。軸柱は棒状、または複数の棒状のものが一列に並んで融合した板状で、よく石灰化した群体では明瞭だが、石灰化が弱い群体では不明瞭。1次・2次隔壁は軸柱まで達するが、3次隔壁は達しない。共骨は垂直方向に伸びた板状の肋と水平方向に伸びた棒状のシナプティキュラからなる。肋間のシナプティキュラは、肋の下方で等間隔に規則正しく配列する。莢壁もまた同様のシナプティキュラで形成される。群体裏面にも上面に対応する肋が発達するが、上面に比べて不明瞭。肋の上縁には、棘状の装飾を持つ鋸歯が形成されるが、大きさや間隔は不揃い。肋間の共骨には不規則開いた孔が同心円状に並ぶこともある。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Polyphyllia talpina (Lamarck, 1801)
イシナマコ |
Fungiidae Dana, 1846 クサビライシ科
Polyphyllia Quay and Gaimard, 1833 イシナマコ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深20m)
*生時写真の群体とは別群体(沖縄県石垣島伊原間湾、水深20mで採集) |
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成長形:群体は非固着性。外形は主に扁平な楕円形で、成長に伴って群体中央部が凸型に盛り上がってくる。長径が数十cmになるまで成長する。
軟体部の色彩と特徴:褐色。昼間でも、群体表面から満遍なく触手を伸ばしている。触手の先端は細く、わずかに白い。
骨格の特徴:個体は多角形で、長径1cm前後のものがほとんど。個体配列は基本的にサムナステロイド型。楕円形群体では、盛り上がった中心部の長軸方向に複数の個体が直線状に並び、さらにその左右に複数の個体がほぼ平行に並列することがある。隔壁は3次まで発達する。特に群体周縁の個体では、周縁側の隔壁がよく伸長し、ほぼ平行に配列する。隔壁の上縁と側面には、顆粒状の装飾を持つ鋸歯と突起がそれぞれ発達する。そのため、隣接する隔壁間は狭く見える。1次・2次隔壁は軸柱に達する。1次隔壁は莢壁上縁で非常に厚く、上方によく突出するが、莢内では著しく薄く、突出することもない。また個体によっては、1次隔壁が短い花弁状になることがある。2次隔壁は薄く、莢壁上縁から軸柱近くまでほぼ同じ厚さ。3次隔壁は発達が悪く、軸柱に達することはない。軸柱は1次・2次隔壁内縁のパリ状葉と隣接する隔壁間をつなぐトラベキュラで形成されるが、中心に明瞭な棒状突起などは見られない。群体裏面には肋が形成されるが、次数あるいは肋自体を識別することが困難なことが多い。肋の上縁には、大きさがよく揃い、先端に顆粒状の装飾を持つ鋸歯がよく発達する。個体壁は緻密で、不規則に孔が見られる。
生息環境:波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の砂礫底で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acanthastrea echinata (Dana, 1846)
ヒメオオトゲキクメイシ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Acanthastrea Milne Edwards and Haime, 1848 オオトゲキクメイシ属 |
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撮影:座安佑奈(中種子町馬立の岩屋、水深7m)
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莢の長径は8mm〜2cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体で、岩盤を広く覆いながら長径20cm以上の大きな群体に成長する。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色。口盤が白〜灰色がかったものも多い。軟体は肉厚だが、隔壁上縁に整然と並んだ鋸歯が突出する様子がよく分かる。鋸歯によって押し上げられた軟体外皮が、複数の同心円状の皺となって見えることもある。莢壁は厚く、莢は深く、個体口盤の形や大きさは揃って見える。生時、個体間の境界は不明瞭。
骨格の特徴:個体は円形または角ばった円形〜多角形で、莢は長径8mm〜2cmで、1cm前後のものが多い。個体配列はプロコイド型〜セリオイド型で、出芽途中で個体が2〜4個つながった箇所が稀に見られる。莢壁は厚さ2〜4mm。隔壁・肋は4次まで発達、次数によらず同じ厚さ、等間隔できれいな放射状に配列する。それらは莢壁上縁であまり突出せず、莢心に向かって急傾斜で落ち込むため、莢は深く見える。莢の長径が1cmほどの個体で隔壁は30枚程度。隣接個体で、同じ肋を共有する隔壁の次数は一致しないところが多い。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。通常3次隔壁は軸柱まで達しないが、軸柱がよく発達した個体では達しているように見える。4次隔壁は短く、1次・2次隔壁の半分程度の長さ。隔壁・肋の上縁には、先端がローブ状または尖った鋸歯がほぼ等間隔で配列する。特に、莢壁上縁に近い2〜4個の鋸歯は基部がよく肥厚し、先端が尖って上方によく突出する。そのため、隔壁・肋は莢壁上縁のほうが厚く見える。隔壁・肋と鋸歯の側面には、小さな顆粒状の装飾がよく発達する。軸柱は長径2〜4mmの円形〜楕円形で明瞭なものがほとんど。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種はAcanthastrea hemprichii ヒラタオオトゲキクメイシと混同されており、国内での生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:A. lordhowensisとして記録した可能性あり
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Acanthastrea hemprichii (Ehrenberg, 1834)
ヒラタオオトゲキクメイシ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Acanthastrea Milne Edwards and Haime, 1848 オオトゲキクメイシ属 |
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撮影:座安佑奈(中種子町馬立の岩屋、水深12m)
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莢の長径は8mm〜1.4cm。
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成長形:主に被覆状群体。群体は長径20cmを超えることは少ない。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色。口盤が白〜灰色のものも多い。赤や黄緑など鮮やかなものも見られる。軟体はやや肉厚だが、莢壁上縁では隔壁上縁の鋸歯を識別できる。鋸歯によって押し上げられた軟体外皮が、部分的に同心円状の皺となって見えることもある。莢壁は厚く、莢は浅く見える。生時、個体間の境界は不明瞭。
骨格の特徴:個体は角ばった円形〜多角形で、莢は長径8mm〜1.4cm、通常は1cm前後のものが多い。個体配列はほぼセリオイド型、出芽途中の個体が複数つながることは稀。莢壁は薄く、1〜2mm。隔壁は4次まで発達し、次数によらずほぼ同じ厚さか、1次隔壁がやや厚い。隔壁は莢壁上縁であまり突出せず、莢心に向かって緩やかに傾斜するため、莢は浅く見える。莢の長径が1cmほどの個体で隔壁は30枚程度。隣接個体で、同じ肋を共有する隔壁は次数が一致するところが多い。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。3次隔壁は通常軸柱には達しないが、軸柱のすぐ手前まで伸びる。4次隔壁は1次・2次隔壁の半分程度の長さ。隔壁・肋の上縁には、円柱状で先端が尖った鋸歯がほぼ等間隔で配列する。特に、莢壁上縁に近い2〜4個の鋸歯は上方を向いており、不規則に肥厚することがある。隔壁と鋸歯の側面には顆粒状の装飾が見られるが、まばらで目立たない。軸柱は長径3mm未満の円形〜楕円形になるが、不明瞭または欠くことが多い。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでAcanthastrea echinata ヒメオオトゲキクメイシと混同されており、国内での生息状況を再検討する必要がある。
** 今回の調査では確認できなかったが西平・Veron(1995)では種子島で確認されている種
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Acanthastrea hillae Wells, 1955
オオトゲキクメイシ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Acanthastrea Milne Edwards and Haime, 1848 オオトゲキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は2.5〜4.5cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体で、長径10〜20cmほどの小さめの群体が多い。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色で、灰色がかったものも多い。群体表面が不規則なまだら模様になったり、口盤または隔壁上部が他と異なる色彩になったりすることがある。軟体は肉厚で、その表面が平滑に見えるものや、莢壁付近が棘状に見えるものがある。莢壁上縁では、個体間の境界が明瞭な部分と不明瞭な部分が混在する。
骨格の特徴:個体は細長い多角形〜やや角ばった円形で、莢は長径2.5〜4.5cm、3cmほどの多角形が多い。個体配列は主にセリオイド型だが、小さな群体ではプロコイド型になり、大きな中心個体を識別できる。大きな群体では、同心円状に個体が連なって、長さ10cmを超える谷状部が形成されることがある。莢壁は頂部を除けばほぼ同じ厚さだが、同一群体内でも厚さは変わりやすく、セリオイド型群体で1.5〜5mmほど、プロコイド群体では1cm近くになることもある。隔壁は通常4次まで発達し、大きな個体では短い5次隔壁が莢壁上縁付近に形成されることがある。隔壁の厚さはほぼ同じだが、1次隔壁が他の隔壁よりも顕著に厚くなることも多い。プロコイド型群体では、莢壁外側の隔壁延長部で短い肋が形成されるが、隔壁との区別は難しい。1〜4次隔壁は、莢壁上縁から内縁に向かい急傾斜で落ち込むが、途中から傾斜は緩やかになる。1〜3次隔壁は軸柱に達する。4次隔壁は伸びても3次隔壁の3/4ほどで、その内縁は湾曲しながら3次隔壁に融合する。隔壁・肋の上縁には、先端が尖り、大きさがよく揃った鋸歯がよく発達し、整然と並ぶ。また莢壁上縁〜すぐ内側の鋸歯は大きく、上方に向かってよく突出する。隔壁・肋と鋸歯の側面には、小さな顆粒状の装飾がよく発達する。軸柱は長径2.5〜5.5mmの円形〜楕円形で明瞭。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通島以南。種子島では稀。
補足:本種はAcanthastrea ishigakiensis イシガキオオトゲキクメイシやA. bowerbanki (両種ともに本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acanthastrea cf. lordhowensis Veron and Pichon, 1982
カクオオトゲキクメイシ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Acanthastrea Milne Edwards and Haime, 1848 オオトゲキクメイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市浦田湾、水深5m)
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莢の長径は8mm〜1.3cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。長径5〜15cmほどの小さなものが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に淡緑色や淡褐色で、赤色などの鮮やかな色彩になることもある。群体表面が不規則なまだら模様になったり、莢内〜個体境界が同心円状に異なる色彩になったり、莢壁上縁で低次隔壁相当部が白くなったりすることもある。軟体は肉厚だが、群体表面はザラついて見える。生時、個体間の境界は明瞭。
骨格の特徴:個体は多角形で、莢は長径8mm〜1.3cm、完全なセリオイド型配列。莢壁は厚さ1〜2mmで、基部のほうがやや厚め。隔壁は4次まで発達するが、4次隔壁の発達が悪い個体も多い。莢の長径が1cmほどの個体で隔壁は26〜36枚程度。基本的に1〜3次隔壁は同じ厚さで、莢壁上縁で突出し、莢心に向かって緩やかに傾斜する。ただし1次・2次隔壁は、莢壁上縁で不規則に肥厚してさらに突出することがある。4次隔壁は短く、長く伸びても他の隔壁の半分程度まで。隔壁上縁の鋸歯は大きさや間隔が不揃いだが、莢壁近くの2〜3個は上方に向かってよく突出する。鋸歯の一部が円柱状に肥厚して、不規則に突出することがある。隔壁と鋸歯の側面には顆粒状の装飾が見られるが、まばらで目立たないことが多い。軸柱は円形〜楕円形で、長径2〜3.5mmと大きめ。同一群体内でも明瞭なものから不明瞭な個体まで様々。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでAcanthastrea lordhowensis (本ガイド未掲載種)と同定されてきた。しかし両種には、個体の大きさ、隔壁の発達・配列様式、鋸歯の形状など多くの形態的特徴の違いが認められる。よって、今後更なる分類学的検討が必要と思われる。また本種は、A. aff.lordhowensis とも混同されているため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Acanthastrea aff. lordhowensis Veron and Pichon, 1982
マルオオトゲキクメイシ(新称) |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Acanthastrea Milne Edwards and Haime, 1848 オオトゲキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(長崎県壱岐市板浦、水深2m)
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莢の長径は1.5cmほど。
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成長形:準塊状〜塊状群体。直径20cmを超えるドーム型〜半球形の群体を形成する。
軟体部の色彩と特徴:主に淡緑色や淡褐色。莢壁上縁の低次隔壁・肋の相当部が白くなり、群体表面が不規則なまだら模様に見えやすい。軟体は非常に肉厚で、触れてもなかなか縮まない。個体境界には、砂泥が付着することがある。生時、個体間の境界は明瞭。
骨格の特徴:個体は円形〜角ばった円形。個体が密集するところではいびつな形になりやすい。莢は長径1.5cmほどで、出芽途中のものは細長く3cm近くになることもある。個体配列は、群体上方ではセリオイド型だが、側方ではプロコイド型になりやすい。隣接個体の境界には、多毛類の管状の棲管が発達することがある。莢壁は群体上方で2〜3mm、側方では4mm近くになる。隔壁・肋は通常4次まで発達し、大きな個体では莢壁上縁に短い5次隔壁が形成されることがある。隔壁は莢壁上縁で突出しないがよく肥厚し、傾斜は緩やか。莢径1.5cmほどの個体で隔壁は40枚前後。1次・2次隔壁は他の隔壁よりもやや厚く、軸柱まで達する。3次隔壁は軸柱手前まで伸びるが軸柱には届かず、湾曲しながら2次隔壁に融合する。4次隔壁は1次・2次隔壁の半分程度の長さ。肋は短いが、隔壁外縁と同様によく肥厚する。隔壁・肋の上縁には、大きさが揃った鈍端で太い円柱状の鋸歯が、上方を向きながら広い間隔で配列する。中には、先端が肥厚して棍棒状になるものもある。隔壁・肋と鋸歯の側面には、小さな顆粒状の装飾がよく発達する。軸柱は2〜5mmと大きい。
生息環境:波浪の影響の少ない岩礁斜面の水深5m以深や、遮蔽的な湾の水深5m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県対馬以南。種子島では確認されていない。
補足:本種はAcanthastrea cf.lordhowensis と混同されており、国内での生息状況の再検討が必要。新称和名は、プロコイド型に配列する円形個体が見られることに由来する。本種の生時写真と骨格写真の群体は異なるが、撮影地点と採集地点はほぼ同じ。
* 種子島初記録種
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Cynarina lacrymalis (Milne Edwards and Haime, 1848)
コハナガタサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Cynarina Brüggemann, 1877 コハナガタサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深13m)
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隔壁の鋸歯はローブ状。
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成長形:固着性の単体で、円柱状〜楕円柱状。ごく稀に、5〜6個体がファセロイド型に配列した花束状群体になることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色〜淡緑色。鮮やかなピンク〜赤みがかったものもある。ポリプは昼間でも伸びており、半透明の外套膜が個々の隔壁を包み込むように泡状になったり、風船のように個体全体を包み込むように膨らんだりする。後者では、口盤を中心に複数の白い斑紋が同心円状に見えることがある。
骨格の特徴:個体は楕円形か短軸側が凹んだいびつな楕円形。前者では莢の長径は最大で7cmほど、後者では9cmほどになる。隔壁・肋は5次まで発達し、莢壁上縁で厚くよく突出する。隔壁の厚さや莢壁上縁での突出度合は次数ごとに明瞭に異なるが、肋は厚さも長さも次数によらずほぼ同じ。隔壁の傾斜は緩やかで、1〜3次隔壁は軸柱まで達する。4次・5次隔壁は軸柱には達せず、4次隔壁は軸柱のやや手前で、5次隔壁はさらにその手前で、湾曲しながら3次・4次隔壁に融合する。隔壁上縁にはローブ状の大きな鋸歯が形成され、低次隔壁ほど大きくて厚い。鋸歯の形状や間隔は、1〜3次隔壁では不揃いだが、4次・5次隔壁ではよく揃う。一方、肋の鋸歯は莢壁上縁近くでよく発達する。それらは次数によらずほぼ同じ大きさで、先端がやや尖り、大きさも間隔もよく揃う。隔壁・肋の表面には、顆粒状の装飾がびっしりと発達する。軸柱は楕円形で大きく、莢の長軸方向の長さの約1/3を占める。これらは、隔壁内縁から伸びた多数の糸状のトラベキュラが密集して形成さるのがよく分かる。
生息環境:砂泥が堆積するような礁斜面や岩礁斜面の水深20m以深で見られる。開放的な湾ではそれよりも浅いところで、遮蔽的な湾では水深10m以浅でも見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Echinophyllia aspera (Ellis and Solander, 1786)
キッカサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Echinophyllia Klunzinger, 1879 キッカサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深8m)
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莢壁と軸柱の発達は悪い。
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成長形:被覆状〜葉状群体。ごく稀に葉状部が立ち上がり、幾重にも重なった群体が見られることがある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。群体全体が鮮やかな赤色や黄緑色になることや、口盤の色彩が他と異なることがある。個体はどれも埋在しており、部分的に同心円状配列に見えることがある。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、群体周縁の個体は莢の長径が5mm〜1cmほど、出芽途中の個体はそれ以上の大きさに見える。小さな群体では、長径1.5cmほどの中心個体が見られることがある。周縁個体は莢壁を欠き、共骨部分に埋在またはわずかに真上に突出する。周縁個体の隔壁・肋は通常3次まで発達する。1次・2次隔壁・肋は、3次隔壁・肋に比べると厚く、よく突出する。また、1次隔壁のほうが2次隔壁よりもやや厚い。1次・2次隔壁は軸柱まで達するが、3次隔壁は軸柱まで達しない。2次・3次の隔壁と肋の内縁には、莢の部分も含めて共骨部分に凹みが形成されることがあるが、そこに孔が開くことはない。隔壁・肋の上縁には、細分尖端を持つ鋸歯がほぼ等間隔で発達する。ただし群体裏面では、概して鋸歯の発達が悪い。軸柱は長径2〜4mmほどの楕円形になるが、それらの発達が悪い個体もよく見られる。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。砂泥が堆積しやすい遮蔽的な湾では、水深5m以浅でも普通に見られることがある。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種はEchinophyllia cf.orpheensis アバレキッカサンゴ、E. echinata やE. patula (両種ともに本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況は再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Echinophyllia cf. orpheensis Veron and Pichon, 1980
アバレキッカサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Echinophyllia Klunzinger, 1879 キッカサンゴ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市大久保港、水深6m)
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莢壁と軸柱がよく発達する。
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成長形:主に被覆状群体だが、斜面上では群体周縁が葉状になることもある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。口盤の色彩が他と異なることや、群体全体が鮮やかな赤みや黄色みを帯びることがある。群体中心付近の個体は群体表面から不規則に突出し、個体間隔も不揃いになりやすい。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、群体周縁の個体は、莢の長径が6〜8mmほどになる。小さな群体では、長径1.5cm未満の中心個体が見られることがある。群体周縁では、莢壁を欠き共骨に埋在する個体と、体の半分または全体で莢壁が形成されて側方または上方に突出する個体がある。隔壁・肋は通常3次まで発達する。1次・2次隔壁・肋は、3次隔壁・肋に比べると厚く、よく突出する。また、1次隔壁のほうが2次隔壁よりもより厚くよく突出する。1次・2次隔壁は軸柱まで達するが、3次隔壁はそれらの1/2〜2/3の長さで、軸柱まで達しない。2次・3次の隔壁と肋の内縁には、莢の部分も含めて共骨部分に明瞭な凹みが形成されるが、そこに孔が開くことはない。隔壁・肋の上縁には、細分尖端を持つ鋸歯がよく発達し、特に莢壁上縁付近の1次・2次隔壁・肋ではよく肥厚して突出する。ただし群体裏面では、鋸歯はほとんど形成されない。軸柱は明瞭で、長径2.5〜5mmほどの楕円形になる。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られるが、開放的な湾では水深5m以浅でも見られる。また、礁池や浅礁湖の岩盤上でも稀に見られることがある。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島以南。種子島では稀。
補足:Echinophyllia orpheensis (本ガイド未掲載種)のタイプ標本は、個体が1〜2cmほど不規則に高く突出する。また莢の長径はどれも1cmを超え、隔壁・肋は全体的によく肥厚する。よって、これまで国内でアバレキッカサンゴとよばれてきた本種とは別種の可能性が高い。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Lobophyllia corymbosa (Forskål, 1775)
マルハナガタサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Lobophyllia de Blainville, 1830 ハナガタサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深10m)
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莢壁はラッパ状に上方を向く
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成長形:ドーム型〜半球形の花束状群体。直径1mを超えることも珍しくない。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色だが、暗い色彩のものから明るい色彩のもの、口盤のみ色彩が異なるものなど様々。個体の先端は、ややすぼんだように見える。
骨格の特徴:個体はいびつな楕円形から細長い楕円形で、莢は長径2〜4cmで、3.5mm前後のものが多い。ただし、出芽途中で軸柱が2〜3個連なった個体では、短軸側の莢壁が不規則に凹んでL字型や花弁状になり、長径が4〜6cmほどになることもある。個体配列は基本的にファセロイド型で、軸柱が3個以上連なってもフラベロメアンドロイド型に配列することはない。隣接する枝状部の間隔はほぼ同じで、互いに7mm〜1cm程度離れる。莢壁は2〜3mmで、上方に向かってラッパ状に開いており、部分的に側方にめくれることは少ない。隔壁・肋は5次まで形成され、低次のものほど厚く、突出する。隔壁・肋の上縁には鋸歯がよく発達し、莢壁上縁で鋭く尖ってよく突出する。また、隔壁上縁の鋸歯は上方を、肋上縁の鋸歯は上方から側方を向きやすい。これらの鋸歯の大きさは、肋のものよりも隔壁のものが大きく見える。軸柱は、長径4〜8mmほどの円形〜楕円形で明瞭。
生息環境:礁池や浅礁湖から礁斜面の様々な環境に生息するが、いずれも波浪の影響の少ない所で多く見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はLobophyllia hemprichii オオハナガタサンゴと混同されている可能性があるため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Acanthastrea amakusensisとして記録)
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Lobophyllia hemprichii (Ehrenberg, 1834)
オオハナガタサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Lobophyllia de Blainville, 1830 ハナガタサンゴ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市浦田湾、水深8m)
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肋上縁でも鋸歯がよく発達する。
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成長形:ドーム型〜半球形の花束状群体になる。群体の直径が1mを超えることも珍しくない。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色。赤味を帯びた褐色や灰緑色のものも見られる。隔壁上縁の鋸歯の太さや厚さの違いによって、外観が大きく異なって見える。
骨格の特徴:個体はいびつな楕円形〜細長い楕円形、長径2〜4cm、個体が2〜3個連なったファセロイド型や、4個以上が不規則に蛇行しながら連なって長さ10cm以上になったフラベロメアンドロイド型の個体配列をもつ。隣接する枝状部の間隔はほぼ同じで、互いに7mm〜1cm程度離れる。莢壁は4〜8mmほど、新たな個体が出芽するところでは、やや側方にめくれたように見える。隔壁・肋は5次まで形成され、低次のものほど厚く、突出する。ただし石灰化が弱い群体では、それらの違いが1〜3次隔壁間や4次・5次隔壁間で不明瞭になりやすい。隔壁・肋の上縁には鋸歯がよく発達し、莢壁上縁では鋭く尖ってよく突出する。また、隔壁上縁の鋸歯は上方を、肋上縁の鋸歯は上方から側方を向きやすい。軸柱は、長径5〜9mmほどの円形〜楕円形で明瞭。
生息環境:礁池や浅礁湖から礁斜面の様々な環境に生息するが、いずれも波浪の影響の少ない所で多く見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はLobophyllia robusta ハナガタサンゴやL. corymbosa マルハナガタサンゴと混同されているため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Lobophyllia robusta Yabe, Sugiyama and Eguchi, 1936
ハナガタサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Lobophyllia de Blainville, 1830 ハナガタサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市西浦、水深10m)
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肋上縁では鋸歯の発達が悪い。
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成長形:群体が小さなときは被覆状〜準塊状で、Symphylliaダイノウサンゴ属と間違いやすい。群体の成長とともに、きれいな半球形の花束状群体になる。
軟体部の色彩と特徴:色彩は茶褐色、赤色や緑色など様々。蛍光色が強いものや群体表面がまだら模様になるものもある。軟体は肉厚だが、低次隔壁の上方が不規則な点線状に盛り上がる。
骨格の特徴:個体の長径4cm前後、それらが連なって個体配列はファセロイド型からフラベロメアンドロイド型になる。小さな群体ではメアンドロイド型になりやすく、莢壁に相当するコリンは厚さ4〜8mm、高さ2〜3cm程度。並列するコリン上縁の間隔も2〜3cm程度になる。コリン頂部には、大きな溝が形成されることも多い。一方、その他の配列をもつ大きな群体では、隣り合った枝状部が部分的に融合したり、直径1cm前後、高さ2.5cmほどのモンティクルを形成したりすることがある。隔壁は5次までで、厚さや長さ、コリン上縁での突出度合は次数ごとによく揃う。特に1次隔壁は他の隔壁に比べて顕著に厚く、2mm以上に肥厚するのでよく目立つ。隔壁上縁には先端が丸みを帯びた大きな鋸歯が発達するが、肋では発達が悪い。軸柱は円形〜楕円形、長径4〜8mmで大きいが、群体周縁では不明瞭または欠く個体も多く見られる。
生息環境:波浪の影響の少ない岩礁斜面の水深5〜20mで見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種のタイプ産地は高知県土佐清水市三崎。本種はLobophyllia hemprichii オオハナガタサンゴやSymphyllia valenciennesi (本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況は再検討が必要。ハナガタサンゴの和名を担うのはS. valenciennesi ではなく本種である。
* 種子島初記録種
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Micromussa amakusensis (Veron, 1990)
アマクサオオトゲキクメイシ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Micromussa Veron, 2000 コオオトゲキクメイシ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市大久保港、水深3m)
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個体の長径は8mm前後が多い。
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成長形:被覆状群体。群体は長径10cm未満の小さなものが多いが、巨礫上や平坦な岩盤上では20cmを超えることもある。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色。鮮やかな赤色や緑色、灰色になることもある。莢壁上縁や隣接個体の境界は白っぽくなることが多い。軟体は肉厚、口盤は広く見え、群体表面はザラついて見える。隣接個体の境界は明瞭で、個体間がよく離れた群体では、隣接個体の境界に砂泥が堆積していることがある。
骨格の特徴:個体は多角形〜角ばった円形で、莢は長径6mm〜1cmで、8mm前後のものが多い。個体配列はセリオイド型だが、部分的にプロコイド型になることもある。個体間に、管状または溝状の多毛類の棲管が不規則に発達する。莢壁は1mm前後で高さは2〜3mmほど、頂部はやや薄くなる。隔壁は3次までよく発達が、個体によっては、低次隔壁間の莢壁内縁に点線状〜筋状の4次隔壁が見られることがある。プロコイド型の場合1〜3次肋が発達するが、非常に短くて隔壁との区別は困難。1〜3次隔壁は薄く、等間隔で規則正しく配列する。隔壁は莢壁上縁であまり突出しないが、鋸歯がよく発達して肥厚しやすいため、実際よりもよく突出して見える。1〜3次隔壁の傾斜は急で、1次・2次隔壁は軸柱まで達する。3次隔壁は軸柱に達しないがその手前までよく伸び、やや湾曲して隣接する低次隔壁の側面に融合する。隔壁上縁には先端の尖った小さな鋸歯が、側面には顆粒状の微小突起がよく発達する。莢壁上縁近くでは、肉眼でも分かる1〜3個の太く長い鋸歯がよく発達し、上方によく突出する。軸柱は通常2〜3mmの円形〜楕円形だが、4mmほどになり莢底の広範囲を占めることもある。
生息環境:砂泥が堆積しやすい岩礁斜面の水深15m以浅(特に5m以浅)の岩盤・巨礫上で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県上五島中通島以南。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は熊本県天草町大ヶ瀬。本種が属するMicromussa の和名は西平(2013)に基づく。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Oxypora lacera (Verrill, 1864)
アナキッカサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Oxypora Saville-Kent, 1871 アナキッカサンゴ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市西浦、水深12m)
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隔壁・肋の内縁に孔が開く。
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成長形:被覆状群体で、群体周縁は葉状になりやすい。ごく稀に葉状部が立ち上がり、幾重にも重なった群体が見られることがある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。口盤の色彩が他と異なることがある。群体周縁では平行に等間隔で並んだ肋がよく目立つ。やや突出した個体と埋在した個体が見られる。後者で、口盤とそれ以外の色彩が同じ群体では、個体は識別しにくい。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、莢壁を欠く。小さな群体には、莢の長径が1cmほどの中心個体が見られることがある。群体周縁の個体は長径3.5〜5mmほどで小さく、共骨表面からわずかに真上に突出する。個体の隔壁・肋は通常2次まで発達する。2次隔壁・肋の内縁と2次肋の外縁は薄いが、その他ではどこもほぼ同じ厚さになる。この厚さの違いは、群体周縁の表面と裏面全体で顕著。1次隔壁は軸柱まで達するが、2次隔壁は達しない。2次隔壁・肋の内縁には共骨部分に凹みが形成され、2次隔壁の内縁の凹みが個体の莢を形成する。これらの凹んだ部分では、2次隔壁・肋の内縁の片側または両側に細長い孔が不規則に開くことが多い。隔壁・肋の上縁には、細分尖端を持つ長い鋸歯が発達し、特に凹みが形成された部分の表面と裏面でよく見られる。軸柱は円形〜楕円形になるが、長径が1.5mm未満と非常に小さく目立たない。
生息環境:やや遮蔽的な礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られ、浅礁湖内でも稀に見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南。種子島では稀。
補足:本種はEchinophyllia aspera キッカサンゴと混同されやすいため、国内での生息状況の再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Parascolymia aff. vitiensis (Brüggemann, 1877)
オニアザミハナガタサンゴ(新称) |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Parascolymia Wells, 1964 アザミハナガタサンゴ属 |
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撮影:立川浩之(西之表市上古田、水深20m)
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莢の長径は4〜8cmと大きい。
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成長形:主に固着性の単体。浅いカップ状または背の低い円柱状になる。ごく稀に5〜6の個体が連なったプロコイド型群体になることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色で、表面がまだら模様になることがある。ポリプはかなり肉厚だが、よく突出した1次隔壁とその上縁の鋸歯の位置がよく分かる。鋸歯によって押し上げられた軟体外皮が、複数の同心円状の皺となって見えることもある。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形。出芽途中の個体では短軸側が凹んだいびつな楕円形になることもある。莢は長径4〜8cmほど。隔壁・肋は5次まで発達し、隔壁に比べると肋はかなり短く見える。これらは莢壁上縁で厚く、よく突出する。隔壁は、軸柱方向に向かってだんだん薄くなる。隔壁・肋の厚さや莢壁上縁での突出度合は次数ごとに異なり、低次のものほど厚くよく突出する。隔壁の傾斜は緩やかなため、莢は浅く見える。1〜3次隔壁と一部の4次隔壁は軸柱まで達するが、5次隔壁は軸柱には達せず、伸びても低次隔壁の半分程度の長さにしかならない。隔壁・肋の上縁には先端がやや尖った円柱状の大きな鋸歯が形成される。鋸歯は、隔壁上縁でほぼ真上を向くが、肋上縁では真横またはやや下方を向く。隔壁・肋の表面には、微小な顆粒状の装飾が発達するが肉眼では認識できない。軸柱は楕円形で長径7mm〜1.2cmほどで、隔壁内縁から伸びた多数の糸状のトラベキュラが密集して形成されるのがよく分かる。
生息環境:通常は礁斜面や岩礁斜面の水深20m以深で見られる。
国内での分布:種子島のほか、鹿児島県喜界島でも分布が確認されている。
補足:本種はParascolymia vitiensis アザミハナガタサンゴ(本ガイド未掲載種)や、Lobophyllia ハナガタサンゴ属の仲間の幼体と混同されている可能性がある。よって国内での生息状況については、今後更なる調査が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Montastrea curtaとして記録)
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Symphyllia agaricia Milne Edwards and Haime, 1849
ヒロクチダイノウサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Symphyllia Milne Edwards and Haime, 1848 ダイノウサンゴ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市浦田湾、水深6m)
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コリン上縁は薄く見える。
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成長形:準塊状〜塊状群体。岩盤を広く覆いながら成長し、50cmを超える準塊状群体になることがある。長径20cmに満たない場合は、被覆状や半球形になることもある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。黄緑色や赤紫色などの鮮やかな色彩を持つものもある。口盤の色が異なることが多い。同属他種に比べると肉厚で、群体表面での鋸歯の突出は目立たない。
骨格の特徴:個体配列は基本的にメアンドロイド型だが、並列するコリン間で軸柱が二列に並んだり、1つの軸柱を複数の軸柱が同心円状に囲むように配列したりすることがある。並列するコリン上縁の間隔は2.5cmほど、軸柱が2列になった部分では4.5cmほどになる。コリンの高さは2〜2.5cmと高くなりやすく、長く連なることもあれば、不連続になってモンティクルが形成されることもある。通常、コリンは厚さ3〜5mmだが、頂部が1mm未満の薄さに、基部が1cm近くの厚さになることもあり、表面が不規則に見える群体も少なくない。隔壁は5次まで形成され、低次のものほど厚く、よく突出する。コリン上では4次・5次隔壁が形成される部分とされない部分がある。そのため、厚さが1〜1.5mmほどの1〜3次隔壁と0.5mm未満の4次・5次隔壁の配列が規則正しく見えにくい。肋は群体周縁〜裏面にかけて見られるが、次数の違いは隔壁に比べて不明瞭。低次隔壁の上縁には鈍端で太さの揃った鋸歯がよく発達するが、コリン頂部付近では、それらの間隔や長さや向きは不規則になることもある。軸柱は円形〜楕円形で、長径4〜8mm。大きな群体では、大小の軸柱が1.5〜2.5cmの間隔で、規則正しく交互に並んでいるように見える。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深5〜20mで見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:本種はSymphyllia valenciennesi (本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況の再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Symphyllia radians Milne Edwards and Haime, 1849
ダイノウサンゴ |
Lobophylliidae Dai and Horng, 2009 オオトゲサンゴ科
Symphyllia Milne Edwards and Haime, 1848 ダイノウサンゴ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大原、水深6m)
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コリン上縁は厚く見える。
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成長形:準塊状〜塊状群体。直径40〜50cm程度のドーム型〜半球形になることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色で、赤みを帯びたものもある。口盤の色彩が異なることが多い。
骨格の特徴:個体配列はメアンドロイド型で、複数の個体が長く連なってコリンがよく形成される。コリンは高さ1〜1.5mmでよく揃い、厚さ3〜6mmで基部のほうがやや厚い。並列するコリン上縁の間隔は1.5〜2mm。隔壁は5次まで発達し、莢心に向かって急傾斜で落ち込む。1〜3次隔壁はほぼ同じ厚さで1mm前後、コリン上縁でよく突出する。4次・5次隔壁は薄く0.5mm前後で、コリン上では突出しない。コリン上縁では、低次と高次の隔壁が交互に規則正しく配列する様子がよく分かる。またコリン頂部では、隣接個体の隔壁・肋を分割するように細い溝が不規則に形成されることがある。隔壁上縁には鋸歯がよく発達し、低次のものほど大きく、よく突出する。鋸歯は、軸柱近くでは短く先端が丸いが、コリン上端に向かうにつれて長くなり、先端が尖って上方を向きやすい。肋は群体周縁の裏面に見られるが、次数による厚さや突出度合の違いが不明瞭で見分けるのが困難。また、それらの上縁での鋸歯の発達は非常に悪い。軸柱は円形〜楕円形で、長径4〜5mm、群体周縁の個体を除けばよく発達する。コリン間で隣接する軸柱間の距離は1.5〜2cmでよく揃う。
生息環境:礁池や浅礁湖から礁斜面や岩礁斜面の様々な環境に生息する。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南。種子島では普通種。
補足:本種はSymphyllia recta ホソダイノウサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況の再検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Goniastrea asperaとして記録した可能性あり
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Astrea curta (Dana, 1846)
マルキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Astrea Lamarck, 1801 マルキクメイシ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市浦田湾、水深6m)
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莢径は4〜6mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体周縁が固着基盤から遊離することは稀。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜暗褐色または緑色。
骨格の特徴:個体はきれいな円形〜やや楕円形で、莢径は4〜6mmのものがほとんど。個体配列はプロコイド型で、個体の大きさや間隔はやや不規則。莢壁は厚く、やや上方に突出する。隔壁・肋は32枚前後で、4次まで発達する。隔壁と肋の厚さは次数によらずほぼ同じで、上縁に先端の尖った鋸歯が等間隔で並ぶ。隔壁は、莢壁上縁でやや厚くなるがあまり突出しない。隔壁は、莢壁の内側面に沿ってほぼ垂直に落ち込み、莢底で1次・2次隔壁のみが莢心方向まで伸びて軸柱に達する。3次隔壁は、莢底で1次・2次隔壁内縁のすぐ手前まで伸びるが、多くの場合軸柱には達しない。4次隔壁は、他の隔壁に比べると非常に短く、軸柱側に伸びることはない。よって莢壁のすぐ内側を真上から見ると、長い1〜3次隔壁と短い4次隔壁が交互に整然と並んでいるように見える。1〜3次隔壁の内縁にはパリ状葉またはパリが形成されやすい。またその内側の軸柱は、隔壁内縁から伸びたトラベキュラによって形成されている。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県五島福江島以南。種子島では普通種。
* 種子島初記録種
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Caulastraea tumida Matthai, 1928
タバネサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Caulastraea Dana, 1846 タバネサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市西浦、水深10m)
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莢の長径は1.5cm前後。
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成長形:花束状群体。内湾などの遮蔽的な環境では、直径が1mを超える半球状の大群体になることも珍しくない。小さな群体やポリプがよく膨らんだ群体は、塊状のDipsastraeaキクメイシ属と間違えやすい。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。暖温帯域では群体全体が灰緑色などの明るい色彩のものが多い。ポリプは肉厚で、低次隔壁上縁は白くなって突出して見える。
骨格の特徴:個体は円形〜いびつな楕円形で、莢の長径は1.5cm前後のものが多い。個体配列は基本的にファセロイド型。ただし小群体では、個体間に共骨が発達し、プロコイド型になるものもある。隔壁・肋はそれぞれ30枚前後で、通常4次まで発達する。その厚さは次数によらずほぼ同じで、莢壁上縁でやや厚く、よく突出する。隔壁・肋の上縁には、隔壁と直交するようにやや扁平で先端の尖った鋸歯がよく発達する。また隔壁の側面には、先端の尖った微小突起がよく発達する。隔壁は、莢壁に沿ってほぼ垂直に落ち込み、その内縁にパリ状葉はあまり発達しないため、莢は深く見える。軸柱はよく発達し、隔壁内縁から伸びたトラベキュラで形成される。形は円形〜楕円形で、直径または長径は3〜5mmほど。莢壁は、上部では薄い板状だが下方ではその内外に泡沫組織が形成される。群体基部の裏面や円柱状に伸びた個体の外側面に明瞭なエピテカは形成されない。
生息環境:砂泥が堆積しやすい遮蔽的な内湾や、礁斜面の深みなどで見られる。浅礁湖の浅瀬でもごくまれに見られることがある。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
* 種子島初記録種
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Coelastrea sp. 1
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Coelastrea Verrill, 1866 パリカメノコキクメイシ属(新称) |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深4m)
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莢の長径は4〜8mm。
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成長形:被覆状群体。岩盤を広く覆いながら成長する。群体表面は不規則に盛り上がる。群体周縁が固着基盤から遊離することは稀。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。隔壁上縁や口盤が白っぽくなることが多い。莢内は広く見える。
骨格の特徴:個体は多角形で、それらの配列はセリオイド型。莢の長径は4〜8mmほどで、同一群体上での大きさや形はよく揃う。隔壁は4次まで発達し、莢径が5mmほどの個体では32枚前後。その上縁には、先端に複数の微小突起を持った鋸歯がよく発達する。これらの隔壁はほぼ同じ厚さで張り出さず、莢壁内縁に沿って急傾斜で落ち込む。そのため莢内は広く、深く見える。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。これらの隔壁内縁には、6〜10個のパリ状葉またはパリが形成され、軸柱を囲むように冠状に並ぶ。3次隔壁は通常1次・2次隔壁の半分ほどの長さ。4次隔壁は莢壁上縁の内側にわずかに発達する程度。莢壁の厚さや高さは、個体や群体によって差が大きい。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅、礁池の岩盤上などで見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種はこれまでCoelastrea aspera パリカメノコキクメイシ(本ガイド未掲載種)やFavites pentagona ゴカクキクメイシなどと混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Coelastrea sp. 2
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Coelastrea Verrill, 1866 パリカメノコキクメイシ属(新称) |
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撮影:深見裕伸(西之表市大原、水深8m)
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莢の長径は8mm〜1.2cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:灰緑色〜褐色。隣接個体との境界が明瞭で、口と口盤は常に白っぽい。口盤は、中心の口を囲むように環状に盛り上がることが多い。
骨格の特徴:個体はやや丸みを帯びた多角形で、出芽途中の個体は細長く伸びた多角形に見える。生時の外観とは異なり、個体配列は完全なセリオイド型で、出芽途中ではない個体の莢の長径は8mm〜1.2cmほどになる。隔壁は4次まで発達し、莢径が1cmに満たないもので40枚前後。それらは莢壁上縁からわずかに内側に張り出したあと、莢壁内縁に沿って急傾斜で落ち込む。隔壁の上縁には、先端に複数の微小突起を持った鋸歯がよく発達する。隔壁の厚さと莢壁上縁での突出度合は、次数による違いはほとんどなく一様に見える。ただし個体によっては、1次隔壁が他の隔壁よりも莢内により張り出すことがある。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。これらの隔壁の内縁にはパリ状葉が形成されることがあるが、不明瞭で目立たない。3次隔壁は軸柱の手前まで、4次隔壁はさらにその手前まで湾曲しながら伸び、低次隔壁に融合する。軸柱は長径2〜5mmほどの楕円形でよく目立ち、1次・2次隔壁の内縁から伸びた複数のトラベキュラで形成されていることがよく分かる。莢壁は緻密で堅固、厚さは基部から上縁まで同じで1mmほど。
生息環境:開放的な礁斜面の水深10m以深で見られる。開放的な湾内では、より浅い水深5mでも見られることがある。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種は、生時の特徴からDipsastraea キクメイシ属、Favites カメノコキクメイシ属やOulophyllia オオナガレサンゴ属の種と混同されている可能性がある。よって国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Cyphastrea confesta Nemenzo, 1959
マダラトゲキクメシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Cyphastrea Milne Edwards and Haime, 1848 トゲキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深6m)
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莢径は1〜3mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体で、群体表面が不規則に盛り上がる。岩盤を広く覆いながら、長径50cmほどの大群体になることもある。
軟体部の色彩と特徴:色彩は主に黄色〜灰褐色などの明るいものが多いが、稀に暗褐色のものも見られる。群体表面で盛り上がったところは色が薄く、窪んだところは濃くなり、全体的にまだら模様に見えることが多い。1次・2次隔壁が突出しているのが生時でもよくわかる。
骨格の特徴:個体は円形で、莢径は1〜3mm、大きさや間隔は不揃いになりやすい。1次・2次隔壁は、莢壁上縁で肥厚してよく突出し、莢の中心に向かって急傾斜で落ち込む。2次までの隔壁数が10枚のときもある。3次隔壁は非常に薄く短く目立たない。肋は、突出した個体を除けば滅多に発達しない。これらの特徴から、莢壁があまり突出しない割には、多くの個体が円筒状に突出したように見える。個体間隔が広く開いた部分では、共骨表面に大きさの揃った顆粒状突起がよく発達する。また共骨には、多毛類の棲管と思われる穴や溝が不規則に発達するが、生時で認識することは困難。
生息環境:礁池や浅礁湖から礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はCyphastrea microphthalma トゲキクメイシやC. ocellina ヒメトゲキクメイシ(両種ともに本ガイド未掲載種)などと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。和名は杉原(2013)に基づく。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Favia favusとして記録)
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Cyphastrea japonica Yabe and Sugiyama, 1932
ニホントゲキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Cyphastrea Milne Edwards and Haime, 1848 トゲキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深5m)
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莢径は1〜2.5mm。
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成長形:被覆状〜塊状群体で、群体表面にコブ状〜円錐状の突出部が形成されることがある。遮蔽的な環境では直径30cmを超える大きな塊状群体になることがある。
軟体部の色彩と特徴:色彩は黄緑色〜淡褐色。個体はドーム状に盛り上がっているように見え、個体間には多毛類の棲管と思われる小さな煙突状突起が認められることがある。
骨格の特徴:個体は円形で莢径は1〜2.5mmと小さめ、大きさや間隔はよく揃う。1次・2次隔壁の長さ・厚さはほぼ同じで突出せず、莢心に向かって緩やかに傾斜する。隔壁上縁に鋸歯がよく発達する場合は、隔壁上部が突出して莢内がドーム状に盛り上がって見える。2次までの隔壁数が10枚のときもある。3次隔壁は目立たない。肋を欠くが、隔壁の延長部に顆粒状突起が並び、肋状に見えることがある。共骨表面には大きさのよく揃った顆粒状突起が発達し、個体が小さいためかよく目立つ。
生息環境:遮蔽的な岩礁斜面の水深10m以浅や、砂泥が堆積する内湾の水深5m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・和歌山県天草牛深〜種子島。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は高知県土佐清水市三崎。本種はCyphastrea microphthalma トゲキクメイシ(本ガイド未掲載種)やC. serailia フカトゲキクメイシなどと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Cyphastrea serailia (Forskål, 1775)
フカトゲキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Cyphastrea Milne Edwards and Haime, 1848 トゲキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深6m)
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莢径は1.5〜3.5mm。
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成長形:被覆状〜塊状群体で、30〜40cmほどの半球状になることも少なくない。礁池や浅礁湖では、サンゴ礫を被覆して非固着性の球状群体になることも多い。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色〜褐色。生時は、個体の輪郭が形のよく整った肉厚な環状(ドーナツ状)に見える。昼間でも触手を伸ばしていることがある。
骨格の特徴:個体は円形で莢径は1.5〜3.5mm、大きさや向き、間隔は群体ごとによく揃う。また、個体間隔が広いと個体直径が大きく、狭いと小さくなる傾向にある。隔壁と肋は3次までよく発達する。1次・2次隔壁は、莢の中心に向かって緩やかに傾斜する。3次隔壁は1次・2次隔壁に比べて薄く短いが、莢壁上縁では厚さや高さが同程度になる。同属他種に比べ、本種は莢壁がよく発達する。これらの特徴から、隔壁や肋が突出しないわりには、個体が環状や円筒状に突出しやすい。共骨表面に顆粒状突起がよく発達するが、細く短いため目立たない。代わりに、泡沫状になった共骨表面がよく目立つ。
生息環境:礁池・浅礁湖の浅瀬〜礁斜面、やや遮蔽的な岩礁斜面〜遮蔽的な内湾で広範囲に見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種はCyphastrea chalcidicum コトゲキクメイシ(本ガイド未掲載種)やC. japonica ニホントゲキクメイシなどと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Favia lizardensisとして記録した可能性あり
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Dipsastraea favus (Forskål, 1775)
ナミキクメイシ(改称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は8mm〜1.5cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜赤褐色。口盤は広く見える。
骨格の特徴:個体は円形〜いびつな楕円形、莢の長径は8mm〜1.5cm、群体ごとに個体の大きさはよく揃う。個体配列はプロコイド型だが、個体間隔が狭くなりやすく、群体頂部では一部セリオイド型になることがある。莢壁は薄めで、突出したりすぼんだりすることはほとんどない。隔壁・肋は4次まで発達するが、3次・4次隔壁がよく発達する場合としない場合がある。4次隔壁までよく発達した個体では、1次・2次隔壁は軸柱まで、3次隔壁も軸柱のすぐ手前までよく伸びる。このとき4次隔壁は、莢壁上縁ではよく発達するが、莢内では莢壁に沿ってわずかに発達する程度。隔壁・肋は莢壁上縁で突出しない。1〜3次隔壁は、莢壁の内側に沿って急傾斜で落ち込むが、パリ状葉の発達とともに途中から軸柱側に張り出す。肋は短く、個体間で共有することが多い。隔壁・肋の上縁には鋸歯がよく発達、等間隔で配列する。また鋸歯と隔壁・肋の側面には、先端の尖った顆粒状突起がよく発達する。そのため骨格表面はざらついて見えることが多い。軸柱は円形〜楕円形で、長径は1.5〜2mm。
生息環境:礁池・浅礁湖の浅瀬や、やや遮蔽的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:内田・福田(1989)でスボミキクメイシの和名が与えられた種はDipsastrea speciosa キクメイシの可能性が高い。また、D. favus のタイプ標本は莢壁が突出せず、個体がすぼんで見えることはない。よって本種の和名は、白井・佐野(1985)が提唱したナミキクメイシに改称する。本種はD. speciosa キクメイシのほか、D. cf.favus やFavites virens オオカメノコキクメイシと混同されている。よって、本種の国内での生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Favia danaeとして記録した可能性あり
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Dipsastraea (Forskål, 1775)
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は8mm〜1.5cm。
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成長形:主に塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色で、群体全体が灰色がかったものや、群体表面が不規則なまだら模様になることがある。個体間隔は広く見え、莢壁上部はきれいなドーナツ状に見える。
骨格の特徴:個体は円形〜いびつな楕円形で、莢の長径は8mm〜1.5cmほどで、1cm前後のものが多い。個体配列は完全なプロコイド型で、一様に分布する。莢壁は厚めで、ややすぼみながら1mmほど突出する。隔壁・肋は4次までよく発達し、莢壁上縁で肥厚し、1mm程度突出する。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。3次隔壁は1次・2次隔壁の2/3〜1/2の長さで、一部は軸柱まで伸びるものもある。4次隔壁は長くても1次・2次隔壁の1/2未満。肋は次数に関係なく同じ長さで、隣接個体との境界まで発達する。軸柱までまたはその近くまで伸びた1〜3次隔壁の内縁には、軸柱を囲むようにやや肥厚したパリ状葉が発達する。隔壁は、莢壁上縁からパリ状葉まで急傾斜で落ち込むので、莢は広く深く見える。隔壁・肋の上縁には、先端のよく尖った鋸歯が整然と並ぶ。側面には顆粒状突起が発達するが小さく、肉眼では分かりにくい。軸柱は長径が2〜3mmの円形〜楕円形で、よく目立つ。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。開放的な湾ではより浅所でも見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島以南〜種子島。種子島では普通種。
補足:本種はDipsastraea favus ナミキクメイシやD. speciosa キクメイシと混同されており、種子島以北での生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
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Dipsastraea (Veron, Pichon and Wijsman-Best, 1977)
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は5mm〜1.2cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。群体表面がまだら模様になり、所々不規則に灰色や黄色になることが多い。
骨格の特徴:個体はきれいな円形〜やや楕円形で、莢の長径は5mm〜1.2cmで、多くは7〜9mm。個体配列は完全なプロコイド型で、一様に分布するが、個体間隔は狭いものもあれば広いものもある。莢壁は厚く、1〜3mmほど円筒状に突出する。隔壁・肋は4次まで発達し、等間隔できれいな放射状に配列する。1〜3次隔壁は軸柱に達する。4次隔壁は他の隔壁の半分程度の長さで、軸柱まで達しない。隔壁は莢心に向かって急傾斜で落ち込むが、1次・2次隔壁の内縁に発達するパリ状葉によって、莢はそれほど深く見えない。肋は隔壁よりも厚く、次数によらずほぼ同じ長さで、突出個体を除けば短い。隔壁・肋の上縁には、分岐した鋸歯がほぼ等間隔で配列する。また隔壁・肋の側面には、先端の鋭く尖った短い顆粒状突起がよく発達する。軸柱は直径1.5〜2mmほどの円形でよく発達する。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。開放的な湾内ではより浅所でも見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種はDipsastraea lizardensis リザードキクメイシ(本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況は再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Favia pallidaとして記録)
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Dipsastraea aff. maritima Verrill, 1872
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は7mm〜1.2cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡緑色や黄緑色〜淡褐色。口盤は明るい色になる。個体がすぼみながら上方に突出した様子がよく分かる。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形、莢の長径は7mm〜1.2cmほど。同一群体上での莢径は不揃いで、個体配列は個体間隔が不規則なプロコイド型。隔壁・肋は4次まで発達。1次・2次隔壁はやや厚く、軸柱まで達する。1次・2次隔壁に比べると3次隔壁はわずかに短く、4次隔壁は1/3〜半分の長さしかない。肋はよく発達し、長さは隔壁と同程度かそれ以上に達する。そのため個体がよくすぼんで見える。隔壁・肋の上縁には、尖端の尖った鋸歯がよく発達し、ほぼ等間隔で配列する。そのため、よく伸びた肋ではその上縁が点線状に見えやすい。隔壁・肋や鋸歯の表面には、小さな顆粒状の装飾がよく発達する。軸柱は円形〜楕円形で長径は1.5〜2mmになるが、発達が悪い個体や未発達の個体も見られる。
生息環境:やや遮蔽的な礁斜面や岩礁斜面で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:本種はDipsastraea maritima (本ガイド未掲載種)のほか、D. favus ナミキクメイシ、D. speciosa キクメイシやD. danai アザミキクメイシ(本ガイド未掲載種)などと混同されているため、国内での生息状況の再検討が必要。
* 種子島初記録種
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Dipsastraea matthaii Vaughan, 1918
アラキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は6mm〜1.2cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:灰色がかった緑色または褐色。莢内が黄色などの明るい色や濃い褐色でまだら模様になることが多い。莢内は浅く口盤は広く見える。
骨格の特徴:個体はきれいな円形〜やや楕円形で、群体頂部の個体間隔が狭いところではやや角ばった楕円形になることがある。莢の長径は6mm〜1.2cmほどで、8mm〜1cmのものが多い。莢壁は薄く突出しない。隔壁・肋は4次まで発達、莢壁上縁で肥厚する。1次・2次隔壁は長く、軸柱まで達する。それらの傾斜は緩やかで、内縁にはパリ状葉が発達するため、莢内は非常に浅く見える。3次隔壁は軸柱のすぐ手前まで伸びることがあるが、多くは1次・2次隔壁の2/3〜1/2の長さ。4次隔壁は長くても1次・2次隔壁の1/2未満。隔壁・肋の上縁には鋸歯がよく発達し、隔壁・肋と鋸歯の側面には微小な顆粒状突起がよく発達する。そのため、骨格表面がざらついて見えやすい。軸柱は明瞭で、長径が1.5〜2mmの円形または楕円形を呈する。肋は発達するが短めで、長く伸びることは稀。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られる。礁池や浅礁湖でもたまに見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はDipsastraea pallida ウスチャキクメイシをはじめD. speciosa キクメイシやD. lizardensis リザードキクメイシ(本ガイド未掲載種)などと混同されているため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Favia speciosaとして記録)
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Dipsastraea pallida (Dana, 1846)
ウスチャキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は6mm〜1cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色。橙色や淡褐色、群体表面がまだら模様になったものも見られる。口盤は小さく、口の部分の色彩が明るくよく目立つ。
骨格の特徴:個体はきれいな円形〜やや楕円形で、莢の長径は6mm〜1cm。個体配列は完全なプロコイド型で、莢壁は薄く、1〜3mmほど円筒状に突出する。突出の程度は群体ごとによく揃う。隔壁・肋は薄く、4次まで発達し、莢壁上縁でよく突出する。1次・2次隔壁は軸柱まで達し、内縁にパリ状葉が発達する。一方3次隔壁は1次・2次隔壁の2/3〜1/2、4次隔壁は1/3の長さ。肋はよく発達し、個体間隔が広いところでは対応する隔壁よりも長く伸びてよく目立つ。隔壁と肋の上縁には分岐した鋸歯がよく発達する。また側面には、小さな顆粒状突起が発達する。軸柱は円形〜楕円形で明瞭、長径は1.5〜2mmほど。莢壁と莢壁上縁の隔壁・肋が突出する割には、発達したパリ状葉と軸柱の存在によって、莢内はそれほど深く見えない。
生息環境:礁池や浅礁湖の浅瀬から礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。岩礁斜面や遮蔽的な内湾でもたまに見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はDipsastraea speciosa キクメイシをはじめD. matthaii アラキクメイシやD. lizardensis リザードキクメイシ(本ガイド未掲載種)などと混同されている。よって国内での生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Favia veroniとして記録した可能性あり
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Dipsastraea cf. pallida
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は5mm〜1cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。個体がよく突出し、個体間隔が広いので肋の部分がよく目立つ。
骨格の特徴:個体はきれいな円形〜やや楕円形で、莢の長径は5mm〜1cmほど。群体上での個体配列は完全なプロコイド型で、個体間隔は広く、一様に分布する。莢壁は厚く、円筒状に2〜5mmほど突出する。隔壁・肋は4次まで発達、莢壁上縁で肥厚し、1mm程度突出する。隔壁は莢壁上縁から軸柱に向かって急傾斜で落ち込むため、莢内は広く見える。1次・2次隔壁と3次隔壁の一部は軸柱まで達する。残りの3次隔壁の長さは、1次・2次隔壁の1/2〜2/3の程度、4次隔壁は1/2未満。1次・2次隔壁の内縁は、わずかに肥厚してパリ状葉が形成されることがある。肋は次数に関係なく突出した莢壁の外側から個体境界までよく発達する。隔壁・肋の上縁には先端の尖った鋸歯が規則正しく発達する。また、隔壁・肋・鋸歯の側面には顆粒状突起が発達する。軸柱は長径が2〜3mmの円形〜楕円形。
生息環境:やや遮蔽的な岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深〜種子島。種子島では稀。
補足:本種はDipsastraea pallida ウスチャキクメイシと混同されている可能性があるため、国内での詳細な生息状況の調査が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:E. lamellosaとして記録した可能性あり
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Dipsastraea speciosa (Dana, 1846)
キクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深4m)
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莢の長径は5mm〜1.5cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。口盤の色が他と異なることが多い。莢は広く深く見える。
骨格の特徴:個体は円形〜楕円形で、莢の長径は5mm〜1.5cm、8mm〜1cmの個体が多い。莢壁はやや厚く、上方に向かってわずかにすぼみながら1〜3mmほど突出する。個体配列はプロコイド型だが、個体間隔が狭くなりやすく、群体頂部では一部セリオイド型になることがある。隔壁・肋は薄く、4次まで発達する。ただし3次・4次隔壁の長さが不揃いで、配列が乱れて見える。1次・2次隔壁と3次隔壁の一部は軸柱まで達する。残りの3次隔壁の長さは、1次・2次隔壁の1/2〜1/3の程度、4次隔壁は1/3未満。隔壁は莢壁上縁や内縁に向かってあまり突出せず、そこから莢心に向かって急傾斜で落ち込む。また、1次・2次隔壁の内縁でのパリ状葉の発達が悪い。そのため、莢は広く深く見える。肋は莢壁の外側面ではよく発達するが、共骨上まで発達し、個体間で肋が連結することはほとんどない。隔壁・肋の上縁には鋸歯が、側面には顆粒状突起がそれぞれ発達するが、ともに小さくて目立たない。軸柱は円形〜楕円形、長径は1.5〜2mm。
生息環境:礁斜面の深場から礁池や浅礁湖、内湾〜やや遮蔽的な岩礁斜面で広く見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種はDipsastraea favus ナミキクメイシやD. pallida ウスチャキクメイシをはじめ多くの同属他種と混同されている。
* 種子島初記録種
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Dipsastraea aff. veroni (Moll and Borel-Best, 1984)
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Dipsastraea de Blainville, 1830 キクメイシ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市上古田、水深22m)
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莢の長径は1.5cm以上。
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成長形:主に塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:灰褐色〜灰緑色で、口盤はより淡い色になることがほとんど。
骨格の特徴:個体はいびつなまたは角ばった楕円形、長径は1.5cm以上と大きく、3cm近くになるものもある。個体はプロコイド型に配列し、個体間隔は2mm程度しかないものから5mm以上離れているものまで様々。莢壁は薄く、共骨表面からほとんど突出しない。隔壁・肋は薄く、4次まで発達し、莢壁上縁でよく突出する。隔壁は莢心に向かって急傾斜で落ち込む。そのため莢内は5mm〜1.2cmほどの深さになる。発達途中の4次隔壁を除けば、隔壁は全て軸柱まで達する。隔壁内縁でのパリ状葉の発達は悪い。肋は、個体間隔が密な群体では短いが、個体間隔が広いものでは個体同士を連結するようによく発達する。隔壁と肋の上縁には、先端が尖り、大きさの揃った鋸歯が等間隔で配列する。また隔壁・肋・鋸歯の側面には、尖端な顆粒状突起がそれらに対して垂直に並ぶ。軸柱は円形〜楕円形でよく発達し、長径は2〜6mmほど。同属他種に比べて群体裏面でのエピテカの発達が極めて悪い。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られ、それ以浅で見られることは稀。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県五島福江島〜鹿児島県喜界島。種子島では稀。
補足:本種は個体直径が類似するDipsastraea veroni アバレキクメイシやD. maxima ウルトラキクメイシ(両種ともに本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Echinopora cf. gemmacea (Lamarck, 1816)
オオリュウキュウキッカサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Echinopora Lamarck, 1816 リュウキュウキッカサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深10m)
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莢径は3〜5mm。
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成長形:被覆状群体。ただし、群体裏面が完全に基盤に固着することはない。群体周縁は葉状になって張り出すことが多い。
軟体部の色彩と特徴:薄紫色、クリーム色や緑色〜褐色。群体周縁で色が淡くなることが多い。群体表面はザラザラして見える。
骨格の特徴:個体は頂部が凹んだ半球形〜円筒形で、莢径3〜5mm、同一群体上での大きさ、向きや突出の程度は不揃い。隔壁は3次まで発達し、たまに不完全な4次隔壁が見られることもある。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。1次隔壁は、2次隔壁に比べて莢壁上縁近くでやや厚くなるが、その違いは肉眼で区別しにくい。3次隔壁は薄く、莢壁上縁から莢内に向かってわずかに伸長する程度だが、軸柱近くまで伸長しているものもある。1次・2次隔壁の上縁や共骨表面では、高さや太さのよく揃った鋸歯と針状突起が密に発達する。明瞭な肋は発達しないが、針状突起が莢壁の外側や群体周縁で規則正しく並んで肋状に見える。1次隔壁上縁の鋸歯の数は、パリ状葉部も含めると4つだが、パリ状葉が未発達または中間の鋸歯2つが融合している時は2〜3つに見える。2次隔壁では莢壁上部付近に2つ確認できる。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。礁池や浅礁湖でも見られることがある。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島では稀。
補足:本種の個体の大きさ、隔壁・肋の上縁の鋸歯の形状と莢壁の突出度合は、Echinopora gemmacea (本ガイド未掲載種)のタイプ標本のそれらと異なっている。また本種はE. lamellosa リュウキュウキッカサンゴとも混同されている。よって本種は、更なる分類学的検討と国内での生息状況の再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Favites halicora (Ehrenberg, 1834)
マルカメノコキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深4m)
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莢の長径は8mm〜1.2cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。口盤または隔壁・肋の上縁が明るめの色彩になることがある。莢壁は厚く、莢は浅く、口盤は小さく見える。1次隔壁が不規則に突出した個体が見られることがある。
骨格の特徴:個体は円形〜やや丸みを帯びた多角形で、莢の長径は8mm〜1.2cmほど。それらの配列はプロコイド型にもセリオイド型にもなる。莢壁は2mmほどで、頂部は丸みを帯びていることが多い。隔壁・肋は4次まで発達し、莢壁上縁で突出することなく、莢心に向かって急傾斜で落ち込む。しかし、大きな軸柱が莢内の浅いところでよく発達するため、莢内はそれほど深く見えない。1次・2次隔壁は完全に軸柱に達し、それらの内縁はよく肥厚して、パリ状葉またはパリが発達することも少なくない。3次隔壁は、厚さは1次・2次隔壁とほぼ同じだが、軸柱が大きく発達した個体を除けば、それらが軸柱に達することはない。4次隔壁は他の隔壁に比べて薄く、莢壁上縁でわずかに形成される程度。肋は短く、ほぼ長さが揃っている。隔壁・肋の上縁には、丸くて先端が尖り、側面に顆粒状突起を備えた鋸歯がよく発達する。そのため、個体の表面はザラついて見える。軸柱は円形〜楕円形で、長径は小さく1mm、大きいものは3mmほどになる。それらは、よく突出したパリ状葉やパリで囲まれるため、よく目立つ。
生息環境:礁池・浅礁湖の岩盤上から礁斜面や岩礁斜面の深場まで広く見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はFavites abdita カメノコキクメイシ(本ガイド未掲載種)とよく混同されているため、国内での分布状況の再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Favia rotundataとして記録)
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Favites pentagona (Esper, 1795)
ゴカクキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市浦田湾、水深6m)
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莢の長径は6〜8mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面に直径および高さが1〜4cmほどの円柱状の突出部が不規則に形成されることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に暗緑色〜赤褐色で、黄緑色や淡褐色のものや、莢壁上縁が白いものや、口盤の色彩が他と異なるものが見られる。生時でも個体はきれいな多角形に見え、隔壁が規則正しく配列している様子がよく分かる。莢内は浅く、口盤は小さく見える。
骨格の特徴:個体は多角形で、莢の長径は6〜8mmがほとんどで、形状はよく揃って見える。個体配列は完全なセリオイド型。莢壁は基部で2〜3mmと厚いが、頂部では0.5mm以下と薄く、直線状に見える。隔壁は4次まで発達し、次数ごとに長さや厚さはよく揃い、放射状に規則正しく配列する。隔壁は莢壁上縁で突出せず、莢壁の内側面に沿うように発達する。そのため莢内は、浅くて平滑に見える。1次・2次隔壁は内縁がやや肥厚し、明瞭なパリまたはパリ状葉が形成される。3次隔壁は莢壁の内側面から莢心側まで伸長するが、軸柱まで達することはない。4次隔壁は短く、莢壁の内側面上に発達するのみ。隔壁上縁には先端がよく尖り、側面に顆粒状突起を持つ小さな鋸歯がびっしりと発達する。軸柱は1mm以下で小さいが、それを囲むようによく発達したパリやパリ状葉の存在により認識しやすい。
生息環境:礁池・浅礁湖の岩盤上や、礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はCoelastrea sp. 1やFavites aff.pentagona シモフリゴカクキクメイシなどと混同されているため、種子島以北での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Favites aff. pentagona (Esper, 1795)
シモフリゴカクキクメイシ(新称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:目ア拓真(中種子町馬立の岩屋、水深8m)
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莢の長径は7〜9mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に灰緑色や暗褐色。隔壁上縁が白くなり、群体表面(特に莢壁上縁)に霜が降ったように見えることが多い。口と口盤の色彩が異なることがある。
骨格の特徴:個体は多角形〜細長く伸びた多角形で、莢の長径は6mm〜1.2cmで、7〜9mmのものが多い。個体配列は完全なセリオイド型だが、多毛類の棲管と思われる管状や長い溝状の間隙が、莢壁を2分するように不規則に形成されることがある。莢壁は基部で1〜1.5mmほどだが、上方に向かうにつれ薄くなり、頂部での厚さは0.5mm未満になる。隔壁は4次まで発達し、厚さは次数ごとの違いが不明瞭、傾斜はよく揃って緩やかに見える。莢径が8mmほどの個体では、隔壁数は25〜30枚程度。1次・2次隔壁は軸柱まで達、内縁は肥厚し、パリ状葉やパリが顕著に発達する。3次隔壁は1次・2次隔壁の1/2〜2/3ほどの長さで、軸柱に達しない。4次隔壁は非常に短く、莢壁内側面からわずかに張り出す程度。隔壁上縁には、形が不揃いで表面に尖った微小突起を伴う鋸歯が発達する。隔壁の側面には、微小な顆粒状の装飾が見られる。軸柱は1〜2mmほどで通常は認識しやすいが、小さな個体やパリ状葉やパリの発達が悪い個体では不明瞭で目立たない。
生息環境:岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深〜トカラ列島中之島。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はこれまでFavites pentagona ゴカクキクメイシやCoelastrea sp. 1 などと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Favites rotundata Veron, Pichon and Wijsman-Best, 1977
アツキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は1.5〜2.5cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色。軟体は肉厚で、個体は輪郭が丸みを帯びており、きれいなドーナツ型に見える。莢壁上縁は淡い灰緑色、口盤は灰色で明るく見えることが多い。隔壁上縁が厚く、莢は浅く見える。1次隔壁が不規則に突出した個体がいくつか見られることがある。
骨格の特徴:個体は主に円形〜楕円形で、莢の長径は1.5〜2.5cmで、1.8cm前後のものが多い。個体配列は基本的にプロコイド型。個体の大きさは不揃いで、個体の間隔、向き、突出度合も不規則になりやすい。莢壁は厚く、隔壁・肋は4次まで発達する。1〜3次隔壁は厚めで、莢壁上縁ではさらに厚くなる。隔壁傾きは緩やかで、上縁には鋸歯が、内縁にはパリ状葉が発達しやすいため、莢内は常に浅い。1次・2次隔壁は軸柱まで達するが、3次隔壁はそれらの2/3ほどの長さにしかならず、軸柱には達しない。4次隔壁は薄く、莢壁上部でわずかに発達するのみだが、ごく稀に3次隔壁と同程度の長さまで伸びることがある。肋は莢壁のすぐ外側に短く発達するが、個体間隔が広いところでは長くなることがある。隔壁・肋の上縁の鋸歯は顕著で、先端がややローブ状になるか、またはよく尖っており、形や大きさや間隔が揃っている。鋸歯の側面からその延長の隔壁側面には、複数の顆粒状突起が一列に配列する。軸柱は円形〜楕円形でよく目立ち、長径は3〜4.5mmほどになる。
生息環境:開放的な礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。開放的な湾ではより浅所でも見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はFavites cf.rotundata やF. aff.rotundata と混同されている可能性がある。特に沖縄本島以北での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Montastrea valenciennesiとして記録)
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Favites cf. rotundata Veron, Pichon and Wijsman-Best, 1977
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町馬立の岩屋、水深14m)
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莢の長径は1.5〜2.5cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面に長径と高さが最大で5cm程度のコブ状の突出部が不規則に形成されることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色で、赤みを帯びたものもある。軟体が肉厚で、莢は浅く、個体は丸みを帯びているが、隣接個体の境界はきれいな多角形に見える。個体が突出して様々な方向を向くことはない。
骨格の特徴:個体はいびつな多角形で、大小様々な個体がセリオイド型〜プロコイド型に配列する。莢は長径1.5〜2.5cmほどだが、稀に3cm近い個体が見られることがある。莢壁は厚さ1〜2mmで基部から頂部まで同じ厚さ。高さは1cmを超えることがあるが、隔壁の傾斜が緩やかなため莢内は深く見えない。隔壁は5次までで、長さと莢壁上縁での突出度合は次数ごとに異なる。そのため、莢壁上縁から内側面の部分が粗く不揃いに見える。1〜4次隔壁はほぼ同じ厚さだが、5次隔壁はやや薄い。1次・2次隔壁は長く、莢壁上縁でよく突出し、軸柱まで達する。3次隔壁の長さは不揃いだが、軸柱手前まで伸びて低次隔壁に融合することがある。4次隔壁は、伸びても低次のものの1/2〜2/3ほどの長さまで。5次隔壁は非常に短く、莢壁の内側面にわずかに見られるのみ。1〜3次隔壁内縁にはパリ状葉が形成されることがあるが、ほとんどは不明瞭で目立たない。隔壁上縁には、先端が尖った、または丸くローブ状になった鋸歯がよく発達する。鋸歯は莢壁側で短くて小さいが、軸柱側では長くて大きい。軸柱は楕円形で明瞭、長径は2〜6mm。
生息環境:岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島〜種子島。種子島では稀。
補足:本種はFavites rotundata アツキクメイシやF. aff.rotundata と混同されている。よって国内での生息状況は再検討が必要。また、骨格形態がアツキクメイシと類似するため、両種の更なる分類学的検討も必要である。
* 種子島初記録種
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Favites aff. rotundata Veron, Pichon and Wijsman-Best, 1977
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大原、水深6m)
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莢の長径は1〜2cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色。莢壁上縁と口盤は灰色がかって明るく見える。軟体は肉厚だが、莢壁が薄く個体の輪郭も粗いため、個体はドーナツ型に見えにくい。莢は深く、口盤は広く見える。1次隔壁が不規則に突出し、その上縁が白っぽくなることがある。
骨格の特徴:個体は主に円形〜楕円形で、莢の長径は1〜2cmで、同一群体上でのそれら大きさは不揃いに見える。個体配列はプロコイド型だが、個体間隔が狭く、部分的にセリオイド型に見えることもある。個体の向きや突出度合は不揃いに見えるが、出芽して間もない小さな個体と、群体周縁の個体は莢壁が突出する傾向がある。隔壁は5次まで発達し、5次隔壁を除けば厚さはほぼ同じで薄い。これらは莢壁上縁でよく突出し、莢心に向かって急傾斜で落ち込む。そのため、莢径を問わず莢内は深く見える。またごく一部の個体では、1次隔壁だけがやや厚くなって、顕著に張り出すことがある。1次・2次隔壁は軸柱まで達するが、その内縁でのパリ状葉の発達は悪い。3次隔壁はそれらの内縁よりもやや手前まで、4次隔壁は3次隔壁内縁のさらに手前までしか達しない。これらの隔壁内縁は、低次隔壁のほうに湾曲するため、隔壁の配列がきれいな放射状に見えない。5次隔壁は非常に短く、莢壁上縁でわずかに発達するのみ。また他の隔壁に比べて薄く、莢壁上縁で突出しないため、目立たない。肋は突出した個体の外側面では明瞭。隔壁・肋の上縁の鋸歯は顕著で、先端がややローブ状になるか、または尖っており、形や大きさや間隔がよく揃う。軸柱は、長径が3〜4mmほどの円形〜楕円形で、よく発達する。
生息環境:礁池・浅礁湖の岩盤上や、礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島〜沖縄本島。種子島では稀。
補足:本種はFavites rotundata アツキクメイシと混同されている可能性がある。よって国内での生息状況は再検討が必要。また本種の形態は、Dipsastraea キクメイシ属との類似性が高いため、更なる分類学的検討も必要と思われる。
* 種子島初記録種
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Favites valenciennesi (Milne Edwards and Haime, 1849)
タカクキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町大塩屋、水深2m)
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隣接個体は肋を共有しない。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜灰緑色。莢壁の内側がやや淡い色になり、口盤が暗く見えることが多い。個体はやや角ばっているため、ドーナツ状に見えることは少なく、群体表面が平滑に見える。
骨格の特徴:個体は角ばった円形〜多角形で、莢の長径は5〜8mmほど。個体配列は完全なプロコイド型で、個体間隔は狭い。隣接個体の境界には、多毛類の棲管と思われる管状または短い溝状の間隙が不規則に分布する。莢壁は厚いがほとんど突出しない。隔壁・肋は厚めで、莢壁上縁ではさらに肥厚する。これらは通常4次まで発達するが、4次の発達は悪い。1次・2次隔壁は長く、莢壁上縁から急傾斜で落ち込んだ後、軸柱まで達する。それらの内縁はやや肥厚しており、パリ状葉が発達することもある。3次隔壁は1次・2次隔壁の1/2〜2/3の長さで、長いものはその内縁が1次・2次隔壁の側面に融合する。肋の長さは次数に関わらず同じで短い。個体間で肋を共有する箇所はほとんどない。隔壁・肋の上縁の鋸歯は先端の尖った円錐状で、上方を向きながら整然と並ぶ。隔壁・肋・鋸歯の表面には顆粒状の装飾が認められるが微小で目立たない。軸柱は長径1〜2mmほどの円形〜楕円形でよく発達する。群体骨格を割ると、個体境界できれいに割れることは少ない。
生息環境:礁池・浅礁湖の岩盤上や、礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでFavites aff.valenciennesi ニセタカクキクメイシと混同されていたため(深見・野村, 2009)、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:Favites flexuosaとして記録した可能性あり
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Favites aff. valenciennesi (Milne Edwards and Haime, 1849)
ニセタカクキクメイシ(新称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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隣接個体が部分的に肋を共有する。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。群体表面や一部の個体の莢内が不規則に灰色がかり、まだら模様に見える。個々の個体はキクメイシ属のようにドーナツ型に盛り上がって見える。
骨格の特徴:個体は角ばった円形〜楕円形、莢の長径は5mm〜1cmで、7〜8mmのものが多い。個体間隔は一様に狭いが、配列は完全なプロコイド型。隣接個体の境界には、多毛類の棲管と思われる管状や溝状の間隙が各個体を囲むように一様に分布する。莢壁は厚く、ややすぼみながら1mm程度突出する。隔壁・肋は薄いが、4次まで発達し、莢壁上縁で肥厚し、わずかに突出する。隔壁の傾斜は緩やかで、莢内は浅く見える。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。3次隔壁も一部はほぼ軸柱まで達するが、残りは1次・2次隔壁の1/2〜2/3の長さにとどまる。4次隔壁は莢壁上縁ではよく発達するが、莢内では1次・2次隔壁の1/2未満の長さにしかならない。1〜3次隔壁の内縁にはパリ状葉が発達しやすい。肋は莢壁の外側に沿ってよく発達する。隔壁・肋の上縁には整然と並んだ鋸歯が、側面には顆粒状突起がよく発達する。肋は、隣接する個体間で上縁の鋸歯が連結する箇所が多く認められる。軸柱はよく発達し、長径が1〜1.5mmほどの円形〜楕円形。群体骨格を割ると、個体境界できれいに割れやすい。
生息環境:礁池・浅礁湖の岩盤上や、礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では普通種。
補足:本種はこれまでFavites valenciennesi タカクキクメイシと混同されていたため(深見・野村, 2009)、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Favites virens (Dana, 1846)
オオカメノコキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(中種子町馬立の岩屋、水深6m)
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莢の長径は8mm〜1.6cm。
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成長形:準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。群体表面や一部の個体の莢内が不規則に黄色または灰色がかり、まだら模様に見えることが多い。莢壁が薄く突出しないため、個体がドーナツ型に盛り上がって見えることはない。
骨格の特徴:個体配列はプロコイド型〜セリオイド型。個体は円形〜多角形。莢は長径8mm〜1.6cmで、その中間くらいの個体が多い。莢壁は薄くて突出しない。隔壁・肋は5次まで発達し、莢壁上縁で突出しない。プロコイド型群体の場合、莢壁上部が平坦に見える。1〜4次隔壁は薄く、莢壁上縁でほぼ等間隔に配列する。隔壁の傾斜は様々だが、群体ごとにはよく揃う。1次・2次隔壁は軸柱まで達し、その内縁にパリ状葉が発達することがある。3次隔壁は軸柱のやや手前まで、4次隔壁は3次隔壁内縁のさらに手前までしか伸びない。これらの隔壁内縁は、低次隔壁のほうに湾曲して融合することもある。5次隔壁は非常に短く、莢壁上縁と側面でわずかに発達する。1〜4次肋は短くほぼ同じ長さで、1〜4次隔壁に比べるとやや厚い。隔壁・肋の上縁には鋸歯が、鋸歯の表面と隔壁・肋の側面には顆粒状突起がよく発達する。隔壁の鋸歯はローブ状で、莢の下方のものほど突出する。軸柱は、長径が3〜4mmほどの円形〜楕円形。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島若松島以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はVeron et al. (1977)でFavites flexuosa (本ガイド未掲載種)のシノニムにされている。しかし、本種の隔壁の形状や次数ごとの配列パターンは、F. flexuosa よりもむしろDipsastraea favus ナミキクメイシに類似する。よって本種とF. flexuosa は、別種であると思われ、その分類学的位置についても更なる検討が必要であろう。オオカメノコキクメイシの和名を担うのは本種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Favites yamanarii Yabe and Sugiyama, 1936
ヤマナリカメノコキクメイシ(新称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Favites Link, 1807 カメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深5m)
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莢の長径は1cm前後。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。生時でも、きれいな多角形の個体、厚い莢壁、規則正しく配列する隔壁を認識できる。
骨格の特徴:個体は多角形で、その配列は完全なセリオイド型。莢の長径は7〜1.4mmだが、1cm前後の個体が多い。莢壁は厚さ1mm前後で、隔壁に比べると厚く緻密に見える。隔壁は通常4次まで発達し、ほぼ同じ厚さ。莢壁上縁で突出せず、莢心に向かって緩やかに傾斜する。隔壁上縁には大きさと間隔の揃った鋸歯がほぼ等間隔でよく発達する。そのため莢内は浅く見える。鋸歯と隔壁の側面には小さな顆粒状の装飾がよく発達する。1次・2次隔壁は、軸柱まで達する。3次隔壁が軸柱に達することは稀だが、そのすぐ近くまで伸長する。4次隔壁は短く、伸びても低次隔壁の2/3ほど。軸柱は明瞭で、長径が1.5mmほどの円形〜やや楕円形。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅や、開放的な湾で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は北大東島。本種はVeron et al. (1977) でFavites chinensis シナキクメイシのシノニムにされている。しかし本種はシナキクメイシより莢径が大きく、シナキクメイシ(本ガイド未掲載種)のようにプロコイド型になることや、隔壁内縁にパリやパリ状葉が形成されることはない。本種はFavites abdita カメノコキクメイシ(本ガイド未掲載種)とも混同されている可能性があり、国内での生息状況については再検討が必要。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Goniastrea favulus (Dana, 1846)
ヒメウネカメノコキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Goniastrea Milne Edwards and Haime, 1848 コカメノコキクメイシ属 |
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撮影:目ア拓真(西之表市上古田、水深12m)
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莢の長径は3〜6mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面が不規則に盛り上がったり、群体周縁が固着基盤から大きく遊離したりすることは少ない。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色またはピンク色で、淡い色彩のものが多い。
骨格の特徴:個体は多角形で、それらの配列はセリオイド型〜準メアンドロイド型。同一群体上での個体の大きさや形は不揃い。莢の長径は、軸柱が一つのもので3〜6mm、軸柱が2〜3個並んだもので9mm〜1.2cm程度になる。隔壁は4次まで発達し、莢の長径が6mmほどの個体で40枚前後。隔壁の上縁と側面には先端の尖った鋸歯と微小突起がそれぞれよく発達する。よって肉眼でも隔壁表面がザラついて見えやすい。1〜3次隔壁はほぼ同じ厚さで、莢壁上縁からやや内側に張り出したあと、莢底に向かってほぼ垂直に落ち込む。4次隔壁は薄く短く、莢壁内側にわずかに発達する程度。そのため莢内は深く、長めの1〜3次隔壁と短い4次隔壁が規則正しく交互に並んでいるように見える。1次・2次隔壁は軸柱まで伸長し、軸柱のすぐ外側にはパリ状葉が形成される。軸柱は小さく、不明瞭または欠けることもある。莢壁は薄いが緻密で、厚さや高さは群体ごとによく揃う。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅、礁池や浅礁湖の岩盤上などで見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでGoniastrea edwardsi ヒラカメノコキクメイシ(本ガイド未掲載種)やG. pectinata コカメノコキクメイシと混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Goniastrea pectinata (Ehrenberg, 1834)
コカメノコキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Goniastrea Milne Edwards and Haime, 1848 コカメノコキクメイシ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市大久保港、水深4m)
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莢の長径は3〜6mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面にコブ状や円柱状の突起が不規則に形成されたり、群体周縁が固着基盤から大きく遊離したりすることがある。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色またはピンク色で、淡い色彩の群体が多い。
骨格の特徴:個体は多角形で、それらの配列はセリオイド型〜メアンドロイド型。同一群体上での個体の大きさや形は不揃い。莢の長径は、軸柱が一つのもので4mm〜1cm、軸柱が3〜6個並んだもので1.6〜3cm程度になる。隔壁は4次まで発達し、莢の長径が8mmほどの個体で50枚ほど。隔壁上縁には、先端に複数の微小突起を持った扁平な鋸歯がよく発達する。鋸歯に対応して、隔壁側面では微小突起がよく発達する。1〜3次隔壁はほぼ同じ厚さで、莢壁上縁では内側に向かってややローブ状に張り出したあと、莢底に向かってほぼ垂直に落ち込む。4次隔壁は薄く短く、莢壁内側にわずかに発達する程度。よって、長めの1〜3次隔壁と短い4次隔壁が規則正しく交互に並んでいるように見える。1次・2次隔壁は軸柱まで伸長し、隔壁内縁には肥厚したパリ状葉がよく発達する。そのため莢は実際ほどは深く見えない。複数の軸柱を持つ莢では、隣接する軸柱間の隔壁は肥厚する。軸柱は小さく、不明瞭または欠けることもある。莢壁は厚く緻密で、ローブ状に張り出した1〜3次隔壁によって、莢壁上縁は丸みを帯びてさら厚く見える。ただし、同一群体内での厚さや高さは不揃いになりやすい。群体の中で基盤に固着していなかった部分の裏面は、Merulinaサザナミサンゴ属やScapophylliaオオサザナミサンゴ属のように群体周縁に向かって放射状に波打つ。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅、礁池や浅礁湖の岩盤上などで見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はこれまでGoniastrea favulus ヒメウネカメノコキクメイシと混同されていたため、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Goniastrea retiformis (Lamarck, 1816)
コモンキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Goniastrea Milne Edwards and Haime, 1848 コカメノコキクメイシ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町大塩屋、水深2m)
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莢の長径は3〜6mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。大きな群体では表面が不規則に盛り上がる。群体周縁が固着基盤から大きく遊離することは少ない。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色またはピンク色で、淡い色彩の群体が多い。莢壁上縁が薄く線状に見える。
骨格の特徴:個体は多角形で、莢の長径は3〜6mmほど、セリオイド型に配列。同一群体上での個体の大きさや形は不揃いだが、個体が小さいためにその違いは目立たない。隔壁は4次まで発達し、莢径が4mmほどの個体では40枚前後。隔壁の上縁には、先端に複数の微小突起を持った鋸歯がよく発達する。微小突起は隔壁の側面にもよく発達する。1〜3次隔壁はほぼ同じ厚さで、莢壁上縁から軸柱に向かって急傾斜で落ち込み、1次・2次隔壁は軸柱まで達する。1次・2次隔壁の内縁には、軸柱を囲むように6〜10個のよく肥厚したパリ状葉またはパリが形成される。3次隔壁は軸柱近くまで伸びるものもあるが、多くは1次・2次隔壁の半分未満の長さ。4次隔壁は非常に薄く短く、莢壁内側にわずかに発達する程度。莢壁は緻密で、厚さは個体や群体によって変わりやすいが、その上縁は常に薄く尖っている。
生息環境:波当たりの強い礁縁、礁斜面や岩礁斜面の水深5m以浅や、礁原の岩盤上などで見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:Goniastrea minuta (本ガイド未掲載種)と混同されている可能性が高く、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Hydnophora bonsai Veron, 1990
ボンサイイボサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Hydnophora Fischer von Waldheim, 1807 イボサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市浦田湾、水深5m)
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モンティクル基部の短径は2〜3mm。
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成長形:被覆状〜塊状群体。群体表面には直径1.5〜2cm、高さが最大5cmほどのコブ状〜円柱状の突出部が不規則に発達することが多い。また、円柱状部の先端はさらに複数に分岐しやすい。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜淡緑色。モンティクルの表面とそれ以外の部分の色彩は異なることが多い。昼間でも触手を伸ばすことがあるが、モンティクルが隠れて見えないほどまで伸長することはない。
骨格の特徴:群体表面はモンティクルで一様に覆われ、個体はハイドノフォロイド型に配列する。モンティクルは円形〜楕円形で、基部での短径はおよそ2〜3mm、高さは3〜5mmほどになる。これらは、細い割に高さがあるので、群体表面からよく突出して見える。群体周縁や円柱状部の先端を除けば、複数のモンティクルが連なってコリンを形成することは少ない。隔壁は3次までで、モンティクルの側面によく発達する。1次・2次隔壁は、モンティクルの頂部から軸柱をつなぐように発達する。3次隔壁は発達が悪く、突起の側面でわずかに見られる程度。隔壁上縁には鋸歯が、側面には顆粒状突起がそれぞれ発達するが、どちらも微小で肉眼では見えにくい。軸柱は隔壁内縁から伸びたトラベキュラで形成されるが、肉眼での隔壁内縁との区別は困難である。
生息環境:礁池や浅礁湖や、礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・上五島中通島以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はHydnophora exesa トゲイボサンゴやH. microconos リュウキュウイボサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されている。よって国内での本種の生息状況について再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Hydnophora exesa (Pallas, 1766)
トゲイボサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Hydnophora Fischer von Waldheim, 1807 イボサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市浦田湾、水深7m)
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モンティクル基部の短径は3〜4mm。
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成長形:被覆状〜塊状群体。群体表面には直径2.5〜5cm、高さが最大10cmほどのコブ状〜円柱状の突出部が不規則に発達することがある。触手は、モンティクルが認識できないほど昼間でも長く伸びる。
軟体部の色彩と特徴:全体的に灰色がかった褐色〜緑色で、赤みを帯びたものも見られる。
骨格の特徴:>群体表面はモンティクルで覆われ、個体配列はハイドノフォロイド型。モンティクルは主に楕円推形で、基部での短径は3〜4mm、高さは最大5mmほどになる。また、複数のモンティクルが連なってコリンを形成し、それらの間の個体がメアンドロイド型に配列することが多い。モンティクルの側面には1〜3次隔壁が発達する。1次・2次隔壁は長く、モンティクルの頂部から軸柱まで発達し、軸柱に近いほうではやや厚くなる。3次隔壁は薄く短く、軸柱には達しない。隔壁上縁には、先端の尖った鋸歯がよく発達する。また隔壁の側面には顆粒状突起が発達するが小さくて目立たない。軸柱は、1次・2次隔壁の内縁から伸びた複数のトラベキュラで形成されるが、それらが連結して板状に見える場合や、欠く場合もある。
生息環境:礁斜面では水深10m以深、岩礁斜面では水深15m以浅で見られる。遮蔽的な内湾でも見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はHydnophora exesa トゲイボサンゴと混同されているため、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptoria phrygia (Ellis and Solander, 1786)
ナガレサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Leptoria Milne Edwards and Haime, 1848 ナガレサンゴ属 |
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撮影:目ア拓真(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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コリン頂部間の距離は3〜4mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。大きな群体では、表面に大きな凹みや、直径と高さが数cmにおよぶコブ状〜円柱状の突出部が不規則に形成されやすい。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、褐色や緑色の群体も見られる。
骨格の特徴:個体配列は完全なメアンドロイド型。部分的にセリオイド型や準メアンドロイド型になることはほとんどない。莢壁に相当するコリンは厚さ2〜3mm、高さ2〜2.5mmで、並列するコリンの頂部間の距離は3〜4mm。軸柱が並ぶ口盤は幅2mm未満と狭いため、肉眼ではコリンが厚く見える。隔壁はコリンに直交するように発達し、ほぼ等間隔で配列する。隔壁の次数は不明瞭だが、低次隔壁が長く、軸柱まで達するのに対し、高次隔壁は短く、軸柱まで達することはない。隔壁はコリン頂部で突出するが、上縁が鋭く尖ることはなく、次数に関わらず高さがよく揃う。隔壁の上縁には微小な鋸歯が発達する。鋸歯の側面とその延長部にあたる隔壁の側面に顆粒状突起が発達することがある。明瞭な軸柱は形成されないが、隣接する軸柱間には、緻密な板状または棒状突起が形成され、それらが直線状または点線状に配列する。
生息環境:波当たりの強い開放的な礁斜面の水深10m以浅で見られる。また潮通しのよい礁池や浅礁湖でも見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Merulina ampliata (Ellis and Solander, 1786)
サザナミサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Merulina Ehrenberg, 1834 サザナミサンゴ属 |
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撮影:松本 尚(西之表市浦田湾、水深3m)
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莢の長径は3〜6mm。
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成長形:固着基盤に沿って成長する被覆状または薄板状群体。群体の中心付近では、直径と高さがともに2〜3cmほどのコブ状の突出部が不規則に形成されることもある。
軟体部の色彩と特徴:淡い褐色、明るい緑色または薄いピンク色。
骨格の特徴:個体は莢の長径が3〜6mmほどの多角形で、個体配列はメアンドロイド型だが、群体の中心付近やコブ状突出部上では、セリオイド型になることもある。莢壁は厚さ1〜1.5mmほど。隔壁は3次まで発達するが、3次隔壁が未発達の個体も多い。1次・2次隔壁は莢壁上縁でよく突出する。これらの隔壁は軸柱に達するが、パリ状葉の発達は悪い。3次隔壁は1次・2次隔壁よりも薄くて非常に短く、軸柱には達しない。隔壁上縁には、先端が分岐しややねじれた鋸歯が、側面には先端が尖った微小突起がそれぞれよく発達する。そのため肉眼では、隔壁が厚くザラついて見える。軸柱は小さく、隔壁内縁との区別が付きにくい。メアンドロイド型に連なった複数の個体は、1つの軸柱を共有することはなく、隣接する軸柱は必ず肥厚した隔壁で隔てられている。群体裏面は3〜6mmほどの間隔で放射状に大きく波打ち、同心円状のエピテカは形成されない。下方で凸状に盛り上がった部分には、6〜10本程度の明瞭な肋が見られ、その上縁には形や大きさの不揃いな鋸歯がよく発達する。一方、凹んだ部分には、不規則に小さな孔が開くことが多い。
生息環境:礁池・浅礁湖や、波当たりの弱い礁斜面や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はScapophyllia cylindrica オオサザナミサンゴと混同されているため、国内での生息状況については再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
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Mycedium elephantotus (Pallas, 1766)
ウスカミサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Mycedium Milne Edwards and Haime, 1851 ウスカミサンゴ属 |
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撮影:梶原健次(西之表市上古田、水深10m)
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個体は側方を向く。
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成長形:被覆状群体。斜面上では群体周縁が葉状に張り出すことが多い。基盤に固着しているのは群体の中心のみで、他の部分は基盤から遊離している。生時でも、個体が突出し、群体周縁を向いている様子がよく分かる。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。赤みを帯びたものや灰色がかったもの、口盤が白くなったものも多い。
骨格の特徴:個体はやや楕円形〜楕円形、長径は5mm〜1cmほどだが、出芽途中または直後の個体はそれよりも大きく、または小さくなる。幼群体では、群体中心に長径が1.5cmほどの中心個体が見られることがある。個体の多くは、群体周縁を向き、基本的には中心個体を囲むように放射状または同心円状に配列する。しかし、群体周縁の葉状部を除けば、規則的な配列を認識しにくい。個体配列はプロコイド型だが、個体の下方では莢壁が共骨と同化しており、そうした配列には見えにくい。群体周縁において、小さな個体では2次隔壁・肋まで、大きなものでは3次隔壁・肋まで発達する。莢壁と共骨は薄く、厚さは0.5mm未満。1次・2次隔壁は厚めでよく突出し、莢心の軸柱まで達する。3次隔壁は薄く、軸柱には達しない。横を向いた個体の1次・2次肋は、同じ個体の内側または隣接する別個体の1次・2次隔壁・肋とそれぞれ連結する。3次肋は、隣接個体の3次隔壁・肋と連結することがあるが、通常は断続的。隔壁・肋の上縁には、先端が尖った小さな鋸歯が発達する。鋸歯には、単一尖端のものや細分尖端のものが見られる。軸柱は楕円形で、長径が3mm近くまでなるが、群体周縁に近い個体ほど発達が悪く不明瞭。群体周縁の表面と裏面では、1次・2次肋と3次肋が規則正しく等間隔で放射状に並ぶ。肋と肋の間の共骨に孔は開かない。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面の水深20m以浅で見られる。開放的な内湾ではより浅所でも見られることがある。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。種子島ではたまに見られる。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Goniastrea australensisとして記録)
*生時写真の群体とは別群体(熊本県天草牛深、水深7mで採集)。
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Oulophyllia crispa (Lamarck, 1816)
オオナガレサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Oulophyllia Milne Edwards and Haime, 1848 オオナガレサンゴ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深4m)
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コリンの高さはよく揃う。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜灰緑色。コリンの頂部はやや平坦に見え、その中央に筋状の溝が形成されやすい。
骨格の特徴:個体配列はメアンドロイド型で、稀に群体中央がセリオイド型になる。莢壁に相当するコリンの基部での厚さは1.5mm〜1.5cmと変化に富むが、頂部は常に1mm未満で薄い。コリン基部が薄い群体では、頂部近くで不規則に穴が開く。コリンの高さは5mm〜1cmで、群体ごとによく揃う。莢の短径に相当する、並列するコリンの頂部間の距離は1〜2cm。隔壁は4次まで発達し、等間隔で整然と並ぶ。隔壁の長さは次数ごとに異なるが、厚さは4次隔壁がやや薄いだけで他はほぼ同じに見える。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。それらの内縁にはパリ状葉が見られることがあるものの不明瞭。3次隔壁は、軸柱の手前まで湾曲しながら伸びて1次・2次隔壁に融合する。4次隔壁は短く、コリンの内側面にわずかに発達するのみ。隔壁上縁には大きさと高さのよく揃った小さな鋸歯が整然と並ぶ。肋は、群体の裏面周縁に見られ、隔壁と同様、上縁に小さな鋸歯が発達する。軸柱は円形〜やや楕円形で長径2〜3mm、1次・2次隔壁から伸びた複数のトラベキュラからなる。ただし群体によっては、軸柱が不明瞭または未発達の個体も見られる。隣接する軸柱間には、肥厚した隔壁または束状のトラベキュラが形成される。
生息環境:>開放的な礁斜面の水深10m以深、または大きな湾内の水深5m以深で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(Goniastrea deformisとして記録)
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Oulophyllia sp.
トガリオオナガレサンゴ(新称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Oulophyllia Milne Edwards and Haime, 1848 オオナガレサンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(西之表市浦田湾、水深5m)
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コリンの高さは不揃い。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:灰褐色〜灰緑色で、軟体部は肉厚に見える。コリン頂部は、低次隔壁相当部が不規則に突出して見える。
骨格の特徴:個体配列はセリオイド〜メアンドロイド型。コリンの基部での厚さは3mm〜1cmで不揃い、基部のほうが厚く、頂部に向かって薄くなる傾向がある。高さも不揃いで、低いところでは5mmほど、よく突出したところでは1cmを超える。並列するコリンの頂部間の距離は、狭いところで5mm、広いところでは3cm近くに達する。高く突出したコリンの頂部近くでは、孔が開いたり大きな裂け目ができたりする。隔壁・肋は通常4次まで発達し、低次のものほど長く厚く、コリン頂部で高く突出する。個体によっては、1次隔壁が莢の上方で莢内に向かって高く張り出し、その側面に3次・4次隔壁が発達することがある。1次・2次隔壁は軸柱まで達する。隔壁内縁でのパリ状葉の発達は悪い。3次・4次隔壁は軸柱に達せず、軸柱より手前で湾曲しながら低次隔壁に融合する。隔壁上縁には大きさの揃った鋸歯が整然と並び、その側面と延長部の隔壁側面には小さな棘状の突起が形成される。肋は、群体の裏面周縁によく発達するが、隔壁と違って次数による違いが不明瞭で、鋸歯の発達も悪い。隔壁と同様、その上縁には小さな鋸歯が発達する。軸柱は長径が2〜4mmの円形〜楕円形で、1次・2次隔壁の内縁から伸びた複数のトラベキュラによって形成される。個体配列が準メアンドロイド〜メアンドロイド型のところでは、隣接する軸柱間に1次隔壁と同程度またはそれ以上に肥厚した隔壁が見られることが多い。
生息環境:開放的な礁斜面の水深10m以深または大きな湾内の水深5m以深で見られる
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:新称和名は、低次隔壁がよく突出し、コリンの頂部が粗く見えることに由来する。
* 種子島初記録種
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Paragoniastrea australensis (Milne Edwards and Haime, 1857)
ウネカメノコキクメイシ(新称) |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Paragoniastrea Huang, Benzoni and Budd, 2014 ウネカメノコキクメイシ属(新称) |
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撮影:目ア拓真(中種子町馬立の岩屋、水深10m)
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莢の長径は1〜1.5cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:暗褐色〜淡褐色、または緑色。灰色がかった群体や口盤が白くなった群体も多い。
骨格の特徴:個体は多角形で、2〜3個の個体が連なってセリオイド型〜準メアンドロイド型に配列する。莢の長径は1〜1.5cm、複数の個体が連なったところでの長軸方向の長さは最長で3cmほどになる。莢壁は、基部が厚く頂部は薄い。ただし、頂部は常に0.5mm未満でどの群体でもほぼ同じだが、基部は厚さが1〜5mmで変化し、同じ群体内でも場所によって厚さが異なることがある。莢壁の高さは5〜8mmほど。そのため莢内は深いが、莢壁の形状によって実際ほどは深く見えない。隔壁は4次まで発達し、その厚さは次数によらずほぼ同じで、莢径が1.2cmほどの個体では、隔壁数が36〜40枚程度。それらは莢壁上縁で高く突出することはなく、莢壁上縁からは内側面に沿って急傾斜で落ち込む。1次・2次隔壁は軸柱まで達し、内縁にはパリ状葉またはパリがよく発達する。3次隔壁の長さは個体によって異なるが、伸びても低次の隔壁のパリ状葉またはパリの手前まで。4次隔壁は、莢壁内縁からわずかに張り出すのみ。隔壁上縁には、先端が尖った鋸歯が整然と配列する。鋸歯側面からその延長の隔壁側面には、先端がよく尖った微小突起がよく発達する。軸柱は2〜3mmの円形または楕円形で明瞭。
生息環境:礁斜面の水深20m以深や岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。遮蔽的な内湾では、水深5m以浅でも見ることができる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はParagoniastrea sp. と混同されている可能性があるため、本種の国内での生息状況については再検討が必要。
* 種子島初記録種
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Paragoniastrea deformis (Veron, 1990)
ミダレカメノコキクメイシ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Paragoniastrea Huang, Benzoni and Budd, 2014 ウネカメノコキクメイシ属(新称) |
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撮影:杉原 薫(西之表市上古田、水深10m)
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莢の長径は5mm〜1cm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色、暗褐色や赤褐色。莢壁側面が白っぽく、口盤が黒っぽくなった個体は水中でもよく目立つ。
骨格の特徴:個体はやや角ばった円形〜多角形、莢の長径は5mm〜1cmで、7〜8mmのものが多い。個体はプロコイド型またはセリオイド型に配列し、個体間には、管状または溝状の多毛類の棲管が不規則に発達する。隔壁・肋は4次まで発達する。ただし4次隔壁は、莢壁上縁からその内側にわずかに発達するか未発達の場合がほとんど。隔壁数は莢径8mmほどの個体で30〜40枚になる。肋は、個体間がよく離れた部分で形成されることがあるが、短くて目立たない。隔壁と肋の上縁には鋸歯が、鋸歯と隔壁の側面には微小突起がよく発達する。1次・2次隔壁は隔壁上縁で肥厚しやすく、そこから上方と莢内に張り出したあと、急傾斜で落ち込みながら軸柱まで達する。これらの隔壁の内縁にはパリ状葉が発達することが多い。軸柱は明瞭で、1次・2次隔壁から伸びたトラベキュラで形成される。3次隔壁は長さが不揃いで、軸柱近くまで伸びるものもあれば、隔壁内縁にわずかに発達するものも見られる。莢壁は厚めで、わずかに上方に突出する。軸柱は長径が1.2mm前後の円形または楕円形で、明瞭な個体もあれば不明瞭なものもある。
生息環境:礁斜面では水深20m以深で、岩礁斜面では水深15m以浅で見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県上五島中通島以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種のタイプ産地は和歌山県串本。
*** これまで種子島で確認されていない種
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Paragoniastrea sp.
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Paragoniastrea Huang, Benzoni and Budd, 2014 ウネカメノコキクメイシ属(新称) |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深8m)
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莢の長径は通常7〜8mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:暗褐色〜赤褐色。
骨格の特徴:個体はやや角ばった円形〜多角形、莢の長径は5mm〜1cmで、7〜8mmのものが多い。個体はプロコイド型またはセリオイド型に配列し、個体間には、管状または溝状の多毛類の棲管が不規則に発達する。隔壁・肋は4次まで発達する。ただし4次隔壁は、莢壁上縁からその内側にわずかに発達するか未発達の場合がほとんど。隔壁数は莢径8mmほどの個体で30〜40枚になる。肋は、個体間がよく離れた部分で形成されることがあるが、短くて目立たない。隔壁と肋の上縁には鋸歯が、鋸歯と隔壁の側面には微小突起がよく発達する。1次・2次隔壁は隔壁上縁で肥厚しやすく、そこから上方と莢内に張り出したあと、急傾斜で落ち込みながら軸柱まで達する。これらの隔壁の内縁にはパリ状葉が発達することが多い。軸柱は明瞭で、1次・2次隔壁から伸びたトラベキュラで形成される。3次隔壁は長さが不揃いで、軸柱近くまで伸びるものもあれば、隔壁内縁にわずかに発達するものも見られる。莢壁は厚めで、わずかに上方に突出する。軸柱は長径が1.2mm前後の円形または楕円形で、明瞭な個体もあれば不明瞭なものもある。
生息環境:岩礁斜面の水深15m以浅で見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種はParagoniastrea australensis ウネカメノコキクメイシやFavites abdita カメノコキクメイシ(本ガイド未掲載種)などと混同されており、国内での生息状況の再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pectinia lactuca (Pallas, 1766)
スジウミバラ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Pectinia de Blainville, 1830 スジウミバラ属 |
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撮影:座安佑奈(西之表市浦田湾、水深6m)
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コリンは薄く、高く突出する。
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成長形:被覆状〜葉状群体。よく立ち上がって長く連なったコリンが発達するため、群体の外観はドーム型〜半球形に見える。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜褐色。赤みを帯びた群体や黄色っぽい群体も見られる。
骨格の特徴:群体周縁の個体は、直径が1〜3cm程度。幼群体では、大きめの中心個体が1つあり、複数の小さな周縁個体が周囲を囲みながら配列し、部分的にはそれらが同心円状に配列することもある。群体の成長に伴い、新たに形成された周縁個体はメアンドロイド型に配列する。中心個体の1次・2次隔壁は、軸柱から離れるにつれて高く突出する。これらの隔壁は、群体の成長に伴って周縁個体の莢壁の一部となり、峰状によく連続したコリンを形成する。コリンの高さは、群体中心では4cm程度あるが、群体周縁に向かうにつれて低くなる。周縁個体の隔壁は、5次まで発達する。中心個体と同様に、1次・2次隔壁の周縁は高く突出する。隣接する周縁個体は、よく突出したコリンを挟んで互いの隔壁・肋の位置がよく一致する。また、これらが一致した箇所の莢壁には、不規則に孔が開くことが多い。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面の水深20m以浅で見られる。礁池や浅礁湖の浅瀬でも稀に見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では極めて稀。
補足:本種はPectinia paeonia レースウミバラ(本ガイド未掲載種)やPhysophyllia ayleni ウミバラと混同されており、国内での生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
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Physophyllia ayleni Wells, 1935
ウミバラ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Physophyllia Duncan, 1884 ウミバラ属 |
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撮影:杉原 薫(長崎県壱岐市板浦、水深6m)
*生時写真と同じ群体で種子島産ではない。 |
莢の長径は9mm〜1.5cm。
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成長形:主に被覆状群体。コリンがよく発達して葉状群体になるものもある。
軟体部の色彩と特徴:灰色がかかった緑色〜褐色。口盤が黄色や赤色などの鮮やかな色彩にもなる。
骨格の特徴:群体周縁の個体は円形〜楕円形で長径は9mm〜1.5cmほど。小さな被覆状群体では、大きな中心個体を認識できる。周縁の個体は、周縁を向きながら、中心個体を囲むように放射状または同心円状に配列する。しかし個体の大きさや配置が不揃いで、群体表面の起伏も大きいため、規則的に配列するように見えにくい。個体配列は基本的にプロコイド型だが、個体がやや群体周縁を向くため、典型的なプロコイド型には見えにくい。周縁個体は、小さなものでは2次隔壁・肋まで、大きなものの一部で3次隔壁・肋が発達し、群体周縁ではどこでも3次肋が発達する。1〜3次隔壁・肋の厚さはほぼ同じでよく突出するが、突出の度合は低次のものほど顕著。1次・2次隔壁は莢壁上縁でローブ状になっており、軸柱まで達する。3次隔壁はローブ状にならず、軸柱には達しない。1次・2次肋は、その個体の内側または隣接する別の2個体の1次・2次隔壁・肋とそれぞれ連結する。軸柱は楕円形で、長径5mm程度までなるが、群体周縁に近い個体ほど発達が悪く不明瞭。隣接する肋の間には、石灰質の泡状組織が不規則に形成される。特に莢のすぐ外側では、これらがよく発達することで莢壁が形成されている様子がよく分かる。群体周縁の表面と裏面では、1〜3次肋が規則正しく等間隔かつ放射状に並ぶ。共骨部分の肋と肋の間に孔が開くことはない。
生息環境:遮蔽的で濁った湾内の水深5〜15mで見られる。
国内での分布:長崎県対馬〜熊本県天草牛深、静岡県西伊豆〜高知県竜串。種子島では記録されていない。
補足:本種のタイプ産地は長崎県対馬の可能性がある。本種はPectinia paeonia レースウミバラ(本ガイド未掲載種)などと混同されており、国内での生息状況を再検討する必要がある。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Platygyra daedalea (Ellis and Solander, 1786)
ヒラノウサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Platygyra Ehrenberg, 1834 ノウサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深2m)
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コリン頂部間の距離は5〜7mm。
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成長形:塊状群体。群体表面に突出部が形成されることは稀。礁池では直径1mを超える巨大な半球状群体を形成する。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色または緑色。隣接個体の境界にあたるコリン頂部では、軟体表面に細い筋状部が見える部分がある。
骨格の特徴:個体配列はメアンドロイド型で、部分的にセリオイド型や準メアンドロイド型になる。コリンの厚さは4mmほどになることがあるが通常は2m未満で薄い。コリンは高さ5mmほどで、側方から見るとその頂部近くで不規則に孔が開く。並列するコリンの頂部間の距離は5〜7mm。軸柱が並ぶ口盤の幅は3〜4mmと広いため、肉眼ではコリンが薄く、口盤が広く見える。隔壁は3次まで発達し、コリンに直交するように規則正しく等間隔で配列する。1次・2次隔壁は長く、コリン頂部でよく突出し、軸柱まで達する。3次隔壁は短く、あまり突出せず、軸柱まで達しない。隔壁上縁には大きさの不揃いな鋸歯がよく発達する。軸柱は、1次・2次隔壁の内縁から伸びた複数のトラベキュラで形成される。これらを連結するように、厚い板状または太い棒状の突起が形成されることがある。
生息環境:礁池や浅礁湖で見られる。波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅でも見られることがある。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:種子島以北では、本種はPlatygyra contorta ミダレノウサンゴと混同されている可能性があるため、本種の生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Platygyra cf. daedalea (Ellis and Solander, 1786)
和名なし |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Platygyra Ehrenberg, 1834 ノウサンゴ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深4m)
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コリン頂部間の距離は5mm前後。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色または緑色。ただし、口盤と1次・2次隔壁の上縁は常に白っぽくなる。
骨格の特徴:個体配列はメアンドロイド型で、部分的にセリオイド型や準メアンドロイド型になる。コリンの厚さは基部から頂部まで均一で、1mmほどしかない。コリンの高さは5mmほどで、側方から見るとその頂部近くに不規則に孔が開く。並列するコリンの頂部間の距離は5mm前後で、軸柱が並ぶ口盤の幅は4mm前後。隔壁は3次まで発達し、1次・2次隔壁は軸柱まで達する。また軸柱は発達しにくいが、1次・2次隔壁の内縁がわずかに肥厚したり、パリ状葉が発達したりする傾向にあるため、その位置は認識しやすい。隔壁上縁には大きさや長さの異なる鋸歯が発達する。特に1次・2次隔壁の鋸歯は、コリンの頂部近くで上方によく伸長する。
生息環境:礁斜面や岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はPlatygyra daedalea ヒラノウサンゴ、P. sinensis シナノウサンゴやLeptoria irregularis ミダレナガレサンゴ(これら3種は全て本ガイド未掲載種)などと混同されている可能性がある。国内での生息状況については更なる検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Platygyra contorta Veron, 1990
ミダレノウサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Platygyra Ehrenberg, 1834 ノウサンゴ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市大久保港、水深8m)
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コリン頂部間の距離は4〜8mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体周縁がめくれ上がったり、群体表面に直径と高さが3〜4cmほどのコブ状突出部が不規則に形成されたりすることがある。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色または緑色。コリンと隔壁の上縁が他よりも明るい色になりやすい。暖温域では、軟体がコリン頂部近くの隔壁上縁で小球状に膨らみ、数珠状に見えることがある。
骨格の特徴:個体配列はセリオイド〜準メアンドロイド型で、稀に群体の一部がメアンドロイド型になることがある。コリンは厚さ1〜3mm、高さ3〜7mm、並列するコリンの頂部間の距離は4〜8mmと、同一群体上でも不均一になりやすい。ただし群体突出部の個体は概して大きく、上方に向かってラッパ状に開いたように見える。コリンがよく突出したところでは、その頂部近くで孔が開いたり、大きな裂け目ができたりすることがある。3次隔壁まで発達し、上縁には大きさの不揃いな鋸歯がよく発達する。1次・2次隔壁は軸柱に達し、軸柱を囲むようにパリ状葉が発達することがある。また、コリン頂部近くでは、鋸歯が長く伸びて、やや不規則な方向を向きやすい。そのため同属他種に比べると、群体表面が縮れて(乱れて)見える。3次隔壁は長さが不揃いで、軸柱手前までよく発達するものや、コリンの側面にわずかに発達するものがある。軸柱は明瞭で、直径1〜1.5mmの円形、1次・2次隔壁の内縁から伸びた複数のトラベキュラで形成される。
生息環境:やや遮蔽的な礁斜面の水深10〜20m付近、やや遮蔽的な岩礁斜面や内湾の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島ではたまに見られる。
補足:本種はParagoniastrea russelli ( 旧学名はFavites russelli で本ガイド未掲載種) と混同されているが、両種は全くの別種である。よって国内での生息状況について再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Scapophyllia cylindrica Milne Edwards and Haime, 1849
オオサザナミサンゴ |
Meruliniidae Verrill, 1865 サザナミサンゴ科
Scapophyllia Milne Edwards and Haime, 1848 オオサザナミサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深6m)
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莢の長径は2〜5mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。直径と高さが数cmほどの円柱状の突出部が不規則に形成されることが多い。群体周縁は固着基盤からわずかに遊離するが、上方にめくれたり大きく波打ったりすることはない。
軟体部の色彩と特徴:薄い褐色や緑色、ピンク色が多い。
骨格の特徴:個体は、莢の長径が2〜5mmほどの多角形。個体配列は主にメアンドロイド型だが、群体の中心近くや円柱部では一部セリオイド型になることもある。隔壁は3次まで発達する。1次・2次隔壁は厚いが、莢壁上縁では薄くなり、よく突出する。これらの隔壁は軸柱まで達し、軸柱のすぐ外側にはパリ状葉が発達しやすい。3次隔壁は薄く、莢壁内縁に沿ってわずかに発達するだけで、軸柱まで達することはない。隔壁の上縁には、先端が分岐し、ややねじれた鋸歯が、側面には先端が尖った微小突起がそれぞれよく発達する。そのため、隔壁は実際よりも厚く、ザラついて見える。軸柱は小さく、1次・2次隔壁の内縁から伸びた2〜3本のトラベキュラで形成されるが、未発達の個体も多い。また、メアンドロイド型に配列した複数の個体が1つの軸柱を共有することはなく、隣接する軸柱間には肥厚した隔壁が存在する。コリンは厚さ1〜1.5mmほどで、途中に孔が開くことはない。群体裏面は、周縁が2〜5mmほどの間隔で放射状にゆるく波打っており、その表面に同心円状のエピテカは形成されない。下方で凸状に盛り上がった部分には、連続性の悪い肋が5〜8本程度見られ、その上縁には形や大きさの異なる鋸歯が散在する。また、上方で線状に凹んだ部分では、不規則に孔が開くことがある。
生息環境:礁斜面の水深5〜15mで見られる。波浪の弱い礁縁〜礁斜面上部でも見られることがある。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はMerulina ampliata サザナミサンゴと混同されているため、国内での生息状況については再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
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Pocillopora damicornis (Linnaeus, 1758)
ハナヤサイサンゴ |
Pocilloporidae Gray, 1840 ハナヤサイサンゴ科
Pocillopora Lamarck, 1816 ハナヤサイサンゴ属 |
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撮影:出羽尚子(西之表市大久保港、水深4m)
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第3分枝は第1・第2分枝の先端で多い。
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成長形:芝草コリンボース状〜芝草状群体。サンゴ礁の礁池や浅礁湖ではきれいなドーム型〜半球形になりやすい。ただし、礁縁や礁斜面の浅所などの波当たりの強いところでは、稀に楔状群体になることもある。群体の高さが10cmを超えることは稀。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、莢内は濃い色になる。
骨格の特徴:第3分枝まで発達。第1分枝は、基部横断面が短径8mm〜1cmの楕円形で、枝の長さ4〜5cmのものが多い。第2分枝も楕円形で、短径6mm前後、枝の長さ1.5〜2cm。イボ状の突起部に相当する第3分枝の基部では、横断面は円形、直径2〜4mm。第3分枝の長さは2〜5mmのものが多いが、6mm以上に伸びたものも見られる。第3分枝は、第1・第2分枝の先端周辺で多く見られ、第3分枝間の距離はほぼ3mm未満。個体は直径1mm前後のものが多い。第1分枝の下方や群体基部の個体は円形で、それらの間隔は離れる。一方、第1分枝の上方や第2・第3分枝の個体は、角ばった円形〜多角形で、隣接個体が莢壁の一部を共有する。隔壁や軸柱の発達は悪いが、一部の個体では、細い針状〜短い板状の1次・2次隔壁や、短い円柱状〜低い楕円丘状の軸柱が認められることがある。共骨表面には、細くやや扁平な単一尖端棘や細分尖端棘が発達する。
生息環境:礁池や浅礁湖内で見られる。波浪の弱い礁斜面や岩礁斜面でも水深10m以浅で見られることがある。
国内での分布:串本・五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種はこれまでPocillopora acuta (本ガイド未掲載種)と混同されていたため、国内での両種の生息状況を再検討する必要がある。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:S. pistillataとして記録した可能性あり
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Pocillopora eydouxi (Milne Edwards and Haime, 1860)
ヘラジカハナヤサイサンゴ |
Pocilloporidae Gray, 1840 ハナヤサイサンゴ科
Pocillopora Lamarck, 1816 ハナヤサイサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(西之表市上古田、水深2m)
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隣接する第3分枝の間隔は広く見える。
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成長形:楔状〜コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色で、黄色、ピンク色や紫色などの派手な色彩になる群体もある。
骨格の特徴:第3分枝まで発達。第1分枝の概観は、楔形の他、楕円柱状や扇形など変化に富む。第1分枝は、基部横断面が短径1.8cm前後の楕円形で、枝の長さ10cm以上のものがほとんど。第2分枝の概観は楔形または楕円柱〜円柱状、基部横断面は短径1〜1.8cm。枝の長さは、それらが付属する第1分枝が楔〜扇形の場合は3cm未満で短いものが多いが、楕円柱状の場合は10cm以上になる。第3分枝は第1・第2分枝の表面に満遍なく発達する。第3分枝は円形で、基部の直径と枝の長さがともに2〜2.5mmと小さなものから、楕円形で短径2.5〜3.5mm、長さ3〜5mmに達する大型のものまである。第3分枝間の距離は2〜4mmで、それらの短径以上の間隔が空いているところも少なくない。個体は直径1mm前後かより小さい円形で、互いに離れて分布する。ただし各分枝の先端では、角ばった円形〜多角形になって密接し、隣接個体で莢壁の一部を共有する。1次・2次隔壁と軸柱はよく発達する。隔壁は太い針状、1次・2次隔壁の長さはそれぞれ1/2Rと1/3Rほど。軸柱は円柱〜尖筆状で、肉眼でも認識できる。共骨表面には単一尖端棘や細分尖端棘が発達する。
生息環境:サンゴ礁域では普通に見られ、特に波当たりの強い礁縁から礁斜面の浅所(水深5m以浅)で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はPocillopora meandrina チリメンハナヤサイサンゴと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
** 今回の調査では確認できなかったが西平・Veron(1995)では種子島で確認されている種
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Pocillopora meandrina Dana, 1846
チリメンハナヤサイサンゴ |
Pocilloporidae Gray, 1840 ハナヤサイサンゴ科
Pocillopora Lamarck, 1816 ハナヤサイサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深8m)
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隣接する第3分枝の間隔は狭く見える。
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成長形:楔状〜コリンボース状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色で、黄色、ピンク色や紫色などの派手な色彩になる群体もある。
骨格の特徴:第3分枝まで発達。通常、第1・第2分枝の概観は楔形で、基部横断面は楕円形のものが多い。上方から見ると、第2分枝側面の一部が第1分枝に融合し、それらの上縁が長く蛇行して見えることがある。第1・第2分枝の基部での短径はそれぞれ1.5cm前後と1.3〜1.5cmほどで、枝の長さはともに3cm以上に伸びる。第3分枝は第1・第2分枝の表面に満遍なく発達し、基部横断面は円形〜楕円形、直径または短径2〜3.5mm、枝の長さ2〜4mmのものがほとんど。隣接する第3分枝間の距離は1.5〜3mmで、それらの短径以上に開くことはない。個体は1〜1.2mmほどの円形、各分枝の下方では互いに離れて分布する。ただし枝先端付近では、楕円形、角ばった円形〜多角形になって密接し、隣接個体で莢壁の一部を共有する。隔壁の発達は悪く、細い針状の1次・2次隔壁が稀に認められる程度。軸柱は発達するが、低く細長い楕円丘状で、肉眼では認識しづらい。共骨表面には、細くやや扁平な単一尖端棘や細分尖端棘が発達する。
生息環境:サンゴ礁域では普通に見られ、特に波当たりの強い礁縁から礁斜面の浅所(水深5m以浅)で多く見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種はPocillopora eydouxi ヘラジカハナヤサイサンゴと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Stylophora aff. Pistillata aff. pistillata (Esper, 1797)
和名なし |
Pocilloporidae Gray, 1840 ハナヤサイサンゴ科
Stylophora Schweigger, 1819 ショウガサンゴ属 |
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撮影:出羽尚子(西之表市大久保港、水深5m)
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第1・第2分枝の先端は楔形〜円柱形。
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成長形:指状〜コリンボース状群体。群体は小型で、長径は20cm未満、中心付近での高さは8cm未満のものが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色〜緑色、全体が薄く紫がかったものもある。
骨格の特徴:第2分枝まで発達する。第1分枝は側方に伸び、その上側に上方を向いた第2分枝がほぼ等間隔で配列する。第1・第2分枝の概観は楔形〜円柱形で、両分枝の基部の横断面は円形〜楕円形。第1分枝の直径または短径が1〜1.5mm、第2分枝では5〜8mmほど。枝の長さは第1・第2分枝ともに短く、前者のほとんどが5cm未満、後者が2cm未満。隣接する第2分枝間の距離は5mm前後で狭い。サンゴ個体は円形で莢径が8mm〜1.2cm、莢壁がやや管状に突出するが、莢壁が枝の上方側で著しく 突出するものは少ない。それらは第2分枝の下方と第1分枝上ではよく離れているが、第2分枝の先端近くのサンゴ個体は角ばった円形になり、隣接するサンゴ個体同士で莢壁の一部を共有することもある。莢内には板状の1次隔壁がよく発達し、莢心にある短い円柱状の軸柱に向かって急傾斜で落ち込む。2次隔壁は発達しても短い鋸歯状で、莢壁上でわずかに発達するか未発達。共骨表面には単一尖端棘〜細分尖端棘が発達する。
生息環境:礁縁から礁斜面上部、岩礁斜面の水深10m以浅で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では普通種。
補足:本種はStylophora pistillata ショウガサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されているため、国内での生息状況について再検討が必要である。S. pistillata は、群体は小さな芝草状で、第1・第2分枝の先端が楔形になることはない。また、生息環境も礁池や浅礁湖内で多く見られる。こうした理由から両種は別種と思われ、更なる分類学的検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:G. stokesiとして記録した可能性あり
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Goniopora cellulosa Veron, 1990
ハチノスハナガササンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:杉原 薫(鹿児島県奄美大島神ノ子、水深2m)
*生時写真と同じ群体で種子島産ではない。 |
莢心の棒状突起がよく目立つ。
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成長形:主に塊状群体で、きれいなドーム状または球状になることが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、触手の先端と口の部分は白い。昼間でも触手の短い小さなポリプを5mm前後伸ばすことがある。
骨格の特徴:個体は角ばった円形、莢はきれいな円形、莢は直径が2〜3mmで、2mmほどの個体が多く見られる。また、相対的に群体の上方の個体は小さく、周縁のものは大きくなりやすい。莢の深さは2mm未満で、莢径の小さい個体では莢が深く見える。莢壁は緻密で堅固、上縁には先端の尖った鋸歯が発達するため、トゲトゲして見える。隔壁は3次まで発達し、短い棒状の鋸歯が一列に並ぶ。ただし、2次隔壁は部分的に板状になることがある。1次隔壁は莢の下方で、2次隔壁はそれよりも上方で伸びて、軸柱まで達する。3次隔壁は、莢壁の内側面からわずかに張り出す程度の長さで、軸柱まで達せず、典型的なハナガササンゴ型の配列パターンを形成しない。軸柱は、1次・2次隔壁の内縁にできた大きな5〜6個のパリ、その内側の小さな棒状突起とそれらをつなぐ小幅体で基本的に形成される。しかしパリを持たず、肥厚して突出した棒状突起と小幅体のみで軸柱が形成される個体の方が多い。
生息環境:礁池・浅礁湖の浅い岩盤上、波浪の影響の少ない岩礁斜面の浅所(特に5m以浅)で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は種子島(中種子町大塩屋)。本種はGoniopora burgosi (本ガイド未掲載種)やG. tenuidens マルハナガササンゴなどと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Goniopora djiboutiensis Vaughan, 1907
キクメハナガササンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深8m)
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莢の長径は5mm前後。
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成長形:被覆状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜灰緑色や黄緑色で、口と触手が白っぽくなる。昼間もポリプはよく伸長する。触手は短く真ん中が太く、先端は尖ることが多い。
骨格の特徴:個体も莢も多角形で、多くの莢は長径が5mm前後、稀に6mmを超える個体が同一群体内に1〜2個見られることがある。莢は深さ1〜1.5mm程度と浅く、隔壁は突出せず、3次まで発達、厚さは次数によらずほぼ同じで、等間隔で規則正しく配列する。隔壁の上縁と側面には、先端の尖った顆粒状の鋸歯と微小突起がよく発達する。1次・2次隔壁は莢心近くまで達して絡み合い、スポンジ状の軸柱を形成する。また、隔壁間にシナプティキュラ輪がよく発達するため、中央窩の大部分は軸柱に見える。3次隔壁は2次隔壁の半分程度の長さで、その両側を挟んで融合し、典型的なハナガササンゴ型の配列パターンになる。1次・2次隔壁の内縁には、5〜6個またはそれ以上のパリが莢心を囲むように発達する。その内側に小さな棒状突起が見られることは稀だが、小幅体が発達することがある。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面、内湾や浅礁湖で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島以南。種子島では普通種。
補足:本種はGoniopora lobata ハナガササンゴ、G. cf.norfolkensis オオハナガササンゴ、G. pendulus ユレハナガササンゴ(本ガイド未掲載種)やG. aff.somaliensis などと混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。また、骨格形態がよく類似するG. cf.djiboutiensis との更なる分類学的検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Goniopora cf. djiboutiensis Vaughan, 1907
和名なし |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深8m)
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莢径は5mm前後。
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成長形:被覆状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色で、口盤と触手の先端が白い。触手がよく伸びたポリプでは、口盤外縁が淡褐色の点線円で縁取られることや、口の部分だけが白く見えることもある。昼間でもポリプや触手がよく伸長する。触手先端は細く尖る。
骨格の特徴:個体は多角形、莢は円形〜角ばった円形になる。莢径は5mm前後、莢壁はよく突出し、莢は深さ1〜2.5mmほど。隔壁は3次まで発達。隔壁の上縁と側面には、先端の尖った顆粒状の鋸歯と微小突起がよく発達する。1次・2次隔壁は莢心近くまで達して絡み合い、スポンジ状の軸柱を形成する。また、隣接する隔壁間にシナプティキュラ輪がよく発達するため、中央窩の大部分が軸柱に見える。3次隔壁とパリの発達が不規則または未発達の個体が多く見られ、ハナガササンゴ型の隔壁配列パターンが分かりにくいことが多い。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面、内湾や浅礁湖で見られる。
国内での分布:静岡県西伊豆・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種は、生時の色彩、莢の深さとパリの発達度合を除けば、Goniopora djiboutiensis キクメハナガササンゴによく似る。今後、同種か別種か更なる分類学的検討が必要である。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:G. somaliensisとして記録した可能性あり
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Goniopora lobata Milne Edwards and Haime, 1851
ハナガササンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町大塩屋、水深2m)
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莢の長径は通常3〜4mm。
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成長形:塊状群体で、きれいなドーム型または球形になることが多い。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜暗褐色で、口とその周りや触手の先端は白い。昼間でもポリプや触手はよく伸長する。触手は短めで、やや鈍端。
骨格の特徴:個体は多角形、莢は多角形か角ばった円形になる。莢の長径は通常3〜4mmで、稀に5mmを超える個体が同一群体内に1〜2個見られる。莢は深さ2mm前後、莢径が小さい群体や莢壁が薄い群体では、実際よりも莢が深く見える。隔壁は3次まで発達し、莢壁上縁で不規則に突出する。1次・2次隔壁は、莢壁上縁と側面では張り出さず、隔壁上縁に不規則に並ぶ鈍端の棒状鋸歯で認識できる程度。中央窩では、それらは長い針状(2次隔壁の一部は板状)になって莢心まで達する。それらは互いに絡み合って、シナプティキュラ輪とともにスポンジ状の不明瞭な軸柱を形成する。3次隔壁は短く、上縁の鋸歯のみが突出して短い棘状に見える。そのため本種では、ハナガササンゴ型の隔壁配列は不明瞭になりやすい。群体周縁の個体では、1次・2次隔壁の内縁にパリ、棒状突起や小幅体が形成され、明瞭な軸柱が形成されることがある。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面の浅所、礁池・浅礁湖の岩盤上で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はGoniopora djiboutiensis キクメハナガササンゴなど大型個体の同属他種と混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Goniopora cf. norfolkensis Veron and Pichon, 1982
オオハナガササンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:北野裕子(西之表市上古田港、水深4m)
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莢の長径は2〜4mm。
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成長形:被覆状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色〜褐色。口盤は口とその周りがわずかに白色または薄紫色で、その周縁は濃い色でドーナツ状に縁取られる。昼間でもポリプや触手は長く伸びる。触手は先細り。
骨格の特徴:個体は多角形、莢は多角形か角ばった円形。莢は長径2〜4mmのものが多く、莢の深さは2.5mm前後で深いため、莢壁が突出して見える。群体周縁の個体は莢壁が厚く、莢径が5mmを超えることも少なくない。隔壁は3次まで発達し、上縁には先端がやや尖った、または扁平になった鋸歯がよく発達する。ただし、莢径が小さな個体では3次隔壁がほとんど発達せず、針状の鋸歯だけが見られることが多い。1次・2次隔壁は、莢壁上縁から莢心に向かって急角度で傾斜する。これらの隔壁内縁は、同属他種のように互いに絡み合うことはなく、わずかに発達したシナプティキュラ輪で軸柱が形成される。1次・2次隔壁の内縁や莢心にパリや棒状突起は形成されない。3次隔壁は短く、それらがよく発達した莢径の大きな個体を除けば、ハナガササンゴ型の配列パターンは形成されない。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面、内湾や浅礁湖の岩盤上でも見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では稀。
補足:本種はGoniopora djiboutiensis キクメハナガササンゴなど大型個体の同属他種と混同されているため、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Goniopora aff. somaliensis Vaughan, 1907
和名なし |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深8m)
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莢径は3〜4mm。
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成長形:被覆状群体。
軟体部の色彩と特徴:淡褐色で、口盤と触手の先端が白い。触手は昼間でも長く伸びるが、ポリプは長く伸びない。触手が縮むと、口盤が丘状に盛り上がって大きく見える。触手は先細りで尖るが、色彩が白いため鈍端に見える。
骨格の特徴:個体も莢も多角形〜やや細長い多角形で、群体周縁の個体はその周縁を向きやすい。莢は長径が3〜4mm、稀に5mmに達する個体が同一群体内に1〜2個見られることがある。莢壁はあまり突出せず、莢の深さは1〜2.5mmほど。隔壁は3次まで発達し、それらの上縁と側面には、先端の尖った顆粒状の鋸歯と微小突起が顕著に発達する。また全ての隔壁は莢壁上縁で同程度に肥厚する。1次・2次隔壁の多くは莢心まで達し、それらの先端が莢心近くで絡み合ってスポンジ状の軸柱を形成する。1次・2次隔壁の内縁には、5〜6個のパリが莢心を囲むように発達することがある。また、パリに囲まれるように、莢心に小幅体と小さな棒状突起が見られることもある。1次・2次隔壁に比べると、3次隔壁は短く、莢心まで達しない。よく発達した3次隔壁は、2枚ずつ2次隔壁を両側から挟み込むように伸長し、典型的なハナガタサンゴ型の隔壁配列パターンになる。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面、内湾や浅礁湖で見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島では普通種。
補足:本種はGoniopora somaliensis ソマリアハナガササンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Goniopora tenuidens (Quelch, 1886)
マルアナハナガササンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Goniopora de Blainville, 1830 ハナガササンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町大塩屋、水深不明)
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莢径は2〜3.5mm。
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成長形:主に塊状群体で、きれいなドーム型または球形になることが多い。
軟体部の色彩と特徴:主に淡褐色で、黄緑色や灰白色など明るい色彩になることも多いが、口とその周りがわずかに白い。触手は短めで、根元から先端まで太さが等しく、先端は先細りにならず丸い。
骨格の特徴:個体は角ばった円形、莢はきれいな円形になる。莢径2〜3.5mm、莢の深さは1.5mm前後。隔壁は3次まで発達。隔壁上縁には顆粒状または短い棒状の鋸歯が発達し、ほぼ等間隔で配列する。1次・2次隔壁は、隔壁の側面では非常に短く、顆粒状の鋸歯の存在によって辛うじて認識できるものもある。中央窩では、それらは長い棘状(2次隔壁の一部は板状)になり、莢心近くまで達する。莢心近くでは1次・2次隔壁の間にシナプティキュラ輪が、内縁には5〜6個のパリが、それらの内側には小幅体と棒状突起が発達し、緻密で堅固な軸柱を形成する。特に2次隔壁内縁のパリはよく肥厚して上方に突出する。
生息環境:波浪の影響の少ない礁斜面や岩礁斜面の浅所や、礁池・浅礁湖の岩盤上で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
補足:本種は触手の形状や個体の大きさが類似するGoniopora lobata ハナガササンゴなどと混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。
* 種子島初記録種
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Porites australiensis Vaughan, 1918
ハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市西浦、水深10m)
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莢径は1.5mm程度。
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成長形:直径数mの巨大な塊状群体になる。群体表面は滑らかで、大小様々な不規則な瘤が見られる。
軟体部の色彩と特徴:クリーム色、青みがかった薄茶色など。
骨格の特徴:個体の莢径は1.5mm程度、中には2mmに達するものもある。莢壁は比較的厚く、隣接する個体間が尾根状になる。隔壁上には通常2個の歯状突起が認められ、莢壁と相まって個体全体に同心円状の構造が顕著である。三幅対は通常遊離するが、シナプティキュラ輪で三叉状に繋がることがある。よく発達した8本のパリがあり、そのうち側隔壁対の左右2対4本は特に大きく、生時でも目立つ。軸柱は柱状または細い板状である。
生息環境:礁池から礁斜面まで普通に見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では少ない。
* 種子島初記録種
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Porites heronensis Veron, 1985
フタマタハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市浦田湾、水深7m)
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莢径は1〜1.5mm程度。
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成長形:表面は滑らかで、不規則な瘤状の盛り上がりを持つ被覆状群体が多い。中には瘤や柱状部を持つ大型の塊状群体も見られる。
軟体部の色彩と特徴:クリーム色、茶色、青みがかった淡灰色など変異に富む。
骨格の特徴:個体の莢径は1〜1.5mm程度で、莢は浅い。個体の間隔は様々で、広いところでは1mmを超える。三幅対は三叉状になるが、隔壁配列が不規則で、側隔壁対とも認めがたい個体が多い。パリは7本以下で、隔壁先端を繋ぐ円形のシナプティキュラ輪が良く発達する。軸柱は杭状であるが、軸柱を含む個体中央の骨格構造を完全に欠き、穴が空いたように見える個体が多い。
生息環境:内湾や港の中などの遮蔽的な環境から、波浪の影響が大きい岩礁域の浅場まで広く生息する。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬〜沖縄本島。種子島を含む暖温帯域では普通種で、ハマサンゴ属の中では最も北まで見られる種である。
* 種子島初記録種
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Porites lobata Dana, 1846
フカアナハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市浦田湾、水深6m)
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莢径は1.5mm以上。
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成長形:直径数mの巨大な塊状群体になる。群体表面には大小様々な不規則な瘤が見られる。
軟体部の色彩と特徴:暗褐色や黄褐色など、変異に富む。
骨格の特徴:個体の莢径は1.5mm程度かそれよりやや大きく、莢壁は薄く、外形は多角形を呈する。三幅対は常に遊離し、パリの発達は弱い。Porites solidaオオハマサンゴに似るが、本種の方がより莢が小さいこと、8本のパリとよく発達した板状の軸柱を持つこと、莢径に対する隔壁の先端で囲まれる中央窩の比率が一見して小さいことで区別できる。
生息環境:礁池から礁斜面まで広く見られる。
国内での分布:高知県竜串以南。種子島では少ない。
* 種子島初記録種
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Porites lutea Milne Edwards & Haime, 1860
コブハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市大久保港、水深4m)
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莢径は1.5mm程度。
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成長形:直径数mの巨大な塊状群体になる。群体表面は滑らかで、大小様々な不規則な瘤が見られる。
軟体部の色彩と特徴:黄褐色や青みがかった褐色など、変異に富む。
骨格の特徴:個体の莢径は1.5mm程度で、莢壁は比較的薄い。三幅対はほぼ例外なく融合するか三叉状に繋がる。パリは5〜6本、時に8本まで認められ、そのうち側隔壁対の4本と三幅対の1本の計5本が特に目立ち、生時にも明瞭に認められることが多い。軸柱はよく発達し、柱状または扁平した柱状で、小幅体と呼ばれる放射状の構造で隔壁と繋がる。Porites australiensisハマサンゴに酷似するが、莢壁がやや薄く三幅対が融合すること、5本のパリが目立つことで、かろうじて区別できる。
生息環境:礁池から礁斜面まで広く見られる。
国内での分布:和歌山県串本・熊本県天草牛深以南。種子島ではやや普通。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:P. superficialisとして記録した可能性あり
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Porites okinawensis Veron, 1990
オキナワハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市大久保港、水深3m)
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莢径は1.2〜1.7mm。
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成長形:小型の被覆状または塊状の群体で、表面は滑らかである。
軟体部の色彩と特徴:褐色から淡褐色。
骨格の特徴:個体は莢径1.2〜1.7mmで、ほとんど凹まず平面的である。個体の配列は不規則で、隣接個体が密着するところもあれば間隔が2mmほどになるところもある。三幅対は常に融合するが、隔壁の枚数は個体の大きさによって変化し、ハマサンゴ属に特徴的な配列が分かりにくいことがある。隔壁は中心付近に達し、一部は軸柱と融合する。パリの発達は弱く、全く欠如する個体も多い。これらの特徴は生時でも、ポリプが伸びていない群体では明瞭に認められるため、一見して本種と分かる。
生息環境:内湾や港の中など遮蔽的な環境に見られるが、あまり多くない。
国内での分布:千葉県館山〜西表島で確認されている日本の固有種で、ハマサンゴ属の中では最も分布域が広い。種子島では稀。
補足:本種のタイプ産地は沖縄本島金武湾。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Porites solida (Forskål, 1775)
オオハマサンゴ |
Poritidae Gray, 1840 ハマサンゴ科
Porites Link, 1807 ハマサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(西之表市大原、水深8m)
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莢径は2mm前後と大きい。
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成長形:大型になる塊状群体で、表面は波打ち大小様々な瘤がある。
軟体部の色彩と特徴:やや緑がかった褐色。
骨格の特徴:本種の個体は日本産ハマサンゴ属では最も大きく、特に群体の凸部では莢径2mmを超えることがある。個体は薄くて高い莢壁で仕切られた多角形で、莢が深く、セリオイド型に配列する。これらの特徴から、Porites lobataフカアナハマサンゴ以外の種との区別は容易である。三幅対は遊離し、パリはないか、あっても発達が弱く本数も少ない。軸柱は扁平で低い板状をなし、軸柱が収まる中央窩がフカアナハマサンゴに比べて広い。
生息環境:礁池や礁斜面の浅所に見られるが、あまり多くない。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
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Psammocora albopicta Benzoni, 2006
ベルベットサンゴ |
Psammocoridae Chevalier and Beauvais, 1987 アミメサンゴ科
Psammocora Dana, 1846 アミメサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町馬立の岩屋、水深5m)
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1〜1.5mmと小さい。
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成長形:被覆状群体。岩盤を被覆しながら、長径が50cm以上の大型になることが多い。群体によっては、表面に直径2〜3cm、高さ1cm程度の円丘状の不規則な盛り上がりが複数形成されたり、周縁が基盤から遊離して、やや葉状〜板状に張り出したりすることがある。
軟体部の色彩と特徴:主に赤褐色。温帯域では鮮やかな黄緑色になり、昼間でも短い触手を伸ばすため、群体表面がビロード状の光沢をもつことが多い。個体の口盤だけが淡い色になることもある。
骨格の特徴:個体は多角形、莢の長径は1〜1.5mmで小型、サムナステロイド型配列。莢は浅く、個体間隔は1mm未満で狭いため、群体表面が平滑に見える。表面に円丘状の突起を持つ群体では、短く背が低いコリンが形成されることがある。その場合、莢が深く、個体配列がセリオイド型またはややメアンドロイド型に見える。隔壁・肋は3次まで発達。1次・2次隔壁はほぼ同じ厚さで放射状に配列し、莢心に向かうにつれて薄くなりつつ、尖筆状の小さな軸柱に達する。3次隔壁は短く、1次・2次隔壁の半分以下の長さ。群体によっては、1次・2次隔壁が部分的に融合して花弁状の配列になることがある。また、隣接する隔壁・肋の間をシナプティキュラが蜘蛛の巣状につなぎ、シナプティキュラ輪が形成されることがある。隔壁・肋の上縁には、先端が多方向に分岐した鋸歯がよく発達するため、隔壁・肋は実際よりも厚く、群体表面はザラザラして見える。
生息環境:礁斜面または岩礁斜面の水深15m以深で見られる。開放的な湾内などの波当たりの弱いところでは、より浅い水深で見られることがある。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では稀。
補足:本種はPsammocora profundacella アミメサンゴやP. nierstraszi ヒダアミメサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されているため、種子島以南での生息状況については再検討が必要である。ベルベットサンゴの和名を担うのはP. superficialis ではなく本種である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○(B. wellsiとして記録)
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Psammocora profundacella Gardiner, 1898
アミメサンゴ |
Psammocoridae Chevalier and Beauvais, 1987 アミメサンゴ科
Psammocora Dana, 1846 アミメサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(中種子町馬立の岩屋、水深5m)
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莢の長径は2〜5mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。サンゴ礁域では長径10cm未満のものが多いが、温帯の岩礁域では30cm以上になるものも珍しくない。群体周縁が基盤から遊離することはない。
軟体部の色彩と特徴:主に緑色〜褐色で、黄緑色などの明るい色彩になるものもある。被覆状群体では、個体の口盤だけが淡い色になることがある。温帯域では、昼間でも太目で先細りの短い触手をよく伸ばす。群体表面はザラついた印象を受ける。
骨格の特徴:個体は多角形、大きさは不揃いで莢の長径は2〜5mm。通常、個体配列はサムナステロイド型だが、隣接する個体間に上縁の薄いコリン(稀にモンティクル)が発達するため、肉眼ではセリオイド型またはメアンドロイド型に見える。莢内には1〜3個の同心円状のシナプティキュラ輪がよく発達する。莢は浅く、3次隔壁・肋まで発達する。これらの隔壁の厚さと高さはほぼ同じで、1次・2次隔壁は長く、莢心まで達する。3次隔壁は他の隔壁の半分以下の長さで短い。群体によっては、1次・2次隔壁の配列がペタロイド型になることがある。隔壁・肋の上縁には、先端が多方向に分岐した鋸歯がよく発達する。そのため、隔壁・肋は厚く、隣接する隔壁・肋間は狭く、群体表面はザラザラして見える。莢心では、1次・2次隔壁の内縁から伸びたトラベキュラが絡み合う。その上部には、鈍端で短い棒状軸柱と、軸柱を囲むように複数の短いパリが形成される。軸柱は周囲の隔壁内縁よりも低く、莢心に円形の中央窩が認められる。
生息環境:礁池・浅礁湖内や、波当たりの少ない礁斜面や岩礁斜面で見られる。
国内での分布:千葉県館山・島根県隠岐諸島以南。種子島では稀。
補足:本種はPsammocora albopicta ベルベットサンゴやP. nierstraszi ヒダアミメサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されているため、種子島以南での生息状況については再検討が必要である。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Blastomussa merleti (Wells, 1961)
カビラタバサンゴ |
Incertae sedis 所属科未定
Blastomussa Wells, 1968 オオタバサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(撮影地点とその水深、標本の所在は不明)
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莢径は4〜6mmほど。
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成長形:細長い円柱状の個体が多数集まった束状群体。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜緑色。口盤は周囲よりも明るい色彩になることが多い。ポリプと触手は昼間でもわずかに伸びる。ポリプ表面では、水泡状に膨らんだ高まりが放射状に配列する。
骨格の特徴:個体はきれいな円形で、莢径は4〜6mmほど、個体の大きさや隣接する個体間の距離はよく揃う。個体配列は主にファセロイド型だが、部分的に隣接個体が融合し、準プロコイド型〜セリオイド型になることがある。隔壁と肋は3次まで発達。1次・2次隔壁の長さや厚さはほぼ同じで、きれいな放射状に配列し、軸柱まで達する。隔壁は莢壁上縁またはその内側で厚く、1〜2mmほど突出し、そこから莢心に向かって急傾斜で落ち込みながら薄くなる。3次隔壁は非常に薄く短く、莢壁上縁〜内縁でわずかに発達する程度。隔壁上縁には鋸歯が発達するが、小さくて目立たない。隔壁側面には顆粒状突起が発達。1次・2次肋は厚いが非常に短い。3次肋は通常未発達で、大型個体で稀に発達することがある。軸柱は円形で、莢心にある小さな棒状(稀に板状)の突起、その突起と1次・2次隔壁内縁をつなぐ放射状の小幅体、隣接する隔壁内縁をつなぐ環状のトラベキュラで形成される。個体の外側表面にはエピテカがよく発達する。また莢壁内側に、小さな泡沫組織が形成されることがある。
生息環境:礁斜面の深場や波浪の影響が少ない岩礁斜面のような、少し濁った砂泥が溜まりやすい環境で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では稀。
* 種子島初記録種
西平・Veron (1995)での出現記録:L. pruinosaとして記録した可能性あり
*生時写真の群体とは別群体(沖縄県西表島網取湾、水深27mで採集)
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Blastomussa vivida Benzoni, Arrigoni and Hoeksema, 2014
オオタバサンゴ |
Incertae sedis 所属科未定
Blastomussa Wells, 1968 オオタバサンゴ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立岩屋、水深10m)
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莢の長径は1.2〜2.5cmで不揃い。
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成長形:背の低い束状群体、準塊状〜塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:主に灰褐色や灰緑色。赤みを帯びたものも見られる。ポリプは昼間でも外套膜状によく伸び、表面に水泡状に膨らんだ高まりが放射状に配列することがある。触手は、外套膜状部分の周縁と、水泡状部分の内縁近くからわずかに伸びる。ポリプ周縁と触手先端は、他の部分より白っぽく見える。
骨格の特徴:個体配列はファセロイド型、準プロコイド型〜セリオイド型。ファセロイド型や準プロコイド型の個体は円形〜楕円形、セリオイド型の個体は角ばった円形〜多角形。個体の長径は1.2〜2.5cmほど、大きさは不揃い。隔壁・肋は通常4次まで、莢径の大きな個体では5次まで発達することもある。隔壁・肋に顆粒状突起がよく発達する。1次・2次隔壁は厚く、やや上方に突出する。1〜3次隔壁は軸柱まで達する。4次隔壁は薄く、長くても軸柱の手前まで。5次隔壁はさらに薄く短く、莢壁上縁でわずかに発達するのみ。先端が丸みを帯びたローブ状の鋸歯が、全ての隔壁上縁によく発達する。莢壁上縁よりもやや内縁の鋸歯が最も大きくよく突出する。また、隔壁上縁が莢心に向かってほとんど傾斜しないため、莢はかなり浅く見える。肋は莢壁外側でわずかに盛り上がる程度で、鋸歯が形成されることは稀。軸柱は円形〜楕円形で、莢心の棒状(稀に板状)突起、その突起と1〜3次隔壁内縁の間にできる多数のパリ、両者をつなぐ小幅体、隔壁内縁やパリ間をつなぐトラベキュラで形成される。
生息環境:波浪の影響が少ない礁斜面や岩礁斜面の水深10m以深で見られる。遮蔽的な内湾ではより浅いところでも見られる。
国内での分布:和歌山県串本・長崎県上五島中通島〜種子島。種子島では稀。
補足:本種はこれまでBlastomussa wellsi (本ガイド未掲載種)と混同されていた。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptastrea bewickensis Veron, Pichon and Wijsman-Best, 1977
ヒメルリサンゴ |
Incertae sedis 所属科未定
Leptastrea Milne Edwards and Haime, 1848 ルリサンゴ属 |
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撮影:深見裕伸(西之表市西浦、水深12m)
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莢は長径4〜5mm。
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成長形:被覆状群体。群体表面は平坦で、コブ状に盛り上がることは少ない。
軟体部の色彩と特徴:主に褐色。群体表面の色彩がまだらになるものも見られる。個体間隔は狭く、隣接個体との境界は不明瞭。昼間でも触手をよく伸ばすが、よく突出した1次隔壁は認識できる。
骨格の特徴:個体は多角形で、セリオイド型に配列。莢の長径は4〜5mmの個体がほとんどで、群体上での個体の大きさや形はよく揃う。隔壁は3次まで発達し、莢壁上縁で突出する。特に1次隔壁がよく突出するため、群体表面は粗く見える。1次隔壁は長く、莢心まで達する。2次隔壁は短く、長いものでも1次隔壁の1/2ほど。3次隔壁はさらに短く、莢壁上縁でわずかに発達する程度。軸柱は、莢心にある1本の小さな棒状突起、その外側の1次・2次隔壁の内縁に発達する2〜3個のパリ、両者を連結する小幅体からなるが、それらのどれかが未発達または不明瞭で、軸柱が目立たないことが多い。
生息環境:礁池や浅礁湖の岩盤が広く露出するところや、礁斜面・岩礁斜面で見られる。
国内での分布:種子島以南。種子島では普通種。
西平・Veron (1995)での出現記録:○
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Leptastrea aff. pruinosa Crossland, 1952
トゲルリサンゴ |
Incertae sedis 所属科未定
Leptastrea Milne Edwards and Haime, 1848 ルリサンゴ属 |
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撮影:横地洋之(中種子町馬立の岩屋、水深10m)
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莢の長径は3mm〜1cmで不揃い。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。群体表面が不規則にコブ状に盛り上がることが多い。岩礁域の内湾では、海底に転がった礫を覆いながら成長することもある。
軟体部の色彩と特徴:緑色〜赤褐色。昼間でも鈍端な触手を伸ばすため、莢壁内縁が盛り上がって見える。また、それに伴い隣接個体の境界に溝が入ったように見える。
骨格の特徴:個体は主に多角形で、プロコイド型またはセリオイド型に配列。莢の長径が3mmに満たない個体から1cmを超える個体まで様々で、形や大きさが不揃いに見えやすい。隔壁は通常4次まで発達し、側面に短い棘状突起がよく発達する。そのため隔壁は厚く、隣接する隔壁間が狭く見える。また、莢壁上縁での1次・2次隔壁と3次・4次隔壁の厚さや突出度合はほぼ同じなので、各個体が突出して見えることはない。1次・2次隔壁は長く、莢心の軸柱まで達する。通常3次隔壁は1次・2次隔壁よりも短いが、軸柱近くまで発達することがある。その場合、3次隔壁の内縁が隣接する2次隔壁の側面に融合して、隔壁の配列が不規則に見える。4次隔壁は非常に短く、伸びても3次隔壁の1/2程度の長さ。3次・4次隔壁に比べると、1次・2次隔壁は莢壁上縁のすぐ内側で莢心側にやや突出する。軸柱は、莢心にある小さな棒状突起、その外側の1次・2次隔壁内縁に発達した多数のパリと小幅体からなる。パリは3次隔壁の内縁にも形成されることもあり、その場合は軸柱が非常に大きくなる。
生息環境:岩礁斜面、礁斜面や浅礁湖の岩盤が広く露出するところや、浅礁湖や内湾の砂礫底の礫上で見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島では普通種。
補足:本種はLeptastrea pruinosa やL. purpurea ルリサンゴ(本ガイド未掲載種)と混同されており、国内での生息状況については再検討が必要である。
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Oulastrea crispata (Lamarck, 1816)
キクメイシモドキ |
Incertae sedis 所属科未定
Oulastrea Milne Edwards and Haime, 1848 キクメイシモドキ属 |
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撮影:野村恵一(中種子町馬立の岩屋、水深12m)
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莢の長径は4〜5mm。
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成長形:小型の被覆状〜準塊状群体で、群体の長径が10cmを超えることは滅多にない。
軟体部の色彩と特徴:褐色〜暗褐色。低次隔壁・肋の上縁が白っぽく見え、よく目立つ。昼間でも触手を伸ばすことがある。
骨格の特徴:隔壁と肋を除いた部分の骨格が黒色または褐色を呈する。個体は角ばった円形か多角形で、莢の長径は5〜7mm。個体配列は主にプロコイド型だが、個体間隔が狭い群体ではセリオイド型に、広い群体ではサムナステロイド型に見えやすい。隔壁と肋は4次まで発達し、低次のものほど厚い傾向がある。隔壁と肋の側面から上縁にかけては、先端の尖った顆粒状突起がよく発達する。特に側面では、それらが複数の列をなす。1次・2次隔壁は軸柱まで達し、軸柱のすぐ外側にパリ状葉が発達する。軸柱は、パリ状葉の内側に形成されたパリが多数集まって形成される。しかし肉眼でのパリ状葉とパリの識別は困難。個体表面からは認識しづらいが、莢壁は板状で、それらの上方は多孔質。群体裏面には明瞭なエピテカは認められない。
生息環境:砂泥が溜まりやすい内湾の浅瀬や、波浪の影響の少ない岩礁斜面の水深10m以深で見られる。
国内での分布:千葉県勝浦・新潟県佐渡島以南。種子島では稀。
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Plesiastrea versipora (Lamarck, 1816)
コマルキクメイシ |
Incertae sedis 所属科未定
Plesiastrea Milne Edwards and Haime, 1848 コマルキクメイシ属 |
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撮影:永田俊輔(西之表市西浦、水深10m)
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莢径は通常3〜4mm。
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成長形:被覆状〜準塊状群体。
軟体部の色彩と特徴:>主に褐色で、黄緑色や灰緑色のものもある。暖温帯域では、昼間でも触手を伸ばすことがある。隣接個体との境界に直線状のくぼみがある。
骨格の特徴:個体は主に円形で、莢径は通常3〜4mm。個体配列はプロコイド型で、個体間隔は狭い。隔壁・肋は3次まで発達する。1次・2次隔壁は厚く、莢心まで達するが、3次隔壁は短く、莢心に達することはない。1次・2次隔壁の内縁には、肥厚して高く突出したパリが発達し、それらが王冠状に配列する。その内側には、小さくて短い複数の棒状突起からなる軸柱が見られる。群体周縁の個体を除けば、肋は短めで、隣接する個体間で共有されることはない。莢壁は厚く、共骨表面からわずかに突出するため、個体は環状に盛り上がって見える。群体裏面に明瞭なエピテカは形成されない。
生息環境:通常、沖縄本島以南では礁斜面の水深20m以深で見られる。沖縄本島以北では礁池内や遮蔽的な内湾の浅瀬でも見られる。
国内での分布:千葉県館山・長崎県対馬以南。種子島以北では普通種。
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