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おしえて!研究者さん

福島県内の木質バイオマス発電に使われている燃料はどのように流通しているのでしょうか?

木質バイオマス発電の広がりと福島県の事情

木質バイオマス発電とは、木材由来の資源(木質バイオマス)を燃料として発電するもので、2009年に開始された再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff、通称FIT)は、当初は太陽光発電のみが対象範囲でしたが、その後2012年に風力発電や木質バイオマス発電等の再生可能エネルギー全般に拡大されて以降、国内では木質バイオマス発電所が急速に増えました。

木質バイオマス発電の仕組み

一方、福島県では、2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で飛散した放射性物質の影響から、森林資源は豊富にも関わらずその利用が停滞する時期が長く続き、木質バイオマス発電所の導入も他の地域に比べて緩やかな状況が続いていました。

その後、近年になって林業が少しずつ再開され、それに伴い出てくる未利用材の利用先の一つとして、先行する他地域を追いかける形で木質バイオマス発電所の建設や計画が増えてきました。

福島県内のバイオマス発電施設(2026年3月時点)出典:福島県内における再エネ・水素分野別の取組の方向性(福島県次世代産業課)をもとに改変

この際、どの程度の量を使う発電所がどの程度の速さで増えるのかを知ることが大事になります。
なぜなら、多くの量を使う発電所が急速に増えすぎた場合、持続可能な木質バイオマス燃料の供給が難しくなる恐れが考えられるからです。

事実、国内の他の地域では近隣発電所との競合で燃料価格の高騰や燃料の不足などが発生し、継続運転が難しくなるケースも見られることから、福島県内でも同じようなことが起きてしまうかもしれません。

このことを考える材料として、県内で稼働中や計画中の木質バイオマス発電所がどこからどの程度燃料を調達しているのか、また燃料を製造している施設がどこにどの程度燃料を供給しているのかといった木質バイオマス燃料の流通に関するデータが必要と考え、独自に調査を行いましたので、今回はその結果についてお示ししたいと思います。

燃料流通の実態を探る——県内71施設へのアンケート調査

調査は、福島県内において2023年1月1日現在で稼働中および計画中の木質バイオマス発電施設(全20施設)及び木質バイオマス燃料製造施設(全51施設)を対象に郵送アンケートを実施しました。

調査項目は以下の通りとなっています。

1)木質バイオマス発電施設向け項目

  • 種類(チップ、ペレット)・入手先・買取単価
  • 直近の年間使用量(t換算)
  • 燃料調達における課題と対応策、取り組み状況、望まれる行政施策など

2)木質バイオマス燃料製造施設向け項目

  • 種類(チップ、ペレット)・販売先・販売単価
  • 直近の年間販売量(t換算)
  • 原木の収集エリア・原木の樹種の内訳
  • 原料調達における課題と対応策、取り組み状況、望まれる行政施策など

回収率は木質バイオマス発電施設向けが44%、木質バイオマス燃料製造施設向けが49%でした。

なお、木質バイオマス燃料製造施設につきましては規模の大きな施設からの回答はおおむね網羅できましたが、木質バイオマス発電施設は一部規模の大きな施設からの回答が得られなかったことから、以下の結果は過小評価となっている可能性が高いことにご注意ください。

また、今回の調査では地域産の木質バイオマス燃料の動向に焦点を当てるため、実際の分析にあたっては、木質バイオマス燃料の調達先が海外の発電施設は除いていることにもご注意ください。

同じ地域内での流通が基本——しかし一部地域では大幅な燃料不足が起こる恐れも

結果の例として各地域の木質バイオマス燃料製造施設がどこから原木を調達しているかについて表に示します。

表の行部分の「入荷地域」とあるのが原木を生産している地域で、例えば44,148という欄は、浜通り地域で生産された44,148丸太m3の原木が中通り地域の木質バイオマス燃料製造施設に運ばれて燃料に加工されていることを表しています。

表 木質バイオマス燃料製造施設における原料の調達元(全区分)

※丸太m3とは丸太の体積を示す単位で、末口二乗法という方法で求められます。

基本的に同じ地域内(例えば浜通りから浜通りへ)で流通していますが、一部は会津から浜通りへといったかなり長距離の移動も確認されました。

また、各地域で計画中であった発電所の規模から今後必要になる木質バイオマス燃料を試算したところ、浜通りで10万t、中通りで2万t、会津で10万tの燃料が新たに必要になってくることが明らかとなり、特に浜通りと会津において燃料需要が急増し、競合が発生することが予想されます。

調査を行った2023年当時に計画中であった各施設の多くはその後稼働を開始しました。

木質バイオマス発電は、利用が進まなかった未利用材を活用しながら、太陽光発電や風力発電といった不安定な再生可能エネルギーに比べて、燃料さえ供給できれば安定的な電源であることが特徴です。

しかし、過度な競合が発生するような設備導入が進むことで、森林の持続可能性やそもそもの発電所の運営に問題が生じる恐れもあります。

今後も地域の皆さまと連携しながら調査を進め、持続可能な森林管理と再生可能エネルギーの両立に貢献したいと考えています。

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