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成果発表

2009年5月29日記者発表
〜地球温暖化「日本への影響」-長期的な気候安定化レベルと影響リスク評価-〜

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「温暖化影響総合予測プロジェクト」では、我が国においても、今後、国民生活に関係する広範な分野で一層大きな温暖化の影響が予想されること、世界的に温室効果ガス排出が大幅に削減された場合、我が国に対する被害も相当程度減少すると見込まれるが、温室効果ガス濃度を450ppmに安定化した場合でも一定の被害が生じることは避けられないことを明らかにしました。この成果は、気候安定化レベルに応じた我が国への影響および被害コストに関する総合的な知見を提供するものです。

なお、本報告は、「温暖化影響総合予測プロジェクトチーム」(茨城大学、国立環境研究所、東北大学、農業環境技術研究所、森林総合研究所など14機関)がとりまとめたものであり、4月14日に内閣官房が開催した「地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会(第7回)」に報告された研究概要の詳細版です。

報告の要点

  • 我が国を主たる対象として、①洪水による氾濫面積及び被害コスト、②土砂災害による斜面崩壊発生確率及び被害コスト、③ブナ林の適域への影響及び被害コスト、④マツ枯れ危険域の拡大、⑤コメ収量への影響、⑥砂浜喪失面積の拡大及び被害コスト、⑦高潮浸水面積の拡大、被災人口及び被害コスト、⑧熱ストレス死亡リスク及び被害コスト、の8つの指標について温暖化影響を定量的に評価した。
  • ①については、降雨強度の増大と強い雨の頻度が増加することにより浸水面積・被害コストの増加が見込まれ、最も厳しい安定化レベルの場合でも被害コストが大幅に増加すると見込まれる。
  • ②については、洪水氾濫と同様に降雨強度と頻度の変化に大きく影響される。低い安定化レベルほど影響は低減され、最も厳しい安定化レベルの場合では,斜面崩壊発生確率及び被害コストが頭打ちになる可能性がある。
  • ③については、温暖化の進行に伴いブナ林の適域は失われていき、最も厳しい安定化レベルの場合にはその喪失に歯止めがかかると見込まれるが、ある程度の喪失と被害コストは免れないと見込まれる。
  • ④については、温暖化の進行に伴いマツ枯れ険域が拡大するが、最も厳しい安定化レベルの場合にはある程度の被害は免れないものの、その拡大に歯止めがかかると見込まれる。
  • ⑤については、温暖化により収量の増加が見込めるが、その傾向もある程度の気温上昇で頭打ちとなると見込まれる。
  • ⑥については、温暖化の進行に伴う海面上昇は最も厳しい安定化レベルにおいても今世紀中には止まらず、砂浜は失われ続け被害コストも増加し続けると見込まれる。
  • ⑦については、温暖化に伴う海面上昇は長期間に及ぶため、最も厳しい安定化レベルにおいてもその被害は長期的に増加すると見込まれる。
  • ⑧については、温暖化の進行に伴い熱ストレス死亡リスクは上昇し、最も厳しい安定化レベルの場合には、リスクと被害コストの増加速度が今世紀末に向かって低減していくと見込まれる。

添付資料

  • 別添付資料1
    『温暖化影響総合予測プロジェクト報告書(2009年版)の概要』
    (PDF:680KB)
  • 別添付資料2
    温暖化影響総合予測プロジェクト報告書 『地球温暖化「日本への影響−長期的な気候安定化レベルと影響リスク評価−』  (PDF:1.72MB)

2009年4月14日研究成果公表
〜世界が温暖化対策を講じない場合の被害コストについて〜

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「温暖化影響総合予測プロジェクト」は、平成17(2005)年にスタートし、 平成20年度より後期研究期間(2年間)が開始されています。地球温暖化問題に関する懇談会 中期目標検討委員会における検討課題の一つである「対策を講じない場合のコ スト」に対して、本プロジェクトは検討中の研究成果の一部を報告しました。本報告は、「温暖化影響総合予測プロジェクトチーム」(茨城大学、国立環境研究所、東北大 学、農業環境技術研究所、森林総合研究所など14機関)がとりまとめたものです。

報告の要点

  • IPCC第4次評価報告書によると、世界平均気温の上昇に伴い、水、生態系、食料、沿岸域、健康等の広範な分野で、影響が深刻化することが予測されている。
  • 全世界を対象とした既存の報告によると、世界が対策を講じず21世紀末に平均気温が3.1〜4.3℃上昇するシナリオでは、全世界GDPの0.9〜3%に相当する被害が生じると推計されている。
  • 我が国においても、今後、国民生活に関係する広範な分野で一層大きな温暖化の影響が予想される。世界的に温室効果ガス排出が大幅に削減された場合、我が国に対する被害も相当程度減少すると見込まれる。しかし、温室効果ガス濃度を450ppmに安定化した場合でも一定の被害が生じることは避けられない。

添付資料

  • 別添付資料『世界が温暖化対策を講じない場合の被害コストについて』(PDF:814KB)

関連情報

第7回中期目標検討委員会(首相官邸ホームページ)

2008年5月29日記者発表
地球温暖化日本への影響〜最新の科学的知見〜

環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「温暖化影響総合予測プロジェクト」は、平成17(2005)年にスタートし、平成19年度で前期研究期間(3年間)が終了したことから、これまでの研究成果を公表します。  前期研究期間においては、今世紀中頃(2050年頃)までに重点をおきつつ今世紀末までを対象として、水資源、森林、農業、沿岸域、健康といった我が国の主要な分野における温暖化影響予測及び経済評価を行いました。さらに、影響・リスクを総合的に解析・評価するための統合評価モデルを開発しました。  本研究では、我が国において生じる影響の大きさと地域分布、出現速度について定量的に検討した結果、分野ごとの影響量と増加速度は異なるものの、我が国にも比較的低い気温上昇で厳しい影響が現れること、影響は地域毎に異なり、分野毎に特に脆弱な地域があることを明らかにしました。これらの成果は、我が国のみならず、世界的にも最先端の温暖化の危険な水準に関する総合的な知見を提供するものです。  本報告は、「温暖化影響総合予測プロジェクトチーム」(茨城大学、国立環境研究所、東北大学、農業環境技術研究所、森林総合研究所など14機関)がとりまとめたものです。

報告の要点

  • 我が国を主たる対象として、物理的影響及び経済影響を定量的に評価する様々な手法を開発し、それを用いて水資源、森林、農業、沿岸域、健康の5分野への温暖化影響の地域分布を示す多数のリスクマップを提示した。今世紀半ばには、これらの分野において、洪水や土砂災害の増加、森林の北方への移動と衰退、米作への影響、高潮災害の拡大や沿岸部での液状化リスクの増大、熱中症患者の増加、感染症の潜在的リスクの増大といった多岐にわたる影響が現れる。さらに、これらには地域差がある一方、我が国全体として見ると厳しい影響となるものがある。
  • 気温上昇とその時の影響の程度との関係を示す「温暖化影響関数」を構築し、それを用いて、温暖化が進行する2100年までの気候シナリオに沿って、我が国に対する影響がどのように拡大するかを総合的に検討し、我が国にも比較的低い気温上昇で厳しい影響が現れることを提示した。
  • 近年、温暖化の影響が様々な分野で現れており、本報告書で明らかとなったような悪影響を抑制するためには、早急に適正な適応策の計画が必要である。そこで、必要となる適応策の考え方及び各分野における対策の方向性について整理した。

添付資料

  • (2008年8月15日改訂版)
  • 別添資料1  『温暖化影響総合予測プロジェクト報告書の概要』 (PDF:972KB)
  • 別添資料2  温暖化影響総合予測プロジェクト報告書 『地球温暖化「日本への影響−最新の科学的知見−』 (PDF:5.4MB)
  • 別添資料3  2008年5月29日発表版からの変更点一覧(PDF:216KB)
  • (2008年5月29日発表版)
  • 別添資料1  『温暖化影響総合予測プロジェクト報告書の概要』 (PDF:824KB)
  • 別添資料2  温暖化影響総合予測プロジェクト報告書 『地球温暖化「日本への影響−最新の科学的知見−』 (PDF:6.15MB)