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03. 化学物質リスクに関する情報の収集とWebサイトでの提供

主任研究員 今泉 圭隆


「Webkis-Plusのトップページを示した画像」
図1:Webkis-Plusのトップページ [クリック拡大]

情報公開の必要性と重要性

 環境リスク・健康研究センターでは、化学物質を正しく管理・利用するために必要な情報を入手できる基盤としてWebサイト「Webkis-Plushttps://www.nies.go.jp/kisplus/)」(図1)を作り、関連する情報を収集し、随時新しい情報を追加しています。
 化学物質を適切に管理するためには、その化学物質の毒性(ヒトや環境中の生物への影響)だけでなく、どのような物理化学的性状を有しているか、どの程度その化学物質が流通・利用されているか、どのような用途・目的で利用されているか、環境中にどの程度排出されるのか、環境中でどの程度存在しているか、といった多様な情報が必要になります。これらの情報は多岐にわたるため、所管する省庁も様々ですし、それらの情報を収集・管理・公表している組織も、その公開状況もさまざまです。したがって、化学物質のリスクに関連する情報を網羅的に入手することは困難です。その状況を少しでも改善するために、情報収集と公開のためのWebサイトであるWebkis-Plusを運用し、日々改善を進めています。我々のWebサイト以外にも化学物質関連情報のポータルサイト(注1)は国内外に存在します。インターネットにおける情報検索などに関わる技術や状況の変化は激しく、誰でも様々な情報に容易にアクセスできる状況下であるため、信頼性を担保した情報を、その情報源を明らかにしつつ提供することの意義はますます高まっていくと考えています。


今までの経緯

 我々は、10年以上前から化学物質の総合情報サイトWebKis-Plus(旧バージョン)と環境測定法データベースEnvMethodという2つのWebサイトを公開してきました。それらは物質相互のリンク機能は有していたものの、ページ構成や使い方が異なるため利用しにくい側面がありました。今回、それら2つのサイトを統合し、より利便性・安全性の高い1つのWebサイトとして現在のWebkis-Plusにリニューアルし、2019年1月より公開しています。


「化学物質の個別情報ページの例を示した画像」
図2:化学物質の個別情報ページ(アクリロニトリルの例: https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/YOT00009
[クリック拡大]

Webkis-Plusの公開情報と機能

 Webkis-Plusでは約70の出典から10,000物質以上の情報を収集して公開しています。特に農薬出荷量や環境分析法に関する情報が充実しています。化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)で公表された環境排出量情報や、環境省で実施・公表されている化学物質の環境調査結果「化学物質と環境」なども毎年定期的に情報を追加しています。環境基準や法規制に関連する情報や、様々な機関によるリスク評価の結果なども収集し公開しています。それらの情報は、情報源の違いにより分類し、さらに各情報源の中の分類に基づき階層的に分類し、化学物質ごとにカテゴリとして整理しています。
 Webkis-Plusでは検索機能にも力を入れており、各カテゴリに該当する物質の一覧や、複数のカテゴリに属する化学物質の検索、特定のカテゴリに絞った化学物質の検索など、複数の切り口から目的物質に到達することが可能です。農薬製剤や環境分析法の検索では、より細かい条件指定も可能となり、旧バージョンに比べ検索機能が高まりました。
 検索によって得られた化学物質の情報は、「一般」、「曝露」、「健康」、「生態」、「リスク」、「事故」、「関連」、「分析」という8種の情報分類に整理して表示しています。それぞれのタブをクリックすることにより、素早く目的の情報を閲覧することができます(図2)。また、環境分析法に関する情報としては、化学物質による検索だけでなく、分析の際に必要な処理の内容や検出機器の情報などを一つのシートに整理して公開しています。
 曝露情報の一部には一つの化学物質について大量のデータが掲載されている場合もあります。例えばPRTRの排出量データには、大気や水域など媒体別の排出量や家庭や移動体など排出源別の排出量が都道府県別・年度別に収載されていますし、環境中濃度の測定結果の一部には検体数や検出濃度の平均値などが都道府県別・媒体別・年度別に収載されています。図2で示したページの「曝露」タグ内には概要情報としてそれらの年度別での集計などを掲載しており、より詳細な情報はクリックして開く詳細情報ページにて公表しています。そのページでは、表やグラフなどの表示形式を変更することや、表示する指標の取捨選択、一部の都道府県の結果を表示するなど利用者が自由に表示形式・表示内容を変更することができ非常に便利になりました。(図3)
 一部の化学物質は、異性体を有していたり、化学物質群として定義されていたり、その“化学物質名”が表す化学物質群をどのように定義するのか難しいような場合もあります。そのような場合に、ある物質群に含まれる個別物質の情報などに迅速にアクセスするために、関連物質情報も上述した「関連」タブに整理しています。これらの関連物質情報は限られた一部の物質のみ整備している状況ですが、今後内容を充実させていく予定です。


「大気中実測濃度の県別最大値の経年変化を表すグラフ部分の例を示した画像」
図3:大気中実測濃度の県別最大値の経年変化を表すグラフ部分の例 (実際のページでは各軸の項目や表示内容の選択が可能です。) [クリック拡大]

外部との協力・連携

 化学物質のポータルサイトの一つに環境省のケミココ(http://www.chemicoco.go.jp/)があります。このWebサイトでは法規制や用途の情報が充実しているとともに、Webkis-Plusを含む他の情報ページへのリンクが掲載されています。このケミココとWebkis-Plusは物質単位で相互にリンクされています。今後は、ケミココのように他の化学物質情報サイトとの間でも物質単位での相互リンクを行うなど、より利便性の高い情報ネットワークを構築していき、Webkis-Plus内だけでなく、インターネット全体として適切な情報提供機能を一般の方々に提供できればと考えています。


最後に

 現在、Webkis-Plusには月十数万程度のアクセスがあり、多くの方にご利用いただいています。今回のリニューアルにより、見た目や使いやすさの向上だけでなく、サイトの安全性確保や運用コストの削減、サイト改良作業の効率化も達成することができました。今後は、カテゴリ情報の精査・追加や、農薬等に関連する情報ページの拡充、関連物質情報の整備、外部連携の充実など、より一層提供情報の充実や利便性の向上を図っていきたいと考えています。


注1  ポータルサイト: インターネット上の様々なページへのリンクを整理したWebサイトのこと。


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