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2025.10.15

七尾湾調査「頼れるロボット調査船ロボセン」

調査の様子
10 月 15−19 日 七尾湾周辺で調査が行われました

頼れるロボット調査船ロボセン

お部屋を掃除してくれるお掃除ロボット、お店でお料理を運んでくれる配膳ロボット。何かと生活を助けてくれているロボットたちですが、海の研究の世界にも頼れるロボットがいます。そのひとつがこの写真の調査船ロボセンです。日本海工株式会社が産学官共同開発した調査船です。分解すると車で運ぶことができるほど小さなこの船が、温暖化などによる海の中の変化を調べるためのとても重要な役割を果たしています。今回、石川県の七尾湾で行われた調査でもこのロボセンが力を発揮しました。

魅力いっぱいの七尾湾

七尾湾は石川県の能登半島に位置する湾です。湾の中央には能登島という島があり、島を囲むように湾が広がっています。島から見てそれぞれ北側は北湾、西側は西湾、南は南湾と呼ばれています。七尾湾の出口は、富山湾に繋がっています。つまり大きく見ると日本海の一部です。それぞれの湾の入り口は狭く、潮流は穏やかです。この独特の地形のせいで外海の海水とはなかなか混じりにくいため、北湾、西湾、南湾それぞれに特徴があります。

調査風景
ボラ待ちやぐら。七尾北湾の沿岸、穴水町にある。

北湾では複雑に入り組んだ海岸が見られ、多様な海藻が育ち、ボラ待ちやぐら(上写真)が残されていて古くから漁が行われてきました。西湾では穏やかな海況を利用して牡蠣や海苔などの養殖が行われています。また南湾には七尾漁港があり、古くから漁が盛んでした。このように七尾湾はたくさんの魚介類、海藻類が生きている豊かな海で、それぞれの特色を活かした養殖業も盛んです。能登の里山里海は国連の世界農業遺産に認定されています。(世界農業「能登の里山里海」)七尾湾はいろんな魅力が詰まった豊かな海です。

調査風景
能登島と七尾市石崎町を結ぶ能登島大橋。西湾と南湾の間に位置する。

藻場が静かにいなくなってる?!

豊かな海、七尾湾ではありふれた風景だった藻場が、静かに姿を消していっていることが調査によってわかっています。でもはっきりとした理由はよくわかっていないそうです。その本当の理由は何なのか、温暖化のせいなのか大きな地震があって海が濁ってしまったからなのか、または他の原因か、突き止めなければなりません。さらに藻場がなくなることで具体的にどんな影響が及ぶのか、ということも予測していく必要があります。

藻場の存在感

アマモに代表される藻場は、かつて邪魔者扱いされることもあったそうです。そこらじゅうに生えていたし、泳ぐ時にまとわりついてきたり、魚網に絡まったり、船のスクリューに巻きついて絡まったりすることがあったからです。でも藻場は生物の暮らしに深く関わっていて、海の中に酸素を作り出したり二酸化炭素を吸収したり、またいろいろな生き物の産卵場として、稚魚や稚貝の棲家として、とても重要です。そのため藻場がなくなると海の中の環境が大きく変わってしまいます。

海の中の様子をシミュレーションするためのデータ

藻場のなくなった海はどんなふうに変わってしまうのか、元の環境を取り戻すにはどうしたらいいか、どうすれば藻場の消失を食い止められるのか、などなどいろいろな可能性を模索する上でシミュレーションは大きな役割を果たします。S-23 では海の中の環境をシミュレーションする取り組みの研究がなされています。まずシミュレーションを動かすにはたくさんのデータが必要です。そのデータを取るのにロボセンが助けてくれているのです。

調査風景
西湾の牡蠣棚の間を航行するロボセン。奥には和倉温泉街が見える。

頼れるロボセンの実力

これまでの漁船を使ってしてきた調査には、課題がありました。岸に近い浅瀬では藻が絡まってしまったり、船を動かすことで水が攪拌されてしまいデータが不正確になってしまったり、調査地点が浅すぎて船では近づけなかったり、潮流で船が流されて計測地点の誤差ができてしまうことなどです。これに対してロボセンは軽くてスクリューも小さく水をかき混ぜてしまう心配はほとんどありません。からみつきを防止するプロペラガード(特許取得)も装備しているし、少しくらい風や波があってもあらかじめプログラムした位置情報をもとに自動で地点に到達します。設定した地点と実際にロボセンが停泊する水平位置の誤差もとても小さく(±5m以内)精密な計測ができます。定点座標にずっととどまったり、深さ別に水質データを収集することもできます。それによって今までにない画期的な精度でデータを取れるようになりました。ありがとうロボセン、頼れる相棒!

今回の調査の意義

今回も七尾湾の中のたくさんの地点で、水質や藻場などの空間変化の細かい調査が行われました。このようなデータは、七尾湾の「いま」を知る手がかりになりますし、データが積み重なっていくにつれ、これからどうしていくべきか、海に何をしてあげられるか、考えるための材料になることでしょう。そしてロボセンの力を借りてより精度が上がったデータは今後の分析やシミュレーションの質も高めてくれるでしょう。

調査に参加された皆さん、大変な作業ほんとうにお疲れ様でした!詳しく説明してくださった中田聡史主任研究員、ありがとうございます!

教えてくれた研究者 中田 聡史(国立環境研究所)

写真 志賀 薫(国立環境研究所)

参考資料

日本海工株式会社:ロボセン

石川県:七尾湾里海マップ

世界農業遺産活用実行委員会:世界農業「能登の里山里海」(情報ポータル)