国立環境研究所重点特別研究プロジェクト等中間報告書の公表について
(お知らせ) (筑波学園都市記者会同時発表)


平成16年4月9日
独立行政法人国立環境研究所
主任研究企画官 松村  隆 (029-850-2302)
環境情報センター長 岩田 元一 (029-850-2340)
担当 企画・広報室 田辺  仁 (029-850-2303)


情報企画室 竹内 久智 (029-850-2341)
重点特別研究プロジェクト
課題 (1) 井上 元 (029-850-2402)
課題 (2) 今村 隆史 (029-850-2406)
課題 (3) 森田 昌敏 (029-850-2332)
課題 (4) 椿  宜高 (029-850-2482)
課題 (5) 村上 正吾 (029-850-2388)
課題 (6) 若松 伸司 (029-850-2890)
政策対応型調査・研究
課題 (1) 酒井 伸一 (029-850-2806)
課題 (2) 白石 寛明 (029-850-2335)

概 要
 国立環境研究所では、このほど以下の8編の報告書をとりまとめましたので公表します。
 いずれも、重点特別研究プロジェクト、政策対応型調査・研究として、平成13年度から17年度までの5ヵ年で実施している研究の中間成果です。

【重点特別研究プロジェクト】
(1)地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト

経済発展・気候変動及びそれらの影響を統合的に評価するモデルを開発・適用して、京都議定書及びそれ以降の温暖化対策が地球規模の気候変動及びその地域的影響を緩和する効果を推計する。そして、中・長期的な対応方策のあり方を経済社会の発展の道筋との関係で明らかにし、これらの対応方策をアジア地域の持続可能な発展に融合させる総合戦略について検討する(統合モデル研究)。
また、フィールド観測、遠隔計測、統計データ等をもとに、陸域と海洋の吸収比、森林の二酸化炭素吸収/放出量・貯留量、二酸化炭素の海洋吸収とその気候変動に対する応答等を推計し、炭素循環とその変動要因を解明する(炭素循環研究)。


(2)成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト

平成14 年12 月に打ち上げられた、環境省が開発した人工衛星搭載オゾン層観測センサー「改良型大気周縁赤外分光計II 型(ILAS-II)」で取得される観測データを処理し、オゾン層研究、オゾン層監視等、科学的利用のためのデータプロダクトとして、国内外に向けて提供する。つくば(国立環境研究所)及び陸別(陸別成層圏総合観測室)における地上からのオゾン層モニタリングを継続実施し、国際的ネットワークであるNDSCデータベースにデータを提供するとともに、国内外に向けてデータの提供を行う。極域オゾン層変動に係る物理・化学的に重要な要素プロセスについて、その機構及びオゾン変動に対する寄与の解明を行う。また、オゾン層保護対策の根拠となったオゾン層変動予測、及び最新のオゾン層変動予測の検証を行い、オゾン層保護対策の有効性評価に係る知見を提供する。


(3)内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理プロジェクト

内分泌かく乱化学物質およびダイオキシン類の総合対策をより高度に実施するため、(i)高感度・高精度分析、迅速・簡易分析の新規の実用試験法の提案を行う。ii) 内分泌かく乱作用についての生物検定法を確立する。iii) 環境中での分布、生物濃縮、分解性をグローバルスケールを視野にいれつつ明らかとする。さらに、ヒトや生物への影響について、iv) 実験動物を用いて、発生・生殖、脳行動、免疫系への影響を調べる。v) いくつかの野生生物種について、霞ヶ浦、東京湾等をフィールドとして生物影響の状況を明らかとする。vi) 未知の関連物質の探索を行うとともに、臭素化ダイオキシン等についても調べ、データベース化を進める。vii)統合情報システムのもとに、情報管理・予測システムの確立を目指す。viii) 処理技術として生物浄化技術等の開発により、効果的な対策に資する。



(4)生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクト

土地利用などの人為的な環境改変の生物多様性への影響を様々な空間的スケールで把握し、生物多様性減少の要因を分析する。生態系(森林、湖沼など)のスケールでは生物群集の個体ベースモデルを開発し、多種生物共存のメカニズムを探る。流域スケールでは生息地(特に河川)の分断・改変が種多様性に及ぼす影響をフィールド調査によって明らかにする。それより大きなスケールでは植生・土地利用の地図情報化を行って生物種の分布との重なりを解析することにより、種と群集の地理的分布を表現できる二次元空間モデルを開発する。また、侵入生物と遺伝子組み換え生物の生態系影響の問題を取りあげる。侵入生物の生態的特性、侵入経路、現在の分布、在来生物へのインパクトなどの情報のデータベース化と地図情報化、侵入生物による在来生物への捕食・競合・遺伝的攪乱などの影響の実態調査を行う。遺伝子組換え生物の生態系影響評価手法を開発するため、既成の安全性評価手法の再検討と分子生物学的手法による安全性検査手法の開発を行う。


(5)東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクト

21 世紀の日本及び東アジアにおける均衡ある経済発展にとって、森林減少、水質汚濁、水資源枯渇、土壌流出等の自然資源の枯渇・劣化が大きな制約要因となりつつある。こうした環境問題に対処するためには、環境の基本ユニットである『流域圏(山〜河川〜海)』が持つ受容力を科学的に観測・把握し、モデル化を行うことにより環境受容力の脆弱な地域を予測した上で、環境負荷の減少、環境保全計画の作定、開発計画の見直し、環境修復技術の適用等環境管理を行っていくことが最も必要である。本プロジェクトは、日本及び東アジアを対象として、流域圏が持つ生態系機能(大気との熱・物質交換、植生の保水能力と洪水・乾燥調節、水循環と淡水供給、土壌形成と侵食制御、物質循環と浄化、農業生産と土地利用、海域物質循環と生物生産など)を総合的に観測・把握し、そのモデル化と予測手法の開発を行うものである。


(6)大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価プロジェクト

国際的に関心が高まっているDEP 等を含むPM2.5 を中心とした大気中粒子状物質の発生源特性や環境動態を明らかにし、発生源と環境濃度との関連性を把握する。これとともに大気中粒子状物質の一般住民への曝露量を推計し、さらに全国民の曝露量ランク別人口数の推計を行い、リスク評価に資するデータを蓄積する。
また、影響評価に資するため、動物実験を中心とした毒性評価研究を行い知見の集積を図る。

【政策対応型調査・研究】
(1)循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究

生産から流通、消費、廃棄の過程に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進めるための戦略的な物質循環政策、循環型社会の基盤を支える資源化・処理処分技術システム、検知・監視システムに関する研究・開発を推進する。具体的なテーマとしては、以下の4課題に取り組む。


(2)化学物質環境リスクに関する調査・研究

化学物質環境リスクの適正管理を目指して、現行のリスク管理政策からの要請を受けた課題とリスク管理政策のさらなる展開を目指して解決すべき課題の2つの観点から曝露評価、健康リスク評価及び生態リスク評価について評価手法の高精度化を図るとともに、簡易なリスク評価手法の開発を行う。また、リスクコミュニケーションを支援する手法の開発を行う。曝露評価については、時・空間的変動を考慮した曝露評価や少ない情報に基づく曝露評価手法を開発する。健康リスク評価については、化学物質に対する高感受性集団に配慮した健康リスク管理手法や、複合曝露による健康リスク評価手法を開発するとともに、バイオアッセイ法の実用化に向けた研究を行う。生態リスク評価については、生態毒性試験法の開発と生物種別の毒性に基づく生態リスク評価手法の高度化を目指す。リスクコミュニケーションについては、情報加工・提供方法について研究する。

1.中間報告の要旨(別添のとおり)
【重点特別研究プロジェクト】

(1)地球温暖化の影響評価と対策効果プロジェクト
(2)成層圏オゾン層変動のモニタリングと機構解明プロジェクト
(3)内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理プロジェクト
(4)生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェク
(5)東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクト
(6)大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価プロジェクト

【政策対応型調査・研究】

(1)循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究
(2)化学物質環境リスクに関する調査・研究

 

2.閲覧・入手についての問い合わせ先
 ● 国立環境研究所の刊行物は、以下で閲覧することができます。
  ・国立環境研究所図書室(複写サービスはありません)
  ・国立国会図書館
   また、国立環境研究所ホームページで、閲覧することができます。

http://www.nies.go.jp/index-j.html

 ● 残部があるものは頒布(送料要負担)していますので、下記へお問い合わせ下さい。
連絡先 国立環境研究所環境情報センター 情報企画室出版普及係(TEL: 029-850-2343)