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2. 循環型社会研究プログラム
(5)資源循環・廃棄物管理研究(基盤的な調査・研究)

外部研究評価委員会事前配付資料

平成21年度の研究成果目標

① 廃棄アスベストのリスク管理に関する研究:

無害化処理における各媒体、処理過程に適用可能な電子顕微鏡と光学顕微鏡を併用した分析法を検討する。建材や廃棄物等の固体試料中の石綿測定法に関して、偏光顕微鏡と位相差顕微鏡を併用した測定法を検討する。分析精度管理に関して、クロスチェックを実施する。廃棄物処理・再資源化施設において、石綿飛散実態調査を行う。

② 資源循環に係る基盤的技術の開発:

・廃棄物資源化技術動向の調査に関しては、内外から数十件情報として収集し、技術の特徴と性能、実廃棄物への適用性、生成物の特質等に対する評価を行う。シンポジウムの開催によって、やや異なる分野との連携における課題等を明らかにする。

・電磁波を利用した資源化技術において高周波誘導加熱による樹脂材料、金属素材の分離特性等を明確にする。炭化技術に関しては、とくにタール成分の種類や質的な特徴を明らかにする。

その他の主な課題:

1)臭素系難燃剤等の物性の測定・推定手法
前年度に製作した蒸気圧装置(気体流動法)を用いて、芳香族リン酸エステル難燃剤の蒸気圧の測定を試み、安定したデータが得るために試料の調整法を改善する。また、得られたデータから蒸発のエンタルピーを求める。

2)リデュース・リユースの分析・評価手法の体系化とその適用研究
3R研究の体系化を目指し、英国の関連分野の調査研究の情報を整理する。テレビ、冷蔵庫、エアコンの製品データ・使用時間データを収集・整理し、prescriptive LCA手法をこれら製品の買替判断に適用する。

3)国際サプライチェーンを含む生産消費システムを対象とした環境負荷分析の理論と実践
設計した産業連関モデルを用いたCO2排出量に関する事例研究を行い、モデルの特性とカーボンフットプリント算定への利用における有効性を確認する。また、CO2以外の温室効果ガス、エネルギー資源、レアメタル資源への分析に向けたデータ整備を行う。

平成21年度の研究成果

①廃棄アスベストのリスク管理に関する研究:

主に排ガスの電子顕微鏡分析の検討を進め、SEMにおいて一定面積内の繊維計数が可能となる試料台を製作し、破砕排ガス集塵ダストの分析に適用した。固体試料中のアスベストの測定法として、酸処理による濃縮とPLMによるポイントカウント法を組み合わせ、0.1%レベルのアスベストを定量できる方法を考案した。分析精度管理に関し、PCM法のクロスチェックを進め、アモサイト試料で良好な結果を得た。また、TEM法及びSEM法についてもアスベスト標準や集塵ダストを共通試料としてクロスチェックを行った。廃棄物処理施設における石綿飛散状況調査を実施し、TEM法による分析で破砕排ガス集塵ダストや破砕残渣からアスベストを検出した。

②資源循環に係る基盤的技術の開発:

ア 内外の資源化技術を調査して情報を集積した。とくに調査対象として廃棄物処理・資源化技術に加え、異業種企業によるエンジニアリング開発の動向等に関する情報を、ヒアリングを併用して収集した。実施シンポジウムにおいては、環境技術に関する共通の理解を踏まえて、ヒートポンプによる熱有効利用技術、排ガス排熱利用型の水再生技術、太陽光発電とそのシステムにおける系統連携、燃料電池自動車の進展における材料開発の必要性などが示され、異分野間で連携を図ることの重要性が確認されたとともに、連携を実施する上での課題等を抽出した。

イ 電磁波利用の資源化技術において、アルミ被覆樹脂フィルムを対象として高周波誘導加熱実験を行った結果、金属・樹脂接合面が明らかに劣化し容易に剥離できる状態になることを確認した。また、樹脂フィルム自体の熱分解はそれほど進行しないことから、エネルギーリサイクルへの適用が十分可能であると推定された。

ウ 炭化技術に関しては、生成タール成分の定性的解析から、炭化温度が高くなることに応じて多環芳香族成分が主な構成成分になることを明らかにした。

その他の主な課題:

1)  臭素系難燃剤等の物性の測定・推定手法
前年度に製作した気体流動法をベースとした蒸気圧測定装置を用いて、芳香族リン酸エステル難燃剤の蒸気圧の測定を試みた。前年度の試料調製法では、再現性の良い蒸気圧データが得られないことがわかったため、その原因を温度上昇に伴うガラス表面の不均一化と予想し、不均一化を防ぐために、試料調製において表面を疎水処理したガラスを用いた。その結果、再現性の良い蒸気圧データを取得することが可能となった。この方法を用いて、芳香族リン酸エステルであるトリフェニルホスフェートと縮合型であるレゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートの蒸気圧を測定した。両者のデータを比較すると、縮合型の蒸気圧は約4桁小さくなることがわかった。また、実験データとClausius-Clapeyronの式からそれぞれの蒸発のエンタルピーを明らかにした。

2)  リデュース・リユースの分析・評価手法の体系化とその適用研究
英国のwaste prevention調査研究の情報を整理したところ、意識・行動研究の他、発生抑制ポテンシャルや実施可能性を定量化する研究が重要になってくると考えられた。
省エネ家電製品の買替研究については、あまり使わないテレビとエアコンについては使用時のエネルギー消費削減効果よりも製造時等のエネルギー消費の影響がより強く現れるため、使用時の省エネが進んでも買替すべきでない条件があることを確認した。

3)  国際サプライチェーンを含む生産消費システムを対象とした環境負荷分析の理論と実践
2000年産業連関表を基にしたGLIOモデルを用いて部門別の内包型CO2排出原単位 (t-CO2/百万円)(原単位)を国産品の400部門について算定した。GLIOによる原単位は、商品iの単位生産あたり全世界で排出される総CO2排出量を示し、排出構造の分析により誘発量の国別内訳を知ることができる。本年度は、家計消費需要の大きい食料品および日用品関連部門について、各部門の誘発CO2量の世界分布をGIS上に明示した。また、国内外のカーボンフットプリント制度の進展を鑑み、カーボンフットプリント算定ルール作りにおけるGLIOモデルの活用方法を提示した。具体的には、@輸入財に国産品データを適用する妥当性の判断、A詳細にデータ収集すべきプロセス投入物の選定の判断、Bカットオフの妥当性の判断において論理的な判定基準を与える方法論を示した。一方、GLIOによる資源分析にむけて、べースメタル(鉄、銅、アルミ、鉛、亜鉛)およびレアメタル(ネオジム、プラチナ、コバルト)を対象としたデータ整備を開始した。

外部研究評価委員会による終了時の評価

平均評点    4.4点 (五段階評価;5点満点)

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

基盤的な研究(実験研究や調査研究)が着実に実施されており、国環研の行政サポートの役割も十分果たされている。また、国環研として取り組むべき資源循環・廃棄物管理研究についての検討・体系化の取り組みがなされている。多くの物質について、測定ばかりでなく、廃棄・無害化処理等も開発され、公定法やガイドライン等の策定にも活用されており、高く評価できる。また、若手の自発的な研究を積極的に進めるような対応も高く評価できる。

一方、廃棄物よりスタートしたグループと資源循環を意図する循環型社会を目指すグループが混在し、コンセプトが判り難い。

[今後への期待・要望]

未来の循環型社会で必要とされる廃棄物処理技術、およびその経済性、社会的要請に関する制度(見直しを含む)を、個別課題の優先度を提案しながら研究することが期待される。その際、物質の流れが広範囲化していく中で、システム分析の対象範囲をどういったスケールにとれば良いかを意識する必要がある。

資源リサイクルの流れの国際化により、対応国との協力体制が不可欠であるので、アジアでの資源リサイクル廃棄物管理でのリーダーシップをとってもらいたい。

対処方針

前回(2年前)の評価において、基盤研究としての廃棄物研究の組織化・体系化や、シーズを育てる研究環境づくりの必要性について指摘されていたが、それらに対する対応については、一定の評価を受けたものと受け止めている。過去からの廃棄物問題の解決のための研究と将来の循環型社会の構築のための研究とが、車の両輪の役割を担っていることを再確認するとともに、物の流れの広域化・国際化に対応した分析手法の開発・適用や、アジアでの資源循環・廃棄物管理に関する研究協力体制の整備を進める。