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2.循環型社会研究プログラム
(4)国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築

研究の目的

本プロジェクトは、アジア地域における資源循環及び廃棄物管理システムの現状を把握・解析し、その適正管理ネットワークを構築すること、技術的側面からの対応として、途上国における適正処理及び温暖化対策の両立に資する技術システムを提供することを目的としている。また、その特徴として、循環型社会研究プログラムの中でも国際的な展開と貢献を目指したものとなっている。他の中核PJから得られる政策手法、資源性・有害性などの評価手法、技術システムの開発及び評価手法などを、国際資源循環やアジア諸国の現状に適用・活用させる。なお、グローバル化する経済活動と、実態として既に日本等の廃棄物が中国等へ大量に輸出され資源として活用されている現状を鑑みれば、アジア地域、ひいてはより大きな規模での適正な資源循環の構築は、プログラムが総合的に目指す日本の循環型社会の将来ビジョンを描く上で不可欠な要素である。

平成21年度の実施概要

サブテーマ(1) アジア地域における資源循環システムの解析と評価手法開発による適正管理ネットワークの設計・評価

アジアの途上国の研究機関と国際共同研究によって、各国内におけるインフォーマルおよびフォーマル企業による解体、リユース・リサイクルの実態、導入されている技術情報などを調査した。リサイクルの国際分業も視野に含めて、使用済み製品等に含まれる物質のリサイクル・有害物質管理のための最適プロセスの選定手法開発を検討した。

日本から輸出される金属スクラップについては、10t程度のサンプルを入手し、有害物質や家電等の混入状況を調査するとともに、現在の輸出関連規制上の課題を検討した。

制度設計の観点から、日本・アジア・欧州の家電等のリサイクル制度の比較検討を継続し、途上国のE-waste管理制度設計に向けた課題を整理した。

以上のE-wasteに関する内容については、12月に第6回国立環境研究所E-wasteワークショップを開催し、国内外の専門家を招いて最新の情報交換を行った。

サブテーマ(2)アジア諸国における資源循環過程での環境影響把握

途上国での不適正リサイクルにおける各種環境汚染物質の排出挙動を把握するために、国内での各種模擬実験や海外での現地調査を実施した。国内においては、基板やE-wasteの筺体の燃焼実験を行い、非制御燃焼条件下での臭素系難燃剤(BFR)およびダイオキシン類の排出挙動を定量的に把握した。また、途上国埋立地を模した大型埋立地シミュレーターの浸出水中臭素系難燃剤の挙動を解析した。

さらに、非制御燃焼を模擬する材料として、国内で発生した金属スクラップ火災現場で収集した廃家電製品等を化学分析に供試し、加熱された製品部材中の塩素化ダイオキシン類の濃度や組成を把握した。

海外では、ベトナム及びフィリピンの処理工程の異なる複数のリサイクル現場において、有害物質の発生原単位的な情報取得のために作業環境試料を採取するなど、人へのハザードレベルを解明するための調査を実施した。

サブテーマ(3-1)途上国における適正処理・温暖化対策両立型技術システムの開発・評価(固形物)

Boring Bar-Chamber法を用いて、IPCC Waste Model(埋立地からのメタン放出量推計モデル)のパラメータである嫌気性分解率(MCF)、覆土におけるメタン酸化率(OX)を、タイ、マレーシア、日本の埋立地において評価した。また、覆土の穿孔前後におけるフラックス差を用いて透気係数を推定する方法を数値的な移流分散解析により検討した。バンコク(タイ)に設置した現地条件下で準好気性埋立を模擬するライシメータにおいて、浸出水・発生ガス等のモニタリングを進めた。ラムチャバン(タイ)の都市ごみ埋立地内で、東南アジアにおける準好気性埋立の効果を実証する30m×30m×高さ10mのテストセルを設置した。

サブテーマ(3-2)途上国における適正処理・温暖化対策両立型技術システムの開発・評価(液状物)

地域特性に応じた汚水処理のための小規模分散型の人工湿地システム、浄化槽、傾斜土槽法等の温度条件、負荷条件等に対する処理機能解析を実施した。今後の継続調査解析について、中国農村汚水処理技術北方センターとの連携強化を図った。

また、様々な処理技術の制約条件の調査を進め、管理主体、対象排水、地理的制限、文化・宗教的制限等の観点から、中国農村地域を中心とした液状廃棄物処理技術の最新情報の整理を行い、現地の制約条件の中で適切な処理技術を選択するための基盤を構築した。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
中核PJ4:国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 54 57 60 70   241
受託費 1 0 15 14   30
科学研究費 30 27 33 44   134
寄付金 0 0 0 0   0
助成金 0 0 0 0   0
総額 85 84 108 128   405

今後の研究展望

途上国におけるE-wasteの不適正処理に伴う環境汚染防止に向けて、途上国での環境負荷データ取得が重要かつ困難であるが、現地調査を継続しながら、汚染パターンの把握に取り組む。リサイクル技術の類型化・特性化を進め、排出と曝露の低減策やさらに上流の対策を提案するとともに、効果検証のスキームを構築する。携帯電話などの小型E-wasteにも対象を広げ、海外の排出量推計、リサイクル・有害物質管理のための最適プロセスの選定手法の開発や、それを支える管理制度の設計を行う。

日本からの輸出の多い廃プラスチック、金属スクラップおよび中古家電についても、適切な輸出規制とともに、日本と相手国の両国における循環的利用を促進する政策フレームを提示する。  東南アジアの都市ごみストリームのデータ整備を進め、経済因子以外の中間処理技術等の導入要因を検討する。ライシメータ実験などにより、準好気性埋立に対応したIPCC Waste Modelの改良を行うとともに、最適化の検討を進める。以上の知見を総合化し、東南アジアの都市に対する準好気性埋立技術等の導入による環境改善・温室効果ガス削減効果をLCAにより評価する。

アジア地域の汚水処理適合技術の設計に必要な分散型処理技術の処理機能を左右する温度条件等に関するパラメータの解析評価を行ってきたが、さらに農村地域を対象とした省エネルギー、省コスト、省メンテナンスの実用汎用化技術ガイドライン構築を目指す。