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2. 循環型社会研究プログラム
(4)国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築

外部研究評価委員会事前配付資料

平成21年度の研究成果目標

全体:

① アジア地域における廃棄物の物質フローデータの充実と処理技術の類型化、有害物質や温室効果ガスの環境排出調査、環境負荷低減方策の検討によって、総合的な解析と評価や排出低減策につなげる。

サブテーマ(1):アジア地域における資源循環システムの解析と評価手法開発による適正管理ネットワークの設計・評価

① アジア地域におけるE-wasteなどの物質フローデータの充実と処理技術の類型化、環境負荷低減方策の検討によって、国際資源循環に関する総合的な解析と評価につなげる。

サブテーマ(2):アジア諸国における資源循環過程での環境影響把握

①アジア途上国におけるE-wasteの循環・廃棄過程における作業環境曝露、環境排出を調査し、曝露、排出を低減するための対応策の検討につなげる。

サブテーマ(3-1):途上国における適正処理・温暖化対策両立型技術システムの開発・評価(固形物)

①アジアの都市における廃棄物の組成ごとのフローを捉える手法を提示する。また、埋立地からの温室効果ガス排出係数を求めるとともに、排出源分別や準好気性埋立等の削減対策の導入因子や制御因子を明らかにする。

サブテーマ(3-2):途上国における適正処理・温暖化対策両立型技術システムの開発・評価(液状物)

①アジア途上国における汚水処理の現状調査を進めるとともに、処理技術の制約条件を整理し、現地適合化のための基盤を構築する。

平成21年度の研究成果

全体:

① ア 国際共同研究によってアジア各国内におけるE-wasteのリユース・リサイクルの実態を調査した結果、E-wasteのリサイクルがインフォーマルセクタに多く依存されていることや、製錬技術を伴うフォーマルセクタが現れつつあることを把握した。また、ベトナム及びフィリピンの複数のリサイクル現場において、有害物質の発生原単位的な情報取得のために作業環境試料を採取するなど、人へのハザードレベルを解明するための調査を実施した。途上国のE-waste管理制度設計に向けて、インフォーマルセクタのフォーマル化などの必要性を指摘した。

① イ 日本から輸出される金属スクラップについては、国内で回収システム未整備の家電等が多数混入していることなどを示し、輸出規制を強化する必要性を指摘した。金属スクラップの国内火災現場で収集した廃家電製品等から塩素化ダイオキシン類が検出された。

① ウ アジア諸国における廃棄物対策シナリオ設定に向けて、中間処理の導入途上にある近年の欧州諸国をレビューした結果、都市ごみのストリームでは、まず生物処理が導入され、同処理率が4割程度に達すると焼却処理が導入され始めるというパターンを示した。

① エ 東南アジアの埋立地では、Boring Bar-Chamber法により実測した嫌気性分解率(MCF)が準好気性埋立構造を反映しているものと考えられた。同法で実測した覆土のメタン酸化率(OX)はメタン放出量の大きさに依存して設定すべきであることが示された。タイに設置したライシメータでは実験開始後5ヶ月目でpHが中性付近で安定し、生物分解がメタン発酵期に移行した。12月にタイの埋立地におけるテストセルが竣工し、実証施設によるモニタリングの段階に達した。また、途上国埋立地を模した大型埋立地シミュレーターの浸出水中臭素系難燃剤を経時的に分析した結果、埋立槽内部への送風がこれら有害物質の流出量を削減する効果があることが示唆された。

① オ 液状廃棄物については、地域特性に応じた汚水処理のための小規模分散型の人工湿地システム、浄化槽、傾斜土槽法等の温度条件、負荷条件等に対する処理機能解析を実施し、地域の差、人口密度・気候条件・経済発展レベル等の要因と技術の適合性に大きな差があることを明らかにした。また、様々な処理技術の制約条件の調査を進め、管理主体、対象排水、地理的制限、文化・宗教的制限等の制約条件の中で適切な処理技術を選択するための基盤を構築できた。

① カ 以上について、ワークショップの開催や国際研究協力の実施により研究者ネットワークの構築に努めるとともに、関連する各種行政支援も行った。

サブテーマ(1)

① ア アジアの途上国の研究機関と国際共同研究によって、各国内におけるE-wasteのリユース・リサイクルの実態を調査した結果、中国ではGuiyu鎮をケーススタディとして従来の手解体に加えて銅製錬と貴金属回収プロセスが導入されたこと、フィリピンでは多くはインフォーマルセクタでリユース・リサイクルされていること、ベトナムでは金属回収プロセスの多くを中国に依存していることを把握した。リサイクルの国際分業も視野に含めて、使用済み製品等のリサイクル・有害物質管理のための最適プロセスの選定手法開発を検討し、回収困難な金属の事前選別の有効性を指摘した。

② イ 日本から輸出される金属スクラップについては、サンプル調査を通じて、国内で回収システム未整備の家電等が多数混入していること、ブラウン管テレビや冷媒フロンが含まれていることなどを示した。有害物質管理や火災防止のために、輸出規制を強化する必要性を指摘した。

③ ウ 途上国のE-waste管理制度設計に向けて、インフォーマルセクタのフォーマル化などの必要性を指摘した。

④ エ 以上のE-wasteに関する成果は、国内外の専門家を招いて12月に開催した第6回国立環境研究所E-wasteワークショップにおいて議論するなかからも得られた。

サブテーマ(2)

① ア 途上国での不適正リサイクルにおける各種環境汚染物質の排出挙動を把握するために、国内での各種模擬実験や海外での現地調査を実施した。国内においては、基板やE-wasteの筺体の燃焼実験を行い、非制御燃焼条件下ではPBDEs等の排出が制御燃焼に比べ大幅に増加することや、臭素系難燃剤(BFR)およびダイオキシン類の排出挙動を定量的に把握した。途上国埋立地を模した大型埋立地シミュレーターの浸出水中臭素系難燃剤を経時的に分析した結果、埋立槽内部を好気的条件に維持した場合、嫌気的条件下よりも各難燃剤の溶出量が少なくなる傾向が認められ、埋立槽内部への送風がこれら有害物質の流出量を削減する効果があることが示唆された。国内で発生した金属スクラップ火災現場で収集した廃家電製品等を化学分析に供試し、全ての試料から塩素化ダイオキシン類が検出されるなどダイオキシン類の発生特性を把握した。

① イ また、ベトナム及びフィリピンの処理工程の異なる複数のリサイクル現場において、有害物質の発生原単位的な情報取得のために作業環境試料を採取するなど、人へのハザードレベルを解明するための情報を取得した。

サブテーマ(3-1)

① ア アジア諸国における廃棄物対策シナリオ設定に向けて、中間処理の導入途上にある近年の欧州諸国をレビューした結果、都市ごみのストリームでは、まず生物処理が導入され、同処理率が4割程度に達すると焼却処理が導入され始めるというパターンを示した。

① イ 東南アジアの埋立地でBoring Bar-Chamber法により実測した好気性分解補正係数(MCF)は約1.0であったが、国内の埋立地では0.7程度の小さい値を示しており、準好気性埋立構造を反映しているものと考えられた。同法で実測した覆土のメタン酸化係数(OX)はメタン放出量が大きい東南アジアでは0.1〜0.4であったが、メタン放出量が小さい国内では0.9程度の埋立地もあり、メタン放出量の大きさに依存して設定すべきであることが示された。タイに設置したライシメータでは実験開始後5ヶ月目でpHが中性付近で安定し、生物分解がメタン発酵期に移行した。12月にタイの埋立地におけるテストセルが竣工し、実証施設によるモニタリングの段階に達した。

サブテーマ(3-2)

① ア 地域特性に応じた汚水処理のための小規模分散型の人工湿地システム、浄化槽、傾斜土槽法等の温度条件、負荷条件等に対する処理機能解析を実施し、地域の差、人口密度・気候条件・経済発展レベル等の要因と技術の適合性に大きな差があることを明らかにした。今後の継続調査解析について、中国農村汚水処理技術北方センターとの連携強化を図った。

① イ また、様々な処理技術の制約条件の調査を進め、管理主体、対象排水、地理的制限、文化・宗教的制限等の制約条件の中で適切な処理技術を選択するための基盤を構築できた。

外部研究評価委員会による終了時の評価

平均評点    4.1点(五段階評価;5点満点)

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

国環研ならではの研究であり、個々のテーマについて地道な努力により着実な進展がみられ、得難い貴重な情報も得られている。ネットワーク作りにおいて相手国に対する貢献もなされており評価できる。

一方、これらの研究の出口をどのように考えるのか、成果をどのようにして生かしていくのかが今後の課題であり、行政との連携とともに、我が国としての戦略も考える必要がある。

[今後への期待・要望]

モノの流れのスケールが拡大するのに対して、管理システムが対応できていない現状をふまえると、進んだ国の制度をアジア地域に普及するという発想も重要ではあるが、同時に拡大したスケールにあわせて全体を最適化するにはどういう制度が良いかという発想で検討してもらいたい。

アジア地域の資源循環をガバナンスの視点から最適解を提示するためにはどうすれば良いのかという点で、E-wasteとなる製品がライフスタイルの中で占める意味からスタートし、時系列を追って将来像の設定が必要であろう。
相手国も含む研究者や行政等の幅広いネットワークを構築することで、アジア地域の資源循環をガバナンスの視点から最適解を提示するためにはどうすれば良いのかを考えてほしい。

対処方針

E-wasteの資源循環や廃棄物適正処理をはじめとした情報収集・解析と、国際的な研究者ネットワークの構築と行政系ネットワークへの貢献が評価された。研究の出口として政策貢献への期待が大きいことを認識しており、短期と中長期、ならびに国内と国外対応のそれぞれで可能なオプションを提示していきたい。経済レベルや価値観が異なるアジアの途上国に対して、先進国の制度をそのまま普及しようとすることの限界は認識しているので、各国の特徴や実現可能性はさらに精査したい。全体最適化の制度というのは極めて難しい概念であるが、影響の大きい中国の動きに十分留意しながら、アジアでの適正管理システムの標準化に向けた評価軸や、最適化や負荷低減に向けた製品のライフステージ間ならびに地域間の連携の方法について、今後検討していきたいと考えている。