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2.循環型社会研究プログラム
(3) 廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発

研究の目的

持続可能な循環型社会における廃棄物処理に関しては、従来からの適正処理に加え、資源化を広範かつ最大限に進めることが求められている。本中核研究プロジェクトは、技術開発の対象を廃棄物系バイオマスと定め、廃棄物の削減と一体的にエネルギーおよび資源の循環利用を可能とする技術および複合的な技術システムを開発することを目的とする。このように、バイオマスを対象とする新規技術の開発および水素等の回収利用を図ることによって、化石燃料の消費の抑制が図られることから、2020年において25%削減という温室効果ガスの削減目標にも寄与し得る点で喫緊の問題である温暖化の防止にも役立つと考えられ、地域的な環境問題の解決のみならず、地球環境問題の解決にも役立つ研究と位置づけられる。さらに、エネルギーと資源の持続的な確保に役立つこと、既存の産業と廃棄物処理プロセスとの連携等による廃棄物排出の回避・低減を可能とするシステムの実現を目指すことから、経済性の面においても合理的に実社会への導入を図ることを可能とする。

平成21年度の実施概要

サブテーマ(1)

ガス化-改質プロセスの開発では、改質触媒の耐久性向上とタール成分の低減を同時に達成し得る触媒補助材料として疎水性表面をもつ多孔質シリカを適用し、その効果および技術的展開のための要件等の解明を進めた。ガス化-改質試験については、木質系およびプラスチック・紙固形化燃料等を試料として約750℃の温度条件下において熱分解ガス化-水蒸気改質反応を行い、多孔質シリカの比表面積をパラメータとしてタール成分の濃度や組成等について評価し、生成ガス組成およびシリカ表面への析出炭素量等との相関に基づき多孔質シリカの効果について検討した。

水素‐メタン二段発酵プロセス開発では、食堂残飯を対象とした水素発酵に最適なアルカリ度範囲を明確にし、循環汚泥中のアルカリ度の変動による水素・メタン発酵パターン特性解析を行った。さらに、水素発酵槽に高濃度の菌体を維持するために、膜分離技法を導入し、滞留時間の短縮、高有機物負荷、高水素ガス回収の可能性を検討した。また、脱離液処理について、栄養塩類除去と固形成分濃度の影響との関係について検討を行った。

BDF製造技術開発については、前年度の技術的課題(不純物混入)への対応策を検討するとともに、合成系をより省資源化が期待できる固体触媒系へ展開し、その有用性を評価した。また、次世代のBDFを製造するための前処理技術等の開発を進め、その燃料化の可能性を評価した。さらに、実証を意識した地域循環システムの設計を行うために、原料を含む廃棄物の賦存量を推定し、回収方法に関する情報(作業およびコスト等)を収集した。

マテリアルリサイクルとして、主として鉄電解脱リン装置のエネルギー消費、維持管理等について、実験的・理論的に検討を行うとともに、浄化槽の実機を用いたリンの物質収支解析を実施し、回収ポテンシャル評価および実証試験・地域適用性評価のためのパラメータの取得を行った。また、回収リンの利用者側から見た要求品質等の調査を行った。

サブテーマ(2)

循環技術システムに関する事例研究として、茨城県における湿潤系バイオマスおよび関東圏における乾燥系バイオマスを対象とする地域循環圏の設計と構築計画立案を試みた。また、地域循環圏の効率向上策の一つとして、本中核プロジェクトで開発中の技術を組み合わせた効率的システムを提案し、設計作業に入った。

研究予算

(実績額、単位:百万円)
中核PJ3:廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発
  平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 累計
運営交付金 80 72 68 62   282
受託費 5 25 34 10   74
科学研究費 55 10 15 40   120
寄付金 0 0 0 0   0
助成金 0 0 0 0   0
総額 140 107 117 112   476

今後の研究展望

サブテーマ1のガス化-改質プロセスでは、スケールアップおよび実規模の性能評価に加え、全廃棄物系バイオマスのシステムインテグレーションによる効率向上についてプロセスシミュレーター等を用いて検討する必要がある。水素-メタン二段発酵プロセスでは、システム全体のエネルギー回収率が高い実証システム設計と経済性評価のほか、地域特性を踏まえた実用システムのガイドライン構築が望まれる。第一世代BDFの製造技術開発については、固体触媒を用いた反応の最適条件を連続系へ展開しプロセス設計・評価を行い、さらに同第二世代について最適な製造プロセスを提案するとともに、実証をともなう地域循環圏を設計する。回収リン資源利用先へのアプローチを強化すること、リン回収の社会的評価、汚泥再生処理センター等との連携、回収から肥料生産までの実証試験等を進めることで、実社会へのシステム導入を図る必要がある。

サブテーマ2の廃棄物系バイオマスの循環技術システムの設計・評価については、事例研究を通じて地域循環圏の設計・構築手法を確立し、他地域でも適用できるよう汎用化も目指す。また、本中核プロジェクトでの開発技術を組み合せた複合処理システムを設計・評価し、地域循環圏に導入した場合の効果も推定する。