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2. 循環型社会研究プログラム
(3) 廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発

外部研究評価委員会事前配付資料

平成21年度の研究成果目標

全体:

① 各要素技術の最適化等技術の完成に必要な事項を実験により明確にするとともに、循環システム化を最終目標に、必要なシステム化の条件や相互の関係性等に関する課題を明らかにすることを目標とする。

サブテーマ(1):エネルギー/マテリアル循環利用技術システムの開発と評価

① ガス化-改質プロセスの開発では、タール成分の低減と触媒耐久性向上を目的とした改質触媒・触媒補助材料の併用について検討し、その最適条件の指針を確立する。

② 水素-メタン二段発酵プロセス開発では、ガス回収率の向上を図ると同時に、発酵残液処理における栄養塩類除去を効率化し、全体としてのエネルギー回収効率を評価し、全体のシステム構築を図る。

③ 開発したBDF製造技術の高度化および省資源化を実現する。第二世代BDFの製造可能性を確認し、地域循環圏を設計するためのデータを収集する。

④ リン回収では、処理対象規模等に対応した要素技術開発を進めると同時に、回収リンの活用方法に照らしたリン形態、純度などを評価し、回収技術の費用対効果等について検討する。

サブテーマ(2):動脈-静脈連携等を導入したバイオマス地域循環圏の設計と構築

① 「地域循環圏」の事例研究を通じて、システムを改善するとともに設計・構築手法を確立する。開発技術の組み合わせシステムも提案・評価する。

平成21年度の研究成果

全体:

① ア エネルギー物質の回収を目指す要素技術研究においては、中核的なプロセスである、熱分解ガス化、水素およびメタン発酵プロセスに関する技術的因子は前年度までにほぼ明らかにしたことから、ガス化-改質においては副成するタール分の制御、発酵においては、プロセスから排出される高濃度の残液(脱離液)の高度処理等システム全体での環境負荷の低減に実験研究として注力した。その結果、さらに効率向上の余地は残すものの、次段階の技術開発に生かせる技術要素すなわち有効な触媒や充填材等のもつ効果を明らかにすることで成果を得た。一方、要素技術の確立を踏まえて、システム的適用、あるいは経済性等の実用化において重要な事項を明確にするため、システム的なシミュレーションの実施を開始した。最終的な成果は、5カ年計画最終年度である22年度に得られるが、全体的なシミュレーションの枠組みを提示した。

① イ サブテーマ(2)では、地域循環圏の構築手法に関し、エネルギー回収を目的とした循環システムを想定し、施設規模が異なる複数のケースを設定してCO2排出量などを比較分析したほか、サブテーマ(1)の各種技術を組み合わせた複合システムを提案し、基本データの集積とともに詳細なフロー図と投入産出表を作成した。

サブテーマ(1)

① ガス化-改質プロセスの開発においては、触媒補助材料として疎水性表面を有する多孔質シリカを適用し、改質触媒層の前段に配置することで多環芳香族類炭化水素等のタール成分の除去性能について検討を行った。その結果、タール成分の除去特性は多孔質シリカの細孔構造によって異なり、最適な構造特性(比表面積等)が存在することが明らかとなった。この結果に基づき、最適構造を有する多孔質シリカを用いた触媒耐久性および再生利用特性評価実験を行った結果、改質温度750℃においても十分な再生利用が可能であること、全タール濃度を100 mg/m3Nまで低減可能であること等を明らかにした。また、従来適用の木質系バイオマス試料に加え、廃棄紙と一部廃プラスチック類から形成されるRPF試料を用いたガス化-改質実験を行い、排出されるガスの特性を把握した。

② 水素-メタン二段発酵プロセスにおいては、高効率水素・メタンガス回収と循環汚泥比の適正化を達成した。前段水素発酵槽内のpH制御に必要な汚泥中のアルカリ度が9,000〜10,000 mg-CaCO3/lの範囲であり、水素生成は最大25%以上増加(12.6 m3-H2/t-wet)させることができた。メタン発酵槽は、水素発酵内のpHが安定した後に39.2 m3-H2/t-wet(投入ベース) 前後でメタンが効率的に回収できた。VS濃度は汚泥循環効果によって水素とメタン発酵槽でそれぞれ35%と74%減量化でき、最終流出水のVS濃度は約95%除去できた。最終処理水のアンモニア濃度は、好気槽内のPEG担体の活性を維持することで29〜58 mg/l範囲の良好な処理性能が得られた。TN除去率は硝化担体の阻害物質である固形成分の低減について網状担体を用いて2,000 mg/l以下にすることで51%から89%に増加した。また、膜分離型水素発酵において、水素生成は従来型水素発酵より高い有機物負荷(125 kg-COD/m3/d)で運転でき、メタン生成を抑制した状態で連続的に長期間運転が可能であった。実際に回収できた水素生成速度と組成はそれぞれ10 m3-H2/m3/dと45%であった。炭水化物除去率は約97%、流出水のSSはほとんど検出されなかった。このように所期の目標のシステム化に資する基礎知見を得ることができた。

③ 第一世代BDF製造技術開発については、廃食用由来の不純物(多量体)を99%以上除去するための方法を提示するとともに、合成系を固定化酵素系へ展開した。触媒劣化防止となる新たな触媒配置法を提案し、反応等量のメタノール濃度で収率93%を達成できた。第二世代BDF製造技術開発では、廃油脂類の性状や原料回収のための相平衡を明らかにするとともに、種々の原料に対してほぼ100%燃料化できることを確認した。また、原料を含む廃棄物の賦存量を推定し、回収方法に関する情報(作業やコストなど)を収集し、地域循環システムの設計へ着手した。

④ リン回収に関しては、主に鉄電解脱リン装置について実験的・理論的に検討を行い、5人槽浄化槽において、リン除去装置への通電(158 kWh/年)、鉄板供給24kg/年、鉄廃棄処分6kg/年が追加的に必要となる一方で、簡易な維持管理で高度なリン除去が達成可能であり、かつ分散型処理地域におけるリン資源の循環を面的・効果的に進め得ることから、本技術の導入は費用対効果として高いものと考えられた。また、物質収支解析により、家庭から排出されたリンの9割程度がリン酸鉄等として浄化槽内に貯留され、汚泥とともに引き抜くことにより、新たな追加システムを要さずにリンを収集可能であること、汚泥からのリン溶出技術を最適化することにより、高効率にリンを回収可能であること等の回収ポテンシャルを明確にした。さらに、回収リンの利用者側から見た要求品質の主要な検査項目について調査を進め、回収リンの形態および共存物質の影響について検討を継続している。

サブテーマ(2)

① 「地域循環圏」の設計・構築の事例研究として、湿潤系と乾燥系のバイオマス各々について実施した。前者に関しては、茨城県における食品廃棄物の発生量と飼料の受入可能量とのバランスを分析し、各市町村がどの循環技術に適しているかを分類することができた。後者については、関東圏における廃材・残材の排出量と存施設の処理可能量とのバランスを分析し、各都県での実現可能性を示すことができた。また、地域循環圏の効率向上策として、本中核プロジェクトで開発中の循環技術を組み合わせた効率的システムも提案し、基礎的な物質・エネルギーの投入・産出データの収集・整理をほぼ完了した。

外部研究評価委員会による終了時の評価

平均評点    4.1点(五段階評価;5点満点)

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

廃棄物系バイオマスの資源循環に関する要素技術の開発において、よいモデルが完成し期待を上回る成果を上げたと高く評価される。

一方、基礎的段階の成果が多く、実用化との間にギャップがあることが指摘され、また、森林、食料等生産と一環となった物質循環を考えるべきであるといえる。

[今後への期待・要望]

現場を抱える農水省や国土交通省などとは異なるアプローチを行うことが期待される。技術の開発は、技術特性の把握の範囲にとどめ、バイオマスを基盤とした循環型社会のあり方、そのシステム設計と評価、社会への提示、地域導入の手法の構築などを行ってほしい。

また、地域循環圏の構想については、ぜひモデル地域の協力を得て実現してほしい。

対処方針

本研究プロジェクトでは、基礎的技術のプロトタイプ開発とこれを導入したシステムの設計・評価を行った上で、さらに実用化に向けて、同システムの実用化を想定した地域への導入効果の分析を最終年度の研究に位置づけている。

また、物質循環に関しては、森林生産は廃材等の地域循環圏の検討における構成要素として、また食料等の生産は食品廃棄物の地域循環圏構成要素として考慮し、研究を進めている。サブテーマ2では、バイオマス循環の技術システム(物質・エネルギーのフローに着目)や社会システム(経済や関係主体の体制などに着目)を研究対象とし、それらシステムの設計・評価手法の構築・適用、地域に導入する手法の構築に、これまで取り組んできた。今後、この成果をわかり易く発信する予定である。

本研究プロジェクトで想定している地域循環圏の規模は、木質対象の関東圏と食品対象の茨城県であり、関係自治体にはデータ提供等協力体制を構築してきた。地域循環圏の構想自体はまだ諸端ではあるが、一部地方環境事務所・自治体を中心に協議会設立等の活動を始めており、これら事例情報を得て研究の現実性を高めるとともに、本研究成果によって実社会における効果的な地域循環圏の形成に貢献していきたい。