2.循環型社会研究プログラム
(2) 資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価
研究の目的
資源を有効利用しつつ、化学物質のトータルリスクを最小にする社会システムの形成を視野に、廃棄物の適正管理及び、使用済み製品・資源の循環的利用が有害性と資源性(有用性)の両面を見据えた新たな物質管理手法の下に行われることを目指し、国民の安全、安心への要求に応え、循環型社会形成への取り組みに資する適切な情報を提供することを本プロジェクトの目的とする。材料・製品等の廃棄・循環的利用に伴い、資源性物質を定量、回収し、有害物質リスクを低減するための管理手法を、ケーススタディを踏まえて構築し、生産・消費過程も含めた「持続可能な物質管理」という概念の具現化を図る。
平成21年度の実施概要
サブテーマ ① プラスチックリサイクル・廃棄過程における化学物質管理方策の検討
プラスチック関連物質のリスク制御対策について実証レベルの評価を行った。各種リサイクル方法によるリスク低減比較、ライフサイクル評価を実施した。難燃剤を対象に現行物質と代替物質間での有用性、有害性得失評価のケーススタディ解析を実施した。
サブテーマ ②資源性・有害性を有する金属類のリサイクル・廃棄過程の管理方策の検討
廃製品群・廃棄物からの資源性金属の回収性向上の技術的・政策的方策を検討した。潜在的資源の探索とその資源回収性について評価した。これまでの蓄積されたフローデータと周辺情報をもとに資源性・有害性の評価指標開発に着手した。
サブテーマ ③再生製品の環境安全品質管理手法の確立
環境曝露促進試験、新規特性評価試験の精度評価を実施し、標準化を進めた。各種試験について、網羅的にデータを蓄積し、フィールド試験を継続した。建設資材系以外の再生製品や一次製品への評価試験群の適用性を検討した。
サブテーマ ④物質管理方策の現状及び将来像の検討
国内法制度を中心に40制度、約800の物質管理規定をレビューし、物質管理における基本管理方策を抽出した。その上で、それらの定義や構成要素や要件などの特徴を整理するとともに、その適用性や有効性を考察した。
研究予算
中核PJ2:資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価 | ||||||
平成18年度 | 平成19年度 | 平成20年度 | 平成21年度 | 平成22年度 | 累計 | |
運営交付金 | 50 | 61 | 76 | 70 | 257 | |
受託費 | 31 | 30 | 4 | 4 | 69 | |
科学研究費 | 22 | 16 | 9 | 41 | 88 | |
寄付金 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
助成金 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
総額 | 103 | 107 | 89 | 115 | 414 |
今後の研究展望
本研究プロジェクトは、製品(特に家電製品)をサブテーマ間で共通対象とした統合的な研究アプローチを模索しつつ、進めてきた。有害化学物質については、欧州のREACH規則や国内の改正化審法がうまく機能すれば、物質の安全性評価や管理、製品のサプライチェーンでの情報伝達も進み、化学物質リスク低減に向けてよい方向に向かう可能性がある。一方、リサイクルチェーンや廃棄物処理の部分に限って言えば課題は容易にはなくならず、サプライチェーンのみならず、リサイクルチェーンにおける化学物質管理の接合をうまく考える必要がある。資源性物質管理に関しても同様のことが言える。各サブテーマにおける今後の展望を記す。
①今中期計画では難燃剤を中心的な対象として、製品ライフサイクルにおける製品含有や環境排出に関する網羅的なデータが得られた。得られたフィールドデータを基に、より実効的なリスク評価・管理につなぐために、環境リスク研究センターや環境健康研究領域等、関連研究領域(ユニット)との連携に意義が見出せる。製品中化学物質として有機物質や金属類等を包括的に捉え、製品、再生製品の総合的なリスク評価、管理を意識するとともに、有害物質の代替化について科学的な安全性を十分考慮に入れた枠組みを作るべく、政策側、産業界に情報を提供し、議論を進める価値がある。
②製品組成・フロー情報とプロセス内物質挙動の情報の統合をさらに進め、現在のリサイクル・廃棄過程における金属の回収性、有害物質の環境排出挙動を把握するとともに、より効果的な回収や有害物質の環境排出量削減のための課題を抽出する。製品組成に関しては、重要な基礎情報である一方で自ら取得可能な情報量には限界もある。引き続き情報取得を行うとともに、社会での情報流通の可能性についても検討が必要と考えられる。
③広範な再生製品を対象として、安全性評価、化学リスク評価への展開が重要となっている。建設系再生製品については、提案した管理手法の枠組みを踏まえ、最終製品のばらつきに対する品質評価手法を確立することが急がれる課題である。また、環境暴露による劣化・微細化の評価法開発課題が明確になった。再生プラスチック製品については、利用シナリオに応じた模擬試験の基礎的検討に着手する必要がある。
④プラスチックについての物質管理方策のパッケージを提示するとともに、電気電子機器類に含有される金属類の物質管理方策をできるだけ具体化する。