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2. 循環型社会研究プログラム
(2) 資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価

外部研究評価委員会事前配付資料

平成21年度の研究成果目標

全体:

① 製品を対象に物質の有害性・資源性の管理について総合的に考察を進める。

サブテーマ(1):プラスチックリサイクル・廃棄過程における化学物質管理方策の検討

① プラスチック中難燃剤のライフサイクルにおけるリスク評価と制御対策検討を行う。

サブテーマ(2):資源性・有害性を有する金属類のリサイクル・廃棄過程の管理方策の検討

① 金属資源評価指標の開発、潜在的資源の探索と回収性の評価を行い、金属回収性向上のための方策を検討する。

サブテーマ(3):再生製品の環境安全品質管理手法の確立

① 再生製品の環境安全管理手法を確立し、環境安全品質評価事例を蓄積する。

サブテーマ(4):物質管理方策の現状及び将来像の検討

① 適用されうる物質管理方策を抽出し、その適用性や有効性などを確認する。

平成21年度の研究成果

全体:

① パソコン等の電気・電子製品に着目して、製品ライフサイクルを通じた臭素系難燃剤等の有害物質の挙動や曝露に関するリスク関連情報と、資源性物質(有価金属等)の含有量、資源価値、回収性に関する研究成果情報を同時に睨みつつ、併せて、物質管理の既存方策の学術的レビューを行って、包括的な物質管理方策の基本モデルについて検討、提案を試みた。

サブテーマ(1)

① 電気・電子製品の筐体や基板で用いられるプラスチック中の臭素系難燃剤に関して、製品中の含有量、使用時の室内放散量、室内空気やダストといった室内媒体濃度、ヒトへの曝露媒体としてのダスト中の存在形態についての情報が統合的に得られ、製品のライフサイクルを通じてヒト曝露を考える際に製品使用過程の寄与が高いことを、曝露解析から明らかにした。また、代替難燃剤としての縮合型リン酸エステル類の使用時挙動についても光分解、加水分解、熱分解時のデータを網羅的に蓄積することができ、代替難燃剤のハザード、リスク評価に資する基礎資料が得られた。

サブテーマ(2)

① 基板等の複合素材中金属含有量の高精度分析手法を確立し、これを適用してパソコンの生産年次別や基板種別の金属含有量とその違いを明らかにした。金属含有量や使用済み製品量等の情報に基づいて金属二次資源としての使用済み電気・電子製品の類型化を行い、金属種ごとに着目すべき製品群と適する収集方法を整理した。産業用製品について、基礎情報となる製品フローおよび組成・金属含有量情報の整備を行った。破砕・選別処理を通じた金属回収性や有害性物質の環境排出量推定への展開を念頭に、破砕・選別処理における電気・電子製品由来物質のプロセス内分配、環境排出挙動の実態調査を行った。乾式製錬および再溶解プロセスにおける金属回収/除去可能性を熱力学解析に基づき明らかにし、基板を中心に回収し得る金属を明らかにした。

サブテーマ(3)

① 本サブテーマで開発した試験評価法を製鋼スラグ、再生石膏、ブラウン管ガラス等へ適用し、これらの環境影響に関するデータを蓄積した。欧州における建設系廃棄物・副産物再生製品の有効利用の法制度について専門家への聞き取り調査を実施し、日本における環境安全管理方策の進路を提言にまとめ、JISの原案作成委員会の化学物質評価法として、その考え方が採用された。廃プラスチック再生製品について、特に有害物質混入可能性の視点から工場視察とアンケート調査を実施することにより、品質管理の実態を把握できた。

サブテーマ(4)

① 既存の物質管理規定をレビューした結果、物質管理方策として、曝露・被害防止、クローズド化、チェックゲート、情報伝達、トレーサビリティ、管理体制の整備の6つの基本管理方策があることを抽出し、それぞれの定義、構成要素、要件を示すことができた。また、チェックゲートは物質の特定性が高い場合には有効であるが、静脈フローや循環フローにおいては物質同士が混合しやすく、管理方策としての適用性が低下することなど、物質管理の有効性や適用性の知見を得ることができた。

外部研究評価委員会による終了時の評価

平均評点    4.1点(五段階評価;5点満点)

外部研究評価委員会の見解

[現状評価]

研究の目標が明確に意識されており、製品中の化学物質のライフサイクルを通じた管理という大きな枠組みの中で各サブテーマがつながりを持って適切に行われている。取り上げた各製品・物質について、地道な情報収集と解析が行われており、物質カテゴリーごとの管理手法が明確に提示されている。各製品の有害性インベントリーを作成し、これを社会で共有することは、廃プラスティックとして1か所に集めてリサイクルする現場での安全性向上に貢献すると思われる。

 一方、製品・物質ライフサイクルにおける研究はまとまりに欠けるため、今後、これらの研究をどのように発展させて社会に生かしていくのかという方向付けが重要になること、また、廃棄物から出発するのではなく、個々の資源の完全循環を達成するためにどうするかを生産者側も組み込んでシステム化する必要性が指摘されている。

[今後への期待・要望]

将来予測、すなわち資源量や資源の有効性から考えて、リサイクルが期待される要素と、環境負荷、生体・生態リスク等を考え、規制されるべき要素について、将来に向けてどのように対策すべきなのかについての検討が期待される。

安全なリサイクルを目指すために、有害性の情報をリサイクルの現場にうまく伝える手段、あるいは利用する方法を考えてもらいたい。

対処方針

プラスチック、金属、再生製品という個別サブテーマ研究成果を「物質管理方策の現状と将来像」という並行サブテーマ研究と照合しつつ、統合的に整理することが可能になり、この方針を以降も継続したい。製品有害性インベントリについては、プラスチックを対象に含有インベントリやリサイクルプロセス別の排出インベントリについて今中期で構築を始めたところ。インベントリ作成の手法はリスク管理、資源回収、再生品品質管理の複数に資するものと考えている。 

現状では製品群や物質群を十分に網羅できておらず、まとまりに欠けると認識している。そのため、携帯電話やテレビなど、身近な製品を対象にライフサイクル研究を分かりやすく示す視点は重要である。また、各種製品を横断的に解析し、資源性について定量化する試みも行っている。各種製品を対象とした取り組みの中で生産者側との直接的な関わりを持ちながら、成果を客観的に社会に示せるように努力したい。

製品総体の視点、有害性、資源性の視点、ライフサイクル全般を見渡した視点が必要と認識している。現行製品に加え、新製品・素材についてもリサイクル方策について考慮していきたい。一方、鉛ガラスやPOPs含有製品等、循環利用が困難な製品・素材については、適正な処理処分やリサイクル(有害物除外)が必要なため、ケーススタディーを体系的に実施し、対策のあり方についてコンセプトづくりを進める必要がある。

プラスチックリサイクル過程での化学物質の揮散、排出については、対象施設調査の例数を重ねた上で定量性、再現性のあるデータを、学会、論文発表のみならず業界へも伝えるべく、各種チャンネルを構築したい。リサイクル製品の化学的品質管理やリサイクルプロセスの工学的課題等についても研究を行い、情報を発信していきたい。