2012年6月にリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)での決議に基づき、17の大目標(goals)からなる持続可能な発展目標(Sustainable Development Goals (SDGs))が2015年9月の国連総会にて採択されました。この流れは、持続可能な発展に向けた取組の進捗状況を、指標を用いて的確に把握することの重要性を改めて国際社会に提起しています*1。他方、リオ+20ならびにSDGsでの議論は、ネクサス・アプローチという異なる分野や異なる空間範囲に及ぶ対立や矛盾を回避し、統合的かつ効果的に取組を進めていくこと*2の重要性が指摘されてきました。
しかしながら、今までの持続可能な発展指標研究では、多くの指標が地球レベル、国家レベル、地域レベル等、それぞれの場において個別に提示されるにとどまり、それぞれの指標や指標を構成する要素の相互関連性については十分に検討されてきませんでした。例えば、エコロジカルフットプリントのような単一指標では、現在の状態の善し悪しは判定できるものの、要素間の関連性を把握できず、どこに政策介入や取組を行うかの知見は得られません。他方、国連や各国が策定してきた複数の指標からなるダッシュボード型の指標体系では、各要素の状況把握を行うのみで、要素間の関連性はほとんど考慮されず、指標開発の課題として残されていました*3。
このような状況をふまえ、国立環境研究所における持続可能性社会転換方策研究プログラム(2011~2015年度)の将来シナリオと持続可能社会の構築に関する研究(プロジェクト1)では、事象間の構造を的確に提示するための指標(「持続可能性連環指標」といいます。)を開発・提案することとしました。検討の手順は以下のとおりです。
(1)指標体系の検討と提案既存文献で指摘されている指標開発の論点やネクサスなどの関連文献をレビューしたうえで、持続可能性連環指標の指標体系を提案しました。続いて、有識者によるワークショップを2015年10月に開催して、提案する指標体系の課題やニーズを把握して、指標体系を再検討しました。
*指標体系の検討の一部は、環境省の環境研究総合推進費S11「持続可能な開発目標とガバナンスに関する総合的研究」(研究代表者:蟹江憲史)のなかで実施しました。日本の過去数十年の統計データを収集し、(1)で提案する持続可能性連環指標体系にあてはめ、日本の発展状況が持続可能性の面からみてどのような課題があるかを考察しました。一国の理想的な将来像はいろいろあり、また、持続可能な発展の面からおさえておかなくてはならないポイントは望ましい社会ごとに違うと考えられました。本ウェブサイトでは、持続可能な日本の社会像を2つ示し、それらに関係する主要な指標のデータを公表しています。なお、対照的な2つの像を描いていますが、どちらがより良いということではありません。
指標の選定にあたっては、次の2点を検討しました。
加えて、日本国内で時系列データがそろっていることを考慮に入れました。