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2026.05.18

【研究者レポート】造成から24年経った阪南2区人工干潟調査で調査が行われました

2026年5月、大阪・岸和田市にある「阪南2区の人工干潟」で、地形の変化、底質(海底の砂や泥)の環境、底生生物などを対象にした現地調査を行いました。

阪南2区人工干潟は、2002年5月に、港の整備などで出た浚渫土砂(しゅんせつどしゃ=海底をほり下げたときに出る土や砂)を活用してつくられた、現地の実験場です。大阪湾では、こうした浚渫土砂を有効に使って、干潟や浅い海をよみがえらせる環境修復の取り組みが進められてきました。阪南2区の人工干潟もその代表的な事例の一つで、造成から20年以上にわたる環境の変化を確かめられる、貴重な場所になっています。

今回の調査では、普段は立ち入りが制限されている実験場近くの桟橋まで船で移動し、そこから歩いて干潟部へ向かって観測を行いました。海の上から近づくと、造成地ならではの地形や海岸の構造物が広がり、ふつうの自然の干潟とはちがう景色が見られました。

石積みの上を歩いて調査地点へ移動する研究者
石積みを歩いて調査場所まで移動します。
船の上から測量用のロープを張る研究者たち
測量の準備のためのロープ張り。

干潟というと、川から運ばれてきた土砂が長い年月をかけて積もってできる「自然干潟」を思いうかべる人が多いでしょう。けれどもこの実験場は人の手でつくられた干潟で、川から土砂が供給され続ける場所ではありません。だからこそ、造成後の波や潮の流れによる地形の変化や安定性、水質・底質、生きものの移り変わりを調べることで、人工干潟が長い目で見てどのように保たれていくのか長期的な維持のしくみを知ることができます。

船上で多項目水質計を使って水質を測定する研究者
水質の計測中。水温・塩分・溶存酸素などをはかります。
青いたらいに入れた採取した砂のサンプル
採取した砂。袋に調査日(26.5.18)と地点名(D-2/阪南)を記入しています。

「人工干潟」ってなに?

干潟とは、潮の満ち引きにあわせて、海の中に沈んだり陸地となって現れたりする、海と陸の境目にある平らな場所のことです。砂や泥でできていて、貝やカニ、ゴカイなどたくさんの生きものが暮らし、それをねらって魚や鳥も集まります。いわば「生きもののゆりかご」のような場所です。

ところが日本では、高度経済成長期からの埋め立てや干拓によって干潟が大きく減りました。そこで、失われた浅い海を人の手でつくり直そうという試みが各地で行われています。きれいな砂や土砂を入れて浅い平らな場を広げ、水質や底質をよくしたり、いろいろな生きものがもどってくるようにしたりすることをねらった干潟、それが「人工干潟」です。阪南2区の干潟も、こうした考え方でつくられたものの一つです。

24年でこんなに変わった ― 地形と海藻

造成から24年が経った現在、地形は当初から大きく変化していました。現地では、造成当時には見られなかった大きな岩があちこちに点在しており、波や侵食の影響で地盤の状態が変わっている様子が確認できました。また、石積みの部分には海藻が茂っていて、人がつくった構造物が、新たな生きもののすみかになっていることがうかがえました。

2002年5月の阪南2区人工干潟。造成直後の砂地が広がる
2002年5月の様子(造成されたころ)。
2026年5月の阪南2区人工干潟。大きな岩が点在し地形が変化している
2026年5月の様子。大きな岩が点在し、地形が変化しています。

干潟に広がる生きもの ― ウミニナ

さらに、2004年4月に造成された干潟エリアでは、腹足類(巻貝のなかま)のウミニナが、干潟の表面をおおうようにたくさん生息していました。ウミニナ類は、干潟の環境を代表する巻貝の一つです。これだけ多くのウミニナが見られることは、人工干潟が時間の経過とともに、生態系として成熟してきていることを示す重要な手がかりになります。

干潟の表面いちめんに広がるウミニナの群れ
干潟表面に広がるウミニナ。一面をおおっています。
ものさしを当てて撮影したウミニナの拡大写真
ウミニナの拡大図。ものさしと比べると大きさがわかります。

阪南2区人工干潟では、これまでにも底質や底生生物の調査が行われ、自然干潟に近い生きものの集まり(生物群集)ができていることや、生きものの生育の場としての働きがあることが報告されてきました。

干潟を調べることに、どんな意味があるの?

干潟は、ただ生きものがいるだけの場所ではありません。じつは、わたしたちの暮らしにもつながる、いくつもの大切な働きをもっています。

1. 生きもののゆりかご

貝やゴカイは水の中のプランクトンを食べ、それをカニや魚が食べ、さらに鳥が食べる…というように、干潟は魚介類をはじめ多くの生きものの繁殖や生育を支える土台になっています。

2. 水をきれいにする

二枚貝やゴカイ、ウミニナなどの底生生物は、水の中の有機物やプランクトンを食べたり、泥の中の栄養分を取りこんだりします。その結果として、海の水をきれいにする手助けをしています。

3. 二酸化炭素をためる(ブルーカーボン)

干潟やヨシ原、藻場は、植物や海藻が光合成によって二酸化炭素を取りこみ、その一部を泥の中に長くたくわえます。海の生態系がためる炭素は「ブルーカーボン」とよばれ、地球温暖化対策の面からも注目されています。

これからの調査

今後は、底質の環境や底生生物の変化を引き続き調査するとともに、水をきれいにする機能(水質浄化機能)や、炭素をたくわえる機能(炭素貯留機能)といった生態系の働きの評価も進めていく予定です。造成から24年を経た人工干潟が、どのように変化し、どのような環境機能をもつようになったのかを明らかにすることで、その知見は、これからの沿岸域の環境再生・修復や、ネイチャーポジティブ(自然を回復させる取り組み)に関する研究への活用が期待されます。

文・写真 大谷壮介、霜鳥孝一(テーマ3 サブテーマ2)

参考資料

環境省 せとうちネット:人工干潟とは

水産庁:干潟の働きと現状