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【記者レポート】男里川河口で地引網による調査が行われました
2026年2月20日 大阪府阪南市の男里川河口エリアで、地引網を使った調査が行われました。
男里川で地引網
調査を実施したのは、テーマ4のサブテーマ2の冨山さんのチームです。調査の目的は、S-23の対象サイトである男里川河口で、植物プランクトンなどから動物プランクトンや魚などに至るまで(低次から高次生物)の食物網についての情報を収集、整理してモデルの精度を高めるというものです。ざっくりいうと男里川河口にはどんなお魚がいて何を食べてどんな環境で暮らしているか、お魚にまつわる環境に関する情報を得るための調査です。S-23のデジタルツインの開発のためにお魚の棲む環境についての情報はとても大切です。
地引網とは?
地引網(正確な表記は地曳網)とは、中央が袋状になっている網を沖合に広げ、左右のロープを浜辺に引っ張って獲る漁法に使われる網のことです。調査に使用されたのはコンパクトサイズ版の地引網で、数人でも引っ張ることができます。地引網は海面側には浮き輪、海底側には重りがついていて海底を引きずるように引っ張るので、底面にいる生き物もとることができます。
どんな生き物がいる?
まず地引網の1回目、たぐった網の中を目を凝らして確認してみると、小さなハゼが元気よくピチピチと跳ねています。その他にも目が慣れてくると、もっと小さな細い魚もいます。何かの稚魚なのでしょうか。調査員のひとりが「ボラの稚魚かな」とつぶやきます。研究所に戻ってから詳しく調べるのでしょう。また、小さいけれどとびきり元気のいい魚もいました。斑点があって体は透き通っていてとても美しく、職人の作ったガラス細工のようです。イシガレイの稚魚とのことでした。そのほかにも小さな貝やクラゲ、ごく小さなエビのような甲殻類もいました。このような網を引く作業は調査場所ごとに3回行うそうです。
なぜこの調査が大切なのか
毎日の食卓に美味しいお魚があるのが普通であたりまえと思ってしまうほど、いろいろな美味しいお魚に恵まれている日本です。調査が行われた大阪湾でもいろんな種類の魚介類がとれます。でも漁業というのは、基本的には野生で生きているものを捕獲してくるというもので、野生の生き物が相手です。工場で決まった数を安定して生産するのとは違い、野生の生き物は数が増えたり減ったりします。時には減りすぎてその種の存続が危なくなってしまうこともあります。これからも美味しいお魚を「あたりまえ」に食べ続けるためには、獲りすぎないようにしたり、養殖をしたり、いろいろな方法を考えなくてはなりません。それらを決める上で、それぞれのお魚がどこで生まれるのか、どこでどんな環境で成長するのかを知ることはとても大切です。そうしなければ、知らないうちにそのお魚の棲み家や生き残る道を奪ってしまうことがあるからです。
そしてそれらの小さなお魚や稚魚たちが生きていくためには食べ物も必要です。どんな食べ物を食べているのか、胃の内容物やDNAなど、いろいろな角度から詳しい分析もおこなうそうです。その魚が環境の変化にどう対応しているかということや、その魚が生きていくために必要な環境を理解することにつながるからです。それらを積み重ねていくことで、ひいては沿岸域にいるどんな種類の生き物の間に「食べる食べられる」関係があるのか、という生物同士のつながり(食物網)を紐解くことになり、また沿岸域で生まれ育った生き物が沖合に移動する関係も少しずつわかってくるのだそうです。この調査は、デジタルツインにとっても私たちにとっても欠かせない大切な情報なのです。
調査に参加された皆さん、本当にお疲れ様でした!
文 須藤真澄(国立環境研究所)

