• ひろばHOME
  • アーカイブ集(Meiのひろば)
  • ひろば案内

アーカイブ集(Meiのひろば:トピックス・インタビュー)


01. カエルの病原生物「カエルツボカビ菌」の日本上陸

五箇 公一

 侵入寄生生物の生態リスク評価研究を国立環境研究所と共同で推進している麻布大学獣医学部の調査により、カエルツボカビ症がペット用輸入カエルに随伴して日本に侵入していることが2006年12月に明らかとなりました。


「カエル」イメージ挿絵

 カエルツボカビ症はカエルツボカビ菌Batrachochytrium dendrobatidisが原因となる両生類の新興感染症で、近年の世界的な両生類野生個体群の激減をもたらしている要因の一つとされています。本菌に感染して発症した個体は衰弱して死に至ります。すでにオーストラリアや中米パナマでは、本種によりカエルの局所個体群が絶滅する被害が生じており、国際自然保護連合IUCNも本種を外来種ワースト100の1種に指定して、世界的な監視と防除の必要性を唱っています。


 この「史上最悪」と称される野生生物感染症はこれまでアジア地域では未確認とされていましたが、今回の日本における発見が奇しくもアジア地域における初事例となってしまいました。カエルツボカビ菌の本来の宿主はアフリカ原産のアフリカツメガエルと推測され、このツメガエルの世界的移送に伴い、本菌も世界中に拡散したと考えられていますが、世界で初めて発見されたのが1998年と新しく、感染拡大状況が十分に把握されていないため、詳しい感染ルートはまだ明らかにされていません。また、カエルの種によって感受性が異なるらしく、地域によって被害の程度にも差があるとされます。


「池」イメージ挿絵

 日本にはオオサンショウウオに代表される固有の両生類が多数生息しており、本菌が野外に蔓延した場合、貴重な両生類多様性が壊滅的被害を受ける可能性があります。可能な限り正確な感染リスクを評価するためにも、カエルツボカビに関する科学的知見を早急に収集する必要があります。


 国立環境研究所では2007年2月より、国内における本菌の蔓延状況を把握するため、カエルツボカビDNA 検査を開始しました。その結果、野外に定着しているウシガエルからも本菌の感染が確認され、本菌の野外における感染拡大リスクが現実のものとなりました。


「カエルツボカビに感染したベルツノガエル」の写真
カエルツボカビに感染したベルツノガエル
(南米原産)ペット個体
(写真提供:麻布大学・宇根有美博士)

 カエルツボカビ菌がどこから侵入したのか、また日本の両生類に対して有害なのか、未知の部分が多く、本菌の侵入がすぐに日本の両生類の絶滅を意味すると言い切ることは勿論できません。しかし、一度病原性が発現すれば、被害の拡大を防ぐことは極めて困難と考えられます。特に本菌は水を介して感染するため、ペット用あるいは試験生物用に大量に輸入され、流通している外国産個体の飼育水が野外に放出されることによって感染が広がることが懸念されます。


 生物個体群は一度失われると取り戻すことは出来ません。生態リスク自体が想定不能な現状では、可能な限りカエルの移送や放棄を止めることがまず必要な対策と考えられます。また、こうした感染症や寄生生物は、両生類以外の生物の輸入にも随伴して無数に侵入してきていると考えられます。日本の安易で無秩序な生物輸入の実態にも目を向けるべきです。


インタビュー
「研究のアイデアはどんなときに生まれますか?」

五箇公一主席研究員(掲載当時)に聞く

 今回は、引き続き五箇主席研究員(掲載当時)にお付き合い頂いて、インタビューをさせて頂きたいと思います。五箇さんよろしくお願い致します。


Q1:早速質問に入ります。ダニを研究されていますが、ダニに興味を持たれたきっかけ、ダニの魅力について教えて下さい。

A1:大学の実習で初めて顕微鏡で見て虜になりました。あの逞しい生命力と人間離れした(当たり前)風貌に強い魅力を感じます。


「ダニ」イラスト

Q2:そうだったんですね。確かに、五箇さんの描かれたダニの姿には、ダニに対する愛情(?)すら感じられます・・。では、研究のアイデアはどんなときに生まれますか?そのための工夫とかされていますか?

A2:テレビでニュースや特番を見ているときとか、人と喋っているときにアイデアが生まれます。普通、ここで本を読んでるときとか、自然を観察しているときとか言うのでしょうが・・工夫としては、とりあえず思いついたことはノートに片っ端からメモることです。


「クワガタ」イラスト

Q3:日頃の生活の中からアイデアが浮かんでくるのですね。そして、記録しておく事が大切・・なるほど・・・。五箇さんは、昆虫をはじめとした生物の研究をされていますが、現在、は虫類のペットなどがはやっていますが注意すべきことはありますか?

A3:飼い始めたら死ぬまで最後まで面倒を見ましょう。


Q4:本当にそうですね。少し質問を変えて、研究者を目指したきっかけは何かありますか。また、科学者を目指す子供達へのメッセージがあったらお願いします。

A4:小さい頃から生き物が好きで、なにかのきっかけで生物学者を目指した、というエピソードは特にないです。子供達へのメッセージとしては、「やると決めたことは最後までやり遂げましょう。」です。


Q5:ここで、五箇さんの子供の頃を探ってみます。めずらしい姓ですが、どちらのご出身ですか?また、子供の頃はどんなお子さんでしたか?

A5:富山県です。この姓は自分の親戚しか知らないです。そして、今も昔もオタク・・・。


「山の風景」イメージ挿絵

Q6:(笑!)それでは、最後になりますが、現在のお仕事に関して、皆さんに特にお伝えしたいことをお願い致します。

A6:外来生物は環境悪化のバロメータです。外来生物が悪いのではなく、それを持ち込む人間とそれが住み易い環境を作ってしまっている人間が悪いのです。身近な自然を今一度見渡してこれまでの日本の景観と将来の日本の景観について想いを馳せてみて下さい。


 とても良いお話を聞けました。 五箇さんどうもありがとうございました!!


ページ
Top