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Q&A
生き物たちの絶滅へもどる
ジャンルキャラクター Q7)生物多様性って、なんですか?
 生物多様性(せいぶつたようせい)とは文字通り「生物が多様である」ことを意味しますが、生物の何が多様なのでしょうか。まず、地球上に何種の生物が存在(そんざい)しているのかについて考えてみましょう。これまでに名前が付けられた生物種の数は約120万です。 たくさんの種がいるものだと驚くかも知れませんが、まだ発見されていない種の方がずっと多いのです。未発見の種が多いのですから、総数は誰にもわかりようがありません。しかし、熱帯林(ねったいりん)の調査(ちょうさ)や、これまで新種が発見されてきた速度などから、少なくとも1000万種はいるだろうと想像されています。 こんなに多くの種が、地球上にどのように分布(ぶんぷ)しているのでしょうか。もちろん、世界中どこにでも1000万の種がいるわけではありません。それぞれの種が生息(せいそく)している場所は、比較的(ひかくてき)せまい地域(ちいき)に限定されているのです。

 大陸ごとに生物種の構成が全く異(こと)なっていることは、コロンブスやマゼランなどが活躍(かつやく)した大航海時代から知られるようになりました。大陸間の種構成の違いは、1億年以上前からゆっくりと起き続けている大陸移動(いどう)に関係しています。 たとえば、トンボの種は世界中で6000種くらいだと考えられますが、ほとんど種の重複(じゅうふく)なしにユーラシア大陸に1500種、アフリカ大陸に1500種、北米に500種、中南米に2000種が生息しています。これは、パンゲアと呼(よ)ばれるひとかたまりの超大陸が現在のような大陸に分かれる間に、大陸ごとにトンボの共通祖先から固有(こゆう)の種に分化していったことを物語っているのです。 他のグループの生物でも、2つ以上の大陸にまたがって分布する種は少数派です。したがって、生物多様性の地理的な骨格(こっかく)は大陸移動によって形成されたと推測(すいそく)できます。

 大陸の内部でも生物種の分布は均一(きんいつ)ではありません。その理由のひとつは、種ごとに好適(こうてき)な気候条件(きこうじょうけん)が異なっていることです。青森県と和歌山県は地続きなのに、すんでいるチョウの種がかなり異なっています。 同じ県の中でも暖かい平地と寒い山地とではすんでいる種が異なります。ほかにも生物種の分布が均一でない理由があります。それは、種ごとに好みの環境(かんきょう)が異なることです。気候条件がほとんど同じと考えられる市町村くらいの面積内であっても、森林を好む種、草原を好む種、湿地(しっち)を好む種は、お互いの分布は重なりあいません。 したがって、森林、草原、湿地のどれかが消失(しょうしつ)すると、そこを頼りに生活してきた種がその市町村から絶滅(ぜつめつ)することになります。しかし、いろんな生態系がセットとしてそろっていると、生物集団の絶滅はあまり起きないはずなのです。

 生物多様性の意味は、特定(とくてい)の生態系にたくさんの種がすんでいることだけではないのです。たとえば、ビオトープ池にたくさんの種のトンボがすみつくようになることは、その池が自然(しぜん)に近い状態(じょうたい)で維持(いじ)されていることを自ずと示しているわけですが、それだけが生物多様性ではありません。 注意すべきことは、池に来ない種もたくさんいることです。地域の生物多様性を豊かに保つためには、種数を気にするよりも、さまざまな生態系をどう維持するかを考えるほうが重要なのです。そして、生物たちは何億年もかけて地球の変動(へんどう)に適応(てきおう)し、土地固有の生物が進化してきたことを忘れてはなりません。 わずか200年の期間に人間が行った開発行為(かいはつこうい)や、別の大陸からの生物の持ち込みが、生物の世界と人間の生活に大きなかく乱を生じさせているのです。
 
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