(独) 国立環境研究所 侵入生物データベース Japanese | English
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グリーンアノール

基本・侵入情報 参考資料リスト
基本情報
和名 グリーンアノール

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グリーンアノール
分類群 爬虫綱 有鱗目 トカゲ亜目 イグアナ科
(Iguanidae, Sauria (Lacertilia), Squamata, Reptilia)
学名 Anolis carolinensis
英名等 Green anole
自然分布 バージニア州南部以南のアメリカ合衆国南東部.
形態 雄の方が大型で,特に頭部ががっしりしている.雄は全長180~200mm,体重7g程度.雌は全長120~180mm,体重3g程度.ヤモリ類と同様,指の下面には指下薄板があり,滑らかな垂直面を登ることができる.胴部の背色は鮮やかな緑色のことが多いが,黒褐色から黄緑色まで変化する.また,同種を威嚇する時など,眼の後ろの部分が黒みがかることがある.染色体数2n=36.
生息環境 樹上性.森林の林縁部や民家の庭木,灌木林.農耕地の周辺など.
温度選好性:不明であるが,原産地ではかなり北まで分布することから,低温耐性の点からは,本州中部以以南に広く定着できると考えられる.関東地方南部で飼育する場合,無加温の室内で越冬させられる.
繁殖生態 繁殖期:中春から晩夏.3~9月頃.
雄は喉にある咽頭垂(デュラップ)を広げて求愛し,雌の首に咬みつきながら交尾する.雌は地上の物陰に産卵する.産仔数:12~20日間隔で1卵を産み続ける.孵化までの期間は40日前後.
生態的特性 日光浴によって体温を調節する昼行性のトカゲ.視覚が発達しており,数m離れた所にいる昆虫に走り寄って捕らえる.登はん能力が高く,地上でも樹上でも壁面でも素早く移動できる.積極的に泳ぐことはないが,水面に落ちた場合にはうまく泳ぐことができる.
食性:肉食性.樹上性の昆虫をはじめとする節足動物.
侵入情報
国内移入分布 小笠原諸島(父島,母島),沖縄島(沖縄諸島) 国内分布図
※必ずしも色が塗られた地域全体に分布するわけではありません
詳細マップはこちら
移入元 ルイジアナ州~フロリダ北部.フロリダ半島中部~南部ではない.
侵入経路 ペットとして持ち込まれたものの逸走・遺棄,米軍の物資輸送への随伴によると考えられる.DNAの変異から,ルイジアナ~フロリダ北部由来と考えられる(フロリダ中部~南部ではない).
侵入年代 小笠原諸島父島では1960年代半ば,母島では1980年代初頭とされる.沖縄島では1980年代の終わり頃に持ち込まれたらしい.
影響 在来昆虫の捕食,在来トカゲとの競合.
影響を受ける在来生物:食物となる樹上性かつ昼行性の昆虫.オガサワラシジミはおそらくグリーンアノールによる捕食のために絶滅かそれに近い状態となった.オガサワライトトンボ,オガサワラトンボ,シマアカネ等の固有のトンボ類も父島と母島ではほぼ絶滅し,グリーンアノールの侵入していない属島に残るのみとなった.オガサワラゼミなどの大型の昆虫も捕食され,種によっては著しく数を減らしている.在来のオガサワラトカゲは食物を巡る競合にさらされ,かつ幼体がグリーンアノールに捕食されている.ただし,アノールの密度が高い地域においても絶滅には至っていない.
法的扱い 外来生物法で特定外来生物に指定された.アノール属 Anolis およびノロプス属 Norops は,全種が特定外来生物または未判定外来生物である.
防除方法 樹上に広く分散して生息するため,効率よく駆除することは困難.釣りやヌーズ(竿の先に取り付けたテグスで個体を縛って捕獲する方法)を組み合わせて見つけ捕りをくり返すことが現実的.根絶のためには,アノールが越えられないフェンス等で生息域を分断し,1区画ずつ根絶させていく方法が考えられる.たたし指下薄板を持ち登はん能力が高いため,特殊なフェンスを用いる必要がある.捕獲に際して粘着トラップが効率的と考えられるが,昆虫や鳥類,在来爬虫類などを錯誤捕獲する可能性が高いため,慎重に適用する必要がある.また,本種は夜間に物陰に潜んで休息するため,これを利用したネストトラップ(例えば切り揃えた竹筒を束ねて樹幹に設置する等)は有望である.
問題点等 小笠原諸島では,近年になって本種がきわめて侵略的な外来種であると認識され,多くの昆虫を絶滅から救うことが課題になっている.一方,国外では本種はハワイ諸島のハワイ島,オアフ島と北マリアナ諸島のグアム島,サイパン島,カロリン諸島のヤップ島などに導入され定着している.しかし,いずれの島でも小笠原諸島のように高密度にはなっておらず,侵略的外来種とは見なされていない.本種の対策については先行事例がなく,小笠原においても,属島への分布拡大防止と父島,母島における防除の両方を進める必要がある.保全生態学的な観点から,本種に関する基礎的,応用的な調査研究の必要性が高まっている.
海外移入分布 ミクロネシア,ハワイ,ヤップ,パラオなど
備考
日本の侵略的外来種ワースト100

小笠原諸島では,近年になって本種がきわめて侵略的な外来種であると認識され,多くの昆虫を絶滅から救うことが課題になっている.一方,国外では本種はハワイ諸島のハワイ島,オアフ島と北マリアナ諸島のグアム島,サイパン島,カロリン諸島のヤップ島などに導入され定着している.しかし,いずれの島でも小笠原諸島のように高密度にはなっておらず,侵略的外来種とは見なされていない.本種の対策については先行事例がなく,小笠原においても,属島への分布拡大防止と父島,母島における防除の両方を進める必要がある.保全生態学的な観点から,本種に関する基礎的,応用的な調査研究の必要性が高まっている.

令和5(2023)年度 環境省「特定外来生物の市町村別侵入状況の把握のためのアンケート」調査の結果は,市町村単位の分布地図※及び一覧(下記URL)にて参照されたい. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/category.html
※都道府県単位の分布地図は,学術誌や記事,通報などをもとに,標本や画像データを確認して作成されたものである. 市町村単位の分布地図は,自治体へのアンケートをもとに作成されたものである. 従って,両者の分布情報が一致しない部分がある.
基本・侵入情報 参考資料リスト