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ミシシッピアカミミガメ

基本・侵入情報 参考資料リスト
基本情報
和名 ミシシッピアカミミガメ

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ミシシッピアカミミガメ
分類群 爬虫綱 カメ目 ヌマガメ科
(Emydidae, Testudines, Reptilia)
学名 Trachemys scripta elegans
英名等 red-eared slider
自然分布 アメリカ合衆国南部からメキシコ北東部の国境地帯.同種は14亜種を含み,アメリカ合衆国のバージニア州から中米を経てブラジルに至る広大な分布域を持つ.
形態 背甲長28cmに達する中型種.雌の方が大型になる.体重は背甲長20cmの雌で1,400g前後.甲はゆるやかなドーム状で,背甲には弱い1本の隆条がある.背甲の後縁には弱い鋸歯がある.頭部の両側に橙赤色の斑紋が目立つ.雄はしばしば黒化し,全身がまっ黒になる.
生息環境 多様な水域.底質が柔らかく,水生植物が繁茂する,日光浴に適した陸場の多い穏やかな流れを特に好む.塩分への抵抗力も高く,しばしば汽水域にも進出する.
温度選好性:寒冷地や山地をのぞく国内のほぼ全域で越冬,繁殖可能.イギリスでは夏期の積算温度が不足するため,生存,産卵できても孵化できないとされ,北海道でもおそらく同様と考えられる.
繁殖生態 繁殖期:交尾は春と秋にみられる.産卵は4月から7月にかけてなされる.
雄は伸長した爪を雌の前で震わせて求愛する.雌は地面に巣穴を掘り,1度に2~25個の卵形の卵を産出する.卵は長径30~42mm,短径19~29mm.孵化までの日数は65~75日程度.産仔数:飼育下で平均25.9個という報告があるが,もっと少ない例が多い.
生態的特性 昼行性で日光浴を好む.雑食性だが他のカメ類の卵を食べる習性があり,在来のカメ類との競合のみならず,卵捕食による影響も及ぼしうる.
食性:雑食性.藻類や水草,水生昆虫,ザリガニ,エビ,貝類,魚類等さまざまなものを採食する.
侵入情報
国内移入分布 ほぼ日本全国.島嶼部でも,ほとんどの主要な有人島に分布. 国内分布図
※必ずしも色が塗られた地域全体に分布するわけではありません
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移入元 米国.
侵入経路 愛玩用に輸入されたものが遺棄されている.
侵入年代 輸入は1950年代に始まり,野外では1960年代後半からみつかるようになった.
影響 競合,捕食.在来のカメ類とは亜科もしくは科のレベルで異なるため,交雑のおそれはほぼない.ヒトへのサルモネラ菌の感染例がある.
影響を受ける在来生物:競合及び卵の捕食にさらされる在来淡水カメ類,及び食物となるさまざまな水動植物が影響を受ける.
農業被害:観賞用ハス、ジュンサイ、ヒシの食害
法的扱い 条例公表種(愛知県内での野外放逐禁止,愛知県 自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例).移入規制種(佐賀県内での野外放逐禁止,佐賀県 環境の保全と創造に関する条例).
人畜共通感染症の観点から,アメリカ合衆国内では甲長4インチ以下の幼体の販売が国内法で禁止されており,輸出のみが認められている.オーストラリア,韓国,南アフリカ共和国でも本亜種の輸入が禁止されている. 2023に施行された改正外来生物法で新たに設けられた,規制の一部を当面の間適応除外するカテゴリーである「条件付特定外来生物」に指定された.
防除方法 水域に広く分散して生息するため,効率よく駆除することは困難.魚のアラ等をエサとしたトラップを多数設置することである程度の捕獲が可能とみられる.また,淡水魚の捕獲に用いられるえりに入ることもある.
問題点等 カメ類のみならず,ペットとして流通している爬虫類の中で最も多数が輸入,流通している.年により数十万~百万個体近くの幼体がアメリカ合衆国から輸入され,ペットとして安価に販売されている.遺棄や逸走が頻繁に生じているとみられ,たとえ再生産が少なくても,都市近郊の水辺には本亜種が高密度でみられる.在来の淡水性カメ類に比べて産卵数が多く,水質汚濁の進んだ,より悪化した環境への耐性もある.
海外移入分布 同種はハワイ,インドシナ,インド,ヨーロッパなどに移入されている.
備考
日本の侵略的外来種ワースト100

アカミミガメ Trachemys scripta 全亜種は,要注意外来生物(外来生物法)および世界の侵略的外来種ワースト100.

本種の性比は,多くの地域で雄に偏るが,日本国内(主に兵庫県・大阪府の野外および飼育個体に対する調査)では,著しく雌に偏っている.

令和5(2023)年度 環境省「特定外来生物の市町村別侵入状況の把握のためのアンケート」調査の結果は,市町村単位の分布地図※及び一覧(下記URL)にて参照されたい. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/category.html
※都道府県単位の分布地図は,学術誌や記事,通報などをもとに,標本や画像データを確認して作成されたものである. 市町村単位の分布地図は,自治体へのアンケートをもとに作成されたものである. 従って,両者の分布情報が一致しない部分がある.
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