記者発表 2010年8月10日

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国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第37号
「科学の目で見る生物多様性−空の目とミクロの目」の刊行について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )

平成 22年8月10日(火)
独立行政法人国立環境研究所
企 画 部 長  : 齊藤  眞 (029-850-2302)
環境情報センター長  : 岸部 和美 (029-850-2340)
環境儀WGリーダー  : 原島  省 (029-850-2508)


国立環境研究所の研究成果を分かりやすく伝える研究情報誌「環境儀」第37号「科学の目で見る生物多様性−空の目とミクロの目」が刊行されました。地球上では、今、多くの生き物や生態系が存続の危機に瀕しています。農業や都市化をはじめとする土地利用による生息地の破壊や、生物資源の乱獲、さらには交通・運搬システムなどを介した意図的・非意図的な生物の長距離の移動などが大きな原因です。日本を含め、多くの国々が遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性など様々な観点から生物多様性を守るため、条約を締結して保全に乗り出しています。

今年は「国際生物多様性年」という記念の年にあたり、さらに、10月に名古屋市で、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」も開催されます。これを機に、生物多様性の重要性、環境への配慮に関する意識が高まると期待されています。

国立環境研究所では、前身の国立公害研究所からの改称、組織変更を契機に、自然環境の保全をその任務のひとつと位置づけました。現在、生物圏環境研究領域のほか、地球環境研究センター、環境リスク研究センター、アジア自然共生研究グループ、環境研究基盤技術ラボラトリーなど、いくつもの研究ユニットで生物多様性の保全にかかわる研究を進めています。今回は、ミクロの目でせまる藻類の多様性の世界や、空からの撮影というマクロの目でせまる湿地生態系の空間的な構造の把握などの研究成果を紹介します。

1  第37号の内容

「ミクロの目でせまる藻類の多様性の世界」の研究として、大型船舶による海洋生物の越境移動の研究を紹介します。海洋生物は、海流などの自然現象による移動に加えて、船舶や水産物などを介して人為的に移動することがあります。こうした人が関わる移動は、長距離を短期間に、そして途中の海域を飛び越えて分断的に起きます。その結果、それまで存在しなかった種が、ある海域で突然に繁殖して養殖魚を大量死させたり、移動先の生態系を変化させたりといった問題が起きています。船舶の場合、船体表面の水に接する部分に生物が付着することで起きる船体付着、そして積荷の代わりの重しとして港湾から取水されたバラスト水が、生物の越境移動に深く関わっています。本号では、バラストタンクや船体表面からいろいろな藻類を発見したこと、越境移動のリスクの高い種を高感度かつ定量的に検出したことなどの話題を紹介します。

環境儀第37号表紙写真また、「空からの撮影というマクロの目でせまる湿地生態系の空間的な構造の把握」として、湿原草本種の草丈構造の推定解析手法と同定手法の研究を紹介します。湿原内には絶滅危惧種をはじめとした多くの希少な植物が生息しています。しかし、湿原は踏査性が極めて悪く、地上調査は非常に困難です。低層湿原では自分の背よりも草丈が高いヨシやオギなどが優占し、進行方向すら見失います。一方で、ミズゴケを主体とした高層湿原は極めて脆弱であり、調査そのものが攪乱要因になります。そこで航空機リモートセンシングによる草本植生の草丈の推定と、ラジコンヘリによる草本固体種の同定を試みました。

内容は次のとおりです。

(1) 研究担当者へのインタビュー

  • 竹中 明夫
        生物圏環境研究領域 領域長
    河地 正伸
        生物圏環境研究領域 微生物生態研究室 主任研究員
    小熊 宏之
        地球環境研究センター 陸域モニタリング推進室 主任研究員

(2) 研究成果のサマリー及び国内外の研究の動向の紹介

(3) 『大型船舶による海洋生物の越境移動、および微細藻類の研究動向』

(4) 『リモートセンシングの技術、およびラジコンヘリコプターを用いた空中撮影による湿原草本種の同定』 等



2  閲覧・入手についての問い合わせ先

「環境儀」は、研究所のホームページで閲覧することができます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/
   
冊子の入手については、下記へお問い合わせ下さい。
連絡先:国立環境研究所環境情報センター情報企画室出版普及係
TEL: 029-850-2343、E-mail:pub(半角で@nies.go.jpをつけて下さい)


(参考)これまで「環境儀」で取り上げたテーマ

36号 : 「日本低炭素社会シナリオ研究 2050年温室効果ガス70%削減への道筋」
35号 : 「環境負荷を低減する産業・生活排水の処理システム〜低濃度有機性排水処理の「省」「創」エネ化〜」
34号 : 「セイリング型洋上風力発電システム構想 − 海を旅するウィンドファーム」
33号 : 「越境大気汚染の日本への影響−光化学オキシダント増加の謎」
32号 : 「熱中症の原因を探る−救急搬送データから見るその実態と将来予測」
31号 : 「有害廃棄物の処理−アスベスト、PCB処理の一翼を担う分析研究」
30号 : 「河川生態系への人為的影響に関する評価 よりよい流域環境を未来に残す」
29号 : 「ライダーネットワークの展開−東アジア地域のエアロゾルの挙動解明を目指して」
28号 : 「森の息づかいを測る−森林生態系のCO2フラックス観測研究」
27号 : 「アレルギー性疾患への環境化学物質の影響」
26号 : 「成層圏オゾン層の行方 - 3次元化学モデルで見るオゾン層回復予測」
25号 : 「環境知覚研究の勧め−好ましい環境をめざして」
24号 : 「21世紀の廃棄物最終処分場−高規格最終処分システムの研究」
23号 : 「地球規模の海洋汚染−観測と実態」
22号 : 「微小粒子の健康影響―アレルギーと循環機能」
21号 : 「中国の都市大気汚染と健康影響」
20号 : 「地球環境保全に向けた国際合意をめざして  ― 温暖化対策における社会科学的アプローチ」
19号 : 「最先端の気候モデルで予測する『地球温暖化』」
18号 : 「外来生物による生物多様性への影響を探る」
17号 : 「有機スズと生殖異常−海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響」
16号 : 「長江流域で検証する『流域圏環境管理』のあり方」
15号 : 「干潟の生態系−その機能評価と類型化」
14号 : 「マテリアルフロー分析−モノの流れから循環型社会・経済を考える」
13号 : 「難分解性溶存有機物−湖沼環境研究の新展開」
12号 : 「東アジアの広域大気汚染−国境を越える酸性雨」
11号 : 「持続可能な交通への道−環境負荷の少ない乗り物の普及をめざして」
10号 : 「オゾン層変動の機構解明−宇宙から探る  地球の大気を探る」
9号 : 「湖沼のエコシステム−持続可能な利用と保全をめざして」
8号 : 「黄砂研究最前線−科学的観測手法で黄砂の流れを遡る」
7号 : 「バイオエコ・エンジニアリング−開発途上国の水環境改善をめざして」
6号 : 「海の呼吸−北太平洋海洋表層のCO2吸収に関する研究」
5号 : 「VOC−揮発性有機化合物による都市大気汚染」
4号 : 「熱帯林−持続可能な森林管理をめざして」
3号 : 「干潟・浅海域−生物による水質浄化に関する研究」
2号 : 「地球温暖化の影響と対策−AIM:アジア太平洋地域における温暖化対策統合評価モデル」
創刊号 : 「環境中の『ホルモン様化学物質』の生殖・発生影響に関する研究」

バックナンバーはホームページから閲覧できます。
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/

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